けんぷファーt!   作:nick

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時間的に今年最後のお話になります。つまり平成最後。

みなさん良いお年を!


第85話 嫌疑

熱狂に湧く闘技場の観客席。

 

類い稀な激戦を見せられて、休憩する暇もなく次の戦いが始まると知ってその熱はうなぎ登りに上がっていく。

 

しかし、そんな中でも一角だけが場違いなまでに静まり返っていた。

 

「妙な流れになってきたな」

 

紅音が舞台の上を見つめながら呟く。

 

つい先程…それこそ数分前まで、突然目の前に広がった銀河に困惑をしていたが、今は険悪な表情をしている。

 

「今すぐ決勝戦なんて…ナツルさんに不利すぎるでしょ!むちゃくちゃだ!」

「それが許されるんだろ。ナツル(あいつ)もそれを分かってるから少しでも有利になるように身体を休めてんだよ」

 

遠く離れた所でも取り乱しているのが分かる、首輪とマントを付けた褐色肌の少年。

その少年に詰め寄られながらも微動だにせずリラックスした様子の青い髪の色をした少年。

 

「な…ナツルくん大丈夫かなぁ…?きっと勝てる…よね…?」

「さぁな。相手チャンピオンだろ?ムリなんじゃねえか?」

「そ、そんなぁ」

 

素っ気ない紅音の言葉に、玲は瞳を潤ませる。

 

「納得いきませんよ!理不尽すぎるでしょ!ここにいる奴ら全員、どうして誰もなにも言わないんだ!チャンピオンならなにやってもいいのか!?」

「うるせえなぁ…少し黙ってろよ袋、ただでさえ周りがうるせえんだから。てかなにお前、そんな怒るほどナツルのこと好きだったのか?」

「イヤそれは…なんでアカネさんはそんなに冷静なんですか!?」

 

客席の(へり)に肘をつき、普段通り…いや普段見せる興味がないときの態度以上の表情で舞台に顔を向ける紅音。今にも眠りそうだ。

 

『アカネはナツルが心配じゃないホー?』

「んなもんいるかよあいつに」

「どうして?」

「あいつのムカつくところはどんなに不利な状況でも、それを無視した戦い方が出来る事だ。ムカつくけど普通の人間なら無理な条件付けられても、ものともしねえよ。ムカつくけどな」

 

『ムカつくって言い過ぎだほー』

「ムっカつくけどな…!」

「4度目!?」

 

かなり気持ちの込められた『ムカつく』であった。

 

「歪ではあるけど信用してるのね…じゃあ、アタシも信じるわん。願わくばアタシの望みも叶えてくれる事も…」

「……一度送り出したら、帰ってきたとき笑顔で "おかえり" って言うのが仲間…なんだよね、ナツルくん」

 

心配そうに眉をひそめて、祈るように両手を握りしめる玲。しかしその目は決して舞台上の仲間から逸らされる事はない。

 

 

―――その人物が登場してくるまでは。

 

 

「ようやく相手が出てきたな」

「ですね。ってあれがチャンピオン?なんか学生服着てるように見えるんですけど」

「あの格好がお気に入りみたいなのよぅ。昔はそうでもなかったんだけど、今じゃ戦闘時だけじゃなくって街中でもあの格好よ?」

「それは普通…じゃねぇな。街の外観的に」

 

中世ヨーロッパ風の街並みの中を颯爽と歩く学生服の少女。

とても場違いな感じをさせられる。首にコード式イアホンもかけているし、彼女だけタイムスリップでもして来たかのような出で立ちだ。

 

 

「うそ……」

 

 

入場してきた人間をどことなく気楽に評価している三人をよそに、それまでの様子を一変させる者がいた。

玲は今まで見つめていたナツルから目を離し、まぶたを大きく開いて食い入るように客席から身を乗り出す。

 

『レイちゃん!そんなに前に出たら危ないホー!…レイちゃん?』

「うそ…ウソ、なに、なんで、なんで?」

「どうした白いの。空腹か?」

 

普段彼女をどう思っているかありありと分かる一言である。

 

「どうかしたんですか?」

「レイちゃんどうしたの?何かあった?」

 

様子がおかしい少女に仲間たちが注目しだす。

しかし本人は御構いなしに一点を見つめ続けて、疑問の言葉を繰り返すのみだ。

 

やがて試合開始の合図が響き渡り―――

 

「『ギャラクシアンエクスプロージョン!!』」

 

「うわっ!?」

「きゃあっ!」

「なっ、2度目かよ!」

 

突然(再度)広がった銀河と閃光と爆発に、客席全てに動揺が走る。

 

そしてすぐに上がる大歓声。

 

大会が開かれる度に行われる決勝戦はいつもチャンピオンの圧勝。それを否定するかのような絶対的な力の一撃。

長年無意識に溜まっていた鬱憤を晴らすような光景に観客たちの興奮は否応なしに高まっていってるようだ。

 

「玲!みんなも、ここにいたのか!!」

「、! っ善!」

 

周囲との温度差があるのせいで、不自然なほど静かに見える一角に、先程まで舞台上で戦っていた少年とその仲魔が急いで駆けつける。

 

「善っ善っ、あの、あの子、あのナツルくんのっ、あのっ、けほ、けほっ」

「分かった、分かっているから落ち着くんだ玲」

 

言葉にならないくらいパニックに陥っている少女にきちんと呼吸をするように促す善。

尋常じゃない様子に紅音たちも舞台ではなく二人に視線を集める。

 

「どうしたおめえら。なんかあったのか?」

「ああ…いや、私的な事なのだがそれがあまりにも衝撃的だったのだ」

「ふぅん?」

 

紅音は声をかけはしたが興味自体は薄いらしく、要領を得ない返事にも特に気にはしていない。

しばらく胡乱げな表情で善を見つめていたが、それ以上続く言葉がなかったこともあり、爆煙が収まり始めた舞台上に再び顔を向ける。

 

そこにはさっきまでと変わらない光景が広がっていた。

一度目の爆発より多少は威力が低かったとはいえ、天地を揺るがした攻撃を受けたにもかかわらず目立った外傷のない学生服姿で薙刀を持った少女。

両肩まですっぽり覆うタイプの手甲を装着。サムライ隊士服を着込み、こめかみから血を流し続ける少年。

 

 

「……!やはり、見間違いなどではない。彼女だ!」

「なんでこんなところに…?」

「瀬能と同じ方法でこの世界にやって来たのか…?しかし、そうだとしても腑に落ちない。彼女は他人に不利を強いるような人間ではなかったはずだ!」

 

対峙する男と女。それに付き従う黒猫と白虎。

 

「なにがあったのだ…一体、私たちと別れてから君になにがあったというんだ……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「汐見…!」

「琴音ちゃん、なんで………?」

 

 

 

 

 

汐見(しおみ) 琴音(ことね)

 

Lv:??

 

HP:???/???

MP:??/??

 

打撃:?

貫通:?

斬撃:?

火炎:?

氷結:?

電撃:?

衝撃:?

核熱:?

念動:?

破魔:?

呪殺:?

 

力:??

魔:??

技:??

速:??

運:??

 

 

 

備考:ペルソナ3ポータブル女主人公。『汐見琴音』は舞台版での名前。




PQ2面白え。

まだ途中だけど影響を受けてステータスに核熱と念動を追加しました。

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