ViVidかと思ったら無印でした……   作:カガヤ

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おまたせしました!
これで学校の怪談シリーズ終わりです。


第64話「学校の怪談(終)人面犬」

帰りたい。

 

「それでな、花子が言うんだよ。『最近、ちょっと太ってきたでしょ』 ってよ。もうドストレートに言ってくるわけよ! そりゃさ、俺もさ、最近お腹出てきたかな? とは思ってたけど、疑問形で言って欲しいわけよ! もう少し言い方ってものがあると思うわけよ!」

「旦那、思春期の女の子ってのはそういうもんでさ。はい、がんもどき」

「花子は思春期どころか、もう数十年は歳食ってるがな。ガハハハハッ!」

 

さっきから酒を飲みながら愚痴をこぼしているのが、人面犬のケンさん。

そんなケンさんに相槌を打ちながらおでんを差し出しているのが、のっぺらぼうのガンさん。

そして、ここは校舎裏にあるおでんの屋台。

なんかもう色々とツッコミどころがありすぎるけど、なぜこうなったか思い出してみよう。

 

 

 

今日の放課後、なのは達が管理局の仕事や家の用事でみんな先に帰ってしまったので、珍しく1人で帰ろうとするとすると声をかけられた。

 

「よう、おめぇさんが健人か」

「はい?」

 

突然足元から名前を呼ばれ下を向くと、柴犬の身体に人の顔をした人面犬がいた。

渡〇也さんみたいなシブいおっさん顔で声も渋い。

周りに誰もいなくてよかった。ご都合主義っぽいけど。

 

「えーっと、どちら様ですか?」

「俺を見てそんな反応するとは、ウワサ以上に肝っ玉がすわった坊主だな。よっし、気に入った。健人、ちょっと付き合え」

「付き合うって、どこに?」

「なーに、ちょっとそこに行きつけの屋台があってな。心配すんな、俺の奢りだ」

 

ニヤっとニヒルに笑って先導する人面犬の後を付いていくと、校舎裏の一角にいつの間にか屋台があった。

あれ? こんな屋台あったっけ?

 

「ここはな、普通の人間には見る事も出来ない隠れた名店ってやつよ。お前さんなら見れると思ったさ。やっぱり俺達とは相性がいいみたいだからな。おう、親父。コイツが噂の健人だ」

「おう、旦那。それに、ようこそ俺の屋台へ! 俺がのっぺらぼうのガンってんだ。よろしくな、健人!」

 

屋台から顔を出したのは、なんとのっぺらぼうだった。

目や口がなくてどうやって見たり話したりしてるか分からないけど、お化けだから問題ないか。

 

「ガッハハハハッ! ガンさん見ても全然動じてないぜ。流石だな」

「えぇ、ウワサ通りの大物だ!」

 

のっぺらぼうを見ても全く動じていない俺を見て、人面犬とのっぺらぼう、ゲンさんは豪快に笑いあった。

そりゃ、これでも管理外世界とかで色々なモンスターにも出会ってるし、学校でも動く人体模型やら骨格標本を見た後じゃ、インパクトに負けるさ。

 

「あのー? 俺は一体何の用で呼ばれたのでしょうか?」

「まーまーまずは一杯飲みねぇ。安心しな。これはただのリンゴジュースだ」

「はぁ、どうも」

 

流されるまま席に座り、ガンさんから差し出されたリンゴジュースを受け取る。

 

「おっと、そういやまだ自己紹介してなかったな。俺は見ての通り人面犬だ。ケンさんと呼んでくれ」

「ケンさん、ですか」

「おうよ! 俺はケンさん、こっちはガンさんだ」

 

人面ケンだから、ケンさんかな。

なら、のっぺらぼうとガンの繋がりは、わかんねぇ。

 

「でだ。夏から随分とお前さんの大活躍を耳にしてね。ぜひ一度会ってみようと思ったわけだ」

「えっと、俺の活躍?」

 

はて? 管理局でゼスト隊なりアースラ組なり色々な人と協力して、そこそこ活躍はしてるけどなんでこの人達が知ってるんだろ?

 

「お前さんが花子達の相談事にのってるって話だよ」

「ま、一部相談事じゃなくてメリーちゃんみたいな厄介事になっちまったのもあるがな」

「あーアレ、ですか。確かにアレは厄介事でしたね」

 

最も、厄介なのは俺じゃなくて向こうにとっての厄介だったけど。

 

 

 

その①:メリーさんの電話

 

始まりは、アリシアとゲームをしていた時、俺のスマホにかかってきた知らない番号からの電話からだった。

 

『もしもし、私メリーさん。今駅前にいるの』

「へっ?」

 

いきなり何事かと思ったが、すぐに電話は切れてしまった。

 

「何々? 悪戯電話だったの?」

「そうかも、メリーさんって子から電話だったんだけどすぐに切れた。今駅前にいるんだって」

「メリーさん? どこかで聞いたことあるような気がする」

 

実は俺も聞き覚えがある名前なんだよな。

頭にまず浮かんだのは羊頭の海賊船だけど、多分違う。

 

「それは、メリーさんの羊のメリーさんの事じゃないかな」

「「それだ!」」

 

フェイトのおかげでスッキリした俺とアリシアはゲームを再開した。

それから数日後、はやての家で勉強会をしているとまた電話がかかってきた。

 

『私メリーさん、今あなたの家の前にいるの』

「今友達の家にいるから、俺そこにいないけど?」

『えっ? うそ、せっかく何日もかけてここまで来たのに……』

 

そういうとメリーさんからの電話はまた切れてしまった。

 

「今の誰からやったの?」

「ん、メリーさんからの電話だったんだけど、要領を得ない電話だったんだよな」

「へぇ、また私らの知らない間に女の子と仲良くなったんやなぁ」

「「………」」

「なんか言ってくれヴィータ、アインス」

「流石健人さん! すごいフラグ能力です!」

 

ジト目で見てくるはやてと、無言でため息をついてるヴィータと苦笑いを浮かべるアインス。

それになぜか感心するツヴァイ。

良く分からないが、冤罪だと言っておこう。

 

更に数日後。

ナカジマ家でギンガやノーヴェと留守番をしている時、また電話が鳴った。

 

『もしもし、私メリーさん。あなたが見つからないの。どこにいるの?』

 

メリーさんは若干涙声になってた。

 

「えっと、どういえばいいかな。実家、にいるんだよ」

 

里帰りみたいな言い方だけど、テスタロッサ家よりはナカジマ家の方が実家って言い方があってるよな。

 

『……分かった。絶対にそこに行く』

 

そう言って電話は切れた。

今までは割と暗めだったけど、今回は意を決したような口調だったな。

さて、どうやってここまで来るのかな。

が、ギンガとノーヴェと遊んでいるうちにそんな事をすっかり忘れてしまい、更に数日後。

 

『もしもし……私、メリーさん……ここ、どこ? 見た事ない建物だらけだよぉ』

 

メリーさんはミッドチルダの街中で迷子になっていた。

管理局員に保護され、俺の名前を出した事もあり仕方がないのでクイントさんと迎えに行った。

 

「私、め“り”ぃ~ざん! やっどあなだにあえたのぉ~!!」

「あらあら、相変わらずモテモテね♪」

 

チンクのような銀色の長髪少女に抱きつかれ、困っている様子をほのぼのとした暖かい視線で見守る局員やクイントさん。

いや、この子お化けだから都市伝説だから、普通の女の子じゃないから!

アレ? 俺の周りに普通の女の子、いない??

 

そして、メリーさんを無事に地球に送り届けた。

その際メリーさんからは、照れ隠しからか俺を呪い殺さんばかりに睨まれた。

この世界に来て、女の子にあそこまで恨まれたのは初めての事だったのでちょっと嬉しいと言ったら、ドン引きされた。

 

 

その②:呪いのビデオ

 

ある日、レンタルしたDVDを返そうとしたらビデオテープが混ざっていた。

そのビデオテープにはラベルも何もない。

ビデオデッキなんて持ってないし、誰かのいたずらかと思いそのままゴミに出した。

 

そうしたら、翌日またビデオテープがリビングに置かれていた。

なので捨てた。

翌日、またビデオテープがリビングに置かれていた。

なので捨てた。

翌日、またビデオテープが(ry

 

「ちょっと、いい加減どうにかしなさいよ! これ見たらいいじゃない!」

 

ビデオテープをスルーし続けていたら、アリシアがついに我慢できなくなった。

そりゃ、毎回ビデオテープ発見してるのアリシアだもんな、怖くもなるか。

俺もビデオテープに何が映っているかは気になって来ているけど。

 

「うーん、これが万が一レヴィ達からのビデオテープだったら、と思うとなぁ……」

「「あっ」」

 

正直それが一番ありそうで怖いんだよね。

1回チョコで同じことあったし。

 

「というわけで、これ破壊するか」

「それはちょっとかわいそうだと思うよ。ただ単に近況報告を送ってくれてるだけかもしれないし」

「未来の異世界から?」

「思い出したくないけど、未来の異世界に行ったレヴィ達から贈り物が届くの、これが初めてじゃないんだよな」

 

運動会の時にね……

 

「そ、そういえばそうだったわね」

 

アリシアもあの時を思い出して軽く鳥肌が立ったようだ。

 

「でもだからって壊すのは、せめて魔力ダメージで撃ってみて何も反応なければ見てみたらどうかな?」

「フェイト、それで何がどう変わるんだ?」

「あーもう、とにかくただのビデオじゃないんだから。再生したら何が起きるか分かったもんじゃないわよ。壊すなら早く壊しちゃいなさいよ」

「あいよ。シェルブリット」

<おう。久々の出番だな>

 

と、シェルブリットで破壊しようとしたら、俺のスマホが鳴った。

取ってみると、なんとメリーさんからだった。

 

『もしもし、私メリーさん。あなたの所に届いたビデオテープ、どうだった?』

「これ、お前の仕業かよ!?」

『そうよ。この前はとんでもない目に合わされたからちょっとした仕返しにって、友達に嫌がらせを頼んだよ。で、どうだったかしら?』

「どうだったって言われても、まだ見てないぞ。明らかに怪しい物だし、そもそもうちにビデオデッキなんてないし」

『えっ、ビデオデッキが買えないほど貧乏だったの? それは悪い事したわね』

 

ビデオデッキが高級品って、いつの時代の話だ。

 

「違う違う。持ってないって意味だ。そもそも今時ビデオデッキなんて持ってる人いないぞ」

『えっ、嘘、私の方が時代遅れだと言うの……あ、一度もあのテープ見てないのよね?』

「見てないぞ。店にだって売ってないだろうし。てかこれ何が映ってるんだ?」

『そのビデオテープには私の友達の貞子ちゃんがいるの。で、再生したらあなたを驚かす予定だったの』

 

へぇ、貞子ねぇ……貞子ぉ!?

 

「お前それ見たら1週間後に死ぬやつじゃないか!? 俺を殺す気か!?」

『大丈夫よ。言ったでしょ、嫌がらせって。一週間下痢が止まらなくなる程度の力しかないから』

「地味に嫌な嫌がらせだな!? で、これどうするんだよ。壊していいか?」

『ダメに決まってるでしょ! ああもう! そのビデオテープ、明日でいいから花子さんに渡して! 次はこうはいかないからね、覚えておきなさい!』

 

そう言って電話はキレながら切られた。

 

「というわけでこのビデオテープは明日学校に、ってどうしたんだ?」

 

見ると、アリシアが白目を向いて気絶していて、フェイトがビデオテープを持って困った顔をしていた。

 

「このビデオテープ、耳を澄ませると女の子の泣き声聞こえるって言ったら姉さんが……」

 

ビデオテープに耳を寄せると確かに女の子が泣いていた。

 

『シクシクシク。ごめんなさい。こわさないでください。おうちにかえしてください』

「……貞子が泣くなよ」

 

翌日、花子さんにビデオテープを渡した。

その後、メリーさんは何度か俺に嫌がらせをしようとして悉く失敗してたらしい。

俺は嫌がらせのターゲットなのに、らしい、という言い方になるのは理由がある。

嫌がらせが大抵アリシアに被害がいってしまい、俺には直接届かない事ばかりだった。

で、フェイト経由でその事を知った花子さんに、メリーさんはしこたま怒られて嫌がらせは終わった。

 

 

「そういえば、そんな事もあったね。元気かなメリーさんと貞子さん」

「あの嬢ちゃん達なら今もどこかで誰かを驚かせてるぜ。全く、少し前まではああじゃなかったんだがな」

 

そう言うとケンさんは真顔で俺に向き直った。

どうでもいいけど、さっきから犬の手で器用におでん食べてるね。

 

「メリーちゃんや貞ちゃんは勿論、花ちゃんやテケちゃんも、昔はもっとおどろおどろしいお化けだったんでさ」

 

ガンさんが懐かしむような表情浮かべて、頷きながら語ってくれた。

のっぺらぼうだけど何となく表情が分かるのがすごい。

 

「見た目だって今みたいな明るい美少女ではなくな、お化けらしいグロテスクなものだったんだ。それがだ」

 

そこで言葉を切って、さっきと違い俺をニヤリと見つめるケンさん。

 

「お前さんと関わってからは普通の、見た目通りの年頃の女の子のようになっちまった。他の連中もだけどよ。本来なら、それはお化けとしてどうなんだって話なんだがが。本人たちが幸せならそれに越した事はねぇよな」

 

そう言いながらケンさんは空いた俺のグラスにジュースを注いでくれた。

ん~これはつまり、花子さん達に悪影響(?)を与えた俺を見定めにきたって所かな?

 

「なんだか将来の義理息子を見定めに来たみたいですねぇ、旦那」

「まーなー健人なら花子達を嫁に出しても問題ねぇだろうな、人間とお化けだがそこに愛があればいいんだよ。ガッハッハッハッハッ!」

 

あっ、これなんかヤバイ空気になってくるやつだ。

なんとか修正しなければ。

 

「え、えっと、ケンさんはみんなの父親代わりみたいなものなんですね」

「そうさなぁ、なんだかんだあいつらの面倒見てたらいつの間にか親父さんとか言われてそうなってたなぁ……けどなぁ、最近あいつら反抗期なんだよ。こないだなんてなぁ……」

 

と、ここで冒頭の話に戻る。

おでん美味しいからこのまま話に付き合ってもいいんだけど、フェイトの手料理が沢山食べれなくなるしそろそろ帰らないと。

 

「すみません。そろそろ帰りたいんですけど」

「おーそうだな。あまり遅くまで付き合わせちゃって悪かったな。ま、旦那が言いたかった事は、健人達がこの学校卒業してもたまにでいいから遊びに来て、花ちゃん達と仲良くしてくれって事さ」

「うん、勿論。俺もなのは達も絶対に花子さん達の事忘れないよ。ガンさんやケンさんの事もね。今度はなのは達もこの屋台に誘ってくるよ」

 

言われなくても花子達との縁を切るなんて絶対にしない。

 

「ははっ、そいつは嬉しいねぇ。次の機会がいつになるのかは、わかりやせんけどねぇ……」

 

そう言い残し、ガンさんの屋台はまるで最初からなかったかのように消えた……

 

ってのがよくある話のオチだと思うんだけどなぁ。

 

「ほーら、ケンさん! お酒飲みすぎ! 全く健人の前で恥ずかしい姿見せないの!」

 

屋台が消えるなんて事はなく、すっかり上機嫌になったケンさんがお酒をガバガバ飲み、酔いつぶれてしまった。

で、俺とガンさんも始末に負えなくなり花子さんを呼んで回収してもらう事にしたのだが。

 

「はい、終わり。今度は少し髪の色を変えてみたけど、どうかしら?」

「すごいです、流石はプレシアさんです! ありがとう、テケちゃん」

「わぁ~! すっごく綺麗になったよ、透子ちゃん。いいなぁ」

「良かったらあなたもやってあげましょうか?」

「えっ、良いんですか!? ぜひお願いします!」

 

俺を心配して迎えに来たプレシアに新しい化粧を施されて見た目が〇桐桜からカ〇マになった透明人間さん、それを見て自分も化粧をさせてもらう事にしたテケテケさん。

ちなみに透子とは、透明人間さんのあだ名のようなものらしい。

 

「こ、このおでんの出汁は一体何を使ってるんですか? 旦那がおでん大好きなのでぜひ教えてください!」

「奥さん、そいつはぁ企業秘密でさぁ。代わりにお土産としておでんを持って行ってあげてください。勿論あっしのサービスです」

「うわぁ、ありがとう。よっ、ガンさん太っ腹!」

 

プレシアと同じく俺を迎えにきたクイントさんは、ガンさんのおでんに夢中になっている。

このおでんに刺激されたクイントさんの得意料理のレパートリーにおでんが追加されたのはまた別の話。

 

「なんで、なんで私までお化け屋台に来ることになってるのよ……」

「今日は、フェイトもアルフも仕事でアースラに泊まりになったんだから、一人で留守番するよりはここでみんなでおでん食べた方がいいだろ」

「そりゃあ、ここのおでんは美味しいけど。てかなんでのっぺらぼうが作るおでんがこんなにおいしいのよ。口がないのにどうやって味見してるのよ」

 

お化けに囲まれて複雑な表情を浮かべておでんを食べるアリシア。

 

こうして、いつの間にか校舎裏でのっぺらぼうの屋台で宴会が開かれる事になった。

後日、おでんの匂いが充満する謎の校舎裏、という新しい学校の七不思議が追加されたのであった。

 

 

続く




もっと学校の怪談関係のギャグを書きたかったのですけど、どうもうまく話がまとまらないので今回で一旦終わりです。
次回からは少し年月が飛びます。
いい加減早くStsに行きたいけど、学校編をもうちょっとやりたいんじゃー

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