銀色の契約者   作:飛翔するシカバネ

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第六十九将 鷹狩り

 

「なんで三王が勢揃いしてんだ!?」

 

「まさか三王が同盟を!?早く幹部たちを!」

 

 

校舎のあちこちで悲鳴が鳴り響く。

 

「神とは思い切ったな。お前らは手を出すな。こいつは俺がやる」

 

鷹宮は懐からワックスを取り出し、髪を固める。

 

「王臣対王臣か。それにしては駒が弱いな。王臣全員呼んで多対一でやった方がいいんじゃないか?」

 

こんな風に強キャラに挑発する日が来るなんて…

予定はしていたが実際にすると震えるな。

 

感動と緊張で。

 

 

「鷹宮…」

 

「何を心配している?お前らはさっさとこいつの王臣を倒してこい。いつも言っているだろう?俺に必要なのは0か1、使えないか使えるかのどちらかだ。分かったらさっさといけ!」

 

鷹宮の言葉で残っていた姫ラーと王臣は廊下に出る。

 

「お前がなんの悪魔と契約したかは知らんが俺のルシファーは強いぞ」

 

「七大罪の中でも特に強い三強。ベルゼブブ、サタン、ルシファー……か」

 

「そうだ!男鹿は早乙女から魔力の引き出し方を学んだそうだが、俺が学んだのは膨大な魔力の抑え方だ!」

 

その言葉と共に一気に間合いをこちらに詰める。

速さにものを言わせ、連撃を叩き込む。

 

「どうした!藤をやって調子にでも乗っていたか?あの引きこもりはどうやら力を落としていたみたいだな。お前みたいな奴にやられるとはな!」

 

そのまま窓に追いやられ、蹴り飛ばされる。

壁と窓を破壊し、校庭に飛ばされる。

 

啖呵を切っていた割にこの程度かと少し残念そうな顔で教室から覗く形でこちらを見る。

そしてその目は強く開かれる。

 

吹き飛ばした俺は悠然と立っている。

攻撃により服が破け、服の意味を成していない。

 

そんな俺の周りには鷹宮の王臣達がいる。

 

それは先程教室から出ていったトランプマンもいた。

そして全員倒されていた。

 

俺の王臣によって足蹴にされ、成果を見せるかのごとく俺の前に差し出されている。

 

「なっ!?」

 

驚く鷹宮は後ろからの攻撃に反応出来ず、校庭に落とされる。

 

「ぐっ!誰だ!」

 

校庭に落ち、教室を見る。

そこには男鹿……によく似た男。

火炙組頭、赤星貫九郎。

 

炎を纏い、手にある7の数字を輝かせながら見下ろしていた。

 

「鷹は堕ちた」

 

その言葉に鷹宮は振り返る。

 

ボロボロの服を着ている俺がいる。

俺は上半身の服を脱ぎ、近くにいる鳳城林檎に渡す。

 

そして全身にある契約紋を輝かせる。

 

手のひらから順に起動したそれは腕を伝い、心臓に伸び、そこから身体中へと広がる。

足の指先から額までくまなく、紋章が紡がれる。

それは一つ一つは違う紋章。

 

それが強く重なり、時に交わり、ひとつの巨大な紋へとなる。

 

そしてそれを護る9名の王臣。

そこに赤星も加わり、10名が立ち並ぶ。

 

そしてその配下が校舎や校庭、正門を超えた先にズラリと並んでいる。

 

「ちっぽけな、帝国だったな」

 

「お前は……何者だ?」

 

「俺?古市貴之。男鹿の親友でこれから離反して、全部巻き込んだ大喧嘩する男だよ」

 

 

鷹宮が最後に聞いたのはその言葉だった。

 

聖天組と堕天組。

 

その総力戦の決着は聖天組頭、古市貴之による1発のパンチだった。

 

古市が鷹宮を攻撃した回数はこの1回のみ。

 

しかし、鷹宮が意識を途絶えされるには充分以上な攻撃だった。

 

 

 

 

 

 

「姫川先輩」

 

「………」

 

この場所唯一の聖組。

姫川はその鮮やかな手腕とその圧倒的な力に言葉を詰まらせていた。

姫川が手に入れた悪魔と契約者のパスを切る装置。

それが対鷹宮、そして対藤の切り札になるだろうと考えていた。

 

しかし、古市には効かない。

紋章を見たがその数は少なく見積って100。

たった一体の悪魔のパスを切ったところでなんら変わらないだろう。

1番強い悪魔を切ってようやく…いや、それでも届かないだろう。

 

「姫川先輩にはメッセンジャーを頼みたいんですよ」

 

「先輩を顎で使うとは大きく出たな」

 

「あはは。また、弁当でも持っていきますかね?」

 

「要らねーよ。これまでも弁当持ってきてくれたしな。……何を伝えればいい?」

 

「宣戦布告を。男鹿だけでなく、聖組の全てを聖天組の全てで倒す。そして石矢魔最強の名を貰う」

 

「そんなもんに興味があったとはな」

 

「決して軽い名じゃないでしょ。それにそれくらい目標にしないと男鹿に釣り合わない。親友としてじゃない」

 

そう言って左手に刻まれたベルゼブブの王臣紋を姫川に見せる。

 

そこには0の数字があった。

 

「古市…!お前…」

 

「これが出たのはアイツがベル坊と契約した日。俺はずっと王臣だった。だからこそこれを消すことが何よりも…」

 

バキリ!!!

 

0の数字にヒビが入る。

亀裂は紋章に広がり、キラリと光を放ち崩れていく。

 

 

「何よりもの証明となる」

 

その言葉と共に完全に0の数字は消えてなくなる。

 

代わりに十字架をあしらったかのような紋章が現れる。

それは両手の甲に現れ、自身の力を誇示するかのように光を放つ。

 

「決別の時きたれり……」

 

捕まえた時間が遅かったのか、思ったよりも時間がかかっていたのか日の出が古市達を照らす。

 

日差しを眺めながら、俺は呟く。

 

「喧嘩しようぜ………男鹿」

 

 

 


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