けんぷファーt!   作:nick

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いろいろ足してったら長くなってしまいました。


第10話 絶望ビリー

次の日学校に行くと、俺は悪い予感が当たってしまったことを知った。

 

「なあなあナツル、これ読んでみろよ」

 

東田が持っている選挙ポスターくらいの大きさをした紙を突きつけてくる。そこには俺の気分をマイナスにすることが書かれていた。

詳しくは省くが、女の俺があらゆる女を食いものにしてる百合少女と記事になってる。

 

インタビューしたことについてまるで触れてねーじゃん。なんのためにやったのアレ

 

 

「凄い子が復学してきたな」嬉しそうだなテメェ…

「我が美少女研究会としてはぜひともこの女の子の写真が欲しい!」

 

東田は他の奴―――おそらくは美少女研究会のメンバー―――と一緒に熱く弁を振るう。

どうでもいいがいい加減俺の服の裾を離せ気持ちわりぃ

 

「そこでナツル、お前に頼みがある」

「だが断る」

「女子部に連絡して、あの子の写真を撮ってもらうよう頼んでくれ」

「無視か」

 

東田のくせになまいきだ。痛めつけるか?

 

「つーか何で俺なんだよ」

「お前は女子部に知り合いがいるみたいだからな、都合がいいんだ」

 

紅音のことか?知り合いっつーかそれ以上(相棒)っつーか…てか遠くから盗撮でもすりゃいいだろ

そう反論すると東田は。

 

「最近俺は学校側からマークされてるからな、迂闊に動けない」

 

本当なら俺が行きたいんだが…とかなんとか。なぜか他の奴らも悔しがってる。馬鹿ばっかだ

 

というか俺も一応マークされてんだが、いいの?

 

「ナツルなら知り合いから貰ったと言い訳がきくからな」

 

こういうとこだけ頭が回りやがるなコイツは…

 

「もちろん報酬は考えてある」

「なんだよ」

「生徒会長の生写真だ。どうだ、プレミア物だぞ」

 

 

東田が持ってる写真には雫が写っていた。それも真っ正面からだ。

 

「よく撮れたな。隙なんてなさそうなのに」俺は素直に関心する。

 

「ああ…奇跡の一枚だ」

 

 

カッコよさげな顔つきで言ってるけど、盗撮は立派な犯罪ですから

 

 

「でも写真一枚で動けるかよそんなあぶねー橋。他に何かネタはねぇのか?」

「これだけでもかなりの物なんだがな…」

 

ナツルじゃしゃーないか、と東田は頭を掻きながらぼやいた。よく分かってんじゃん

 

つーかいつの間にか俺が写真を手に入れる流れになってる。話術の才能あるんじゃねーかコイツ?

 

 

「あ〜…女子部で発砲事件があったそうだ。まあガセだろうがな」

 

ドキリとした。昨日のやつか?

 

「いつだ?」

「今朝。案外現在進行中かもな」

「…………」

 

俺はすぐさまドアの方へと歩きだす。

 

「おいナツル、どこ行くんだ?授業始まるぞ」

「フケる。教師にはてきとーに言っといてくれ」それだけ言って廊下に飛び出し、猛烈ダッシュ。

 

俺の成績が下がったら紅音になんとかしてもらおう

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

これ以上東田に借りを作るのもしゃくなので、女子部には自力で行くことにした。

 

 

テコテコンっ♪    〜〜誰にでも出来る簡単女子部潜入方法~(ダミ声)〜〜

 

①まず男子部と女子部を隔てる壁がある裏庭に移動します。

②次に人気のないことを確認し、

 

「はっ!」

 

③忍者のように壁を駆け上がります。

④そしてそのまま壁を乗り越え、女子部側へ着地し、周囲にバレないように素早く身を隠せばミッションコンプリート!

 

〜〜QED(以上証明終わり)。良い子は瀬能君が考えたって先生に言っちゃダメだぞっ♪〜〜

 

 

いつかSA●UKEに出場しようと思って練習した技能がこんなとこで役立つとは。人生って何があるか分からないわー

 

「マリポーサみてぇだな俺」

 

とにかく噂の真相を確かめようとしげみに隠れながら移動する。

 

 

こちらスネーク。今、目的地に到着した。これより捜索に入

「ぐふっ!!」

 

 

しゃがみ歩行してから数歩も動いてないのにいきなりなんか降って来た。超いてぇ

 

「て・敵襲…敵襲ーー!?」

「やかましい!」

 

怒られた。だけでなく後頭部をなんか硬いもので殴られた。こっちが怒りてぇよ

 

「あん、何かと思えばナツルかよ。邪魔すんな!」

 

どうやら落ちてきたのは紅音のようだ。うつぶせだから見えないけど

 

「邪魔なのはテメェだ!クソ重いんだからさっさとどけ!!」

「撃ち殺すぞテメェ!?」

 

言い争いがヒートアップする直前、唐突にパシンとすぐそばの葉っぱが爆ぜた。

急いで(背中に乗ってる紅音ごと)茂みに隠れる。気がつけば女になってるし

 

 

「襲われてんのか」

「見りゃわかんだろ、学校来たらすぐだ。おかげで図書委員の当番すっぽかした。…おめえは何でいんだよ」

「冷てーなおい。心配で来てやったのに」おかげでまた教師の俺に対する評価が下がった。生活指導のハゲ田(53歳独身。カツラ)からまたなんかネチネチ小言食らいそうだな

 

 

俺の苦々しい顔を見て、紅音は嬉しそうに笑う。クソッやっぱり来るんじゃなかったぜ。

 

「そーかそーか、そんなにあたしが心配だったか。こりゃいいや」

「いいもんか、進級出来なかったらバイク盗んで走り出してやる」

行く先はわからんが、多分光のさすほうだ。

 

「こうなったら相手に八つ当たりだ。紅音、援護しろ」

「りょーかい」まだ嬉しそうだ。頼むからまじめにやってくれよホンマに

 

 

茂みから勢いよく立ち上がり走りだすと、いきなり発砲してきた。

それを着弾点を見切って素早くかわす。当たるか馬鹿

 

相手も姿を晒しながら撃ってくる。おやコイツは…

 

「ナツル!ボケッとすんな!!」

 

紅音が撃ちながら激をとばす。まあそりゃそーだ

 

俺は相手の弾丸の軌道上に炎を放ち、当たりそうなものは全て相殺する。一応魔法(ツァウバー)は自在に使えるようになった。

 

それを続けてると、痺れを切らしたのか相手が俺に向かって突進してきやがった。

 

「ぐっ!」まさか接近してくるとは思ってなかったからもろに激突する。しかもそのまま地面に押し倒され、マウントポジションを取られた。テラ屈辱

 

 

「瀬能ナツルだな」

女は銃口を俺の額に合わせ、静かに口を開く。

 

「お前らと戦ってる暇はぐぅっ!?」

 

なんか喋ってる途中だったが無視。銃の真横に来るように顔を突き出し、それと同時に貫手をインボディ。

卑怯?勝ちゃぁいいんだよ勝ちゃぁ

 

「くっ…!!」

「くたばれ!」

 

怯んだ隙を見逃さず紅音が(ゲヴェアー)で乱射する。しかし相手の方が反応が一瞬早く、全てかわしてそのまま走り去って行った。

 

「ちっ、逃げやがったか」

「どっちかっつーと引いてもらったんじゃねーの」

 

二対一でほぼ互角だし、一対一(サシ)で戦うにはまだ経験がたんねーかな。

 

「無様ね」

 

いきなり冷たい一言が浴びせられる。知らない間に雫が立っていた。今の見てたの?

 

「てめぇ!」

紅音が咄嗟に銃を向ける。しかし雫は無言で短剣を見せた。牽制のつもりか?

 

「戦闘を見てたけど、まだ素人の域を出ないわね。もう少し工夫しなさい」

「ミスったのはナツルだ。あたしじゃねえ」

 

お前最後仕留め損なったじゃねーか。いい加減無闇矢鱈に撃ちまくるのやめろよ

 

「フォローするのも相方の役目じゃないかしら?」

「……ちっ」

紅音は荒々しく舌打ちをすると校舎の方へ歩いていった。

 

あとには俺と雫が残る。

 

「瀬能君、あなたの実力はそんなものなの?」

 

いきなりそれかよ。ほっとけや、奇っ怪な武器持った奴と戦い慣れてる訳ねーだろ

 

「あんたこそどーゆーつもりだ」

「何がかしら」

 

惚けやがって。目をつむりながら髪をかきあげんな、似合うだろ

 

「さっきの奴の腕輪は赤、つまりあんたの味方だ」

「そうみたいね」

「…それにあいつ。こないだの生徒会役員じゃないのか?」

 

俺が戦闘中に気付いたのはこれだ。前に会ったことがある。

多分紅音は気づいてないだろう。俺も言うつもりはない。知ったらきっと人前でも平気でドンパチするだろうから

 

「あら、よく分かったわね。瀬能君は観察力に優れているみたい」

「茶化すなよ」少しうれしいけど

 

「俺を女子部にいれたことといい今の発言といい……あんた俺に味方を倒させたいのか?それとも他になにか考えでもあんのか?」

「さあ」

 

どうやらなにも言う気はないようだ。黙って働けってか?

しかし雫の方が立場が上なのは確かだ。屈辱的だが逆らっても俺が不利なだけだし、今は機会を待つか…

 

 

「もうすぐ授業よ。教室に行きなさい」

「この格好でか」今は女だ、早く自分の意思で戻れるようになりたーい

 

「女子部のよ」

 

雫は一言そう言って去って行った。

 

機会が来る前にストレスで爆散したりしないだろうか。それが心配だ

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

教室に行ってからは酷かった。

 

ますみがでっちあげた新聞を鵜呑みにした女子生徒たちが押し寄せて来たのだ。

 

そのうえ委員長ら三人が率先して商売を始めやがった。俺に儲けがこないってのはおかしくねー?

 

押し付けられた手紙とかは返事書かなきゃなんねーし最悪だよ。マジで

午前中のほとんどがそういったイベントで潰れた。

 

 

…最近真面目に授業受けた記憶がないんだが、俺の高校生活これでいいのか?

 

 

「…そうだ、委員長さん」

「何ですか?報酬ならありませんよ」

 

ねーのかよ。

 

思わず金勘定してる会計を見た。あれ俺のおかげだろ?

色々納得出来んが今は置いとこう。話長くなりそうだし

 

「さっき写真を撮ってたけど…」

「販売用です」まだ稼ぐ気かよ

 

「一枚男子部の瀬能さんに…」

ちょっと言いよどむ。きわどいのは撮ってなかったから普通なのがくると思うが…大丈夫かな

 

「同じ名前の男の子?知り合いですか」

「えっ、ええ、まあ…」

 

同一人物です

 

東田に渡しとかねーと受け取るまでずっとうるさいからなアイツ。それに雫の写真はなんかあった時に使えるかもしれん

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

昼休み。

 

女子部の食堂は初めてだがかなり綺麗だった。

 

男子部のはなんか昭和な空気が漂うし、料理はマズい。だから購買はいつでも人でごった返してる。この差はなんだ

 

 

「あ・あの…」

 

男子部との格差社会に軽くカルチャーショックを受けていると、知らない女の子に声をかけられた。

 

「瀬能ナツルさんですよねっ。ごっ・ご飯ご一緒してもいいですか!?」

 

見る限り、どうやら一年らしい。初々しいねぇ

 

「あー牧恵ずるい!」

「抜け駆けよ!」

 

一人の少女が声をかけたのをきっかけに、周りがどんどん「私も私も」と押しかけてくる。

なんか大事になってきたな

 

「一緒に食べたい」なんかはいいとしても「胸を触らせてください」とか「パンツちょうだい」ってのはなんだよ。

 

「やめてください、皆さん」

 

唐突に声が響いた、沙倉の声だ。

 

「ナツルさんは病弱で、復学したばかりなんですよ?そんなに騒がないでください」

沙倉の言葉にまとわり付いてた奴らは、蜘蛛の子を散らすように離れていく。

 

そういえば俺は病気で休学してたことになってたんだっけ。忘れてた

 

「ナツルさん、ご飯一緒に食べませんか?」私、ご機嫌ですと言わんばかりのいい笑顔。

 

「いや、でも…」

 

告白されてから会ってないし…正直、色々気まずい。

 

「雫ちゃんも一緒に食べたがってますし」

 

余計気まずいよ

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

結局、雫や沙倉と一緒に昼飯を食ことになった。押しに弱いなぁ俺…

 

「初めまして。楓からいろいろ話は聞いているわ瀬能ナツルさん。三郷雫よ」

 

雫は当然といった感じで自己紹介してくる。女の姿では初対面ということにしたいんだろう

 

「初めまして、生徒会長」

「雫でいいわ」そう言ってカツ丼に箸をつけた。似合わねー

 

そこから色々な話しをした。佐倉と映画を見に行ったこととか俺が加わり星鐵二大美少女から三大美少女になったこととか、話題がギリギリっぽいのは気のせいだろうか?

 

 

「そういえば新聞部の号外。私も読んだわ」

 

思わず飲んでたお茶を吹き出しそうになった。なんて爆弾放りやがんだコイツ…!

 

「もー、駄目だよ雫ちゃん。あんなの嘘なんだから」

「そうなの?」

 

そうなんだけど、なんで本人に聞かないの?

 

「絶対そう。ナツルさんは…一途なんだから」

いや、常日頃からハーレムルートを探してますけど

 

 

「そう…なら今はどんな男性(・・)に恋しているのかしら」

雫はわざと男性のとこを強調した。

 

「男子部の人かしら、瀬能さんに好かれてる人が羨ましいわ」

 

何で俺が恋愛してるみたいになってんの?あと沙倉が驚愕といった顔で動かないんだけど。

 

「ごちそうさま」

 

考えてるうちに雫が席を立った。いつの間に食ったんだこいつ。

 

ていうかかき回すだけかき回して退散する気?いい性格してるじゃないのさ

 

 

「そういえば、一年の近藤さん。あなたの知人?」

 

知ってるくせに、わざと聞いてんだろ

 

「だとしたらどうなんですか?」

「彼女。なかなかいい子ね」

「そういうのは本人に言ってあげてください」

 

雫は返答せず去っていった。今まで黙ってた沙倉も。

 

「…………帰ります…」

 

まだかなり食材が残っているトレイを持って立ち去っていく。

 

なんか思いつめた顔をしてたみたいだけど大丈夫かあいつ

 

 

 

     ☆     ★     ☆

 

 

 

その日、学校が終わった後紅音を家に呼んだ。これからのことについて話し合うためだ。

 

「ナツルさんは見てて退屈しませんね」

「やかましい」

 

ハラキリトラの感想に悪態をつく。

他人事ならそりゃ面白いだろうな。

 

「とにかく色々あって何から手をつけりゃいいのか…変身がランダムってのも問題だしなぁ」

「ですね…」

 

紅音と俺。人数は二人、ため息は一つ。最近いいことねーなー

 

すると下の階からドタバタと音がした。何事?

 

「ナツルーあがったよー!」

ドアを勢いよく開け放ち、水琴がいきなり現れた。どうする?

 

→戦う  踊る  ボコる

 防ぐ  召喚  凹ます

 殴る  炙る  ヒミツ

 寝る  必殺  逃げる

 

 

「み・水琴さん鍵は…?」

 

個人的に真ん中の下から二段目を選ぼうとしたが、紅音に先をこされた。やはりスピードが大事か

 

「あれ?紅音ちゃんじゃん。なに、部屋にまであがり込む仲だったの」

「ええと…」

 

水琴の言葉にすぐさま紅音は俺の方を見だした。

すぐに弱気になんのがこいつの悪い癖だ。

 

「水琴てめぇー、この前飾りつけした時うちに忘れ物してっただろ。『我は力に在って生命に在らず』とか夜中に聞こえてくるんですけど」

 

助け船って訳じゃないが横から口を挟む。真実だしな

 

夜起きてトイレに行った時本気でビビったぞ

 

「あ、やっぱりここだったか。なかったから探してたんだ」

「早く回収してくれ」これ以上何かに選ばれるのはたくさんだ

 

いけない、いけないとか言って水琴は一階(した)に降りて行く。どこで手に入れた物なんだろうか。

 

「助かりました…」

「いや、別に」

「水琴さんなにしに来たんでしょうか…」

 

少なくとも厄介ごとで来たのは確かだ。

しばらくして水琴が帰ってきた。手に不気味な置物を抱えて。

 

「ナツルー。とくに体に異常ない?」

「そんな危険な物人ん家に忘れていったのか」

 

幼なじみだよね、俺たち?なに違うの?

 

「まあそれはおいといて」

 

置いとくなよ

 

「これ、知ってるでしょ」

 

水琴が突き付けてきたのは朝配られてた号外。破り捨ててぇ…

 

「ますみが仕掛けたのよ。けしかけたのはあたしだけど」

 

黒幕はコイツか!思わずぶん殴りそうになったが理性で全力カバー。

 

 

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………よし、抑え込んだ。

 

埋めるのは全部吐かせてからだ。

 

 

「あの…それで…」

 

紅音が俺の代わりに質問をする。ナイス。相棒

 

「女ナツルについて色々調べたいから手を貸してちょうだい」

 

貸しを返してもらった記憶がないんだが

 

「それに…他にも知りたいことが……」

 

なんか急に顔を赤くして下を向いた。知りたいこと?

 

「それだけの用事で来たのか?」

 

俺の言葉に水琴は直ぐ様頭をあげる。

 

「なによ。ホントは学校で言いたかったのにいないんだもん」

頭のアンテナ(あほ毛)を突き付けてくる。どうなってんのそれ?

 

会えないのも無理は無い。ずっと女子部にいたからな。言えんけど

 

 

それで話しは終わったのだろう。水琴は笑顔で伸びをして

 

「ナツル晩ご飯まだでしょ。作ってあげよっか」

「いらん」俺は即答した。

「なによー、おいしいもの作ってあげようと思ったのに」

 

どうせカレーだろ、それかラーメン。それなら自分でやった方がうまく作れる

 

それに…

 

「お前のせいで一時期カレー中毒になった。もう四角く白い部屋に入りたくはない!」

 

 

思い出すのは両親の心配そうな目、クラスメイトからの寄せ書き、医者の患者を見るような眼差し、浮かんでは消えるカレーの残像……、辛かったなぁ…カレーなだけに。思い出すと目頭が熱くなる。

 

 

「バッカみたい」

「キサマァァァ!!!」

 

 

言うに事欠いてそれか!今だ完治してなくて林間学校のときクラスから離れて一人寂しく携帯ブロック食を食ってたんだぞ!

それを馬鹿みたいだぁ?加害者のくせに…加害者のくせにぃっ!

 

 

「コロシテヤル…コロシテヤルゾォォ!!」

「駄目…ナツルさん駄目です!!」

 

水琴につかみ掛かろうとしたら、それまで黙って様子をうかがっていた紅音が怯えながらも俺を羽交い締めにしてきた。

かなり力を入れてるらしく振りほどけない。非力のくせに邪魔しやがってぇ!

 

「離せぇぇっ!離しやが――」

「ていっ」

「ぐぼぉっ!?」

 

身動きできないのをいいことに水琴が鳩尾に拳を打ち込む。コイツ人体の急所の一つを…!

 

 

「それじゃあ明日の朝、女ナツルを見張るからこの家集合ね。遅刻はしないこと!」

 

崩れ落ちる俺を一瞥もせず、水琴は何食わぬ顔で帰って行った。

 

「畜生…疫病神め!」

「なかなか大変ですねぇ」

 

やれやれ、といった感じのハラキリトラの呟きが静かに部屋に響いた。誰か代わってほしい…マジで

 


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