調べたら『ヘリオス』ってギリシア語で『太陽』という意味らしい。でもアルカナは正義。
なぜ当時のスタッフは彼(彼女?)をヘリオスと名付けたのだろうか…
私は猫である。
正確には猫型の悪魔。
人間とは相入れない存在である。
しかし私は人の街を活動の場所しており、外に出た事はない。
街中で生まれた記憶はないのだが、どのようにして中に入ったかは見当もつかぬ。
まあそんな事はどうでもいい。
今日も今日とていつもの如く、『店』と呼ばれている場所より物資を調達しようとしたところ、思わぬ邪魔が入った。
いや、妨害自体はいつもの事だ。
いつもそれを躱して食料を得てきた。
ただ今回は…少し、骨が折れそうだ。
「ナツルくん、お願いってなに?」
「ああ、そう大したことじゃないさ」
青い髪をした男、白い髪の少女、その少女を乗せた鳥。
どれか一体だけなら仕留められただろうに…
「アイツの隙を作ってくれ。そこを突いて俺が切り込む」
「お魚?イカ?」
「終わったら好きなだけ食わしてやるから戦いに集中してくれ」
…なぜか、絶対に負けたくないという気持ちが強く湧いてくる。
『ふんっ!』
なにをしてくるか分からぬのなら、先に此方から攻める!
「ルナ!」クルルッ!!
バキャッ!!
私の爪と、鳥の嘴が火花を散らす。
そして一瞬の均衡の後―――私は押し負けて背後に弾き飛ばされた。
体格の差が明確に出てしまった。
衝撃を受け流し、両足から軽やかに着地する。
あの巨体を相手に力勝負をするのは得策ではないようだ。
しかし、見たところスピードは私に分がありそうだ。
隙を突いて上に乗っている少女を先に仕留める!
「俺を忘れちゃイヤよ」
顔のすぐ横でそんな言葉が聞こえた。
同時に背後から両脇に手を差し込まれて、羽交い締めにされる。
『なに!?』
これは…青髪の男の方か!いつの間に!?
話しかけられるまで気がつかぬまま、拘束されただけでも驚きなのに、そこから更に驚愕の出来事が起きる。
密着されている箇所がいきなり、燃えているかのように熱を発しだした。
『なっ、貴様なにをっ!?』
「
私を羽交い締めにした状態で、男は上空に向かい跳び上がる。
そのまま周りの建物の高さを超え、街を囲う城壁よりも高く――どっ、どこまで飛ぶ気だ!?
「…太陽にかえれ…!」
あまりの高度に不安と恐怖を覚えだした時、背中ごしに押し殺したような呟きが届いた。
……かえれ?
帰れ…還れ?
私は太陽から来たのか?
この街に来た記憶はない。この街で産まれた記憶もない。
今まで考えたことも無かったが、
天上で輝き光を放つ存在に思わず手を伸ばす。
帰るのか私は?
…還らねばならぬのか、私は?
言いようの無い懸念が脳裏をよぎる。
しかし数秒後、私の憂いは四散する。
「いづな落としーーー!!」
『ごはァッ!!』
一瞬の浮遊感の後、昇ったときとは比べ物にならない程の速度で落下して地面に叩きつけられた。
「単身で宇宙まで行けるか。ロケットじゃあるまいし」
言ってる意味はよくは分からないが、とりあえず私の葛藤を返してくれ。
☆ ★ ☆
「さて、ひと段落ついたな」
先ほど私を地面に叩きつけた青い髪の男が、私をロープでグルグル巻きにする。
きつくは無いが、身動きは取れそうに無いな。
「玲ちゃんお疲れ、ルナもサンキューな」
クルルルル!
「うん!」
男に頭を撫でられ、嬉しそうに鳴き声を上げる鳥。
側に立っていた少女が、その様子を見て笑顔を浮かべる。
しかし此方に視線を移した途端に笑顔を曇らせ、再び男に向き直る。
「あのっナツルくん!…猫さんどうするの…?」
声や表情から不安げな意思が感じられる。
どうするかだと?なにを馬鹿なことを…散々迷惑をかけてきたのだ。
敵対もした者同士、勝者が敗者をどうするかなど決まっているではないか。
「うん?うん…どうするかか………どうしようか」
なにを言っているのだこいつは?
「依頼にはなんとかしてくださいとしか書かれてなかったから、ぶっちゃけ退治しなくてもいいんだよな」
かと言って逃す訳にもなぁ…とぶつぶつ呟き、悩む男。
やがてなにか思いついたのか顔を上げて。
「玲ちゃんもう一体イケる?」
………結論から言って、私は彼女――レイといったか――の従魔となった。
提案された時は悩んだ。テイミングを受け入れていいのかと。
命惜しさに我が身を売ることはできない。
しかし死にたい訳でもない。
生きる理由・死ぬ理由。どちらも半々の割合で存在している。
それを生きる側に傾けたのは男――ナツルの言葉だった。
「深く考えなくてもいいんじゃない?ただ仲間にならないかと勧誘してるだけだぜ」
『先ほどまで戦闘をしていた者を誘うのか?もう少しで大怪我をしていたのに?』
「よほどの事がなけりゃあ、リングを降りたらノーサイドだ。お前も死に急ぐ必要ないだろ、それはいつでも出来る。生きる理由ってのを俺たちと探してみないか?」
そう言って縄を解き、手を差し伸べできた彼の目は先ほど見上げた青空のように澄んでいた。
同時に、太陽のような輝きも見えた。
生きる理由…生きている、理由。
自らが存在する意味。
「ナツルくん、善から連絡きたー!」
「おおっとグッドタイミング。早速他の仲間たちと顔合わせしに行こうぜ、えっと…そういやお前名前は?なんて呼べばいいんだ?」
…私を紹介する気がありありと見て取れる。
この時点ではまだ返事をしていないのだが…彼の中では私が従魔になることはすでに決まっているらしい。
ため息を一つついて、差し出された手を掴む。
『ヘリオスだ。好きに呼ぶといい』
「そっか。これからよろしくな、ヘリオス!」
屈託の無い笑顔を向けられる。
掌から伝わってくる温かさ。先ほど背中に感じた熱。
私には無いなにかを、多分彼は持っている。
それを探してみるのも、悪くはなさそうだ。
■廬山亢龍覇
セイントセイヤ。敵を羽交い締めにした状態で宇宙まで昇っていく自滅技。
最近また新シリーズ始まったねぇ。嫌いじゃないけどなんかイマイチ感がするのは絵がアレだからか展開がアレなのか…
■いづな落とし
カービィ。ニンジャやスマブラの技の一つ。
しばらく「戦士」は更新お休みです。
シリアスっぽい流れを無理矢理ぶった斬るナツルはまさにイマジンブレイカー。違うか。
ちなみに「太陽にかえれ…」ってのはあれです。ロストキャンバス版での亢龍覇発動時の台詞です。ネタじゃねえか。
ほんとに返してやれよ。ヘリオスの真面目な雰囲気。