ViVidかと思ったら無印でした……   作:カガヤ

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お待たせしました!
書いていてながくなったので前編後編に分けました。


第61話「学校の怪談②テケテケ 前編」

ノーヴェ達がナカジマ家の一員になってしばらく経った休日、ノーヴェとウェンディ、そしてセッテがクイントさんに連れられて地球に遊びに来た。

ギンガとスバルは定期検査の為ゲンヤさんと共に向こうに残っている。

かなりだだを捏ねられて、次の休みは丸々2人と遊ぶ事で納得してもらった。

ただ、その際にデートだデートと2人がかなりはしゃいでいたのは……忘れよう。

そして、地球にやってきたノーヴェ達はまずは俺の学校が見たいと言ってきた。

今日は休みなので学校は空いていないと言ったのだけど、それでも見たいとの事なので連れてきた。

クイントさんは、日本料理を沢山食べさせると張り切ってプレシアとフェイトとアリシアを連れて夕飯の買い物に出かけている。

 

「ここが、にいちゃんの学校ッスか!」

「大きい」

 

ウェンディとセッテが想像していたのよりも大きかったのか、聖祥大学付属小学校に驚いてる。

ま、この小学校は普通に大きい部類に入るからな。

ところで、ウェンディってこんな幼い頃から語尾にッスを付けていたんだな。

と、ノーヴェが塀に登ってキョロキョロと中を見渡して何かを探していた。

一応ここ塀は高いんだけど、問題なくよじ登ってる。

身体能力高いなぁ、流石戦闘機人。

 

「ノーヴェ? 塀なんか登って危ないよ。何を探してるんだ?」

「きんたろーさん」

「へっ? 金太郎?」

 

なぜ金太郎?

 

「違うッスよ、ノーヴェ。ウ〇トラマンキンタロスッス」

 

何その、相撲と浪花節が似合いそうなウルトラ〇ンは。

 

「2人とも違う。正しくは二宮金次郎」

「「それだ!」」

 

ノーヴェとウェインディの間違いを正すセッテ。

二宮金次郎か……どんな人だっけ。

名前だけは聞いたことあるんだけどなぁ。

でも、待てよ。えっと、確かスカさんの話ではノーヴェとウェンディがスバルと同じ6歳で、セッテが5歳って話だったよな。

俺でもよく知らない人を知っている6歳児と5歳児……侮りがたし。

 

「二宮金次郎?」

「うん。日本には昔、重しを担いで修行しながら勉強する子供がいて」

「でも、児童虐待で修行を禁止されてそれを悲しんだ子を偲んで建てられたってってトーレ姉から聞いたッス」

 

何だろ。微妙に違う気がする。

俺も良く知らないから違うって強く否定できないけど、そこまで哀しい設定ではなかった気がする。

 

「だから2人とも違う。二宮金次郎は、子供の頃に薪や柴を運ぶ労働をしている間にも勉学に励むような子で沢山苦労をした。だから、今の子供にも家事手伝いと勉学の両立に努める立派な子になるように模範として建てたれた像」

「「「おぉ~」」」

 

セッテの詳しい説明に拍手する俺達3人。

 

「すごいなセッテ。日本人である俺も知らない事だったのに、よくそこまで日本の昔の事知ってるな。ここに来るまでにそこまで勉強したのかぁ」

「……クアットロお姉ちゃんに、教わった」

 

偉い偉いと頭を撫でると、セッテは赤くなって嬉しそうに少し頬を緩めた。

ノーヴェやウェンディと違ってセッテはいつも真顔だけど、決して無表情で感情がないわけじゃなく、たまにこうして笑顔を見せてくれたりする。

その笑顔にクイントさんやゲンヤさんは瞬殺されたんだよな、もちろん俺もだけど。

 

「で、二宮金次郎像だけど。うちの学校じゃないな」

 

確か、あの像がある学校は少なくなったんだっけか。

 

「残念」

「そこまで見たかったのか」

「うん、動くところ見たかった」

「え“っ?」

 

二宮金次郎像が動く?

あ、その話もどっかで聞いた事あるぞ。

 

「そうッスよねぇ~と、言っても今は真昼間だから動いたりはしないッスけど」

「私は、見れなくてホッとした、かも」

 

セッテは、幽霊とかは興味津々だけど、怖くもあるようだな。

 

――バキッ

 

ん? 今どっかから変な音したような?

 

「二宮金次郎像が動くって、それもトーレやクアットロから聞いたの?」

「ドクターからっス!」

「ドクターに見せてもらった日本の映画にもそういうシーンあった。ちょっと怖かったけど面白かった」

「やっぱりスカさんが元凶か」

 

トーレもノーヴェ達に日本の変なイメージ埋め込んだけど、スカさんも絡んでたか。

 

「あれ? ノーヴェはどこ行った?」

 

ふと、さっきまで塀の上から校庭を見渡していたノーヴェの姿がない事に気付いた。

 

「あ、ノーヴェならあそこっス!」

 

ウェンディが指を刺した先、校舎の入口付近にいるノーヴェを見つけた。

ノーヴェは靴を脱いで、スリッパに履き替えてる所だった。

どうやら校舎内に入ろうとしているようだ。

外靴を脱いでちゃんとスリッパに履き替えてる所は、しっかりしてるな。

 

「って感心している場合じゃなかった。ノーヴェを追いかけなきゃ!」

 

休みだけど先生の誰かが出勤しているかもしれないし、見つかったら厄介だから早く連れ戻さないと。

 

「あー……2人ともおいで」

「わーい!」

 

流石にウェンディとセッテを置いていくわけにはいかない。

こんな事ならアリシアでも連れてくればよかった。

 

「……計画通り」

 

セッテさんや、冗談でもそういう笑顔はやめてください、怖いです。

 

 

ノーヴェを追って俺達は校舎内へと入った。

玄関に鍵がかかっているはずなんだけど、なぜか鍵は開いていた。

そして、俺はいつも使っている上履きに履き替え、ウェンディとセッテにはスリッパを用意した

実は、この前夜中にトイレの花子さんに会いに校舎に侵入した時は、上履きに履き替えるの忘れてて帰る前になのは達と床掃除したんだよなぁ。

 

「さてと、ノーヴェはどこに行ったかは、足音聞けば大体分かるか」

 

――ペタペタ

 

凄く小さいけど誰もいない校舎内でスリッパで歩き回れば足音が響くから、その音をシャルブリットで拾えばすぐに分かる。

どうやらあまり遠くには行ってないようだ。

 

――ペタペタペタンッペタコツコツ

 

あれ? おかしいな?

ノーヴェのスリッパ音以外の音も聞こえてくるような?

しかも、こっちに近づいてきてる?

 

「ねぇ、足音、多いよ?」

「うわっ、ホントだ」

 

セッテとウェンディにも聞こえるのか。

 

「多分、誰か先生が出勤してるのだろう。それはそれでちょっとまずいけど」

<校舎内でマスター達以外の生体反応、ないぜ>

「ひっ!」

 

あ、セッテが怖がって俺の腕に飛びついてきた。

 

「こらシェルブリット、セッテを怖がらせるな。大丈夫大丈夫きっと……アダダッ!?」

 

腕にしがみついてきたセッテの力が段々と増してきた。

あーこの感覚懐かしいなぁ、スバルやギンガも怖くなってしがみついてきた時力加減できなくてよくこうなったなぁ、なーんて言ってる場合じゃない。

急いで腕に魔力を流して強化したから痛みは退いた。

 

「セッテ、ダメっスよ。にいちゃんは生の人間なんだからそんな力強く握り締めたら壊れるッス」

「あ、ごめん、なさい」

 

セッテが慌てて俺から手を離したけど、もう魔力で強化したからセッテ程度の腕力では痛くもかゆくもないんだよね……イタタッ。

 

「俺なら大丈夫だよ。それよりこの足音だけど、多分 「健人君!」 俺の友達だ」

 

階段から降りてきたのは、少し前に友達になったトイレの花子さんだった。

ノーヴェも花子さんに連れられて降りてきた。

 

「いらっしゃい、健人君。ノーヴェちゃんから話は聞いたよ。今日は妹ちゃん達に学校を案内してるんだって?」

「うん。と言っても本当は外から見るだけだったんだけど、ノーヴェが校舎に入っちゃって。ノーヴェ、どうして校舎に入ったんだ?」

「このお姉ちゃんが窓から手を振ってるのが見えたから、呼ばれたと思った」

 

……花子さん。

 

「ごめんね。友達待ってたら健人君が見えたからこっちに気付いて欲しくて、つい大きく手を振ったらおいでおいでってなっちゃったみたい、あはは~」

 

花子さん、意外とお茶目。

 

「でも、玄関には鍵かかってるから来れないだろうと思ってたんだけど、入ってきちゃったね」

「やっぱり鍵はかかってたんだ。ノーヴェ、どうやって入ってきたんだ?」

「普通にドアを開けて入ったよ?」

 

ノーヴェはさも鍵がかかってなく自然に入ったかの様に言ってるけど、花子さんは鍵がかかってたと言う。

花子さんと2人で?と顔を見合わせて、ドアに目を向けると……鍵が壊れていた。

鍵がかかっていなかった、と言うよりは誰かが無理やり力づくで開けた結果、壊れたようだ。

あ、さっき変な音がしたと思ったけど、まさか……

 

「なるほどなるほど、鍵を開けたんじゃなくて普通に力加減せずにドアを開けたら鍵が壊れたってわけか、そーかそーか」

「えっ、えぇ~? 健人君よりも幼いのにドアを普通に壊すって、この子一体何者なの!?」

 

いや、お化けのあなたが驚いてどうする。

気持ちは分かるけどねー。

さてどうしようか、戦闘機人って説明してもいいのかな。

花子さんは、人間じゃないからいいのかな?

一応俺となのはとフェイトが魔導師って事は言ってあるんだけどね。

 

「あ、でも健人君の妹ちゃんならこれくらいしそうだね」

「まてまてまて」

 

俺の妹だからって簡単に納得するな。

知り合ってまだ間がないのになんでそこまで言われなきゃいけないのさ。

魔導師の妹だからってこんな馬鹿力にならないから。

 

「冗談だよ、冗談。まーともかく普通じゃないってのは分かるよ」

「うん、そういう事にしといて、詳しく言うと色々難しい話だし」

 

花子さんが理解あって助かる。

 

「あれくらいなら、私でも出来る」

「セッテ、張り合わななくていいッスよ。多分にいちゃんがとっても困る事になるッス」

 

気遣いありがと、ウェンディ。

 

「あれ? シェルブリット、さっき確か生命反応ないって言ったッスよね? じゃあ、このお姉さんは……」

 

ウェンディの指摘に、セッテも何かに気付いて顔を青ざめた。

あ、それに気付いた花子さんの雰囲気が変わった。

 

「あら? 気付いちゃった? うん。私が生きている人間、だなんて本気で思っちゃってたのかな? フフフッ……ねぇ、火の球はいらないから!」

 

花子さんがお化けっぽい雰囲気を醸し出したから、演出として火の球を数個出して花子さんの背後に浮かせたんだよね。

うんうん、俺も魔力の扱い上手くなったなぁ。

いやぁ、花子さんがアフロにならなくてよかった。

 

「何を考えているのかな、健人君?」

「いや、昔の俺だったら花子さん今頃火達磨になってただろうなーと」

「ホント、何を考えていたのかな!?」

 

花子さんってボケ専門だと思ってたけど、意外とツッコミも出来るね。

 

「あれ? お兄ちゃん今花子さんって、ひょっとしてこのお姉さんの名前はトイレの花子さんなの!?」

 

ノーヴェが突然目をキラキラさせて花子さんにずずいっと詰め寄った。

 

「え、えぇ、そうよ。私はトイレの花子さん。健人君となのはちゃんやフェイトちゃんとは少し前に助けられたことがあって、それで友達になったの」

 

助けたと言っても、特に何もしてないんだけどね。

 

「わっ! わぁ~! そうなんだ、そうなんだ!」

「おぉ~これがトイレの花子さんっスか」

 

ノーヴェは感動しきっきりで、ウェンディも同じく感嘆の声をあげている。

さっきまで花子さんと距離を取っていたセッテも、いつの間にか花子さんの前に進み出ていた。

 

「はじめまして、セッテ・ナカジマです。おにいちゃんに最近拾われました」

「えぇ、はじめ……えっ? 拾われた!?」

 

わー!? 何、誤解を招く事言ってるのかなセッテは!?

ほら、花子さんもさっきとはまた違った意味で雰囲気変わっちゃってる!?

 

「いや違うから! そういう意味じゃないから花子さん誤解しないで!」

 

結局、ノーヴェ達との関係を説明する羽目になってしまった。

 

「へぇ~この子達もただの人間じゃないと思ったけど、機械と融合してるんだ。流石科学の発展はすごいわね」

 

花子さんは、ノーヴェ達の生い立ちを特に気にせずただただ戦闘機人の事をすごいとだけ言ってくれた。

 

「ところで、花子さん。今日は真昼間から何をしてたの? 確か昼間は活動しないんじゃなかったっけ?」

「そうね、平日の昼間は人が大勢いるから出ないのだけど。今日は休みで、先生も来ない日だから友達と遊ぶ約束してたの」

 

そういえばさっきも友達待ってるって言ってたっけ。

 

「もうすぐ来ると思うわ。良かったら健人君達の事も紹介したいけど、いいかな?」

「うん。俺は大丈夫だけど、ノーヴェ達は?」

「会いたい!」

「花子さんの友達なら会ってみたいッス!」

「私は……いいよ」

 

ノーヴェとウェンディはノリノリで、セッテも少し迷ったみたいだけど好奇心が勝ったようだ。

 

「良かった。もうすぐ来ると思うわ。あ、でも言っておかなきゃいけない事があって、あの子は……」

「は~なこちゃん、遊びましょ♪」

 

その時、花子さんを呼ぶ女の子の声が聞こえてきた。

ふと見ると廊下の角からこっちに顔を出して様子を伺っている女の子が見えた。

なぜか女の子の顔は床に近い場所にあったけど、うつ伏せにでもなってるのかな?

 

「あ、ウワサをすれば、テケちゃんいらっしゃーい。この子達は私の友達だから大丈夫だよ」

「うん、分かりました! 今そっちに行きますわぁ」

 

てけちゃんと呼ばれた、セーラー服を着た中学生らしき女の子が這いつくばって現れた。

なんか、嫌な予感がする。

 

「みなさぁ~ん、初めまして。私はテケテケと言います。仲良くしてくださいねぇ」

 

テケテケ、それは電車に轢かれて腰から下が真っ二つになってしまった女の子のお化けだ。

この女の子も腰から下はなく、血こそ出ていないが内臓がはみ出ていて生々しい。

それを見たノーヴェの顔が一瞬で真っ青になり……

 

「いぃ~~~やぁ~~~!!!」

 

ノーヴェは耳をつんざくほどの悲鳴をあげて、テケテケへ向けて全速力で突っ走った。

そして、勢いそのままにテケテケを思いっきり蹴った。

 

「あ~~れ~~……」

 

テケテケは蹴り飛ばされたサッカーボールのように物凄いスピードで廊下の奥へと消えていった。

 

「ハァ……ハァ……」

 

肩で息をしてやり遂げた顔をするノーヴェを、俺も花子さんもウェンディやセッテですら呆然と眺めるしかできなかった。

ノーヴェはホラーは大好きだけど、グロテスクやスプラッタな物は大の苦手だと言う事をその時知った。

 

 

続く

 




テケテケと言いつつ、最後にチラリとしか出ていません。
彼女には後編でがんばってもらいましょう(笑)
この作品のノーヴェ達の設定を少し。

ノーヴェ:6歳、ホラー大好き、スプラッタ・グロテスクは大の苦手
ウェンディ:6歳、ホラーもスプラッタもグロテスクも好き。
セッテ:5歳、ホラーは苦手だけど、興味津々。スプラッタとグロテスクは好きではないが平気

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