けんぷファーt!   作:nick

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アニメはもう佳境(というかクライマックス)にも拘らずP4Gのコラボ(続き)です。

作者のブームは専ら、世間で廃れ始めたときにやってきます。


番外編④ ??/?? Ⅱ

>沖奈市

 

「………」

 

知らない街並みだ。

 

拒否する間もなくバスに乗せられ電車に揺られ、やってぇん きましたぁ するがの くにっ! いょぉっ ぺんぺん…

古いか。

 

ゲームだと駅前の一部や店内しか見れないんで分からなかったが、意外と広いんだな、この辺り。

 

街並みと視点のせいかなんだか…なんだか俺…桐生さんみたい。

誰か喧嘩ふっかけてきてくんないかな。

 

「で、どこに行きたいんだよお前」

 

どことなく落ち着かない様子で辺りを見回しているマリーに話しかける。

こいつはここに来てからずっとこんな調子だ。ちょっとソワソワしすぎじゃない?

 

「…わかんない」

「は?」

「ここ、初めて来たからなにがあるのかわかんない。ビフテキとかあるの?」

 

いや、俺に訊かれても。俺だって初めてだし。

 

なんてこった。迷わずバスと電車に乗ったから詳しいのかと思いきや、予備知識ゼロとは。迷子になったらどうするつもりだ。

 

まあ結構時間かかったし、今日中に帰ることを考えたら行く場所は限られてくる。迷子()の心配はないだろう。

 

「ねえ、あれなに?」

「あ?」

 

マリーがなにか、指を差しながら尋ねてくる。その先には"カラオケ・アオイデ"の文字が。

大きく出すぎじゃね?たしかギリシャ神話の歌の女神の名前だったはず。

 

「あれはカラオケと言って、一時的に個室を借りて思い思いに歌ったりする所だな。大抵複数人で入るが、中には一人で入る上級者もいる」

「ふうん……君は?」

「上級者コース一択ですがなにか」

 

(現実で)毎回同じ所を使用するからすっかり店員に顔を覚えられてしまった。

 

『今日もお一人なんですね』ってうるせーんだよ、売り上げに貢献してるんだからほっとけや。一人カラオケなんて今どき珍しくないだろ。

勇気を上げたい年頃なんだよ。

 

 

 

※現在のパラメータ"勇気":風神

 

瀬能時にのみ表示(豪傑より上)

 

 

 

「入るか?」

「…いい」

 

これは行くの意味じゃなくて行かなくていいって意味だろう。多分。

 

誘っといてなんだが断ってくれてよかったー。誰かと一緒にカラオケなんてもう随分してないから。

 

気に入ってベルベットルームに導入されても困るし(あってもそんなに違和感ないけど)。

 

 

「ね、じゃああれは?」

 

そう言って今度マリーが指差したのはバッティングセンター。

 

意外と色々あるんだなーここ。まあ田舎とはいえ人通りは多いみたいだし、おかしくはないか。

 

「あれは遊戯施設の一つだな。飛んでくるボールをバットで打つんだ」

「バット…マーガレットが渡してたやつ?」

 

認識は間違ってないんだがアレで打ったら球ズタズタになるぞ。

 

「楽しいの?」

「どうだろ。実は俺も入ったことないんだよね」

 

テレビゲームなんかだと本編に関係ないミニゲーム扱いだよなーこういう施設。さっきのカラオケもそうだけど。

高得点取ったら景品貰えるらしいけどホントかな。

 

「今度はどうする?」

「…ん……ちょっと、キョーミある」

 

返答に時間かかったのはなんでか少し気になるが、まあ大した理由はないだろ。

 

「んじゃ行くか」

マリーの手を握り、バッティングセンターに向かう。

ここで渋って、やっぱやめたとかいう流れになったら面倒だからな。

 

「あっ…」

「? どうかしたか?」

 

一瞬戸惑うように硬直したので、歩こうとした足を止めて尋ねる。

 

「…なんでもない」

「ならいいけど…」若干顔が赤いのはなんでだろう。

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

>バッティングセンター・高天原

 

つっこまないぞ。

ぜっったいにつっこまないからな。

 

なんでこの界隈そんな強気なんだよ。

 

「ここがばってんぐせんた?なの?」

 

マリーが腕組みしながらあちこちを見回す。

 

俺も初めてだけど、そんなに珍しいか?周りの奴らが何事かって見つめてきてるぞ。

まあ些か場違いだからな。格好が。それに普通、女はこういうとこ来ないだろうし。

 

「…なんか…広いのか狭いのかよくわかんない。汚いし」

「ストレートすぎんだろ」

店主っぽい人がこっち睨んでますよ。

 

 

今更だがこの建物、俺の夢だからか内部の間取りが非常に見覚えがある。

ていうか龍が如くのバッティングセンターそのまんまだ。

 

街並みもよくよく思い出してみれば沖縄にそっくりだし…さっきロッカーの鍵見つけたぞ。どうしようこれ。

 

 

「ま、とりあえず挑戦してみよか」

 

深く考えるのを止め、傘立てみたいなとこからバットを引き抜き、適当なバッターボックスに立つ。

 

 

『おいあいつ…あそこ使うみたいだぞ』

『バカな…命が惜しくないのか?』

 

 

え、なに?なんかいきなり周りがカイジみたく ざわ… ってしだしたんだけど。

 

『見たことない顔だな…新入りか?』

『無知は怖いな…それとも噂を聞いてやって来たのか?』

『だったらかなりのチャレンジャーだな』

 

たまたま空いてたから入っただけなんですけど。

どうしよう。なんか怖くなってきた。今からでも別のとこにチェンジしようかな。

 

「……ん…がんばって」

「……………」

 

ナチュラルに退路を絶たれた。

 

この空気の中そんな台詞言うなんて、意外と容赦無いっすねマリーさん。

 

もうこうなったら仕方ないので、腹を括って料金を払いバットを構える。

なに、所詮はゲーム。死にゃあせんだろ。

 

しばらくするとマシンの準備が整ったらしく、球が発射される。

 

ウィィ…ン ガシャ、ドム!

 

狙うは当然、パーフェクトホームラン。

バッター瀬能、タイミングを計って今華麗に…打ちました!!

 

 

バットが曲がった。

 

 

「ぐぅおあああああ!!?」

 

同時に両腕に衝撃が走る。

 

思わずバットを取り落とした。

 

 

な…なんだ…?一体なにが起きたんだ!?両手が痺れて力が入らん!!

 

 

完全にパニック状態な俺の視界に、先ほどまではなかったものが写る。それは―――

 

 

ボーリングの玉。

 

 

結構な衝撃を受けたのだろう。一部分が大きく凹んでいる。

 

多分、俺が思いきりバットで打ったからだろう。通りで腕が痺れるわけだ。

 

「っじゃねーよ!!なんだこれは!?」

バッティングセンターのはずなのになんでボーリング玉(こんなもの)があるんだ!?

 

『お前の根性、見せてみろ!』

「あぶねぇ!?」

弧を画いてホーガンの球っぽいのが頬を掠めていく。

 

ちょっと待て、球も球種も狙う場所も、ひとつじゃねえのか!?俺を殺す気か!

 

つか今のおっさん声なに!?

 

 

『よそ見をするな!』

「ゲブッ!!」油断した!

 

容赦無く投げられる球(玉?)のひとつが腹に直撃して膝をつく。

 

当たったのは…くす玉か。意味は分からんが軽いやつで助かった…。それでも無茶苦茶いてぇ。

 

どうもいつもの調子が出ない。やっぱり自分本来の身体じゃないからかな。厄介な夢だ。

 

 

俺が倒れたせいか、偶々かは知らんが、地獄のようなピッチングはすぐに終わった。

後で知ったがこのバッティングセンター、毎日七割の確率で救急車が呼ばれるらしい。

 

バカじゃねえの?

 

最悪だクソっ、店にクレームつけてやる。金返せ。

 

 

『やれやれ…その程度か』

「あん?」

『骨のある奴が来たと思ったが、見込み違いだったようだな』

「…………」

 

無言のままバッターボックスを出る。

 

「? 終わった?」

 

話しかけてくるマリーを無視して、準備を整える。

 

 

 

>装備

曲がったバット → エスカリボルグ(仮)(カチッ)

 

 

>エンノオズマコース、1回500円のようだ。プレイしていくか?

 

>プレイする(カチッ)

プレイしない

 

 

『オイあいつまたやる気だぞ!』

『正気か…ってなんだあの禍々しいバット!?』

「え、ちょっと君まだやるの?」

 

「こいオラァッ!!」

 

外野をオール無視して、再びバッターボックスでバットを構える。

舐められっぱなしで終われるか!

 

 

『ワシの球が、打てるかな!?』

 

 

おっさんの声と同時に、ボーリングの玉がストレートに飛んでくる。

 

「しゃらくせえ!!」

 

ボゴォッ!!

 

気合い(+怒気)を込めてバットを振り抜くと、玉は豆腐のように弾け飛んだ。

 

流石は攻撃力427。ものが違う。

 

しかし投球はそれで終わらない。

 

 

 

『てやっ!』

『まだまだ行くぞっ』

『お前の根性、見せてみろ!』

 

「ッさぁ!」

「セイッ!」

「寝てろぃ!」

 

 

 

ボーリングに始まりホーガン、くす玉、スイカ、あとなぜか空のペットボトル。

 

多種多様に投げつけられるが、すべてエスカリボルグ(仮)により粉々になって床に転がる。

 

打席やらなんやらがえらいことになってる。後始末大変だろうなぁ。

まったく気にしないけどね。

 

 

「っだらァッ!」

『むぅ…!』

 

最後の一球(トゲトゲした鉄球)を破壊すると、スクリーンに画かれたおっさんが驚愕の表情を浮かべる。

ざまあみろ。少しスっとした。

 

『…見事だ』

「え?」

 

意気揚々とバッターボックスを出ようとしたが、おっさんがまだスクリーンに映っているのに気づいて足を止める。

こういうのってワンゲーム終わったらすぐ消えるもんじゃないの?

 

『今のお前になら、見えるはずだ…』

 

おっさんはどこからか錫杖を取り出し、それを両手で持って高く掲げる。

 

なにする気だ?と怪しんだ瞬間、錫杖の柄の先を勢いよく地面に突き立てた。

すると俺の視界。いや脳内に、強烈なイメージが流れ込んだ!?

 

 

>「秘奥義の心得」を獲得した!

 

 

……俺がやったのは本当にただのゲームだったんだろうか…

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

>沖奈駅前

 

 

「…………」

「……」

 

気まずい…。

 

あの後、マリーがさっさと店から出ていったので、俺も急いであとを追って今に至る。

ここまでまったく会話がない。ついでに彼女が前を歩いてるから、表情も読めずなにを考えてるのか全然分からない。

 

やっぱり怒ってるかなぁ、ゲーム始めてから完全にほったらかしにしてたし、話しかけられても無視してたから…普通怒るな。

 

ちなみにバッティングセンターを出るとき、打席の惨状を見てた店員は涙目だった。どうでもいいが。

 

「んっんんっ、あー、マリーさん?今日は楽しかった?」

「? 別に…」

 

 

はいアウト。

ゴメン番長。俺じゃ無理だったよ。

 

 

「クズですいません…」

「…どうしたの急に?」

 

いきなり謝罪しだした俺に、マリーが足を止めて向き直る。

 

「退屈させてしまって申し訳なく…」

「はあ!?なにそれ!?」

「だってつまんないって」

「言ってないし、意味わかんない!」

 

そうだっけ?

 

「楽しい…かったかはよくわかんないけど、キミと一緒でつまんないとかないから!ずっと一緒に居たいって思ってるし!!」

 

…………

 

>マリーから真っすぐな思いが伝わってくる。

 

Rank up!

 

コミュニティ 永劫のランクが上がった!

 

 

……なんだ今の。

 

「…〜〜〜!あーもう!!帰る!」

 

マリーがいきなり怒鳴ってまた歩き出す。

 

頭の中に響いたおかしなセリフに気を取られてよく見えなかったが、あいつ今顔真っ赤じゃなかったか?

番長とはそういう(思春期的な)関係なのかな。

 

「…ってちょっと待って!?」

 

しばらく後ろ姿を眺めていたが、あることに気づいて慌てて後を追う。

 

こんな見知らぬ土地で一人残されたら無事に帰れる気がしねぇ!どの路線で来たか覚えてねえし!

 

……あ、また鍵見っけ。

 

 




 やってぇん きましたぁ するがの くにっ! いょぉっ ぺんぺん…
  ゲーム。くにおくんの時代劇でエリア移動すると出てくる台詞。瀬能君、古すぎます。


ネット小説にありがちな主人公憑依ネタをやってみました。主人公(番長)の中に主人公(不良)が入る小説って他にあるのかな…

ちなみに作中でもナツルが言ってますが、駅前以外は龍が如く3の沖縄の街並みを作者はイメージしてます。こまけえことはいいんだよ。

バッティングのアレは『見参!』の修行のひとつです。

・秘奥義の心得:まだ技とは言えない、可能性の卵。どのような奥義が産まれるかは持ち手の経験次第。

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