「「ごめんなさい!」」
現在、テケテケさんの顔面を全力全開で蹴り飛ばしたノーヴェと一緒に謝罪中。
ノーヴェは頭を下げているだけだが、俺は土下座中。
「いえいえ、そんな土下座までして、私はお化けなんで気にしないでください。床冷たいし固いから足痛めてしまいますわ。どうかお兄さん、立ってくださいな。そもそも内臓なんて見せてしまった私が悪いのですわ。お恥ずかしい限りです」
こちらが誠心誠意やりすぎなくらい謝ってるのを見て、テケテケさんも困惑している。
だって、あんなに綺麗に蹴り飛ばして……窓ガラスぶち割って外へまで飛び出してしまったのだから、兄としてこれくらいはしないと。
ちなみに、テケテケさんは戻って来る時にどこから持ってきたのか、ロングスカートを履いているので飛び出た内臓は見えない。
「それにしても、よくこの子をあんな遠くまで蹴り飛ばせたわね」
ノーヴェの脚力に花子さんは呆れ半分感心半分だ。
ちなみに、見た目はテケテテさんが女子高生、花子さんが小学生だが実年齢と言うか、お化け的に花子さんが先輩なのらしい。
「いやぁ、見た目幼くても戦闘機人なので」
「あ、うん。それもあるのだけど、ね」
花子さんは、上半身だけとはいえ見た目女子高生を6歳のノーヴェが何十メートルも蹴り飛ばした事に驚いているのかと思ったけど、なんだか微妙に違う事に驚いているみたいだ。
「あの~? 本当に私の事ならお気になさらず。空を飛んだみたいで気持ち良かったですし、それに頑丈なのが私の取り得ですから」
「頑丈?」
お化けだからかな?
「ちょっと失礼しますわ」
テケテケさんは、セーラー服の袖を捲り自分の腕を見せた。
「えっ? えぇ~!?」
それを見て思わず大きい声が出た。
「うわっ、すご~い!」
「むっきむきッスねぇ」
ノーヴェ達も驚いている。
それもそのはず、テケテケさんの腕は、まるでプロレスラーやボディビルダーのように筋肉でガッチガチだった。
「うふふっ、腹筋にも自信がありますわよ」
「ス、ストップストップ!」
と、今度は自分の腹を見せようとセーラー服を捲ろうとしたので、すぐに止めた。
「失礼いたしました。これははしたない真似をしてしまう所でしたね。つい年甲斐もなくはしゃいでしまいましたわ」
「あ、いえ、そういう意味ではなくてですね……」
お腹を見るのが恥ずかしい、のではなく、腹筋のついでにまた飛び出た内臓も見てしまいそうになり止めたのだった。
「うーん、テケちゃんって羞恥心がないのよねぇ。だから千切れたお腹もそのままにしてしまうのよ。私も出会った頃は色々と大変だったわ」
羞恥心とかそういう問題じゃないと思う。
てか花子さんもグロテスクなのは苦手なのね。
「それにしてもテケテケさん、どうしてそんなに鍛えたんですか? というか、お化けって筋肉付くんだ」
「お恥ずかしい話ですが、私以前は電車如きに真っ二つにされてしまうほどの軟弱な身体でしたの。その後、両足が無くなり手だけで動かなくてはなりませんのでしたので、鍛えに鍛えた結果。こんな頑丈な身体になれましたの♪ ですが、内臓がはみ出てしまうのはどうしようもありませんだしたわ」
その話を聞いて、ノーヴェ達の目の輝きはさらに増し、尊敬の眼差しをテケテケさんに向けていた。
え~っと、この話、どこからつっこめばいいのかな?
と、悩んでいると花子さんがとても穏やか笑みを浮かべて俺の肩に手を置いた。
「健人君、突っ込んだら負けよ」
あ、花子さんもツッコミたいけどツッコミが追い付かないようだ。
「お化けだからってね。限度があるのよ、限度が」
そう言って花子さんは遠い目をして窓から空を見上げた。
セッテはそんな花子さんの隣に立ち、宙に浮いて頭を撫でた。
「花子お姉さん、元気だして」
「ありがとう、セッテちゃん……セッテちゃん、空を飛べるのね。羨ましいなぁ」
セッテだけじゃなくノーヴェやウェンディも空を飛べる。
元々は単体では空を飛ぶ事は出来なかったが、幼児化したのでせっかくだから空を飛べる方が何かと便利だろうとスカさんが付けたとの事。
ギンガとスバル、それにティアナは羨ましがってたな。
それにしても、胴体立ちしてボディビルダーのように様々なポーズを決めるテケテケさん、その度に両腕の筋肉をつっついて歓声をあげるノーヴェとウェンディ。
片や年下の子に励まされて目をウルウルさせて感激している花子さん。
お化けっていったい何だろうね。
「あ、そうだ。玄関や窓ガラス、どうしよう」
ノーヴェが壊した玄関の鍵やテケテケさんを蹴り飛ばして壊した窓ガラス、流石にこのままにしておくわけにはいかない。
と言っても、例えクイントさんに連絡してもすぐに修理できるのかな。
魔法でパパーっと直せれればいいけど、出来なさそうな気がする。
と、その時だった。
「あっはっはっ、お困りかな健人君!」
「ドクター、五月蠅いです」
校舎内に響き渡るほどの大声と共に、なぜかスカさんとクアットロ、それにトーレとセインが現れた。
「えっ? なんでみんなここに居るの!?」
「私がドクターにヘルプを頼んだ。お兄ちゃん困ってたから」
と、ドヤ顔でブイサインをするセッテ。
「セッテえらいッス!」
「うん、ホント気が利くなぁ」
ウェンディと2人でセッテを褒めまくると、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに照れた。
ノーヴェは、クアットロから注意を受けていた。
「っ~!! この子可愛すぎ! ねぇねぇ、この子私の妹に欲しい!」
「ちょっ、花子さん落ち着いて!」
「あらら~お気持ちは分かりますけど、セッテちゃん怖がってますわよ、花子ちゃん」
鼻息を荒くしてセッテを抱きしめようとする花子さんを怖がり、セッテは俺の後ろへと非難した。
テケテケさんが止めてくれたけど、花子さんの目が完全に逝っていて俺も怖かった。
「あの、そろそろいいかな? 流石に放置されるのは辛いのだが……」
「あ、ごめん、ドクター。それで、あのドアと向こうの窓ガラスなんだけど、直せる?」
「このくらい朝飯前さ。窓ガラスの方はチンクが向かっている。玄関の方はトーレに任せたまえ。ナンバーズに不可能はない! それで、そちらのお嬢さん達が花子さんとテケテケさんだね。初めまして、私はドクター・ブライト、またの名をジェイル・スカリエッティ、よろしく」
スカさんが本名を名乗るって珍しいな。
花子さん達が管理局とは全く関係ない一般……お化けだからいいのか。
「あーあなたが話に聞いたドクター様ですか。私はトイレの花子です」
「私はテケテケと言います。よろしくお願いいたしますわ、スカリエッティ様」
「あはは、有名な地球の都市伝説の方に様付けなど光栄ですね。もっと気軽に呼んでいただいて構いませんよ」
スカさんが花子さんとテケテケさんに自己紹介をしている間に、トーレとチンクは素早くドアと窓の修理に取り掛かった。
うーん、仕事が早いけど、いつもと様子が違う気がする。
「窓ガラスの付け替え終わりました」
「ドアの修理も完了しました」
と思っている間に修理が完了した。
最近では土木工事も頼まれると言っていたから、手慣れているのだろう。
しかし、何でも屋とはいえナンバーズは一体どこを目指しているのやら……
「ふむ、みんなご苦労様」
「本当にみんなありがとう。助かったよ」
「ノーヴェが迷惑をかけてしまい、こちらこそ申し訳ありませんでしたわ」
クアットロが謝ってくれたけど、そんな事される必要はない。
「いやいや、ドゥーエはもう俺の妹だし。監督責任は兄である俺にあるよ」
「あぅ、お兄ちゃん、ごめんなさい」
クアットロに諭されて、自分がした事をやっと理解したノーヴェが申し訳なさそうに謝ってきた。
「もういいよ、ノーヴェ。これから少しずつ力の加減覚えような?」
ギンガとスバルもクイントさんとゲンヤさんに引き取られた当初は色々仕出かしてしまったらしいからな。
「ところで、セッテから話は聞きましたが、テケテテさんは下半身を失ったとか。良ければ私の作成した義肢を使ってみませんか? 例えばこのようなものですが」
流石スカさん、用意が良い。
と感心したが、スカさんがどこからか取り出したのは見た目がまんま、ガンダムのBパーツだった。
ノーヴェ達がキラキラした目でそれを見ているけど、そういえば日本のアニメで一番ハマったのがガンダムにだったな。
じゃなくって!
「いや、テケテケさんMSじゃないから! それ付けたら見た目合わなさすぎるから!」
「ドクター、長居は無用ですわよ?」
「分かっているさ、クアットロ。すぐに済ませるよ。さて、試作として作って提供しているのだが、どれも評判が良くてね。色々とバリエーションに凝ってみたのだよ」
こんな見た目の義肢に需要があるのかよ。
「だからって、それは明らかに無骨すぎるでしょ」
下半身はガンダム、上半身はマッチョな女子高生テケテケさん。
想像したら恐怖しかない。
「ふむ、女の子のテケテケさんにこれは失礼だったね。では、こちらはどうかな?」
そう言って今度は取り出したのは、ノーベルガンダムの下半身。
ただし、腰のアーマーは本物のスカートのようなデザインになっている。
他にも色々と取り出したが、中にはジオングみたくホバータイプのものやガンタンクみたくキャタピラタイプのものまであった。
何を想定してこんなの作ったんだ。
あ、クアットロが目で諦めてと言っている。
「スカートが付いていればいいってもんじゃないでしょ! と言うか、今どっから取り出したのそれ!?」
「うーん、ご好意はありがたいのですけど。下半身が付いてしまったらテケテケとしてのアイデンティティが無くなってしまいますわ。それに上半身だけでも不自由はしておりませんので、気持ちだけ受け取らせていただきます」
そう言ってテケテケさんは、手を床に付けて器用に頭を下げた。
「なるほど、お化けの矜持というものですか」
矜持って、そんな大層な物じゃない気がするけど。
「ドクター、大変! お巡りさんたちがこっちの方に来てるよ!」
と思っているとセインが壁をすり抜けて現れた。
それを見た花子さんとテケテケさんがヒッ!?って声を出したけど、あんたらお化けだろ。
「むっ? それはまずいな。では皆さん、私達はこれで失礼します! ノーヴェ達も何かあったら健人君やクイントさん達のいう事をしっかり聞くんだよ。では、さらば!」
挨拶もそこそこに、あっという間にスカさん達は行ってしまった。
そういえば、クアットロ達いつもより少し急いでいると言うか、無駄話をしている暇はないって雰囲気だったな。
いつもなら色々と俺に絡んでくるのに。
『健人、健人! みんな無事?』
「ん? 一体どうしたんだフェイト?」
フェイトからいきなり通信が入った。
何やら焦っているようだけど、どうしたんだろ。
『良かった。あ、健人達まだ小学校近くにいる? あのね、小学校付近で変なスーツを着た幼女を連れた怪しい不審者が目撃されたって話を聞いたの。それで母さんやクイントさん達がそっちに向かってるけど、そっちは大丈夫?』
「……それ、多分ドクターブライト達の事だ」
変なスーツを着た幼女(チンク)や女性(トーレやクアットロ)を連れた怪しい不審者(スカさん)。
まぁ、日本じゃあの姿は目立つもんなぁ。
『ブライトさん? ブライトさんがこっちに来てたの?』
「うん。詳しい話はあとでするよ。とりあえず、今まだ小学校にいるから急いで帰るよ」
『う、うん。分かった』
なるほど。それで警察が見回りにこっちに来てるって事か。
あ、鍵が閉まっているはずの学校内にいる俺達も見つかったらまずい。
「やばい。俺達も急いでここ出るぞ! じゃ、花子さん、テケテケさん、またね!」
「ばいばーい」
「うん。みんな、気を付けて帰るんだよ」
「ごきげんよう~」
こうして俺達も急いで校舎を出て、クイントさんとプレシアさんと合流して家に帰った。
2人とも不審者を心配していたけど、ナンバーズの事だと言うと呆れながらも納得した。
後日談
「ねぇ、1階角の窓ガラスだけとんでもなく硬いって噂、知ってる?」
「うん。校舎に入ろうとした泥棒が割ろうとしたんだけど、どうやっても割れなかったみたいだよ」
学校の七不思議の1つに『割れないガラス』が追加された。
続く
見た目は美少女、口調はお嬢様、でもセーラー服の下はゴリマッチョなテケテケさんでしたー
うん。俺は一体何を書いているのだろうか(トオイメ