諫冬ちゃんに説明をしている内になんとか睨んでいた理由も解消できた。
よかった、この頃はそれだけが気がかりだったんだ。
助けた時のお礼を言いたかったのとあの時よりも戦えるようになったので安心してくださいということだったらしい。
屋上に来たのも
これからの事も説明出来たし、ゆっくりと次の戦いに備えられる。
あと、年上だったんだ……
まあ、確かに邦枝先輩と顔馴染みらしいし、当然ちゃ、当然か。
本人からこれからも諫冬ちゃんで呼んでほしいとの事なので呼び続ける。
光星はこれから修行に入る。
修行せずに帝毛工業という弱小校を纏める事に費やして貰ったのだ。
アレの力を制御する為に鈍りを解消する為にも修行は必要だ。
次の日からもう学校なんて疲れるが…まあ、日本ってそんなもんか。
俺は一直線に屋上に向かう。
「なんや君えらいタイミングやなぁ……君もやる気かいな?」
屋上の柵に1人の男子生徒が寄りかかっている。
「俺は見届け人です。いつの時も必要でしょ、そういうの。2人も来たみたいですし」
後ろを見ると男鹿と東条先輩が来ていた。
寄りかかっている生徒は聖石矢魔生徒会長、出馬。
3人の勝負は終わっていない。
俺はそれを通り越し、屋上入口まで行き、そこから3人を眺める。
3人がにじり寄る。
いざ、喧嘩が始まる。
その瞬間っ…
出馬会長の寄りかかっている柵に1人の男が着地する。
「よう、お前ら。ホームルームの時間だぞ」
脳が正常に反応する前に3人は一撃ずつ、謎の男に殴られ、吹っ飛ばされる。
流石に3人が吹っ飛ばされるのを見ると若干引くな。
三木もいつのまにやら屋上に来ていて、口を開けていた。
「よいしょっと……お前ら運ぶの手伝え」
「あっ…貴方は何者です!?この3人を軽々とのすなんて!!」
「三木、今は運ぶのが先だろ。教室か保健室かは分からんが」
とりあえず三木は黙り、出馬会長を背負う。
インパクト重視なのか後の2人は謎の男が背負う。
俺はそれについて行く形になった。
その後教室で新しい担任になった早乙女禅十郎という事を謎の男は言った。
後の詳しい説明は無し。
ホームルームごはさどこかに消えてしまった。
俺も飲み物を買いに行ったので分からん。
ここぐらいだよピクニックのヨーグルト味あるの。
飲み物を買っていると俺の隠蔽魔術が破壊された。
それと同時に圧迫するような魔力が学園中にほとばしった。
完全に直せば早乙女禅十郎も動かないと予想したがそうならなかったらしい。
明らかに何者かによって手を加えられたのを確認したらしい。
そういう真似したら破壊するように仕掛けていたとはいえ、これで完全にバレたな。
後は俺がやったということをバレないようにすればまだ大丈夫だろう。
「古市くん!男鹿は!?というか感じなかったのか?あの圧迫感……」
「ああ……あの体育館からのだろう。差し詰め、あの謎の男じゃないか?他に何かしそうな奴は思いつかん」
「体育館か……古市くん!僕らも「嫌」向かおう!!……へ?」
「そろそろ終わるだろ。俺は教室に帰るよ。教師らしいし、無意味にする事もないだろ」
俺は三木に背を向け、教室に帰っていく。
後は体育館裏だけだからな。
荷物を取りに行かねば…
体育館裏。
邦枝先輩と男鹿が向かい合い、真剣な面構えでこちらを見ている。
俺はその光景を隠れみている。
告白か!
告白なのか!
いや、違ったな。
ベル坊について聞いてるな。
それを告白する(男鹿が)なら告白も間違いじゃないか。
しかし、男鹿は馬鹿だぞ。
説明なんてできるはずが……
「だぁあっ!!面倒くせぇ!!ベル坊っ!!お前、自分で答えろ!!!」
「ニョ!?」
ほらみろ。
ベル坊にぶん投げているじゃねぇか。
ベル坊もびっくりしてニョ!?っとか言ってるし。
つーか喋れんだろ。
「ダ」
「ダ……?」
「だ」
「ダ」
「ダ…?」
そして静寂が訪れた。
「″ダ″じゃねえぇぇーっ!!」
「いいところに古市!こいつの名前なんだっけ?」
「そこから!?お前親のくせに名前忘れてんじゃねーよ!!!もう、邦枝先輩だめですよ、こいつに聞いちゃ!放っておいたらそいつらどこまでもカオスなんですから!!」
「貴方も知ってるの?」
こんな空気の中未だにシリアスに持ってこうとするのは尊敬します。
「もちろん!!何度巻き込まれたことか……ベル坊の本名はカイゼル・デ・エンペラーナ・ベルゼバブ4世。正真正銘の王子です」
「えっ?王子…様?」
「そうです。ヒルダさんは侍女で男鹿は日本での親代わりとして代わりに子育てしているんです」
大事な部分は隠しつつ、真実を伝えた。
これならきちんと説明して、問題は無いはずだ。
「おお!それだ、古市!!お前よく覚えてたな」
「逆に親のお前がなんで忘れてんだよ」
「ど、ど忘れだ!だって、こいつのフルネームなんて1話目でしか出てこねーから忘れちったんだよ!!」
こら!
1話目とかメタい事言うな!
お前の中では1話目かも知れないが今作では2話目なんだぞ!!
いかん……俺も混乱している。
「ア"ーーーッ!!!」
忘れたと男鹿が言うから泣きながらベル坊が逃げてしまった。
「よしよし、ダメよぉ?大魔王の息子が簡単に泣いたりしちゃ……」
ここにいる人、誰1人気づかなかった。
その人はベル坊を抱き抱え、こちらを見る。
足跡もない。
まるでそこにいきなり現れたかのようにその女性はこちらを見ている。
その見た目はヒルダさんに似ているが…
「誰だ……お前は…?」
「あら、てっきり私とあの下衆女を見間違えるかと思ったけれど……案外見る目があるのね。けれど、
………死んでもらえるかしら?」
バックステップをして、俺は男鹿の後ろまで下がる。
「あら、勘のいいこと……」
ズドオォン!!!!!
上から何かが落ちてきた。
砂ホコリが舞い、そこには1人の女性がいた。
ヒルダさんだ。
「ヨルダ、何故貴様がここにいる……」
「あらぁ……なにも聞いてないの?かわいそう……」
「坊っちゃまをつれて下がっていろ、男鹿。こいつの目的は私だ」
「あらあらあら〜つれなぁ〜〜〜い。数年ぶりの再会だっていうのに……もうお別れ?」
ヒルダさんは仕込み傘の剣を構え、ヒルダさんによく似た女性はモップを構える。
「おやめなさいっ!!!」
そんな一触即発の状況に声が響く。
そこにはヒルダさんとヨルダと呼ばれた女性と同じく侍女服を着た女性2人が立っていた。
「勝手な行動は慎みなさい。貴方とヒルデガルダの因縁は存じてますが今はその時ではありません」
「でもでもイザベラ〜」
「そうだぜ!慎めヨルダ!!」
「サテュラは黙っていなさいよ」
「何ぃ〜〜っ!!」
イザベラと呼ばれた女性は眼鏡に赤毛を左に寄せ、結っている。
その手には不気味な本が1冊。
逆にサテュラと呼ばれた女性はなにも持っておらず、他の2人よりも露出が多い服を着ている。
「よい。3人とも下がっておれ……」
いきなりキャラが増えて混乱しそうなのに更にもう1人声がした。
次は女性の声ではない。
寧ろ幼い子どもの声だ。
「久しぶりじゃ……弟よ」