銀色の契約者   作:飛翔するシカバネ

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第七十一将 宣戦布告2

「古市…お前どこいってたんだよ!」

 

男鹿は怒鳴りながら襟を掴み上げようとする。

古市はスルリと躱す。

 

「ちょっと野暮用でね…アメリカの方に行ってたんだよ」

 

「アメリカ?何のためにそんなとこに…」

 

「ベル坊の母親に会いに」

 

「っ!?」

 

「ソロモン商会ってとこに捕まってたんでな。さっきお前の家に預けて来たよ。帰ったら合わせてやりなよ。説明は既にしてある」

 

「なんでお前がそんな事を…!!」

 

「お前と喧嘩する為だよ」

 

「それは姫川のヤローから聞いた。俺が聞いてんのはなんでこんな回りくどいしてやがんだ…喧嘩してーなら正面からやり合えば…」

 

「それはお前が弱かったから」

 

「!?」

 

驚いたのは邦枝葵だった。

石矢魔最強の男を前にして古市貴之は弱いと言い放った。

それに驚きを隠せ無い。

 

 

「最初にお前が敗れたのはもう随分前だ。東条先輩にやられた時だったな。東条先輩は強い……けど、魔力を使わない俺でも倒せた。ちょっとした動揺程度で力が鈍るほどにお前の精神はまだまだ惰弱だった」

 

東条を倒し、石矢魔高校の頂点になった男鹿。

あの時の戦いに一つだけ違和感があった。

身体を攻撃した際に東条が1度苦しそうな顔をした。

まるで怪我をしている場所を思いっきり殴ったかのように。

あの時の男鹿は無我夢中だった。

アレも単純に自分の攻撃がクリーンヒットしたのだと。

まさかあの戦いの前により強いものと戦っていたと男鹿は知らなかった。

 

「その後は聖石矢魔に行って三木に負けたよな。油断もあったろう。三木に本気を出すことにストッパーがかかっていたかも知れない……けれど、お前は技に敗れた。あの後あたりからお前は単純に力で殴るだけじゃないと学び始めた」

 

スポーツに強い六騎聖。

その最強である出馬の技を真似した古市。

喧嘩が弱くてスポーツができるなんてことあるのか。

そこらの不良にやられるなどあるのだろうか。

 

「その後は悪魔野学園とか来てな。力なんてないお前はボコボコにされて、ヒルダさんもやられた。あの時はみんな頑張って特訓したよな」

 

古市も特訓した。

しかし、戦う事は殆ど無かった。

相手の攻撃を回避する事に長けていた。

話でめんどくさい時も逃げるのは上手かった。

いつの間に姿が無くて、いつの間にかいた。

 

「その後は割と平和で沖縄行ったり、クリスマスイベントやったり、年越し会も楽しかったな…」

 

その頃から風引いたり、怪我したりも増えた。

バイトの怪我とか、寒くてとか。

そんな事を言っていた。

沖縄行った時もいつの間にか入院するほどの怪我をおっていた。

 

「年明けて校内戦争真っ只中だったけど、そろそろ先輩たちも卒業とか受験勉強とか就職とかあるな……」

 

 

春になれば石矢魔東邦神姫のメンバーが卒業する。

そうなれば大幅なグレードダウンになるだろう。

それでも男鹿は特に気にしていなかった。

 

幼少期から一緒に生きて、隣に立っている親友がいたから。

 

 

「だからその前に大きな祭りをしようと思ってな。俺とお前だけじゃない。お前がここまで強くなったその集大成だ。先輩達や他の高校も巻き込んで思いっきりやり合おうぜ」

 

「………古市」

 

「なんだ?」

 

「お前……ずっと嘘をついてきたのか?」

 

喧嘩をしたい理由を聞いた。

他の奴らを巻き込む理由も聞いた。

どうせ、2人でやり合っても他の奴らは見物に来る。

聞きたい話はそこだった。

 

「嘘はついてない。話さなかっただけだ」

 

「そんなのはっ…!」

 

「同じだって?聞かれたら話すつもりだったよ。他でもないお前になら」

 

今更な話だ。

聞けば話したかもしれない。

そんなのは。

 

「お前は聞かなかった。おかしな話があっても。それが亀裂を産んだのかもな。もしくは俺が産まれる前からこうなる様になっていたかもしれねぇ」

 

「何言ってんだ…」

 

「俺とお前にはもう1つ因縁が生まれた。それを果たすも果たさないも俺の自由だったが、これは俺のケジメでもある……」

 

そこまで言ったところで古市の隣に女性が現れる。

 

「おっお前は……アンジーさん!」

 

「アンジェリカです…」

 

時空転送悪魔アランドロンの娘、アンジェリカだった。

 

「男鹿、1週間後。俺は登校する。その時にやり合おう。せいぜい味方は多くな。こっちも数を揃えなるからな。三怪はオススメだぞ」

 

「おいっ!待て!!!」

 

古市に向けて手を伸ばす。

しかし、アンジェリカと手を握る古市の姿は掻き消えた。

どこかへと転移したようだ。

 

河原には最初の通り、男鹿と邦枝だけが残った。

 

 


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