「いなくなった?」
次の日、男鹿の家に行くと男鹿が清々した顔をしていた。
いや、この顔は心配してる顔だな。
自分でも気づいていないみたいだしな。
「たつみーーーっ!!!」
美咲さんの飛び蹴りが男鹿にクリームヒットする。
漫画でもoutな音を出しながら男鹿がボコボコにされていく。
絵も見せられないよ!って感じだ。
男鹿と俺が外に放り投げられる。
「いいっ!?ちゃんと探して連れてくるまで家には入れないからね!!」
「せっかく手に入れた自由だってのに誰がわざわざ探すかってーの。それにしてもあっちーな、川原にでも行くか」
男鹿は気づいているのか、いないのか分からないが川原というとべる坊を拾った場所じゃないか。
変な感じだが数ヶ月で男鹿の信頼を得るなんて……な。
「おーい、はやく来いよ」
「わーってるよ」
「よっ」
川原につくとサングラスかけた男がいた。
名前なんだっけ?思い出せない。
「東条さーん、男鹿来ましたよー」
草陰に話しかけると、返事が帰ってくる。
「おー今行く。……ほーうなるほど、お前が男鹿か………思ったより細いな
ケンカ、しようぜ」
その男の肩にはべる坊がいた。
男鹿のやつ、かなりムカついてるな。
だが、状況的には願ったり叶ったりだから凄く混乱して焦っている。
家に帰ると言いながら川に入っていく。
「おい、男鹿。焦るのも分かるが一先ず確認しろよ」
「別に焦ってねーよ」
「素で川が家とか言いだす友人なんか俺は嫌だぞ。………東条先輩!一つ聞きたいんですが、その赤ん坊はどうしたんですか!?」
「あぁ……こいつか?………そうだな、俺に勝ったら教えてやるよ」
ですよね。
結局ケンカするんだよな。
東条が手下その1にベル坊を預ける。
そして男鹿と向かい合う。
「ふふっ、いいね。目でわかるぜ。お前も俺と同じただのケンカ好きだ。自分の本気を試したくてウズウズしてんだろう?だが、周りには弱いヤツばっかで全力を受け止めてくれるやつなんてそういねえ」
「俺がそうだ。どっからでもかかってこい」
「………ふざけたやろーだ」
男鹿……悔しいだろうがここは負けないといけない。
ここらで自分並みに強いヤツと戦わないと強くなれない。
お前が負ける姿は俺も見たくは無いけどな。
「……いくぜ」
その言葉で二人が同時に殴りかかる。
男鹿が押し負け、川まで飛ばされる。
ここで終わるのは雑魚だけ。
男鹿は直ぐに立ち上がる。
そして殴り合う時と同じように二人が向き合う。
「いいね、もう一回やろうってか」
今度はなんの合図も無しに二人が同時に殴る。
「……らぁっっっ!!!」
今度は東条が押し負ける。
東条の巨体も吹っ飛ばされる。
しかし東条も何もなかったかのように立ち上がる。
「面白くなってきやがった。……なぁ、お前もそうなんだろ?いい気分だ。続きをやろうぜ」
そしてまた、向き合う二人。
これはもう、ケンカよりただの殴りっこだ。
また、二人が同時に殴る。
今回は吹き飛ばず、すぐさま東条がもう一度殴りかかる。
それは男鹿がガードして、ワンテンポ遅れて男鹿が殴りかかる。
しかし、簡単に東条に手をつかまれる。
そして同時に頭突きをかます。
「フッ…男鹿っつったか……お前、下の名は?」
「あ?辰巳だ、ボケ」
「……そうか……礼を言うぜ、男鹿辰巳……」
その瞬間男鹿が後ろに遠のく。
「そうそう、そこのガキな。ありゃ俺のじゃねーぜ。昨日拾っただけだ。なんだか知らねーが迷子でな、仕方ねーから親が見つかるまで面倒みよーって訳だ。……まさかお前が親ってわけじゃねーだろーな」
「そんな事聞いてねー………聞ーてねーって……
いってんだろっっ!!!」
男鹿が東条に殴りかかる
そこから男鹿がラッシュしていく。
肩襟を掴み、破る。
そこには男鹿から消えた
そしてその一瞬に気をとられ、男鹿が油断してしまった。
「礼をいうぜ……お前のお陰で少し本気を出せそうだ
いくぞ」
東条が言葉を発した後、男鹿の視界は逆さまになる。
俺のいる場所から更に後から飛ばされ、川に落ちた。
手下その1が言っていたがギャグマンガみたいに吹っ飛んだと言ったがまさにその通りだ。
これで悪魔の力が無いから化け物だよな。
「なあ、そこのお前。あいつに伝えときな、楽しかったぜってな」
「いいっすけど、俺も男鹿の代わりに伝えていいすか?」
「ん?」
「俺はまだ、負けてねー。勝負の途中だボケって」
「………」
「男鹿ならそう言うと思うんで宜しくお願いします。……それじゃ俺は男鹿拾ってこなきゃいけないんでさよならです」
俺は男鹿が落ちた方に走っていく。
「大丈夫か?男鹿」
男鹿は気を失っていたようで少し流されていた。
口には魚が生きたまま入ってピッチピッチいってる。
「くそっ!!」
「男鹿……この後どうすんの?東条のやつは帰ったけど。東条のやつを追いかける?」
「帰る。体がクセーからシャワーを浴びる」
「分かった、俺はちょっと用事が出来たから。あ……そうだ。男鹿!東条から伝言」
「ああ?」
「楽しかったぜって」
男鹿は無言のまま川から上がり、自宅の方に歩いていく。
「じゃあ、俺も用事をすませるか。私用だけど」