そろそろ怪談の季節がやってきますねー
可愛い妹も変な友達も増えて、只今絶賛小学校生活を満喫中の幸せな毎日!
だったのだけど……ちょっと最近異変が起きている気がする。
「最近、誰かに見られている気がする」
「「「えっ!?」」」
ある日の朝学校で言った言葉に、なのは達の顔色が変わった。
まぁ、そりゃそうだよな。
俺がこんな事言う原因に心当たりがあるもんなぁ……
「それって、もしかして……彼女達かな?」
「いや、なのはちゃん。そうとは限らんやろ? だってまだアレから半年くらいしか経っとらんやで?」
「じゃあ、新しい健人のストーカー?」
「フェイト、そんな新しいって、常連行事みたいな……いや、健人ならあり得るかな?」
「俺ならあり得るって怖い事言うなよアリシア。多分、彼女達じゃないと、思う。だって、もしそうなら鳥肌や悪寒を必ず感じるはずだから」
うん。間違いなくシュテル達ではない、と思いたいだけだが。
「健人君、重症やな。無理もあらへんけど」
「でもそうなると誰なんだろう? シェルブリットも何も探知してないって言うんだよな」
まぁ、シェルブリットの探知能力をすり抜けてたからあまりアテにできないんだけどな。
<悪かったな、役立たずでよ>
あ、拗ねた。
「ぜぇ、ぜぇ、草薙!」
と、楯宮が息を切らしながら登校してきた。
「あ、楯宮君おはよう」
「おはよう、友樹。大丈夫? まだ時間に余裕あるのにどうしてそんなに走ってきたの?」
今更だが、フェイトだけが友樹と名前で呼んでいる。
はやて達も名前で呼んでだ時期もあったけど、当の本人が名前で呼ばれると違和感があるから苗字で呼んで欲しいと頼んだからだ。
フェイトは最初から名前で呼んでるので違和感がないらしい。
贅沢な奴だ。
「お、おはよう。はぁ、はぁ……それよりも、楯宮。お前、お化けに知り合いでもいるのか!?」
「はい? いきなりなんだ?」
お化けの知り合いと言われて反射的に頭に浮かんだ人が数人いるけど、誰とはあえて言わない。
あ、花子さん達がいたか。
「今朝学校に来る途中で視線を感じたんだよ。でも、周りにはそれらしい人いなくて、気のせいだと思ったら声が聞こえてさ、草薙君のご友人ですか? って」
それを聞いて顔を見合わせる俺達。
そもそも、俺を草薙君と呼ぶ知り合いが学校の先生か、ここの友達くらいだ。
「で、その声の主は誰? もしくはどんな人だったんだ?」
「そんなの確かめる暇なかったぞ。一目散に逃げてきたんだから」
まぁ、普通は逃げるよな。
「それで、何か気付いたことなかったの? 例えば、声が若かったとか、健人の事で何か言いかけてたとか。あと、その時少し離れた場所でも周りに誰かいなかった?」
フェイトは、流石執務官候補生だけあって少しでも情報を聞こうとしている。
「うーん。女の子ってくらいしか分からないな。下屋則子っぽい声かな」
「それは重要じゃない。いや、重要か?」
「ホントに声だけ聞こえたんだよ。周りを見渡しても誰もいなかったし。ともかく、そいつお前に用があるみたいだったから、それだけ伝えたぞ」
「あぁ、ありがとな」
さてと、どうしますかね。
楯宮が聞いた声の主って、十中八九最近俺を監視してるのと同じだろうね。
今日は午前中で授業が終わり管理局の仕事もないし、専門家に聞いてみるか。
「それで、私の所に来たと?」
「うん、そうなんだよ花子さん」
蛇の道は蛇、と言うわけで花子さんに心当たりがないか俺とフェイト、アリシアの3人聞く事にした。
はやては足が不自由だった時にお世話になった石田先生と予定があり、なのはは店の手伝いという事でそれぞれ帰った。
本当はアリシアも用事があると帰ろうとしたがフェイトにせっかくだから一緒に行こうと誘われ、断れず渋々同行することになった。
アリスアもお化けには少しは慣れてきている。
流石にグロテスク系なテケテケさんやボディ君達は無理なようだ。
「心当たり、ねぇ」
俺や楯宮が遭遇した状況を伝えると、花子さんは明らかに何か心当たりあるって顔をして、冷や汗を流した。
「ひょっとして、花子さん。心当たり所か、犯人知ってるんじゃないの?」
「そ、そそそんなわけないじゃないフェイトちゃん」
「私フェイトじゃなくてアリシアだよ」
「犯人、庇うつもり、じゃないよね?」
アリシアの質問に明らかに動揺し、フェイトから睨まれタジタジの花子さん。
てか、犯人ってまだそのお化け何もしてないから。
被害者(?)である俺をほったらかして2人して盛り上がってるし。
「はぁ~多分、透明人間ちゃんだと思う」
「透明人間? そりゃまたどストレートなお化けだね」
ストレートすぎてすぐには思い浮かばなかった。
ん、透明人間って名前、誰かから聞いたような気がするぞ。
「で、その透明人間がなんで健人のストーカーになったの?」
「別にストーカーになったわけじゃないと思うけど、本人から聞いた方が早いよね。そこにいる透明人間ちゃん」
と、誰もいない廊下の一角を指差す花子さん。
いや、透明人間なんだから見えないだけか。
「あぅ。ど、どうして私がここにいるって分かったの花子ちゃん?」
「あのねぇ。普通の人間相手ならともかく、同じ存在の私が見えないわけないでしょ」
「あ、そうだったねぇ」
透明人間らしき声だけ聞こえるが、姿かたちはさっぱり分からない。
シェルブリットやバルディッシュのセンサーにも何にも反応がないようだ。
「えっと、あなたが透明人間さん?」
「あの、私こっちです、こっち」
今度は、フェイトが声をかけた方とは逆の方から声がした。
見えないからややこしいな。
「すみませんすみません。あの、私草薙君に相談したい事がありまして。でも、いざ本人目の前にするとどう話しかけていいか分からなくて。それで、その……」
「声をかけるタイミングを計ってたってわけか。それで最近妙に視線を感じると思ったんだよな」
「はぅ! ご、ごめんなさい!」
相変わらず声だけしか聞こえないけど、この子は今物凄く頭を下げまくってるのは分かる。
「それで健人に相談したい事ってどういう事ですか? 私達も相談に乗りますよ?」
「ホントですか!? ありがとうございます! 実は、私、もっと派手になりたいんです!」
………?
透明人間の言ってる事が良く分からなかった。
派手?
「派手、とは一体?」
「あ、あのですね。私ものすごく地味で、存在感薄いので……」
「……」
えっ? 地味ってそもそも透明人間だから見えないし、派手になっても意味ないんじゃないの?
存在感薄いのって、そもそも透明人間だから見えないし。
俺達が同時に花子さんの方を向くと、花子さんは肩をすくめてヤレヤレと苦笑いを浮かべている。
「あー、その、相談に乗ってあげて欲しいなぁ?」
分かった。
透明人間は最初花子さんに相談したけど、色々と面倒だからって俺に丸投げしたって事だ。
「「ジトー……」」
「健人君もアリシアちゃんもそんな声に出して睨まないでよ。健人君ならなんとかできるって信頼してるって事だよ」
「いや、そんな事言われても困るんだけど」
透明人間を派手にする、ってどうやって解決しろって言うのさ。
「あぅ、やっぱり、無理な相談でしたよね」
透明人間が落ち込んだ声を出してる。
「分かってます。地味な私が目立とうだなんて、身の程知らずにも程があるって思ってるんですよね」
いやいやいや、そんな事思ってないから。
と言うか、根本的に問題点がズレてるんだよなぁ。
「そもそも、あなたがどんな姿してるか私達分からないんだけど。透明なのはどうにかならないの?」
「ひいぃ~~!? そ、そんなあんまりですアリシアちゃん! 鬼畜です、鬼です!」
「えっ? えぇ~?」
突然、悲鳴をあげた透明人間に困惑するアリシア。
ん~やっぱり姿が見えないとリアクションが分かりにくい。
「透明人間の私に、透明じゃなくなれなんて、そんなのアイロンティーの喪失です!」
「えっと、アイデンティティ、だよね?」
「透明じゃない私なんて透明人間じゃありません! それだけはダメです!」
フェイトのツッコミは無視された。
「健人~後おねが~い……」
アリシアは心底ウンザリした顔をした。
気持ちは分かるけど、だからって俺に丸投げしないで欲しい。
あ、最初透明人間は俺に相談しようとしてたんだった。
なら俺が答えるしかないのか。
でも、いいアイデアが浮かばない。
仕方ない、はやて達にも相談しよう。
『至急アイデア求む! 透明人間を派手にする方法!』
『わわっ、いきなりなんや?』
『むっ、健人か。どうした?』
『ちょっ、このタイミングで念話をしてくるなよ! あ、アイス~!?』
どうやらはやて達は石田先生とカフェでお茶しているようだ。
ヴィータは、食べようとしていたアイスを落としてしまったらしい。ごめん。
『いらっしゃいま、って健人君?』
なのはは、どうやら接客途中だったようだ。
店の手伝いは一応本当だったんだな。
てっきりお化け関係に関わりたくないから逃げたんだと思ってた。
ともかく、シグナム達も含めて事情を説明しアイデアを求めたけど、みんなの反応が鈍い。
『透明人間を派手に、ですか』
『難しい注文だな』
シャマルもアインスも考えてはくれているけど、いいアイデアが浮かばないようだ。
『って言うかさ、透明人間なんだか見えねぇの当たり前じゃん。そんなのどうしろって言うんだ?』
『ヴィータ、それは思ってても言うたらあかんで』
ヴィータが至極真っ当なツッコミをする。
それは俺達もはやて達もみんな思ってる事だけど、それを言ったら元も子もない。
『あ、はいはーい! リインにいいアイデアがあります!』
と、ここで八神家でアインスとザフィーラと留守番しているツヴァイが声をあげた。
正直、期待できないが一応聞いておこう。
『ではツヴァイ君、どうぞ』
『はい、先生! 透明人間さんにお化粧をすればいいと思います!』
『あ、それいいかも』
『そうね。透明人間ちゃんも女の子だもの、化粧は必要よね』
なのはやシャマルも良い考えと言っているが、化粧か。
それって透明じゃなくなるって事なんだけど、本人がどう反応するかな。
他にいいアイデアないし。これ以上みんなに時間を取らせられないな。
『うん。そのアイデアで行ってみるよ。ありがとな、ツヴァイ。それと皆も考えてくれてありがとう』
『ええってこれくらい。ほんなら、健人君頑張ってなー』
『頑張ってね、パパ♪』
「ぶふっ!? げほっけほ!」
「い、いきなりどうしたの健人君!?」
「大丈夫、健人?」
突然のツヴァイの不意打ちにむせてしまい、花子さんや念話に参加してなかったフェイトがビックリしてしまった。
「だ、大丈夫大丈夫。それよりも透明人間さん。ちょっと思いついた事あるんだけど」
「はい。なんでしょうか?」
あ、今度はこっちにいるのか。
「化粧をしてみるのはどうかな? これなら派手になると思うけど」
「化粧、ですか? いいですね、それ!」
ダメかと思ったアイデアだったが、意外に受け入れられた。
余計なツッコミを入れず、とっとと片を付けようか。
アリシア、退屈だからって欠伸するな!
「でも、私化粧ってした事ないんでどうやればいいか分からない。花子ちゃんやった事ある?」
「やった事あるわけないでしょ。と言うか化粧するお化けなんているわけないでしょ」
流石の花子さんもゲンナリしている。
お化けは病気も化粧もない。って言うしな。
「というわけで、健人君お化粧って出来る?」
「何がというわけでなのか分からないけど、俺がやった事あるわけないでしょ」
かと言ってフェイトやアリシアもやった事はない。
なのは達もやった事はないだろうし、誰か適任はいないかと考えていると、アリシアが何かを閃いた。
「あ、じゃあお母さんにやってもらうのはどうかな?」
「えっ? プレシアさんが?」
確かに一番身近な大人だけど、あまり化粧をしている印象はないな。
「甘いよ健人。母さん、最近皺が目立ってきたからって結構厚化粧で 「あら、私がどうかしたかしら?」 え“っ? 母さん!?」
なんといつの間にかアリシアの後ろにプレシアが立っていた。
「あ、その、母さん。どうして、ここに?」
「今日は早く帰れたから、お土産に翠屋のケーキをって思ってたらなのはから話を聞いて、様子を見に来たのよ。そしたら……ねぇ? 面白い話してるじゃないアリシア?」
「えっと、その、あ、あははは」
プレシアさん、顔はニコニコ笑ってるけど、怖いです。
アリシアが涙目で助けを求めてるけど、俺とフェイトにはどうする事も出来ません。
ほら、花子さんだってブルブル震えて怖がってるし。
「なるほどね。そこにいるのが話に出てた透明人間ね」
プレシアは、花子さんの横の空間に向けて話し出した。
透明人間が見えるのだろうか?
「えっ? 私が見えるんですか?」
「えぇ、私はプレシア。アリシアとフェイトの母親で健人の、保護者代理というか寮母みたいなものかしら」
「あ、はい。よろしくお願いします」
流石プレシア。
どういう理屈か分からないけど透明人間が見えるようだ。
あれか、サーモグラフィとかそういう探知魔法でも使ってるのだろうか。
「勘よ」
ホントかよ。
お母さんすごい、ってフェイトが横で尊敬の眼差しを浮かべておりますが。
「ともかく、話は聞いていたから早速始めるけど、いいかしら?」
「お、お願いします!」
近くの空き教室でプレシアの透明人間派手化大作戦が始まった。
その間、俺達は教室の外で待っている事になった。
「化粧って結構時間かかるんだよなぁ」
「健人君。女の子の化粧はとても時間がかかるのよ。覚えておいた方が良いわよ? まぁ、私はしたことないけど」
化粧経験のない花子さんのよく分からない忠告は聞いておこう。
でも、クイントさんは化粧するけど結構早く終わってたよな。
これはアレか、クイントさんはプレシアよりかなり若いからか。
「健人?」
「うひゃぁ!?」
そんな事を考えていると、いきなり教室のドアが開いてプレシアが顔を出してきた。
「あら、何をそんなに驚いているの? 余計な事でも考えていたのかしら?」
その表情は笑顔だけど、さっきのアリシアの時のように目が笑っていない、怖い。
「まぁ、いいわ。調整が終わったから入っていいわよ」
「意外と早かったですね」
まだ5分くらいしか経ってないのに。
それに、調整? 化粧なのに調整?
ともかく、教室に入るとそこにいたのは間〇桜(Zero版)の見た目をして、メガネをかけた女の子。
恐らくこれが化粧をした透明人間なんだろうけど、声がそれっぽいからってまんまかい。
「ど、どうも。似合い、ますか?」
「うわぁ、すごく可愛い!」
「あらまぁ、すっかり変わっちゃったわね、透明人間ちゃん。そのメガネも素敵よ」
花子さん曰く、これが透明人間の素顔ではないらしい。
てっきり化粧で透明人間を視えるようにしたのかと思ったけど、それなら彼女が嫌がるか。
「察しがいいわね花子。そのメガネは私が昔、変装用に作ったものよ。まさか透明人間に使う事になるとは思わなかったわ」
透明人間がかけているメガネはどうやらかけると別の人間の姿になれる変装用魔法アイテムとの事。
プレシアが昔、アリシアを復活させようと引き籠って研究していた頃に、買い出しやら出掛ける際に目立たないようにするために作ったものだそうだ。
ん、と言う事は??
「じゃあ、母さんも昔はあんな姿に変装してたの?」
アリシアも同じ事を思い浮かべたようで、戦慄したような表情を浮かべている。
プレシアが幼女に化けて外出……ナイナイ。
「アリシア、健人。帰ったら少しOHANASIしましょうか?」
「「ごめんなさい!」」
さっきから俺は口にしてないのにどうして思ってる事がバレるんだろう。
ちなみにプレシアが変装した姿は流石に幼女姿ではなくちゃんとした大人の女性に見えるようにしていたそうだ。
「あの~私、綺麗?」
「透明人間ちゃん、置いてけぼりで寂しいのは分かるけど、口裂け女ちゃんのセリフを取るのはやめてあげなさい」
あ、やばっ。透明人間をほったらかしてた!
「ごめんごめん。眼鏡がとてもいいチャームポイントになってていいよ。さく……透明人間さん」
「うん、長髪が似合っててすごく可愛いよ」
「ありがとう! 私、長髪に憧れてたんだぁ。これで派手になりました!」
どうやら透明人間の素は短髪らしい。
髪を長くしただけで派手になるのか。
そもそも、今の状態はさっき散々嫌がっていた透明じゃない状態なんだけど、それでいいのか。
と、色々思う所があったけど、本人が喜んでいるので余計な事は言わないでおこう。
今日は余計な事は言うだけじゃなく、考えるのもよした方がいいと大事な事を学んだ。
続く
何度か書き直してこんな形に、スカさんの魔改造という話も浮かびましたけど前回やってるので今回はプレシアにその役をやってもらいました。
プレシアもプレシアで結構な天才なんですよねー