男鹿に呼び出され、家に行くと男鹿の部屋の窓から滝が出来ている。
写真撮って置くか、記念に。
「ーというわけでな。事態は一刻を争うのだ」
ベル坊のアレを紐で止めている。
将来ベル坊病気になるぞ、アレ。
病名は覚えてないが男としては致命傷なアレが。
「俺の素晴らしい機転により一時的に沈静化はしたものの依然、ベル坊ダムは決壊寸前。予断は許さぬ状況だ。幸い、今日はうちに誰もいねぇ。今のうちに全て収拾するにはどーすればいいか。全員、頭をひきちぎれ!」
「知恵をふりしぼれ…な」
「ひきちぎれっ!!」
やはり、頭が弱いな男鹿は。
そんな横でヒルダさんが滅亡計画のような物騒な事をいっている。
沈むとべる坊も沈んでいく気がする。
「えーと…いいか?」
「はい、古市君!」
「何度もいうけど俺を巻き込むなよ。関係ないだろ」
「お前だけが頼りなんだ」
「出てねーし、出す気もねーよ」
「ばかやろう古市!!てめぇ、このまま日本が尿に沈んでもいいのか!?」
「うるせーよっ!!テメーも親ならオムツくらいはかせろやっ!!」
男鹿が俺の言葉に目からウロコな顔をしている。
「家の事は任せた!!」
「おい、待て!任せたって…どーすんのこれ!!」
「元通りにしてくれ!」
「ハア?!」
そういって男鹿は走り去っていってしまった。
どうせ、オムツがある所といえばドラックストアだろう。
「ーったく、オムツの問題じゃねーっつの。相当てんぱってんな、あいつ」
あーあビショビショ。
ーって俺の貸した漫画じゃん、これ。
俺の本焦がしたり、濡らしたり、あいつ……
「戻すのか?」
「そりゃあまあ、少し位はね。親友だしな」
「フンっ」
「ヒルダさんこそ…いくら悪魔の存在理由とはいえ、あんなアホと子育てなんて大変でしょ…」
「口が滑ったな男、いや古市」
「何のことですか?」
「私は自分が侍女悪魔だとは明かしたがその意味を教えてはいない。貴様ら人間がその意味を…その重さを知らないのは男鹿の姉で分かっている。だからその意味を知らないがおまえが知っているのはありえない。しかし貴様はそれを知っている。何故だ?」
「あれ?俺そんな事いいました?」
「もう、粗末な演技は辞めろ。本性を見せろ」
「………」
やっぱり勘がいいな。
俺も口が滑るなんてまだまだ、だな。
『主様』
ラピス、ここは黙っていろ。
俺は笑みを浮かべながらヒルダさんに話しかける。
「大丈夫です、安心して下さい。俺はあなた方の敵にはなりませんよ。男鹿の敵にならない限りは」
「……一応は信用しよう」
バリバリ警戒してるじゃないですか。
言葉だけだ。
ずっとこっち睨んでいるな。
「それより、男鹿のやつ追わないんでいいんですか?そろそろ決壊するんじゃないですか」
「……フンっ」
そういってヒルダは窓から出ていった。
「ラピス、よく我慢したな」
『……ご命令ですから』
「ちょっと乾燥してくれないか。家全体を」
『畏まりました』
「雑用を任せたみたいですまんな」
『主様が我々の存在理由なのです。そんな事は言わないでください』
「後で好きな食べ物作るよ」
『では、和菓子を食べたいです』
「材料は男鹿の家の使うか。ラピスの仕事料金として」
あんこやら何かいろいろ使って和菓子を作っていたが小腹が空いたから更に主食を作っていたら、男鹿の両親が帰ってきた。
「古市くん…何やっての?」
「男鹿に小腹空いたから料理を作れっていわれたから作ったんですけどついでにお疲れでしょうから夕飯を作りましたけど、迷惑でしたか」
「え!たかちんの料理!?やったー」
男鹿の両親の後ろからみさきさんが顔を出した。
「じゃあ俺も夕飯なんで帰ります」
「えー!たかちんも食べていきなよ。美味しいよ」
「味見して作ったの俺なんですから美味しいのは知ってます。大人しく帰りますよ。あ、あと冷蔵庫に羊羹入っているので良かったら食べてください」
そういって俺は男鹿宅を出て家に帰った。
「ラピス、羊羹美味しい?」
『主様の作った料理は最高です』
それはよかった。
俺はゆっくり空を眺めながら帰路に向かった。