けんぷファーt!   作:nick

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遅れて申し訳ないです。



第80話 宿命⑤

 

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唐突だが瀬能ナツルは喧嘩が好きではない。

 

 

何故なら一目で相手が自分より格下だと分かってしまうからだ。

刃物(ナイフ)を持っていようと、凶器(鉄パイプ)を持っていようと、自分の方が圧倒的に強いことが直感的に理解できる。

 

その時点で『喧嘩』は『火の粉を払う』行為に変わる。

その性格や言動故に、粗野で暴力的なイメージを持たれる彼だが、理由なく他人に手を上げたことはない。

瀬能ナツルにとって『理由のない暴力 = 弱い者イジメ』であり、その行為はクズにも劣るゴミの所業。やってはいけない行いなのだ。

 

それでも売られればすぐに喧嘩を買ってしまうのは、その才能故である。

 

他者を圧倒する身体能力。実物でも映像でも、一度見ただけで完璧に再現できる高度な技術力。

実現が困難…ほぼ不可能な空想上(マンガ)の技を迷わず使用する姿は、どんなメンタルが強い人物でも畏怖の対象にするほどだった。

 

しかし誰よりも瀬能ナツルを恐れたのは、他でもない彼自身であった。

 

成長するにつれて伸びていく身長。更に強くなる握力や筋力といった力。

 

そしてある日気づいた、自分の中に存在するある欲求(ソレ)

闘争を欲し、血を求める、飢えた野獣のような欲望。

それは彼の才能自身であり、切っても切り離せないもの。抑えられない無意識な衝動。

 

その才能にいち早く気づいた武道家でありナツルの祖父でもある瀬能鉄心は、半ば強制的に武術を教えることにした。

 

抑えることができないなら、せめて手加減が出来るように、きちんとした知識を身につけさせたのだ。

あわよくば武道に目覚め、その力を正しいことに使ってくれたらと淡い期待を込めながら…

 

 

古武術 空手 柔術 合気 関節技 布槍術…

 

刀 短剣 棒 槍 杖 斧 槌…

 

人体の構造から銃の仕組みまで、常人なら必要としない知識を、真綿が水を吸うように吸収して身につけていった。

 

 

あることがきっかけで武道自体は辞めてしまったが、その身につけたものは、精神も含めて全て残っている。

 

故に、瀬能ナツルは喧嘩が好きではない。

 

 

 

しかし、競い合うことは人並みに…いや人並みに以上に、好きだ。

 

 

 

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「く、く、くはっ」

 

なんとか口の形を戻そうと手で押さえつけるものの、自然と作られる笑みを止められない。

自分の体温がまた1〜2℃上がった気がする。人体発火現象とか起きたらどうしよう?

 

湧き上がってくる闘志。気分は高揚していて、抑えていないと今にも歌い踊り出しそうだ。正直自分にこんな戦闘狂みたいな一面があったことに困惑している。(周りに気持ち悪いとか思われてないよね?)

 

 

『不覚…』

 

先程リング上を転がされたヘリオスが多少フラつきながら戻ってきた。

 

「おう、おかえり。大丈夫か?」

『HPは減らされたが、問題は無い。…笑ってもいいぞ』

「今のはしょうがねえ。狙いもタイミングもよかった。あれで弾かれるんなら俺でも無理だ」

 

攻撃が当たる直前で物理反射とか、事前に知ってなかったら避けることもできねえよ。知っててもギリギリだろうけど。

 

 

『………』

「どうした?そんな見つめて」

『いや…』

 

 

(てっきりm9(^Д^)(とてもむかつくかお)の高笑いでもされると思っていたのだが…今回のナツルはいつもと違っていて調子が狂う…)

 

 

なんか様子が変だな。試合中なのに悩み事か?

 

まぁ出番が来たら動いてくれる奴だから大丈夫だろう。

 

「ドラゴンフォース」

 

拳を構えて肉体強化(パフ)をかけ直す。

 

これローコストで使いやすくはあるんだけど効果時間短くないか?30秒くらい?

いや、かけてもらったこと無いから長い短いは正確には分からないんだけどさ。

 

まぁ…30秒あれば、相手に近づくくらい余裕だけどね。

 

 

――プラズマチャージ!

 

 

「シィッ!!」

 

身体中から紫電を迸らせ、ショルダータックルの体勢で善くんに突進する。

 

破岩(はがん)!」

 

いきなりの速攻にも善くんは特に動揺した様子もなく――むしろ当然といった表情――で矢を放ってきた。

 

矢はボウガンから射出された瞬間――矢じりの部分が大きく膨らみ、拳大の分銅のような形に変形する。

 

今まで見たことのない攻撃方法だ。新技?

 

「怪力一掃!!」

 

迫ってくる矢に向けて、片腕を開きスキルを放つ。

 

 

初見の攻撃に対してスムーズに反撃しているけど、驚いてないわけじゃない。

たまに俺の身体は本体の意思を無視して勝手に動く事がある。今回もそのクチだろう。

 

ていうか怪力一掃(コレ)、内から外への腕の振りでも発動できたのか。ラリアットでしか出来ないと思ってた。

 

 

ゴウッ!!

 

 

居合抜きのように鋭く放たれた衝撃波が善くんの矢に真っ直ぐ飛んでいき、そのままぶつかる。

なにかが爆発するような破壊音と煙幕が発生し、直後に爆風が襲いかかる。

 

思わず立ち止まって、両腕で顔をかばう。被害(ダメージ)はないから、上手く威力を相殺できたようだ。

 

しかし今のやり取りで二つの技の効力が切れてしまった。

 

もう一度使うにしても、二ついっぺんには使えないから一つづつやるしかない。

でもそれはたかだか数秒とはいえ時間がかかる。その隙を見逃してくれるほどまろやか…甘優しい奴じゃない。

 

なら――

 

「アクアブレス!」

 

 

素早く合わせ、勢いよく両手を広げると、無数の泡が空中に舞った。

手のひらから出現した泡は、そのまま前方へと飛んでいく。

 

このシャボン玉のような泡には破壊力がない。

 

何かに接触すると大きな破裂音とフラッシュが発生して、相手を怯ませるのだ。

速度もふわふわと遅いから、たとえ操作されても避けられる。目くらましには最適だね!

 

 

旋風(せんぷう)!」

 

 

突如、突風が顔に叩きつけられた。

 

「ぷあっ!?」

 

パァンパパンパァンパァンパァンッッ!!

 

さらに風に流されてシャボン玉も飛んでくる。

いくつもの泡が連続して弾け、音と光が容赦なく俺を攻め立てる。

うっさ眩しい!

 

 

ゾク……

 

 

不意に、悪寒が走った。

長年そういうこと(・・・・・・)を繰り返し体験してきたからわかる。これは…見えない所から攻撃される予兆!

 

 

「ぬぅんっ!!」

 

――マイティガード

 

 

両腕に魔力を込めて回し受けを行えば、キンキンッと金属音と矢を弾く感触がした。

視界の効かない相手に二連射って、善くん容赦ねぇな。同じ立場なら俺も迷わずやるけど。

 

五雨(さみだれ)

「!?」

 

一難を乗り越えて無意識に一息ついた瞬間、真横から声がかけられる。

慌ててそちらを見れば、お供を引き連れた善くんがボウガン二丁を構えてる姿が目に映る。

 

そのボウガンから矢が発射され――1・2・3・4…って何本撃つ気だよ、善くんマジ容赦ねえ!

 

こっちは技後硬直で動けねえんだぞ!

 

『エナジーシャワー!!』

「お?」

 

迫りくる矢の群れと俺の間に黒い塊が割り込んだ。

 

ヘリオスが両腕を、なにかを持ち上げるように高く掲げると、それに合わせるように虹色の光のようなエネルギー波が地面から天に向かって噴き上げられる。

 

「すごいな。新技か?」

『君のマネだ』

 

えっ、俺そんな歴戦の聖闘士みたいなことしたっけ?

 

「てかそんな簡単に使えるのか?」

『見て適性があれば出来るぞ』

 

しれっと言いやがった。天才かコイツ。

 

………………

 

 

「なあヘリオス。お前、俺の技を初見で使うことできるか?」

『先程の泡の攻撃の事か?適性の関係もあるが、効果が分からないから無理だぞ』

「だよな…」

 

マネもそうだが、一度も見たことも聞いたこともない攻撃は大概当たる。

当然だ、存在すら知らないんだからな。不意打ちを躱せる奴はそうはいない。

 

躱せるだけの実力を持っていたとしても、だ。初見で訳の分からない攻撃されたら、戸惑ったり警戒したりはするだろう。普通は。

 

つまり善くんの行動は異常なんだ。

 

俺の性格をなぜか把握しているとしてもだ、未知の攻撃にああまで的確に対応できるのは流石におかしい。

まるで事前に知っていたかのような…?

 

 

「瀬能。君の攻撃はとても速い」

 

なんの前触れもなく、善くんが口を開く。

 

「それ故に、たとえ数秒しか使えなかったとしてもこのスキルは十分に役に立つ」

 

言い終わるより早く、善くんの瞳が青白い光を帯びたものに変わる。

 

「お前それ…」

「『未来視』。覚えているか?ワイナの街で私が得たスキルだ」

 

覚えてるよ……いや嘘だ。今の今まですっかり忘れていた。

 

たしか―――

 

 

 

「数秒先に起こる出来事… “未来” を見ることが出来る。故に私は最も効率のいい反撃を行えるのだ」

 

 

 

いつも通りの無表情、しかしどこか誇らしげに彼は言いはなった。

 

先に攻撃 → 未来視で先読みされて防がれてしかも手痛い反撃を食らう。

後に攻撃 → 距離が離れているため一方的に攻撃される。動き回っても未来視で先読み。

 

……………

 

 

「いやー……まいりましたね」

 

思わず乾いた笑いが口からこぼれた。

 

なんだよ未来を見るって。ディアボロさんかよチートすぎんだろ。

 

戦闘スタイル・スキル・悪魔。パズルのピース同士がぴたりと合わさったように、特性を最大限に生かして猛威を振るっている。

 

「ここまで」「”ここまで強敵だと笑っちゃいますね”」

 

 

!?

 

 

「私が君にとっての強敵になれたのだとしたら…それは君のお陰だ、瀬能。君が私に強さをくれた。強くなるにはどうするべきか、自らの行いで教えてくれた」

 

「それ故に私の全てを持って君に挑む。それが私にできる、最大の礼だっ!」

 

台詞を言い終わると同時に、構えられた二つのボウガンから複数の矢が放たれる。

 

仲魔ともスキルの効果を共有しているのか、飛んでくる矢を回避しても、避けた方向にまた矢が飛んでくる。鬱陶しい!

 

『全身全霊で戦う事が人間の恩の返し方なのか?』

「そんな極論出すのあいつだけだ!」

 

スキルを当てて攻撃を相殺していると、同じくスキルで矢を迎撃していたヘリオスが質問してきた。

 

真面目を拗らせすぎておかしな感じに落ち着けやがって。無表情キャラってロクな考えしねーな。

 




■ディアボロ
 ジョジョのボス。最近の先読み強キャラといえばカタクリ様だけど、VR世界に入っているナツルくんは微妙に情報が古い。

・プラズマチャージ
 全身から電流を発生させながら短距離を直線的に駆け抜ける。
 前方へ瞬時に突進するスキル・チャージと違って、突進のスピードは使用者のナツル次第(50m5秒台)。FF11の青魔法

・アクアブレス
 両手のひらを合わせて、広げると膜が発生。その膜から無数のシャボン玉のような泡を打ち出す。ぶっちゃけジョジョのシャボンランチャ◯
 攻撃力は無いが、当たると閃光と音で怯ませる事が出来る。FFシリーズの青魔法。

・マイティガード
 両手に魔力(MP)を纏わせて行う回し受け。腕を回す軌跡で目の前に光の壁が出来る。FFシリーズの青魔法。

・旋風
 指定した場所を中心に小規模の竜巻のような風を発生させる。ペルソナQ善専用スキル。

・破岩
 射出された瞬間、矢の先端を分銅のような形に変えて、当たった敵に壊属性のダメージを与える。

・五雨
 射出された瞬間、矢を分裂させて敵にランダムで複数回 突属性ダメージを与える。ボウガンの数 × 2〜5回。

・エナジーシャワー
 ヘリオス版うろたえるな小僧ども!!


宿命(VS善)はもうちょい続きます。作者自身若干エタってきたけど。
想像以上に善くんが強くなってる感があるので予定が狂う…あと単純にnickの文章力不足。





ヘリオス『雷やら水やらをどうやって出しているのだ?』
善「確かに。君は魔法に準ずるスキルを使えないはずだろう。あれは何なのだ?」
ナツル「ああ?そんなもん決まってんだろ――忍法だ」

……………


善「なるほど。理解した」
ヘリオス『忍法とは凄いんだな』
ナツル「ソーダネー」


善→天然
ヘリオス→天然
ナツル→自分が若干天然である事を自覚しながら悪ノリするバカ


実行できる実力がある分タチが悪い。
作者のモチベが上がらないのは主人公の戦闘描写が説明しづらいせい説アリ

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