けんぷファーt!   作:nick

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遊びゴコロ!(投稿時間について)


第77話 宿命②

地面にうつ伏せの状態から、手足に力を込めてなんとか立ち上がる。

 

ステータスを確認したら自分の体力ゲージ(HP)がマックスから四割強ほど減ってた。

ここまで一度も被弾した覚えはないから、さっきの攻撃だけでこれだけ削られたことになる。我が攻撃ながら恐ろしいな…

 

『ナツル、大丈夫かっ?』

「…なんとか……っ」

 

冗談が言え…なそうなくらいにはダメージ受けたな。

 

本当なら「だいじょうぶだぁ(志村けん風)」とか返したかったけど、心配した様子のヘリオスの顔(無表情)と打たれた痛みで普通の受け答えになってしまった。

 

厄介なヤツ見つけてくれたじゃないの善くん。観察眼は流石だよ。

 

「敵に回すとシャレにならんな…ヘリオス、このまま遠距離で戦うのは具合が悪い。もっと接近して流れを変えるぞ!」

『分かった』

 

短い策戦会議を終えて、即座に行動に移る。

 

 

「肌全体に電気が走るような感覚が…瀬能、これが君の殺気なのか?」

「だったらっ?」

「思いの外――悪くはない」

 

善くんとの距離を最短で縮めるために、フルスピードで走り出す―――その出鼻を挫くように、善くんが二丁のボウガンを俺たちに向けると同時に矢を放つ。

 

「ぅおっ!?」『!、』

 

当たる直前でギリギリ躱す。

 

狙い付け(タメ)をほぼゼロで撃ってきやがった…!銃口(ボウガンでもこう言うのかな)が向いたら即座に矢が来ると思った方がいいな。

 

こっちも厄介ではあるが、飛び道具を向けられるのは紅音で慣れてる(それもどうかと思うが)。弾よりデカい分避けるのは難しく――

 

『ナツル、危ない!』

「!?」

 

突然もふっとぷにっとしたものに突き飛ばされる。少し離れたところを並走していたヘリオスだ。

転びはしなかったが最短コースを大きく外れて足が止まった。なにすんねんいきなり。

 

ヒュッ

 

文句を言おうとしたら背後から(・・・・)鋭い風切り音と共に、一本の矢が走り抜けた。

 

位置はちょうど俺の背中あたり。

全く気づかなかった。…あのまま走ってたら……

 

 

「お、おい、今の…」

『ゼンが撃った物だな』

 

礼を言うよりも先に確認の言葉が出る。

 

どういうことだ。弓矢なら、放った矢の軌道を変える。なんて曲芸打ちみたいなことできるって聞いたことあるけど、ボウガンでも同じことができるのか?

 

でも初めと同じ軌道だった気がする?

 

 

「シャドウを相手にしていた時は気にもしなかった」

 

ボウガンの矢は真っ直ぐに善くんに向かい――数十cmほど近づくと、空中でピタリと止まる。

 

「だが街から街への旅をして思い知らされた。戦闘で矢を使い捨てしていたらいくらあっても足りないと」

 

矢って普通そういうもんだけどな。

 

「さらには直線にしか飛ばせないことも問題であるとも。君のように素早く動く者には容易く躱される」

「いや結構ギリギリよ?」

「謙遜するな。ついさっきやって見せただろう」

 

だからそれがギリギリだっつってんだろ。

ただでさえ速度が出てるのに、自分から突っ込んでいったから余計速いんだよ。避けるの大変なんだぞ?

 

「それが私の弱点。これ(・・)以外の武器の使い方を知らない以上、新たな戦闘方法を模索する必要が出てきた」

喋りながらボウガンを軽く掲げる。

 

誰の手も触れずにひとりでに弦が動き、そこに浮いていた矢がセットされる。

 

「考えて出た答えがそれか」

「そうだ。一人では『不可能』なことも、仲間となら超えていける。…君が教えてくれたことだ」

 

…そんな熱血マンガの主人公みたいなセリフ言ったっけ?

 

追撃の気配がないので俺から離れたヘリオスも『そんな事いつ言った?』みたいな眼で見ている。

正直記憶にないんだが…水を差すのもなんだから黙ってよう。

 

「発射した後の矢をポルターガイストに操作させる…単純だけど効果は絶大だな」

 

撃って当たれば良し。もし外しても自由に動かして背後から()るなり、相手を撹乱させられる。

そして残りの矢が心許なくなったら回収する。

 

スターダストやプラズマの軌道も変えられるところを見るに、念動力は相当強力だろう。厄介の一言で済ませられるレベルじゃねーぞ。

 

「行くぞ!」

 

再装填(リロード)されたボウガンから、再び矢が射出される。

 

さっきとは違って今度のは一本。しかも自ら向かって行っているわけじゃないので、スピードは目で追えないほどじゃない。

 

だが躱したらまた後ろから攻撃されるだろう。

種明かしをしたから同じ軌道で、矢羽の方で当てにくるってこともしてくれなさそうだ。

 

まさに絶体絶命!どうする、俺!?

 

 

って感じだ。普通なら。

 

「掴めばいいじゃん」簡単だねっ☆

 

軽い気持ちで飛来する矢の中ほど(()と呼ぶらしい。洋風に言うならシャフト)を片手で掴む。

 

瞬間、爆発が起こった。

 

「!?、ボ…ハッ……!」

『ナツル!?』

 

矢を掴んだ右腕の肘から先、それと顔全体に衝撃が走る。

 

な、なにが起きた…?

 

「言い忘れていたがその矢は、登録した者以外に接触すると爆発する特別性を持っている」

「ありか…んなの…!!」

 

地味にダメージくる…!

 

登録者以外が触るとってどんな技術だよ!爆破だけなら火薬付きとかで説明できるけど。

第一登録ってどうやってやったの!?なに使って!?魔力!?

 

恐ろしい世界だな…爆発の規模から考えると、人の顔や手なんてグシャグシャにふっ飛ばす威力だぞ。

 

でも(表面上は)無傷。こういうときは仮想(VR)でよかったって思う。

 

「服と共に新調した物だ」

「それは装備が変えられない俺に対する嫌味かコラ…」

 

武器も防具も強制初期縛りだからな。

 

いやでも、アクセサリーは装備できるのか?やったことないから分からないな。

 

……そうだ。やったことないんだ。

 

「しくったな…」

右手で目元を覆い空を仰ぎ見る。

 

 

舐めてたつもりはない、筈だ。

向こうも対俺用に仲魔や装備を揃えたわけじゃないだろう。

 

しかし俺はどうだ?この一週間なにやってた?

 

無駄に街中を駆け回って、自分の出来ることを確認できたのか?

 

 

「かっこ悪…やっぱグリーンはダメだな」

 

体力ゲージが危険領域を示す黄色になっていた。

 

瀕死(レッド)で過ごす時間が長かったせいかな、余裕あると思って無意識に慢心してたみたいだ。

 

試合中に消費アイテムを使うのは禁止されてない。一撃の威力が中々高いようなので、本当なら体力を回復させときたいんだが…

 

相手が相手だ。道具を使ってる隙に連続攻撃で即KO負けに持っていかれるだろう。

なにより今のこの緊張感を途切れさせたくない。

 

 

「喜べ善くん。望み通り、こっからは本気だ」

「そのようだな。嬉しく思う」

 

 

ラウンドツーだこの野郎。

 




銃弾は無限っぽいのに矢は有限とかいう疑問はパーフェクトスルー。
FF4では別勘定だったのよ。

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