ViVidかと思ったら無印でした……   作:カガヤ

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お待たせしました!
季節感ガン無視の話です!


第60話「学校の怪談①トイレの花子さん」

正式にナカジマ家の養女になったノーヴェ、ウェンディ、セッテとギンガ、スバルはすぐに打ち解けて、本当の姉妹のように一緒に遊んだり風呂に入ったり寝たりしている。

ナカジマ家もたった数日で大幅改築して、部屋も増えて風呂も大きくなった。

ここまで短期間に大改築が終わったのは、スカさんが裏で色々と手を回したそうだ。

それはいいのだけど、大浴場かってくらい大きくなった風呂に俺も一緒に入ろうとギンガやスバルに加えて、ノーヴェ達までせがむのは勘弁して欲しい。

断るとセッテが無表情のまま涙目になるし、クイントさんは面白半分に焚きつけてくるし、その度にゲンヤさんも一緒に入りたそうな哀愁漂う背中みせるし。

そして、ノーヴェ達をなのは達にも紹介して、こちらもすぐに友達になれた。

 

「可愛い妹さんが増えて健人君楽しそうやね」

「ほほぉ~これが健人の新しい女ってわけね♪」

 

はやてやアリシアには散々からかわられたが、ノーヴェ達は可愛いのはホントの事だしね。

 

 

そんなこんなで季節は過ぎ、夏休みも終わり2学期が始まった頃、俺達はアリサからある相談を受けた。

ちなみにはやては今日は用事があるので、先に帰っている。

 

「ねぇ、健人? トイレの花子さんって知ってる?」

「トイレの花子さん? あの、便器の中から赤いカツラ欲しいか、青いカツラ欲しいかって聞いてくるやつ?」

「違うわよ! しかもそれ髪の毛じゃなくて紙が欲しいかって聞いてくるんでしょうが!」

「違ったか、なら……花子さん遊びましょ? って言うと、7日後に井戸から遊びにくるんだっけ?」

「それも違う! あっちはトイレ関係ないし、名前も子しか合ってないじゃない!」

「まぁまぁ、アリサちゃん。健人君も分かってて言ってるんだから」

 

流石にすずかはよくわかってる。無言でサムズアップを交わした。

 

「すずか、最近健人に毒され過ぎよ!」

「毒なんてひどいなぁ、せめてかっこよく汚染と言ってくあげないと」

「毒よりひどくなってるじゃない! しかも、全然かっこよくないわよ!」

「にゃははは、アリサちゃん話を先に進めた方がいいよ?」

「うぐっ、そ、そうね。このままだと夜になりそう」

 

話が脱線していると言うなのはに、コホンと咳払いをしてアリサは話を元に戻した。

 

「それでね。うちの学校の体育館に近いトイレに花子さんが出るって話が低学年たちの間に夏休み前に出たのよ。で、面白そうだと夏休みの間に肝試しとして、そのトイレに行った子達がいるの。それで実際に花子さんの声を聞いたらしいのよ」

「まさか、その子達に何かあったの!?」

 

フェイトが心配そうに声を荒げるが、アリサは苦笑いを浮かべた。

 

「えっと、花子さんには何もされていないようなの。ただ、驚いて転んだりはしたけど、それでもケガはしていないって」

「それなら、良かった。でも、そんな事あったって先生は何も言ってなかったよ?」

 

確かに。夏休み明けに先生からはそんな事があったなんて聞いていない。

怪我がなかったにせよ。実際に騒ぎになったのだから注意喚起くらいはしそうだけど。

 

「そりゃそうよ。その子達、先生にも親にも黙ってたんだし。終業式の日にこっそり窓の鍵を開けておいて、夏休みに入ってから忍び込んだ。なんて、先生に言えるわけないでしょ」

 

おぉ、そんな方法で校舎に潜入するとは、結構悪知恵が働く子達なんだ。

 

「それで、俺らになんでその話を? アリサも花子さんに会いたいから一緒に行こうって事?」

「え“っ?」

 

俺がそう言うと、なのはの表情が強張った。

アリシア程ではないけど、なのはも怖いの苦手だったな。

 

「違うわよ。肝試しに参加した子の1人が知り合いなんだけど、その子に本当に花子さんだったのか確かめてくれって頼まれたのよ」

「なるほどなるほど。と言うわけで、なのは、フェイトがんばってなー」

「えぇ~~!!?」

「うん。頑張るよ」

 

対照的な返事をする2人。

だって、2人がやるしかないじゃん。

 

「あのさぁ。女子トイレに出るのに男の俺がどうにか出来るわけないじゃん」

「それはそうだけど、あれ? そういえばアリシアちゃんはどこに行ったの?」

「アリシアちゃんなら、アリサちゃんが花子さんって言った途端に無言で帰っちゃったよ?」

 

すずかに言われて、俺もさっきまでいたアリシアがいつの間にか消えている事に気付いた。

道理で怖がりのアリシアがずっと静かだなと思ってたんだよな。

 

「ま、最初からアリシアには期待していないけどね。と言うわけで、お願いね健人」

「いやいや、さっきの話聞いてなかったの? 女子トイレに行けるわけないでしょ? なのはとフェイトがいればいいだろ」

 

おばけに魔法が効くのか分からないけど。

 

「あ、ダメだ。2人に任せたら校舎が街ごと消滅する!」

「そんな事しないよ!?」

「そうだよ。ちゃんと結界張るよ?」

「フェイトちゃん、そういう問題じゃないと思うの」

 

フェイトは花子さんをヤる気満々なようで、流石のなのはも若干引き気味だ。

 

「どうしてあんた達ってそう物騒なの……」

「そりゃ、2人は魔砲少女だし」

「健人君? 今字が違ってなかったかな?」

「キノセイダヨナノハ、キノセイ」

「なんで今度は片言なの!?」

「あーもう話が進まなぁーい!」

 

 

 

結局、その日の夜に俺となのは、フェイトの3人は夜の校舎へ潜入して噂の花子さんの調査をすることになった。

俺は乗り気はしなかったのだけど、アリサの知り合いの子は本当は俺にお願いをしたかったようだ。

運動会でのあのはちゃめちゃ騒動の中心にいる俺が、頼もしく見えたらしい……どういうことだってばよ。

 

「なーんでこうなるかなぁ」

「まぁまぁ、せっかく夜の校舎に入れる機会なんだしね」

 

なのはは花子さんを怖がっていた割に楽しそうだ。

 

「花子さんはちょっと怖いけど、健人君とフェイトちゃんが一緒だから平気なの」

「うん。私もちょっとドキドキして楽しいかも。それで、どこから入るの? ドアか窓を斬って入る?」

「こらこらこら、フェイトさんや。何を物騒な事言ってるのかな?」

 

バルディッシュで校舎のドアを斬る寸前だったフェイトを止める。

フェイトってこんなに物騒な子……だったね、割と。

流石はプレシアの娘。

 

「そんな事しなくても、ちゃんと窓開けておいたから……(ガチャガチャ)……あれ?」

 

今日、最後の授業で理科室つかった時、窓の鍵を開けておいたはずなのだが、なぜか鍵がかかっていた。

 

「あ、そこの窓の鍵ちゃんと閉まってなかったから、閉めておいたよ?」

「フェイトちゃん……」

 

………

 

「シャインナック……」

「わわっ! ストップストーーーップ! 健人君落ち着いて! 気持ちは分かるけど、そんな事したら校舎ごと消しとんじゃうよー!」

 

ついカッチーンときて、面倒になったからブレイカーで花子さんごと窓を消し飛ばそうとしたが、慌ててなのはに止められた。

その時だった。

 

――コンコンッ

 

「「「えっ?」」」

 

突然、理科室の窓から叩くような音がした。

3人で一斉に音がした窓に目を向けると。

 

「あの~? こんな時間にどうしましたか?」

「あらま、うちの生徒たちじゃない」

 

窓の向こうから人体模型と骨格模型がこっちに話しかけてきた。

 

「……きゅぅ~」

「「なのは~!?」」

 

そりゃ心臓や内臓が生々しい人体模型とカラカラと音を立てて骨格模型がいきなり話しかけてきたらこうなるか。

 

 

それから俺達は、人体模型が開けてくれた窓から理科室から校内へと入る事が出来た。

どうやら人体模型と骨格模型は夜にだけ動く事が出来るようだ。

人体模型と骨格模型では呼びにくいので、ボディ君とボーンちゃんと呼ぶ事にした。

安直な名前だとシェルブリットに突っ込まれたけど、2人(?)は喜んでくれた。

 

「なんだか、ビックリさせてしまって申し訳ないです」

「ごめんなさいねぇ。こんな夜中に生身の人間が来るなんて珍しいから、ついはしゃいじゃったわ」

「こ、こちらこそご迷惑をおかけいたしました……」

 

気絶した介抱してくれたボディ君とボーンちゃんに頭を下げるなのは。

すごく、シュールだ。

 

「それであなた達はこんな夜中に一体何の用事だったの?」

「体育館近くのトイレに花子さんが出たって言うからそれを調べに来たんだよ」

「あら、あの子に会いに来たの、そう……」

 

微妙な表情を浮かべて顔を合わせるボディ君とボーンちゃん。

 

『そ、そろそろ行かない?』

 

さっきからなのはが先を急ごうと念話で急かしてきてるけど、どうやらこの2人は花子の事を知っているみたいだし、もう少し話を聞いてみようか。

 

「あの、花子ってどういう子なんですか?」

「どういう子か。花子ちゃんかぁ。あの子、かわいそうな子なんだよな」

 

?? どうも2人とも口が重いと言うか、言い淀んでいる。

 

「花子ちゃんってもしかして、家族はみんな事故で亡くして、生まれつき重い病気で学校にも行けずに、そのまま亡くなったりした子、だから学校に現れるようになった。そういう子なんですか?」

「フェイトちゃん、それは可哀想どころか重すぎるの……」

 

フェイト、それほぼ俺。

 

「うーんとね。花子ちゃんは元は体育館のトイレだけじゃなく学校中のトイレに移動できる子だったの」

 

トイレ限定ですか。まぁ、トイレの花子さん、って言われてるから当たり前か。

 

「それが体育館のトイレでソシャゲやってた時に推しのキャラがガチャで出て、ハイテンションで喜んでたらうっかりスマホをトイレに落として壊しちゃって、その時の怨念が強すぎて体育館のトイレから出られなくなった子なの」

「「「………」」」

 

これ、どこからツッコミいれればいいんだろう?

それにしても水没して壊れた、ねぇ。

 

「要するに、頭が可哀想な子、って事でいいのかな?」

「「うん」」

 

あっさりと認めちゃったよ。

まぁ、何にせよ会いに行くしかないか。

 

 

その後、俺達はボディ君達と別れて目的地のトイレへとやってきた。

真夜中とはいえ、女子トイレに入るわけにはいかないので俺は入口で待機してなのはとフェイトが花子さんを呼ぶ事になった。

 

「「はーなこさん、遊びましょ!」」

 

なのはとフェイトが女子トイレで花子さんを呼ぶと、少し間をおいて返事が返ってきた。

 

「……は~い」

 

が、その声は明らかになのは達がいる所とは別の所から聞こえてきた。

 

「あれ? なんでそっちから聞こえて来るんだ? なのは、もう一度呼んでみてくれないか?」

「うん。は~なこさん、遊びましょ」

「は~い……」

 

やっぱり花子さんらしき声は女子トイレからではなく、隣の男子トイレから聞こえてくる。

 

「なんで花子さんの声が男子トイレからするんだ?」

「そういえばアリサの話だと、下級生の子達が花子さんの声を聞いたのって女子トイレとは言ってなかったよね?」

「「あっ、確かに」」

 

トイレで花子さんの声を聞いたとは言っていたけど、女子トイレとは言ってなかったしそもそも花子さんに会ったも言ってなかった。

花子さんは女の子だから当然、現れるのも女子トイレって思い込んでた。

ともかく、今度は男子トイレなので俺が入る事になった。

 

「あの、誰でしょうか?」

 

男子トイレに入ると、奥の個室から暗い表情の女の子がひょこっと顔を出してきた。

この子がトイレの花子さんか、赤い吊りスカートのよくテレビとかで見る服装だな。

でも、おかっぱ頭ではあるけど前髪は横一線に切ってるわけじゃなく、ちょっとマイルドな曲線になっていて意外と可愛い。

昔読んでたぬ~〇~に出てきた花子さんは怖いと言うかグロテスクだったしな。

 

「はじめまして。俺は草薙健人。向こうにいるのは友達だよ」

「高町なのはです」

「私は、フェイト・テスタロッサ。よろしくね」

 

なのはは、花子さんの見た目が普通の女の子と分かり落ち着いたようだ。

さっき女子トイレに入る時はフェイトの手をギュッと握ってたからな。

 

「どうも、私は花子です。あの、こんな時間に何の用でしょうか?」

 

何の用、と聞かれて返答に困る。

そういえば、俺達何しに花子さんに会いに来たんだっけ?

調べに来たとは言ったけど、そもそも調べてどうするんだろ……

 

『作戦かーいぎ! 俺達、花子さんに何しに来たんだっけ!?』

『えっ? 花子さんを斬るんじゃなかったの?』

『まだそれ引っ張ってたのフェイトちゃん!? ちょっと頭冷やそうか!?』

 

今日のなのははツッコミまくりだな。

 

『ここは素直に、ウワサの花子さんに会いに来たって言おうか』

『健人君。それ絶対に言わないでね。絶対誤解されるから』

『お、おう』

 

なんでかなのはに睨まれた。

花子さんなんかより怖いんだけど。

 

「?? どうかしたの?」

 

花子さん不思議がってる。

どうしようかな。あ、そうだ!

 

「実は、花子さんが困ってるって聞いて力になれないかな。と思ったんだよ」

「っ! ホント!? その為にわざわざ夜中に来てくれたの? ありがとう! あ、でも……」

 

最初は目を輝かせて喜んだ花子さんだったが、すぐにまた暗い表情を浮かべた。

 

「私が困ってるのって、スマホが壊れてデータが飛んだせいだから……自業自得だし」

「ひっ!?」

 

うぉっ!? 花子さんの表情がますます暗くなると、それに合わせてトイレ内の空気も重く冷たくなっていった。

なのはがそれを敏感に感じ取って、怖くなったのかまたフェイトの手を強く握ってる。

 

「あーとりあえずそのスマホを見せてくれないかな?」

「……どうぞ」

 

花子さんに渡されたスマホは、どこにでもある普通のタイプだった。

これどこで手に入れたとか、契約はどうしたってのをツッコミいれたらいけないんだろうなぁ。

 

「シェルブリット、解析鑑定」

<おう……あーマスターこれ、壊れてないぞ>

「えっ? 腕時計が喋った!?」

 

いや、お化けがその程度で驚いてどうするのさ。

 

「細かい事は気にしないで、花子さん。で、壊れてないってのはどういう事だシェルブリット」

「そ、そうだよ。トイレに落っことしちゃったんだよ? すぐに取り出して乾かしたけど、全然電源入らないんだよ!?」

<水が入った形跡はないから、水没させた影響はないって事だ。電源が入らないのは……ただの電池切れだぜ>

 

電池切れ……

あまりにも衝撃的でベタなオチに花子さんやなのは達も目を丸くして固まった。

俺はと言うと、なんとなーく予想は出来ていた。

花子さんのスマホの機種は知らなかったけど、最近のスマホは防水機能が高く水没させても、修理に出さずに復旧可能な事が多いとテレビでやっていたからだ。

最悪、スカさんの手を借りようかとも思ったけど、その心配はなさそうで良かった。

 

「電池、切れ……そういえば、私、充電してないや」

「花子さん……」

「だ、だってだって! 私トイレにしか行けないんだよ!? コンセントなんてなかなかトイレにないんだよ!? どうやって充電すればいいの!?」

 

それだったらどうやってスマホを入手して契約したのさ。とは言わないでおく。

 

「ともかく、そのスマホを充電させればいいんだよね? だったらこれを使って」

 

そう言ってフェイトが差し出したのは、携帯型充電器。

あれはプレシアに渡されたものだったな、俺もアリシアも持ってる。

普通の充電方法だけではなく、フェイトの魔力変換素質である電気の力でも充電できる優れものだ。

 

「ありがとう! わっ! 一瞬で充電出来た!」

 

流石プレシアの魔改造充電器。

 

「諦めていたのに、嬉しいなぁ。本当にありがとう!」

 

満面の笑顔ではしゃぐ花子さんに合わせてトイレの中の空気も明るく清々しいものに変わって行った。

と思ったら……

 

「あっ、連続ログインボーナスが……」

 

また暗く重たい空気に……ってもういいだろ!

 

 

翌日

 

「それで、花子さんの調査はどうだったの?」

「花子さんは、自由に他のトイレに行けるようになったよ」

「そ、そう。それは良かった? わね」

「あと花子さんの悩みは無事に解決して、スマホでソシャゲが出来るようになったよ」

「……はい?」

「ほら。花子さんと友達になって、lineも交換したんだよ」

 

――ピロリん♪

 

『やったよ、健人君、なのはちゃん! 宮本〇蔵に続いて水〇武蔵もゲットできたよ!』

『良かったね花子さん。私は〇弥呼をやっとスキルMaxに出来たよ』

「まちなさーい! なんであんた達普通に花子さんとlineしてるのよ! なんで花子さんがスマホでFG〇をやってるのよ! てかそもそもなんで花子さんがスマホ持ってるのよー!!」

 

アリサのツッコミは9月の空に消えたのだった。

 

 

「ねぇ、姉さんも花子さんやボディ君達とのlineグループに入ろうよ」

「ぜぇーーーったいに入らない!!」

 

 

続く

 




さて、北海道でマイナス30度を下回るニュースの日に晩夏の怪談話という。

トイレの花子さんのイメージはゲゲゲの鬼太郎6期の花子さんです。
可愛かったなぁ……声も良かったし。

あと数話怪談シリーズの予定です。

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