善くん視点です
お互い同時に戦闘態勢を取り、相手の攻撃に備える――いや、すぐに向こうから来た!
――
「むっ!」
残像が出来るほどの速度で放たれる拳の突き!これはたしかスキルではなく、彼が本来持っている技術だったはず。
直撃したら相当なダメージを受けるだろう。
すぐにボウガンを瀬能に向けて迎撃に移る――ように見せて”未来視”を発動する。
すると触れる直前で私の背後に移動している姿が見えた。
――陽炎・改!
「むんっ!」
瀬能は背後に回ったところで、大きく腕を振りかぶる。
その腕の、肘付近から拳まで唐突に、先ほどのヘリオスを彷彿とさせるトゲが生えた。
「針千本!」
トゲ付きの拳を振り下ろす。
…事前に見て知っていても、困惑して止まりそうな行動をするな。
「守護の杖!」
防御力アップのスキルを使い、尚且つ攻撃を武器で受ける。
未来視によれば次は蹴り上げが来るので、最近覚えた近接スキルで対応する。
「ディセバーメント!」
「
ガギィィンッ!!
身体ごと横に回転して放った私の攻撃と、縦方向で繰り出された瀬能の蹴りがぶつかり合い、もの凄い斬撃音が辺りに響き渡った。
図らずも互いに似たようなスキルを使ってしまったな。
「ちぃ!!」
蹴りが決まらなかった事を知って、瀬能は攻撃に使ったのと逆の足で私のボウガンを蹴り、その反動で距離を取る――が、すぐに宙返りをして着地し、風のスキルで攻撃してくる。
「メメントモーリ!」
新技をこうも連続して撃てるとは、さすが瀬能。大したものだ。
しかし事前に攻撃方と撃つ場所が分かれば―――!
ドカッ!「ッ!?」
いきなり全身に衝撃が走り、身体が強制的にのけ反らされた!
ダメージはさほどないが、どのように攻撃されたのか検討もつかない。ヘリオスがやったのか?
ドカッ!「くっ!」
またしても!謎の衝撃とともに後ろに下がらされる。
なんだ?なにが起きている?思わずヘリオスの方に視線を向けるが、困惑した様子が見て取れた。
ならばやはり瀬能が…っ!
――黒の衝撃!
ドカッ!「ぐぅっ!」
三度目の衝撃が私を襲う。
それに加えて瀬能が迫ってきている。
最早疑いようがないだろう。この謎の衝撃は彼が発生させている!
しかしそれが分かったところで、攻撃を止める事は出来ない。
「オラァッ!!」
無理矢理下がらされて出来た距離を強引に詰めて、その勢いのまま掌の風球を突き出してくる。
『スケアスロウ!』
しかし突然に、その攻撃が勢いを無くしていく。
いや攻撃だけではない、瀬能の速度自体が水中を移動しているかのように遅くなっていく。
「「っ!?」」
『スクンダ!』
瀬能の身体に一瞬霧の渦のようなものがまとわり付き、直ぐに霧散する。
これはステータスを下げる魔法がかかった時に見られる効果…どうやらポルターガイストが私の指示なしでスキルを使ったようだ。速度が落ちたのも彼の仕業だろう。
「仲間というのはいいものだな!」
叫びながらボウガンを向けてスキルを放つ。
――
ボウガン本体から発射された矢は瞬時に五本に分裂して、瀬能に襲いかかる。
速度、それに回避と命中率を下げられた今、この攻撃は躱せないだろう!
「ああ、本当にそう思うよ」
――シャドウラン!
目の前を黒い、影のようなものが横切った。
それが消えた時には瀬能の姿は無く、ただ何もない空間を矢が通り過ぎていく。
そして少し離れた場所にズザザーーッッ!と音と砂埃が上がる。
見ればそこには、瀬能を抱えたヘリオスの姿が。
「助けてもらってなんだけどお姫様抱っこはどうかと思うんだ」
『そうか?』
「そうだよ。人生で二度もされるとは思わなかったよ。早くおろして」
ぶつぶつと文句を言う男をヘリオスがゆっくり地面に立たせる。
毛だらけのその手が完全にサムライ隊士服から離れた後、すぐに彼の背後に回りコートの背中部分に手を当てて、スキルを使う。
『クロズディ!』
「むっ、」
パリン、と陶器でも割れるような音がした。
『速封じ状態はこれで解除出来たぞ。ただし命中率と回避率は下がったままだから気をつけることだ』
「ありがとう…以外と多才だなお前」
ぐるぐると首や肩を回して自分の様子を確かめながら、瀬能はヘリオスと会話を続ける。
『それで、どうするのだ?いい勝負はしていたが決着はつけられなさそうに見えたぞ』
「俺もそう思った。善くんつえーや」
強いか…喜ばしくはあるが、正直なところ複雑だ。
全ての攻撃を先読みしているにもかかわらず攻めきる事が出来なかったのだからな。
『こうして休憩を挟みながら攻めるを繰り返しても埒があかないぞ。こちらがそうであるようにゼンもMPを回復していくのだから』
「
言葉を発している最中に瀬能の顔が何かに気づいたように強張る。
そしてなぜかすぐに、悲しげな表情へと変わった。
「…善くん、残念だけどこの戦いもそろそろ終わりになるようだ」
「…そうなのか?」
「ああ」
「お前に勝つ策を思い付いた」
直前まで浮かべていたものと違い、強い意志の込められた眼差しが真っ直ぐに向けられる。
「私に勝つ策…?瀬能、
「疑うなら試してみるか?」
両腕でバツ印を作り、いつでも飛び出せるように僅かに膝を曲げた体勢で、こちらを挑発してくる。
「…いいだろう、受けて立つ!」
近接と遠距離。両方に対応できるように武器を構えて、威勢よく言い放つ。
本来私はこのような事を言ったりする人間ではない。
今日は、今この時だけは彼と真正面から向き合い、そして乗り越える!
「よく言った!喰らえ!!」
―――次の瞬間、全てが真っ白になった。
■針千本
使用者(ナツル)の肉体の好きな場所から棘を生やす技。ヘリオスの九十九針のナツル版。
FF5の青魔法
■ディセバーメント
斬属性を持つ高速の蹴り。脚の振りで斬撃が発生する(ワンピー◯の嵐脚のイメージ。ただしこちらのは斬撃が空中を飛ぶ事はない)FF11の青魔法。
ディセバーとは切り離す、分離すると言った動詞(らしい)
■メメントモーリ
死中活拳(龍◯ごとく見参) + エアロガ の複合技。バク宙で後方に跳んだ後、すぐに掌に風の球を発生させて反撃する。
FF11の青魔法。メメントモーリとは「死を忘れるな」という意味。
■黒の衝撃
明確な意思を持って睨みつける事で相手に衝撃を与える技。ダメージはほとんど無いが食らうと強制的にノックバックされる。
FF5の青魔法。ドラゴ◯ボールで一時期悟空とかが使ってた気合砲みたいな感じ。
■スケアスロウ
ペルソナQのスキル。敵1体を速封じ状態(身体の動きがスローモーションになる)にする。
■スクンダ
ペルソナシリーズのスキル。敵1体の命中率と回避率を低下させる。
■シャドウラン
ペルソナQのスキル。超高速で駆け回る。
あまりに速すぎて姿を捉えられず、黒い影しか見えない。
■クロズディ
ペルソナQのスキル。味方1体の封じを治療する。
■回刃(かいじん)
独楽(こま)のように横方向に一回転して、その勢いで近くの敵に斬属性のダメージを与える。慣れると複数回斬りつける事が出来る。
トロフィー獲得!
(金):これぞ千年戦争