けんぷファーt!   作:nick

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第22話 ミッション in 大作戦

朝から女子部に行くのは久しぶりだ。この感想自体普通おかしいんだがな

 

学校についた途端、黄色い声を上げて近寄ってくる大勢の女子にもみくちゃにされた。

 

それらを一々相手にするのは面倒なので、全部無視して教室まで歩いた。

全然来てないのにすごい人気だ

 

教室についたらついたらで声をかけられる。

 

『瀬能さん!応援してるから!!』

『ミスコン頑張ってね!』

『絶対優勝できるわ!』

 

クラスメート全員が登場してきた俺を中心に円を作る。一番前は当然厄介な三人組。

いきなりブルーな気分だ…

 

「おはようございます。瀬能さん」

「委員長さん…」

「今朝、沙倉さんが瀬能さんをミスコンに推薦したそうです」

 

嘘であってほしかった…

 

「そこで我ら二年四組一同は、全力で瀬能さんをバックアップすることにしました」

「いや、いらないからそーゆーの」

「却下です。具体的には――」

 

押し付けな上に拒否もできんとは……まるっきり詐欺だ

 

「我がクラスの情報によりますと」

 

委員長はどこからか資料のようなものを取り出して読み上げる。

ここだけ見ると、どっかの有能な秘書のようだ。腹は相当黒いけど

 

「ミスコンに出場する有力候補は瀬能さんの他に二年一組の山川(やまかわ)涼花(りょうか)さん、三年三組の皆川(みなかわ)瞳美(ひとみ)さん、一年五組の植田(うえだ)牧恵(まきえ)さん。あとは不確定情報ですが沙倉さんですね」

 

他のクラスや学年に付き合いないからよく分からんが、なんかすごそうだ。話を聞いてる女子の中にはメモを取ってる奴までいる。

 

「まだ序盤戦で、他にも多数の立候補者などが出て来ると予想されますが、瀬能さんなら勝ち抜けるでしょう」

 

委員長がそこまで言ってから、聞き手の中から手が上がった。副委員長だ。

 

「しつもーん。他にはいないの?」

「例えば?」

「会長とか」

 

雫か。確かにあいつなら優勝を狙えるだろうが…

 

「それはありえません。会長はこういうことに興味はないでしょうから」

 

その通り

あの真面目冷徹生徒会長がこんな企画に参加するはずがない。

つーか生徒会を初めとした委員の奴らは当日を含めてやること多いから無理だろ

 

「でも万が一ってのもあるし」

「それはそうですが…確認する手段がありません」

「あー。生徒会って基本は情報をオープンに公表してるけど突っ込んだことは調べることができないからねー」

 

三人組がなにやら相談をしはじめた。

 

「なんとか情報収集したいですね…。かといって内通者は使えませんし、わたしたちでは警戒されてしまうし…」

「だれかいないかなー。会長と顔見知りで、仲が良くて、怪しまれなくて話しができる()

 

なんか嫌な予感がする…

急いでダッシュして逃げようと思い、回れ右をしたらその瞬間に後ろから肩を掴まれた。

チクショウが

 

「ナツルたん行ってきてよ」副委員長がニッコリとしながら右肩を、

「まさかミスコン出場者が、堂々と情報を引き出しに来るとは考えていないはずです」委員長が眼鏡のズレをクイッと直しながら左肩を掴んでくる。

 

あんたら怖いよ……

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

勢いに耐えかねて男子部まで逃げてきてしまった。

 

行かなきゃ駄目かなやっぱり

個人的に聞きたいことがあるんだが、それとこれとは話が別だ。

 

自分の本来の教室に戻ったらこっちでも囲まれた。かったりい…

つーか嫌な思い出が蘇ってくるんだが

 

「ナツル。ミスコンのこと、なんか分かったか」

 

全員を代表して東田が聞いてくる。言ったほうがいいんだろうか

 

「それより他に決めることがあんだろうが。困んの俺なんだぞ」流れを切る意味も込めて、ちょっと真面目くさいことを言ってみる。

 

決めるというのは文化祭の企画のことだ。まだなんにも決まってない。どこを使うのかもなにをするのかも。

流石にそろそろ決めないとやばいんじゃないかな

 

「そんなの適当にでっちあげればいいだろ。去年もそうだったし」

 

そうだそうだ、と東田に同調するように周りも囃し立てる。

時々聞こえてくるクラスメートたちの案は「休憩室」「仮眠室」「自販機置いといて放置」など、あきらかに自分たちが楽なものばっか。つーかぶっちゃけ基本放置。

 

お前ら…いいのか、それで

 

 

「お前が勝手に決めちまえよ、それよりミスコンだミスコン。立候補者とか分かったか?」

 

待ちきれないと言わんばかりの食いつきよう。

ダメだコイツら、もう諦めよう…。よく考えりゃこんなのの頭から建設的なアイデアが出てくるわけがないんだ

コイツらにあるのは煩悩だけだ

 

「二年の山川、三年の皆川、一年の植田、あとは沙倉が出るとか聞いたな」

 

言った瞬間に教室が一斉にざわめきだした。

 

よし、今のうちに逃げよう。

 

「まてナツル」

 

自然な感じで動きだしたら、いきなり声をかけられた。

相手は東田だ。なんでバレたんだ

 

「出場者はそれだけか?」

「…どーゆー意味だ」

「文化祭で大々的に特集を組むんだが人数が少なすぎる。他に誰かいないのか?」

 

そんなこともすんのか美少女研究会

 

「まだ立候補の届け出は終わってねえだろ。次にしろよ」

「事前準備号を出すんだ」

 

いらんだろそんなの。こんな考えすんの男子部で俺だけかな

もういっそのこと生徒会に密告(チク)って潰してもらったほうがいい気がする。

 

 

一応あと一人…つか俺なんだが、いるんだよな…

 

俺が黙っていると東田が目ざとく反応してきた。

 

「心当たりがあるのか、誰だ」

「……女子の、瀬能…」

 

勢いに押されつい喋ってしまった。

 

 

『そりゃすげえ』

『狙いは他の出場者かな』

『控え室でくっちまうかもしれねぇぞ』

『見てぇ〜』

 

 

俺の言葉に教室中が沸きだす。

 

果てしなくウゼえ…

正直な話、こいつら全員ぶちのめしてやりたい。しかしそれをしたら真っ先に俺が犯人だと疑われるだろう。前科持ちだから

 

 

「よし。我が美少女研究会の方針が決まったな」

 

 

東田の言葉に教室中が注目した。何言うつもりだコイツ

 

「盛り上がりのためにも、ミスコンをコントロールして女子の瀬能を優勝させるぞ」

 

は?

 

「そうすればあとあと遺恨が残り、美女二人の動向を追えば大いに盛り上がる。卒業まで話題が事欠かないだろう」

 

東田の台詞に俺以外の全員が感嘆の声を上げた。

 

冗談じゃねえ!優勝しちまったら沙倉だけじゃなく女子生徒のほとんどから告白されるじゃねえか。

 

それはそれで興味深いが。ストーカーとかもつくだろうし、これ幸いと委員長たちが騒ぎだすに決まってる。学校に来る以前に人前で女の姿も晒せなくなってしまう。

 

『瀬能、他にはいないのか!?』

 

いきなり声をかけられた。誰だったかなコイツ

 

「あ・ああっと……」不意打ちだったのでドモっちまった。そこで勘違いされたらしく。

 

「まだ誰かいるのか?」東田が聞いてくる。また教室中の視線が俺に集まる。

 

「………か…会長が…出るとゆー…情報が…」

『『「生徒会長が!?」』』

 

冷や汗をかきながら言った俺の言葉に、また教室中が沸いき上がる。

 

思わず嘘をついてしまった…

 

『そりゃすげえ!!』

『星鐵三大美女の一騎打ちだ!』

『誰が勝ってもおかしくねえ!』

『く〜!ミスコン生で見て〜!!』

「ナツル!その話本当だろうな!?」

「………ああ…」

「よし、なら女子部の瀬能ナツルを勝たせる必要はない。いや、ミスコンだけで星鐵の歴史に残るぞ」

 

偶然に近いが、なんとか俺の優勝っていう出来レースの阻止はできたようだ。

 

しかし新たな厄介事ができちまった…

興奮に沸くクラスメートたちを見ながら思った。

 

 

……俺が推薦するしかねぇかな、やっぱ…

 


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