銀色の契約者   作:飛翔するシカバネ

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二十一将 友人と魔二津

俺は今魔二津に来ている。

 

 

これは前回言っていた修行の為だ。

修行のはずだった。

 

修行の為に駅に向かったら金を持っていない男鹿にたかられ一緒に向かうことになった。

 

金が無かったらどうやって向かう気だったのか聞いたら自転車で行くとかいいだしたのだ。

 

何故魔二津に行くのか、それは。

ベル坊の虫嫌いの特訓のようだ。

 

まさかこれに巻き込まれるとは思いにもよらなかった。

 

 

蜂蜜とロープを持ってどっか行った男鹿をよそに俺は飲み物を買いに言っていた。

男鹿の分も買わないと駄々をこねるから一番安く、美味しいのか分からないものを買っていく。

 

男鹿が落下して人にぶつかっていた。

 

「いや、一先ず謝れよ」

 

「あ、古市。飲みもんか、俺にも寄越せ」

 

結局謝らないのかよ。

俺は先ほど買った飲み物を投げ渡す。

 

 

ゴクゴクゴク…………マズッ!

 

やっぱり美味しくなかったか。

よく全部飲んでから感想いうんだろ。

 

「すみませんね、こいつアホですから。ケガとかしてないすか?」

 

血とか出ていないな。

 

………てゆーかもしかして俺って邪魔?

 

「俺、邪魔ならどっか行きま「一緒に居て!お願いだから」…yes」

 

 

 

 

 

 

「特訓?」

 

ところかわって駅前のアイス屋。

何故俺が男鹿の分も払うかはもう、説明の必要が無い。

 

 

「ああ、こいつ虫が苦手でよ。情ねえから鍛え直しに来たわけよ」

 

「ふ、ふーーん」

 

やっぱり俺邪魔じゃね。

 

「れ?そういやお前、名前なんだっけ?」

 

「名前も知らない相手にそんな馴れ馴れしい態度とってたのかお前は」

 

俺は男鹿の頭を叩く。

 

「だってよー」

 

「だってもクソもあるか!」

 

「葵!何をしておるか!!」

 

俺ら以外の声が聞こえた。

 

「全くお前は…こんな所で道草をくいおって……む?」

 

「あおい?」

 

「くにえっ!!青井くにえってゆーの!!」

 

結局誤魔化すのか。

別にいーけど、それだと男鹿は苦労するぜ。

 

「こちらは?」

 

「おじーちゃん紹介するね。この間知り合った、えーと……」

 

「男鹿ッス」

 

「その友人の古市です」

 

「ほう、同じ町内の方ですか。失礼だが葵とはどーいう関係で?」

 

「あん?」

 

「俺は友人の友人で知人位ですかね」

 

「こ……子育て仲間よ。変な風に聞かないでよ!」

 

俺はスルーですか、そうですか。

別に俺は別件でここに来たからいいけどね。

 

俺は溶けかかっているアイスを食べ切る。

 

 

「ほうほう、なるほど。そーかそーか。ほい、握手握手」

 

じーさんが男鹿と握手する。

 

その瞬間男鹿は投げられ、地に倒れてしまう。

 

「な……なにしやがる!クソじじい!!」

 

「特訓に来たんじゃろ?わしが少しもんで…あいたっ」

 

「じーさん!いきなり投げたら手にもってるソフトクリーム落とすのは当たり前でしょーが!!食べ終わってから若しくは置いてからそういう事はやりまさい!!!」

 

食べ物を無駄にするのはご年配だろうが子どもだろうが俺は怒るぞ。

ましてや、そのソフトクリームは俺の金で買ったやつだぞ!

 

「わしの背後を簡単にとり、更に頭を叩いてくるとはなかなかの童じゃな。一先ずは合格点じゃな。……ん?お前さんの顔、どっかで見た気が……」

 

「そういうのいいから!あーあソフトクリームまだ全然残ってんじゃん」

 

俺はソフトクリームを片してベンチに座りこむ。

一緒に背負っていたリュックを地面に下ろす。

クソっ……超重いな。

アイツこれで力貸さなかったらただじゃおかねえ。

 

俺はじーさんに向き直す。

 

「だいたい相手は俺じゃなくて男鹿だろう。俺は座ってるから」

 

「それもそうじゃな。小僧、突っ立ってないでかかってきなさい」

 

「二人ともやめて!にらみ合わないの!おじいちゃんもそうやって男の人見る度ちょっかい出すのやめてよね」

 

悲劇のヒロインみたいな事を言う邦枝さん。

 

「フンッ、何を言うか。わしゃ、お前に相応しい男かどうか試しとるだけじゃ。お前より弱い奴は殺す」

 

「だからそーゆーんじゃ無いってば!あなたも相手にする事ないからね!!」

 

「別にじじいをいたぶる趣味はねーけど、やられっぱしってのもなぁ……」

 

「安心せい、いたぶる趣味はわしもないよ」

 

 

ピキっ

 

 

「上等だこのやろーっ!!後で吠えづらかいても知らねーからな!!アホアホッバーカ!!」

 

「いいからこんかい」

 

子どもかっ!

もう既に負けフラグだぞ、それは。

 

 

体をバネにしてじーさんに飛びかかる。

しかし、腕を取られてまたもやひっくり返される。

今度は男鹿もやられずに受けをとり、果敢にじーさんに攻撃をするが簡単によける。

 

そのまま後ろをとられてしまう。

 

「力の使い方を教えてやろう」

 

「おじいちゃん!まって……」

 

 

心月流 無刀 【撫子】

 

 

地面にヒビが入るほど男鹿が押し付けられる。

男鹿は動けずに地に伏せる。

 

「見込みはあるがその程度では葵はやれんのう。出直して参れ……してそこの悪タレ共はどうした?」

 

じーさんが俺の方をみる。

 

俺の座っているベンチの横には不良3人組が倒れ込み一つの山となっている。

じーさんの小包を盗もうとしていたのでボコボコにして置いといただけだ。

 

「やはり、貴様強いの。どうじゃ、次はお主が相手するかの?」

 

「ノーサンキュー。それより男鹿と再戦して下さい。男鹿!寝てないで早く立ちなよ。今、凄くだらしないぞ」

 

「かなり強めにやったからの。そう簡単に起きん「うっせーぞ、古市」…!?」

 

倒れていた男鹿がゆるりと立ち上がる。

 

「じじい!もう一回戦え!!」

 

「ほう、立ち上がるか。よかろう。来なさい」

 

また手合わせが始まる。

(ケンカだがじーさんが手加減しているから手合わせでいいだろう)

 

男鹿がまた、適当に攻撃しているように見える。

しかし、わざと避けやすい攻撃をして目でじーさんを追っている。

 

下段への足蹴り。

じーさんは先ほどと同じくジャンプで避ける。

 

そこに男鹿がじーさんに向けて突きをくりだす。

無駄な要素が無い、体の体重を上手く使った突きだ。

 

しかし、あっさりじーさんに受け止められてしまう。

じーさん自身は少し驚いている表情だが。

 

「なかなかの突きじゃな。まあ、及第点かの」

 

じーさんは手合わせを止め、ベンチの横には置いておいた小包をとり、寺へと向かう。

 

「おい、じーさん!逃げんのか!!」

 

ピタリと足を止める。

 

「男鹿とか言ったな。憶えておこう。強くなりたければいつでも家に来なさい」

 

「あ?……いや、勝負………」

 

そのままじーさんは歩いて行ってしまった。

 

「また今度って事だろ。なんか用があったっぽいしな。お前も特訓の最中じゃなかったのか?」

 

「お!そういえば……ベル坊!特訓再開だ!!今度は違う感じで行くぞ!」

 

「アーーー!!!」

 

「がんばれよ〜俺も用があるからじゃーな」

 

 

泣いてるベル坊を連れ、男鹿は走り去っていった。

 

さて、俺も向かうか。

置いてあったリュックを背負い俺は山の方に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は奥の院の更に奥にある祠に来ている。

ここは寺の関係者、更に重要人物しかこれないが俺は黙ってここに侵入した。

ここには天狗が住んでいるといわれている。

俺は正体をしっているが。

 

このクソ重たいリュックもそいつの為のものだ。

 

 

「おい!コマ!!持ってきたぞ。さっさと出てこい!」

 

『なんや……誰か来たかと思うたら男かいな。儂は諫冬以外の誰にも会わんと伝えたはずやで』

 

「馬鹿いってんじゃねえぞ!舐めたこと言ってっとこれ全部燃やすぞ!この……夏特編水着美女集!!!」

 

そういって俺はリュックの中からグラビア誌を取り出した。

 

そう、このリュックに入っているものは全てグラビア誌。

コマに頼まれて買ってきたものだ。

凄く重たいのもこれが原因だ。

 

 

「諫冬ちゃんじゃ買えないからって俺に買わせてきやがって……それで知らんぷりとはいい度胸じゃねーか。御堂事全て燃やしたかろうか」

 

「わーっ!堪忍やタカやん!堪忍したってや!!」

 

中から狛犬をディフォルメした生物が出てくる。

 

これが天狗の正体の狛犬のコマちゃんだ。

 

天の狗と書いて天狗だからあながち間違いでもないのだがいささか拍子抜けだろう。

 

「これでいいだろ」

 

「分かっとる分かっとる。いつか来る邦枝葵ちゅー女に無条件で力を貸せって話やろ」

 

「諫冬ちゃんにもとセクハラ行為を控えろって条件だろう。その条件で大量に金こっち持ちでグラビア誌しこたま買ってきてんだろ」

 

「セクハラ行為やめろって言わへんのタカやんの譲歩やもんな」

 

「それは無理だと把握しているからな。じゃあ、俺は帰るからな。上級悪魔相手でも太刀打ち出来るように少しは鍛えとけよ」

 

「はいなー!タカやんまた頼みますわ。次は秋、冬の行事系と制服系よろしゅうなー!」

 

「わーったよ」

 

 

 

さて、用事も済んだ事だし帰るか。

 

 

 

 

 


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