けんぷファーt!   作:nick

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なんかもう一ヶ月投稿が当たり前になってきた気がする。

プロトタイプあるから早いかなと思ったのは最初のころだけねー…




第39話 日曜日の朝

休日の瀬能家の朝は遅い。

 

両親は二人して県外に出張、他に家族はいない。

となれば当然、わざわざ休みの日に早起きをする理由はないからだ。大概は昼過ぎに目覚める。

 

一度夕方に起きて唖然としたこともあったが…まあそれは些細なことだ。

 

つまりなにが言いたいのかというと、

 

 

 

「瀬能君。もうすぐ朝ご飯の準備ができるから、みんなを起こしてきてもらえるかしら」

「え?あー、うん」

 

 

 

我が家初の異常事態が起きている。

 

てかなんで当然のように料理してんだ(アンタ)

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

「え〜じゃあ…この世のすべての食材に感謝を込めて、いただきます」

「「いただきます」」「いただきま〜す」

「いただきます。…大袈裟ね」

「ネタだよネタ。実際はそんな感謝してねーし」

「それはそれでイラっとくるわね」

「セナちー醤油(しょーゆ)とってー」

「おたふくとブルドックとウスターがあるが」

「ソースじゃなくてソイソース。なんでそんなにあるの?」

「むしゃくしゃしてやった、反省してないこともない。…久々の朝飯はクロワッサンと目玉焼きか」

「あら、嫌なの?」

「いや斬新だと思って。てかうちにクロワッサンなんてあったか?」

「私が買ってきたのよ」

「…あたしは朝はお米のご飯がいいです…」

「俺は食えりゃいいや。水琴ー冷蔵庫からジャム取って」

「それぐらい自分でやりなさいよ―――」

 

 

 

「ってちっがーーーう!!!」

 

 

それまで楽しげにパンにカレーを塗り(!?)たくっていた水琴が、いきなり立ち上がった。

 

だけならまだしも、テーブルをちゃぶ台みたくひっくり返しやがった。オイ対面に座ってんのは俺だぞ。

 

勢いよく起き上がってくるテーブルと、散乱する皿の数々。

まずはテーブルを頭突きで元の位置に戻し、飛来物を寸前ですべて回収する。

 

なんか人数に比べて食器の数が少ねぇな…って雫とマコトが料理の乗ってる皿をいくつか両手に持っている。

 

お前らあの一瞬でそんな早業を…てかそんなんできるならテーブルの方を押さえろよ。

 

 

「突然なにすんだテメーは、発情期ですかコノヤロー」

「誰が発情期よ!」

 

「い…今ナツルさん、すごいことしませんでした?」

「壁に当たりそうになったものまでまとめて回収したわね」

「千手パンチだー」

 

好き勝手言ってんな外野。仏ゾーン終わって何年経ったと思ってんだ。

 

「で、なにが違うんだ」

持っていた皿をテーブルに置いて尋ねる。

 

雫たちもならって皿を並べ始めると、水琴がそれを指差し、

 

「なんで会長がここにいるのよ!しかも料理までして!あとなんでカレーじゃないの!?」

「最後の必要か?」

 

少なくとも俺には全くいらない要素だな。

 

ちなみにヤツがパンにつけてたのは作り置きしてあったやつだ。近所に配っても配っても、そのたんびに補充されてくから冷凍保存したものが一つや二つ、必ず冷蔵庫に存在している。

 

「俺が起きたときにはすでに家の中にいたぞ。エプロンつけて台所に」

その姿にちょっとドキッとしたのは俺の中だけの秘密だ。

 

「それがもうおかしいわよ!ふつー気づくでしょ!?」

「そうなんだよなぁ」

 

昨日襲撃受けて部屋が大破したから、適当に片付け(かた)した後はリビングのソファーで毛布に包まって寝た。

 

そして台所はダイニングを挟んでリビングのすぐ隣。いくら疲れてたからってちょっと無防備すぎじゃねぇの自分?

 

「どうせ美人だから見逃して後ろから視姦してたんでしょっ、このむっつりゲス!」

誰がむっつりゲスだ。初めて聞いたぞそんな言葉。

「会長が美人なのは認めるが俺のストライクゾーンには引っかからないな」

 

むしろデッドボールだ。それもこめかみ付近をえぐるスクリューボール。

全力でかわさないと命に関わる。

 

 

「悲しいわねそんな言い方、私は好きよ?瀬能君のこと」

「ハイハイオレも愛してるよ」

「あら、なら私たち両思いね」

なんでそうなる。

 

「あなたの部屋の机の引き出しにこんなものがあったわよ」

 

そう言って雫が取り出したのは一枚の写真。

中には黒髪の美少女がまるでアイドルのように写っている。目線はこちらに向いてないが。

 

あれ東田から貰った盗撮写真じゃねーか!(※第10話参照)

 

 

「ナーツールー!!」

「…なんだようるせえな」

「あんたなんで会長の写真持ってんのょ!二次元にしか興味ないと思ってたのに!!」

 

世の中クソだからな、と返せばいいのだろうか。

 

「それにこういうのって、可愛い幼なじみが先でしょ!なんであたしじゃないの!あたしのなにが不満なの!?」

「むしろ不満しかねーよ」

 

 

ネックハンギングツリー喰らいました。

 

 

「もっぺん言ってみろコラァァッ!」

「ごげげッ!」

 

名前の通り首だけ吊り上げられて、強制的に視線が天井を向く。

 

 

こっ………み……南十字星まで…あと少し―――いかん、幻覚が見え始めた。

 

 

力が入りづらい腕をなんとか動かし、微塵も手加減をしない水琴の肩を掴んでなんとか引き剥がす。

 

掴みかかる瞬間が見えなかった…たまにコイツ信じられないスペックを発揮するからイヤなんだ。俺の方が背高いのになんで持ち上げられたんだろう。

 

 

「え"ほっ…殺す気か…!」

「死んじゃえ!!」

 

怒鳴りながらも、力を込め震える指を喉元に向けてくる自称可愛い幼なじみ。

 

これで満足できたら余程のもんだろ。妥協はしたくない。

 

 

「…話を戻してもいいかしら?」

 

雫が呆れた表情で質問してくる。

 

そもそも脱線したのお前のせいじゃねーか。

 

 

「こほっ…まーいいや。マコト、ちょっとこいつ抑えといて」

「おっけー。ほら水琴、女の子なんだからいつまでもむくれてないで」

「ガルルルルルル…!」

 

自分のいとこに後ろから羽交い締めにされて尚、獣のように威嚇してくる幼なじみ。

 

ホント、よくもまあ自称でも可愛いとほざけたもんだ。

 

「で、会長さんはなにしに来たんですかー?こんな朝早く。だいたい想像つくけど」

「あらなんだと思ってるの?」

「あいつの尋問だろ」マコトを指差す。

もしくは拷問?洗脳?なんでもいいけどうちに迷惑だけはかけないでほしい。

 

「ちょっと色々と訊きたいだけよ。…ここに来てもう一人、色々教えてもらわなきゃいけない人が出来たけど」

 

「ハラキリか」「…あなたよ」

 

そう言って雫は折り畳まれた布を手渡してくる。

なんだこれ…って俺の部屋のカーテンじゃねーか。

 

「派手にやられたみたいね。見通しがよくなってたから外からでも分かったわよ」

「なら勝手に室内入んなよ」

「腕もそんなになってるし…強敵だったのかしら?」

 

無視しやがった。

 

「え、セナっちのそれって怪我したからなの?」

「遅れてきた厨二病だと思ってたけど」

「てめえら…」

 

俺の左手には現在包帯が巻かれている。

掌の痛みが中々引かないから、しょうがなく救急箱から出動させた。最後に使ったのいつだったかな。

 

つい調子に乗って肩まで巻いたのは流石にやり過ぎたと思っている。

 

「騒いでたのも分かってたけど、ナツルだから寝ながら暴れてるのかと」はったおすぞクソアマ。

「思春期だもんね」意味わからん。

 

「お二人とも言いすぎなんじゃ…」

 

控え目に俺を援護する紅音。

なんだろう、その気はサラサラないのに騙してるような気分。正直ちょっと胸が痛む。

 

「そうね、もしかしたら本当に大怪我してるかもしれないでしょ?」

 

雫、お前は分かってて言ってんだろ。退路を塞ぐようなことはヤメロ。

 

「それで、昨日はいったいなにがあったのかしら。教えてくれる?」

「まあいいけどさ…」隠すほどのもんでもないし

 

俺は昨晩の出来事をかいつまんで説明した。

 

「深夜に見たこともない、おそらくはケンプファーと思われる少女に襲撃…ね」

「ケンプファーって言い切れないのはなんでですか?」

「腕輪の有無を確認できなかったからな。普通じゃありえねー武器使ってたからまず間違いないとは思うけど…」

 

所有者以外には火傷以上のダメージを与えるなんて、ゲームみたいなもんはないからな。

 

「瀬能君、手の怪我は大丈夫なの?」

「んー…微妙だな。掴み技はちょっと厳しいかもしれん」

 

グーパーと開いたり閉じたりを繰り返しながら、左手の具合を確かめる。

 

日常生活には支障ないっぽいけど、力を込めると若干痛い。昨日の今日だしなぁ。

昨日の今日…

 

「…ケンプファーって何人くらいいるんだ?」

「え?」

「どうしたのいきなり」

「いや、昨日のやつは見たことなかったから」

まあ、俺が知ってるケンプファーって紅音と雫を含めても片手で足りる程度だけど。

 

「マコトがケンプファーになったのって文化祭の後ぐらいだろ?いくらなんでも追加で出てくるのが早すぎるぞ」

「そう言われてみれば…」

「ん〜?」

 

話題に上がった本人はにこにこしながらプリンにジャムっぽいのを乗せて食っていた。

 

その食い合わせはどうなんだってかそのプリン俺の――まあいいや。

 

「新しいケンプファーの出現は予想していたけど、ここまで続けてくるとは思わなかったわね」

「あんたでもか」ちょっと意外。

「あたりまえでしょ…私をなんだと思ってるの」

 

呆れた様子でため息をつく雫。

『計算通り…』とか黒い笑み浮かべる人だと思ってた。

 

「ケンプファーがどのくらいいるのかは、残念だけど分からないわ。学園にいるのはここにいる四人が全部だと信じたいけど」

「ん〜、あたし星鐵の生徒じゃないよ?」

「私もかなりの数を倒したから…この街にいるのはそんなに多くないんじゃないかしら」

 

雫はマコトを無視した。

 

「この街には、か…嫌な言い方だな」

「仕方ないじゃない。実際規模が分からないだもの」

「そりゃ分かるけどさぁ…」そういうのフラグになりそうじゃん。

 

「セナちープリンもう一個もらうねー」

 

「どんだけかいるかはわからんが、そのうちの何割かは産みの親に忠実な兵士だろう」葛原みたいに。

 

「昨日の襲撃は…」

「モデレーターの指示かしらね」

やっぱりそうか。

 

「もしくは忠君ゆえの暴走」

「どっちでもいいさ、次に姿見せたらコロス」

 

ゲーム機、CDプレーヤー、テレビも液晶の一部が傷ついた。損害は軽く10万はいくだろう。

とくにゲーム機は、新作出たからテンション上がって新品で(ソフト含めて)買ったからダメージ特大だ。ダレモボクヲトメルコトハデキナイ

 

 

「ひぅっ…」

「うわっ、本気で起こってる…」

「あれは抑えたら危険ね…」

「ねー、真っ黒いオーラ出してるナチー、アイスもらうねー」

 

 

おっといかんいかん、ついヤミが漏れ出てしまった。鎮めなきゃ…

 

「襲撃の件だけど、モデレーターの指示だとしたら彼女を見限ったからじゃないかしら。一日でかなり仲良くなったみたいだし」

「ん〜?」

 

 

またしても矛先を向けられたマコトは、スプーンを口に咥えたまま小首を傾げた。

 

って――

 

「さっきからなにしてんだテメーは!?」

叫びながらマコトに詰め寄る。

 

あ コイツ、プリンだけじゃなくアイスまで食ってやがる!しかもハーゲンダッツとか高級品ばかり!

俺のささやかな楽しみだったのに!!

 

「昨日のロリガキの前に貴様から血祭りに上げてやろうか!!」

「にゃー!やめてー!もらうってゆったじゃん!」

「やるって言ってねえよ!!」

 

そのまま頭を掴んでぎりぎりと締め上げる。

 

少しシリアス路線に行こうとするとすぐこれだ。責任者出てこいや!

 

 

 





ネタバラシ

この世のすべての食材に感謝を込めて、いただきます
 トリコ。グルメ細胞は、あります(ナツルの中に)


他にもあるような気がするけどなんか小さすぎるから拾わなくてもいいかな。


そんなことよりとうとうペルソナシリーズ最新作『ペルソナQ』が発売しますよ皆さん!作者はもう待ち遠しくて待ち遠しくて…予約しちゃったよ。早く6/5にならないかな。

夏にはP4Gのアニメもやるし…ファンにはたまらない一年だね!

そのうち番外編でコラボするかもですが生暖かい目で見守ってやってください。




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