けんぷファーt!   作:nick

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第36話 お後がよろしくって…よ?

「終わったな」

 

周りに超被害を出したわりに、なんか呆気ない。

 

「全部あなたが原因でしょう」

 

聞こえんな。それにやったの俺だけじゃないし

 

「つーか仮にも自分に助けを求めてきた相手を、よくもまあ簡単に気絶させられるな」

「とくに思うところはないわね」

 

ひでえ

 

「私を監視、場合によっては始末しにきたかもしれない人に、優しくする必要はないでしょ」

「まあそりゃそうだが」

相手が知人じゃなかったら俺だってそうしただろうし。

大地の時みたいに

 

 

「…お?」

お喋りをしている間に、水琴の身体が光り輝き出す。

 

よく考えたらこれこいつ負けてね?とか思ったんだが、致命傷を受けてない状態での気絶は敗北と見なされてないみたいだ。

 

一層強く輝きだし、眩しさで一瞬顔を隠す。光が治まった後もう一度視線を戻すと、そこには見慣れた幼なじみの姿が

 

 

 

「………誰だコイツ?」

 

 

 

そう言ったのははたして誰だったか。

俺か紅音か雫か…いや、最後のはないな。

 

「私、新しく出てきたケンプファーは近堂さんって聞いたのだけれど」

「あたしもだ」

「いやいやいや、俺だってそう思ってたんだよ!」

 

冷たい目で見られ、慌てて弁明する。

おかしい、こんなはずじゃなかったんだが。

 

倒れてる少女は濃い紫色のショートカットヘアー。体型は程よく引き締まっていて、運動神経はよさそうだ。

 

なんとなくがんばる駿河ちゃんてあだ名が似合いそう…な気がする。

 

………む、まずい。

 

「誰か来るぞ」

「あん?マジかよ」

 

足音や会話の内容からして、消防士かなんかみたいだ。

だんだんこっちに近づいてくる。

 

「よく分かるわね」

「聞いてりゃ分かるだろ」

「なにも聞こえねーぞ」

 

え、嘘。マジで?もしかして俺にしか聞こえてないの?やだなに怖い。

 

なんでだろう、この前見た夢のせいかな。今まで聴覚普通だったし。

どんな夢だよ。

 

 

「見つかったら色々まずいわね。行きましょう」

「コイツはどうすんだ?」

 

気絶している少女を指差す。

 

「ここに置いとく訳にもいかないから、連れて行くしかないでしょ。瀬能君、よろしくね」

「はあ!?なんで俺が」

「あら、女の子に力仕事させる気?」

 

今は俺も女だよ!

 

「担いでる途中で目覚ましたらどうすんだ!」

「大丈夫よあなたなら」

 

なにその根拠のない信頼。全然うれしくない。

 

文句を言おうとしたが、二人にも分かるくらい人が近づいてきたらしく。雫だけでなく紅音もさっさと退散してしまった。

あとには俺と名も知らぬケンプファーのみが残される。

 

どうしよう

 

ぶっちゃけ知り合いどころか全くの赤の他人の(しかも今まで戦い(やり)あっていた)コイツがどうなろうとどーでもいい。

 

しかしこのままほっぽって逃げたら…警察とかに身柄を確保されるかもしれん。つーかその流れになるだろう。

 

取調べでぽろっと俺の名前出されたら面倒なことになりそうだな…よくも悪くも有名らしいから。

学校もすぐに割れるだろう。そしたら実は女の瀬能ナツルが存在しないってことがバレてしまう。そうなると二重にメンドくさい。

 

 

………仕方ない…運ぶか……

 

 

俺はひとつ、大きなため息を吐いて少女をおぶさった。

 

クソ、なんで俺がこんなこと…それもこれも全部コイツのせいだ。

 

心の中で悪態をつきながら、雫達のあとを静かに追いかけた。

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

人目につかぬようスパを脱出した俺たちは、駅近くの公園に移動した。

 

気絶しっぱなしの少女を、ベンチに寝かせて一息つく。

あー、地味に重かった。どうして意識のない人間って重いんだろう。

 

つーかコイツ、担いでる最中に「ムニャムニャ……もう食べられないよ…」とか寝言かましてきやがって…危うくすっ転ぶとこだったぞ。

しかも無遠慮に涎までたれ流しやがった。首すじが冷てーのなんの。

 

 

これで狸寝入りだったら頭凹むまで拳骨をお見舞いしよう。本気で寝てても食らわすけど。

 

 

「そういえばあんたなんであんなとこいたんだ?」

「偶然近くを通りかかって」

 

聞けば沙倉と一緒に食料の買い出しに来たらしい。その途中で刀を持った女の子が暴れてるとの情報を聞き、参上したそうだ。

 

余談だがこの騒動にまず間違いなく俺が関わっていると確信していたそうだ。

 

「いくらなんでも酷すぎるだろ。冤罪だぞ」

「自分のこれまでの行いを思い返してみなさい。胸を張って違うって言い切れるの?」

「できる」

「即答かよ」

 

紅音からツッコミが入る。なにかおかしなこと言ったか?

 

「てことは沙倉は…」

「人ごみではぐれたふりをして置いてきたわ」

お前らホントに親友なの?ちょくちょく酷く扱ってるよね

 

「そんなことより、今はこの()よ」

なにが『そんなこと』なのか気になるんだが…まあいいか。

 

「あー…もうメンドくせえな。埋めるか」

ここまで連れてきてなんだが

 

「やめなさい」

「なら穴にいれて、目を覚ましたら上から土をかぶせよう」

 

笑顔で提案したのに紅音が顔を引き攣らせて後ずさる。

 

もしかして引かれた?なんでかな。

 

 

「やめなさい」

雫にため息混じりに止められたが、無視して地面を掘る。や、穴だけでも作っとこうかと

 

俺は炎の魔法使いだが烏山千歳ばりの土作業が可能だ。昔何人もの不届きもの(闇討ちしてきた不良)を晒し首みてえにして地面に埋めたことがある。

 

確か下はアスファルトだった。…今思うとエライことしてたな

 

 

 

「あーーーーー!!」

 

 

 

掘削作業中に第三者の叫び声が響いた。

やべえ、見られたか?

 

流石に事情を知らない一般人に見られたら洒落にならないので、掘るのを止める。運のいい奴だ…

 

しかし今の声どっかで聞いたような

 

 

「あんたは、女瀬能ナツル!!こんなとこでなにしてるのよ!」

「あ、近堂水琴」

今度は本物だ。十数年幼なじみやってる俺が言うんだから間違いない。

 

説得力皆無だけどな。

 

 

水琴はあきらかに俺一人だけを鋭く睨みながら、こっちにやって来る。

 

すぐ側まで近付いた途端、ベンチに寝転ぶ少女を見て目を丸くする。

 

「マコト!?どうしたのいったい!」

 

は?

 

「知り合い?」

「親戚よ!」

 

ああ、そういえばいとこが来てるとか言ってたっけ。コイツがそうだったのか?

 

そうか…どうりで……

 

ちょいちょい事情知っている感じがした上に、俺に対する偏見を持たれてるわけだ。

全部水琴(コイツ)が流してたんだな。腹立たしい。

 

 

「マコトになにしたのよ!」

「別に、向かってきたから返り討ちにしただけだ」

「カレーパンチ!」

 

大雑把に説明してやったら、いきなり攻撃してきた。

 

なんで?分からんが拳に当たるのは嫌だったので、バックステップで躱す。

 

「避けるな!」「無茶ゆーな」

 

水琴は怒鳴りながらも、俺たちとベンチに寝てる少女(マコトだっけ)の間に分け入る。

なんとなく野生動物の母親が子を守る姿を彷彿させる。

 

 

「なにすんだいきなり」

「マコトは…マコトは消させないんだから!!」

 

んん?なにを…ってああ、ケンプファーは負けたら消滅するから、その事を言ってんのか。結構詳しく事情を知ってるみたいだな。

 

殺気と必死さの篭った視線を一身に浴びて、無性に居心地が悪くなる。

 

そこらの有象無象の不良など(ザコ)に睨まれてもなんとも思わんが、流石に子供の時から付き合いがある奴にそんな目をされると応えるな。

 

 

「…なあ、なんとかならんか?」

しばらく迷った後、隣の人物に小声で話しかけた。

 

完全にお手上げだ。

 

助けてシズえもーん

 

 

「そうね、ならこれでどう?」

そう言って雫は右手首を全員に見せるように掲げる。

 

腕輪がパァッ…と光り、一瞬だけ薄い赤の輝きに包まれた。あまり変わりないが、変身を解いたようだ。

 

「ほら、あなたも」

 

今度は紅音に戻るよう促す。

 

言われたほうは露骨に嫌そうな顔をした。

 

「あたしに命令すんな」

「命令じゃないわ。お願いよ」

「どうだか」

「早くしないと彼女が暴れるわよ」

 

なんでそこでチラッと俺を見るんだ。

 

そしてなんで紅音はビクッとしたの?

なんで?ねえなんで?

 

 

「それともプリーズってつけたほうがいいかしら?」

 

雫の言葉に舌打ちすると、彼女は変身を解いて眼鏡の図書委員姿に戻る。

 

「あ・紅音ちゃん!?」

「……はい…」

 

名前を呼ばれ身を縮こまらせる。

今まで事情を知ってたのに黙っていたから、後ろめたさがあるのかもしれない。

 

「最後はあなたよ」

雫が俺に向き直る。

 

「…いいのか?」

「あなたが肝心なのよ」

いやまあそうかもしれないけどさ

 

チラっと顔だけ水琴に向ける。

 

「なっ…なによ、紅音ちゃんがケンプファーだったのは驚いたけど、それがなんだって言うの?」

 

分かりやすい強がりだな。微かだけど震えてんじゃねーか

 

「あんたなんか全然怖くないんだから。バンニップみたいなもんよっ」

 

 

一つ目の食人怪物なんて俺だって怖いわい。そんな物騒なもんに例えんなや。

 

いつまでも危険なUMA扱いされるのも嫌なので、ため息を一つ吐いて腕輪に力を込める。

先の二人同様に、身体を光が包んだ。

 

 

「な…ナツル!?」

 

光が消えた途端、紅音の時以上に驚いたような声が上がった。

よかった、今度はちゃんともとに戻れた。

 

 

「俺やでっ!」

「………ニコイチ」惜しい。

 

 

水琴はフラッと横に振れると、そのまま倒れた。

慌てて紅音が駆け寄る。

 

「……気絶しちゃったみたいです」

「ショックが強すぎたみたいね」

 

目を見開いたまま固まったから、和ます意味で大袈裟に自己紹介したんだがお気に召さなかったようだ。

 

ソウダヨ、ボクガ、トモダチダヨ。の方がよかったかな。

 

 

 

「雫ちゃん!」

 

 

 

突然遠くから大声がかかる。

同時に誰かが走ってくる足音がしてきた。

 

「楓」

「もう、探したのよ。急にいなくなるからびっくりしたじゃない」

「声はかけたのだけど」

「そうなの?…あ、ナツルさん。こんばんわ」

「うす」

 

ついでみたいに扱われたけど気にせず片手をあげてあいさつを返す。

 

沙倉…そういや近くにいたんだっけ。

もう少し早く登場されてたらヤバかったな。(変身解くとこ見られてないよな?)

 

「紅音さんも…紅音さんがいるってことは女のナツルさんも近くにいるんですか?」

「ふぇ!?ぁの、その」

「それにこちらに倒れてる方は…?」

 

沙倉が紅音とベンチの上の奴を交互に見る。

 

マズイ、すっかり忘れてたけど用事があるっつって帰ったんだっけ…なんて言い訳しよう。

 

 

「そこのベンチにいる()は、美嶋さんのの前で急に倒れたらしいのよ。そこに私が通りかかったの」

 

俺と紅音が返事に困っていると、雫が代わりに答える。

 

フォローはありがたいがよくもまあいけしゃあしゃあと

 

「彼女、どうも近堂さんの親戚みたいで…駅まで一緒に来てたみたいね。近堂さん、急にはぐれてずっと探していたみたい。見つけたらすぐに気を失ってしまったのよ。安心して気が緩んだのかしら」

「そうなんだ、ナツルさんは…」

「ちょっとFFってた」

 

 

一気に場の空気がしーんとしだした。

 

 

流石に少し古すぎたか。

それとも不良主人公らしく、経験値と金とアイテム稼いでたって言った方がよかったか?

 

 

「美嶋さんは…」

 

気を取り直して沙倉が質問を再開する。

 

「あたしは…その……」

 

困ったら俺のほうをチラ見すんのヤメロ。変に感づかれんだろーが。

 

「美嶋さんはスパに来ていたそうよ。女の瀬能さんとは駅で別れたのよね?」

「そ…そうなんです。ナツルさん…女のナツルさんですけど……、悪いけど送れるのはここまでって………」

「そうなんですか…」

 

どこと無く残念そうな沙倉。会えるかもとでも思ったのか?

 

本人ここにいるけどな。

 

 

「(どうすんだこのあと)」沙倉が紅音と喋ってる間に、小声で雫に話しかける。

「(詳しい話は後日聞きましょう…。あなたの家に泊めてあげてくれるかしら)」

「(俺んちかよ、つーか二人纏めて?)」

「(美嶋さんもね。女の子をこんな時間に一人歩かせるわけにはいかないでしょ?)」

「(いやそうだけどさ…)」

「(それに、彼女がいたほうが心強いのでしょう)」

 

それは言ったかもしれんが、どうやって気絶してる人間二人家まで連れてけってんだよ。肩に担いで荷物運び?

 

人に見られたら通報されるわ

 

「どうしたの?」

「なんでもないわ。近堂さんは瀬能君が面倒見るそうよ」

 

あ、コイツ!まだ了承してないのにサラっと押し付けやがった!

 

「流石は幼なじみね。優しいわ」

 

ご丁寧に追撃まで!

 

 

仕方ねえ…この借りは必ず払ってもらおう。必ず

大事なことなので二度言いました。

 

 

「じゃ、そういうわけだから。またな、沙倉」

「あ、はい。…なんか凄いですねナツルさん」

 

背中の右側と左側、二人同時におんぶすると褒められた。

見た目草食系の男が似たような身長の人間を担いでるってよく考えたら異常だよな。

 

いや、最初は片方紅音に預けようとしたんだよ。

でもなんかふらふらと危なっかしいから、結局最後まで俺が背負うことにした。

 

 

 

 

タクシー使えばよかったんじゃ…と俺が思いついたのは、家まで数ブロック先までの距離についたころだった。

 

 




トロフィー獲得!
(金):フレアマスター
(銀):なんでも『破』解体人
(銀):ボルケーノ・パニック!
(銅):It's a small world


新キャラ、登場です。水琴はポジションを取られてしまいましたとさ。orz

なんか書いてるうちに前(小説家になろう!掲載時)とほぼ同じでいいのかなーこうしたら面白いかもなーとか考えてたら出てきました。マコトちゃんが
許せ水琴


見た目は化物語の神原駿河。ただし髪の色が限りなく黒に近い紫です。

変身すると声まで変わり、水琴とほぼ一緒になるためナツルも気づけなかった。というオチ。

ちなみに二人同時におんぶは、ブリーチの一護が夏祭りで妹二人を背負って帰宅風だと思ってもらえれば幸いです。



以下、どうでもいいネタばらし

烏山千歳
 ディーふらぐのメインキャラの一人。作者はアニメも原作も全力で愛し…応援しています。

FF
 (ファイナル)(ファイト)。昔のスーファミのアクションゲーム。今どき知ってる人が何人いるやら


次回は番外話をいくつか挟んで六章にしたいと思っています。更新は遅いかと

気長に待っててください。

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