地面にうつ伏せの状態から、手足に力を込めてなんとか立ち上がる。
ステータスを確認したら自分の
ここまで一度も被弾した覚えはないから、さっきの攻撃だけでこれだけ削られたことになる。我が攻撃ながら恐ろしいな…
『ナツル、大丈夫かっ?』
「…なんとか……っ」
冗談が言え…なそうなくらいにはダメージ受けたな。
本当なら「だいじょうぶだぁ(志村けん風)」とか返したかったけど、心配した様子のヘリオスの顔(無表情)と打たれた痛みで普通の受け答えになってしまった。
厄介なヤツ見つけてくれたじゃないの善くん。観察眼は流石だよ。
「敵に回すとシャレにならんな…ヘリオス、このまま遠距離で戦うのは具合が悪い。もっと接近して流れを変えるぞ!」
『分かった』
短い策戦会議を終えて、即座に行動に移る。
「肌全体に電気が走るような感覚が…瀬能、これが君の殺気なのか?」
「だったらっ?」
「思いの外――悪くはない」
善くんとの距離を最短で縮めるために、フルスピードで走り出す―――その出鼻を挫くように、善くんが二丁のボウガンを俺たちに向けると同時に矢を放つ。
「ぅおっ!?」『!、』
当たる直前でギリギリ躱す。
こっちも厄介ではあるが、飛び道具を向けられるのは紅音で慣れてる(それもどうかと思うが)。弾よりデカい分避けるのは難しく――
『ナツル、危ない!』
「!?」
突然もふっとぷにっとしたものに突き飛ばされる。少し離れたところを並走していたヘリオスだ。
転びはしなかったが最短コースを大きく外れて足が止まった。なにすんねんいきなり。
ヒュッ
文句を言おうとしたら
位置はちょうど俺の背中あたり。
全く気づかなかった。…あのまま走ってたら……
「お、おい、今の…」
『ゼンが撃った物だな』
礼を言うよりも先に確認の言葉が出る。
どういうことだ。弓矢なら、放った矢の軌道を変える。なんて曲芸打ちみたいなことできるって聞いたことあるけど、ボウガンでも同じことができるのか?
でも初めと同じ軌道だった気がする?
「シャドウを相手にしていた時は気にもしなかった」
ボウガンの矢は真っ直ぐに善くんに向かい――数十cmほど近づくと、空中でピタリと止まる。
「だが街から街への旅をして思い知らされた。戦闘で矢を使い捨てしていたらいくらあっても足りないと」
矢って普通そういうもんだけどな。
「さらには直線にしか飛ばせないことも問題であるとも。君のように素早く動く者には容易く躱される」
「いや結構ギリギリよ?」
「謙遜するな。ついさっきやって見せただろう」
だからそれがギリギリだっつってんだろ。
ただでさえ速度が出てるのに、自分から突っ込んでいったから余計速いんだよ。避けるの大変なんだぞ?
「それが私の弱点。
喋りながらボウガンを軽く掲げる。
誰の手も触れずにひとりでに弦が動き、そこに浮いていた矢がセットされる。
「考えて出た答えがそれか」
「そうだ。一人では『不可能』なことも、仲間となら超えていける。…君が教えてくれたことだ」
…そんな熱血マンガの主人公みたいなセリフ言ったっけ?
追撃の気配がないので俺から離れたヘリオスも『そんな事いつ言った?』みたいな眼で見ている。
正直記憶にないんだが…水を差すのもなんだから黙ってよう。
「発射した後の矢をポルターガイストに操作させる…単純だけど効果は絶大だな」
撃って当たれば良し。もし外しても自由に動かして背後から
そして残りの矢が心許なくなったら回収する。
スターダストやプラズマの軌道も変えられるところを見るに、念動力は相当強力だろう。厄介の一言で済ませられるレベルじゃねーぞ。
「行くぞ!」
さっきとは違って今度のは一本。しかも自ら向かって行っているわけじゃないので、スピードは目で追えないほどじゃない。
だが躱したらまた後ろから攻撃されるだろう。
種明かしをしたから同じ軌道で、矢羽の方で当てにくるってこともしてくれなさそうだ。
まさに絶体絶命!どうする、俺!?
って感じだ。普通なら。
「掴めばいいじゃん」簡単だねっ☆
軽い気持ちで飛来する矢の中ほど(
瞬間、爆発が起こった。
「!?、ボ…ハッ……!」
『ナツル!?』
矢を掴んだ右腕の肘から先、それと顔全体に衝撃が走る。
な、なにが起きた…?
「言い忘れていたがその矢は、登録した者以外に接触すると爆発する特別性を持っている」
「ありか…んなの…!!」
地味にダメージくる…!
登録者以外が触るとってどんな技術だよ!爆破だけなら火薬付きとかで説明できるけど。
第一登録ってどうやってやったの!?なに使って!?魔力!?
恐ろしい世界だな…爆発の規模から考えると、人の顔や手なんてグシャグシャにふっ飛ばす威力だぞ。
でも(表面上は)無傷。こういうときは
「服と共に新調した物だ」
「それは装備が変えられない俺に対する嫌味かコラ…」
武器も防具も強制初期縛りだからな。
いやでも、アクセサリーは装備できるのか?やったことないから分からないな。
……そうだ。やったことないんだ。
「しくったな…」
右手で目元を覆い空を仰ぎ見る。
舐めてたつもりはない、筈だ。
向こうも対俺用に仲魔や装備を揃えたわけじゃないだろう。
しかし俺はどうだ?この一週間なにやってた?
無駄に街中を駆け回って、自分の出来ることを確認できたのか?
「かっこ悪…やっぱグリーンはダメだな」
体力ゲージが危険領域を示す黄色になっていた。
試合中に消費アイテムを使うのは禁止されてない。一撃の威力が中々高いようなので、本当なら体力を回復させときたいんだが…
相手が相手だ。道具を使ってる隙に連続攻撃で即KO負けに持っていかれるだろう。
なにより今のこの緊張感を途切れさせたくない。
「喜べ善くん。望み通り、こっからは本気だ」
「そのようだな。嬉しく思う」
ラウンドツーだこの野郎。
銃弾は無限っぽいのに矢は有限とかいう疑問はパーフェクトスルー。
FF4では別勘定だったのよ。