ViVidかと思ったら無印でした……   作:カガヤ

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お待たせしました!
ちょいシリアス&戦闘回……シリアスはほんのちょっとだよ?


第56話「ゲームは1日2,3時間がちょうどいい」

今日はとある次元世界でなのは、ヴィータと一緒に任務についている。

と言うのも、なのはの調子が最近おかしいというのだ。

なのはとフェイトは前、シグナム達との戦闘で破損したレイジングハートとバルディッシュをカートリッジシステムに切り替えた。

今はともかく、当時のカートリッジシステムへの改造はデバイスにもなのは達にも負担をかける代物だった。

その後、スカさんやプレシアのおかげで、ちゃんと安定したカートリッジシステムに調整された。

とは言え、最近特になのはが任務で色々と頑張りすぎていて、疲労が溜まっているんじゃないかと、ヴィータだけではなくクロノやフェイト達も言っていた。

そこで今回ヴィータから任務の同行を頼まれたのだが、なのはが管理局に正式入隊してから一番一緒に仕事しているのは、ちょっと意外だけど実はヴィータなんだよな。

近距離前衛タイプと遠距離支援タイプで見事に相性はいいからよく組まされるらしい。

ちなみに、ゼスト隊やなのは達とチームを組む以外で、俺がよくコンビで組むのは、はやてだ。

 

「えへへっ、健人君と一緒に任務は久々だね」

「基本的に俺はゼスト隊長達と一緒だからな。この前はクロノに依頼されてデータ取りの為に模擬戦したけど」

「クイントかーちゃんと一緒の方が嬉しいんじゃねぇのか?」

 

くっくっくっ、と小悪魔っぽい笑みを浮かべるヴィータ。

なのはやフェイトも知らない、俺が転生者であり生前は天涯孤独の身であるという秘密を知っているからこういう冷やかしは結構ある。

変に気を使われるよりは100倍マシだし、こういうやりとりも楽しい。

 

「俺はヴィータと一緒に仕事できて嬉しいけど?」

「っ、そうくるかよ……」

「あ、ヴィータちゃん照れてる♪」

「俺だっていつもいつもからかわれてばかりじゃないんだぜ?」

「うっせぇ! とっとと仕事片付けるぞ!」

「「はーい!」」

 

そうヴィータをからかうなのはだったけど、いつもより顔色が悪い気がする。

俺とヴィータも任務前に何度も休めと言ったのだけど、一緒に行くと聞かなかった。

だからこそ、何かあった時の為に俺がしっかりとしないとな。

さて、今日の任務内容はロストロギアらしき魔力反応の調査だ。

この次元世界で最近猛吹雪に見舞われている地域があり、そこからロストロギアらしき魔力反応があった。

そこで俺達が先発隊として調査に赴く事になった。

 

「これは、一体?」

「ここら辺一体は最近までは何の変哲もないもない森林だったみたいだからな」

 

空を飛びながら眼下に広がる凍った森林に目を向ける。

雪に覆われた森って言うのはよくある光景だけど、緑が生い茂った森がそのまま氷のに埋もれているのはありえない光景だ。

 

「こうなった原因って言うのがこの先にあるって事だな」

 

俺達が向かう先から時折嵐のような寒波に襲われる。。

バリアジャケットでなんとか防げるけど、それでもかなり寒い。

一応防寒用魔法は覚えたけど、あれは使えないからなぁ。

 

「近くに街はないし、動物達も避難させてるから被害は最小限だけど、このままだと気候が乱れて生態系にも影響が出る」

「うん、だから早く解決させないとね」

 

というわけで、目的地近くまでやってきた。

ロストロギアがあると思われる洞窟にたどり着いたのだが、洞窟の入口には変な生物がウジャウジャといた。

身体は氷か水晶で出来ているようで、2本の角を持った大きな虎に見える。

 

「エイミィさん、ここらへんの動物達って避難させたんじゃなかったんですか?」

『ちょっと待ってね。えっと、あった。あれらはブリーストライガーと呼ばれるこの世界の魔導生物よ』

 

エイミィさん曰く、あのブリーストライガーは、暖かいのが苦手で冬の間だけ活動してそれ以外の季節では冬眠ならぬ夏眠をしているようだ。

この世界の今の季節は夏なのだけど、ロストロギアが引き起こした大寒波のせいで目を覚ましてしまい、尚且つ高魔力にあてられて興奮して暴走してるの事。

幸いライガー達は洞窟内に意識を向けていているようで、こっちには気付いていない。

 

『一体一体もすごく強いの。だからここは一時撤退して本隊と合流し……』

<マスター、洞窟内の魔力反応が急激に上昇中だ! このままだと爆発するぞ!>

 

突然のシェルブリットからの警告、それと同時に洞窟内から凄まじい勢いで冷気が噴出してきた。

 

「まずい! なのは、ヴィータ俺の後ろに! シェブリット!」

<フレイムシールド展開>

 

普通のシールドでは防ぎきれないと思い、最近使えるようになった炎のシールドを貼り、どうにか冷気をやり過ごせた。

 

「ありがとう健人君。助かったよ」

「でもよ、ちょっと、いやかなりこっちも暑かったんだけどさぁ?」

「悪い。まだこの魔法の調整がうまくできなくてさ」

 

対炎や対雷系の防御魔法があるように、俺はシールドやバリアに炎を加えて防御力を上げる事には成功した。

ただ、普通はバリアやシールドの外にはいっても内側には炎の熱が来ないはずなのに、俺の場合内側にも熱が伝わってしまうというまだまだ調整が必要な未完成品だ。

でも、その分今回みたいな寒冷地や冷凍ビームには絶大な効果がある。

まぁ、冷凍系の魔法使うのクロノくらいしか知らないけど。

 

<そんな事より、まずいぞ。あの虎たちに気付かれたぞ>

 

見ると、さっきまで洞窟の周りで座ったり寝ころんでいたライガー達はみんな起き上がり、唸り声をあげている。

 

「どっちにしろあそこに行ってロストロギアを止めなきゃ大爆発でここら辺が吹っ飛ぶんだ。やるしかない」

『時間もないし、しょうがないか。本隊には連絡済だけど、無理しないで。それとライガーには必要以上には傷つけないように気を付けて!』

「「「了解!」」」

 

その時、ライガー達が一斉に口を開き青白く輝きだした。

 

「っ!? 飛べ!」

 

俺達が飛びあがると同時に、ライガーの口から青白いビームが放たれた。

ビームが当たった場所は氷漬けになった。

どうやらあれは冷凍ビームらしい。

ビームを撃てる魔導生物なんて……カッコいい! なんて言ってる場合じゃないか。

さっき俺の新しいバリアは冷凍ビームには絶大な効果があるって言ったのフラグだったか!?

 

「健人、あたしが道を開くからお前が洞窟内に入れ! なのは、援護だ!」

「うん! アクセルシューター、シュート!」

 

なのはが放った魔力弾は洞窟入り口周辺のライガー達に命中し、弾かれた。

 

「うそっ!?」

 

なのはがもう一度魔力弾を放ったが、またも弾かれた。

しかも、当たったライガーは全くダメージを受けておらずたじろぎもしない。

 

<どうやらあいつらの水晶みたいな体毛が全部弾いてるみたいだ。直接ぶん殴るしかないぜ>

 

シェルブリットが解析したように、あのライガーに射撃や砲撃は通じないようだ。

だったら……

 

「だったらあたしの出番だな! アイゼン!」

<ラケーテンフォルム>

「ぶん殴るのは俺の十八番だ! だよな、シェルブリット!」

<あぁ、ぶちかますぜ!>

 

ヴィータが2頭纏めて叩き飛ばし、俺が2頭続けて殴り飛ばす。

気絶してるけど……魔力ダメージ、しかないよね?

 

「私だって、援護くらいは……あっ」

 

砲撃を撃とうとしたなのはが突然眩暈がしたのか、ぐらりとふらついた。

その隙をついて、ライガーの1体がなのはに向けて冷凍ビームを放った。

 

「なのは! あぐっ!?」

 

なのはを抱きかかえてかわそうとしたが、左足を掠めてしまい足首が凍ってしまった。

幸い、ちょっと痛かったが凍り付いたのは装甲で覆われた部分のみだ。

ライガーはヴィータがぶっ飛ばしてくれた。

 

「健人君!?」

「おい、健人! 大丈夫か!?」

「問題、ない。うおぉ~!!!」

 

なのは達から離れ全力で魔力を燃やし、急いで解凍した。

全身を燃やすのは久しぶりだな。

 

「健人君ごめんね、ごめんね!」

『大丈夫、健人君!』

「ふぅ~ちょっと焦ったけど、大丈夫大丈夫。それよりなのはの方が大丈夫じゃないだろ」

 

俺の方は、シェルブリットが治癒魔法をかけてくれたおかげで痛みは引いて感覚もあるし問題ない。

けど、さっきのなのはの立ち眩みは普通じゃない。

 

「あっ、それは……ちょっと、ぐらっと来ちゃったけど、私だって大丈夫だよ!」

「それは大丈夫って言えないと思うんだけど。ともかく、ここは俺とヴィータでやるからなのはは退避して」

「でも、2人だけじゃ危ないよ! 私だって援護は」

「あーもう! 射撃も砲撃も効かない相手に今のお前じゃ足手纏いなんだよ! いいから下がってろ!」

「あぅ、分かった……」

 

ヴィータに怒鳴られ、しょんぼりしながらなのははこの場から離れた。

ま、あのライガーにはなのはの魔法は一切効かないし、体調が芳しくないのでは囮となる事も出来ないのは本人も良く分かっているのだろう。

でも、ちょっと言い方がキツイんじゃないかな。

 

「ヴィータ」

「うっさい、文句は後で聞く。今はとっとと突入すっぞ!」

『健人君。状況が状況だから今は何も言わないけど、後でなのはちゃんと一緒に君もちゃんと検査だよ!』

「了解。それじゃ、一気に行くぜ、燃えろシェルブリット!」

<おうよ! 受けた借りは100倍にして返してやるぜ!>

 

両腕のシェルブリットから炎が激しく燃え上がる。

ブリーストライガーが熱さに弱いと言うのなら、俺達が天敵だ。

 

「うおぉ~! バーニングウェイブ!」

 

クイントさんのパワーウェイブもどきを真似して生み出した魔法、バーニングウェイブ。

文字通りの炎の波が一直線に洞窟入り口付近に集まっていたライガー達を吹き飛ばした。

 

――グオオォ~!!

 

ライガー達は魔力ダメージとはいえ、炎は効いたようでうずくまって動けなくなった。

 

「「今だ!」」

 

俺とヴィータの2人は洞窟へと突入しようとしたその時、またしても強烈な冷気が吹き荒れてきた。

ここで足止めくらっていたらライガー達が復活してしまう。

 

「っ、このままいくぞ! スパイラル・フレイム・ドラグーン!」

「ちょっ、待て! あつっ!」

 

ヴィータが何か言っているが、俺は炎の龍と化し、冷気の中を突き進む。

 

『健人君! そのまま冷気の元へと進んで! そこにロストロギアらしき物体があるよ!』

「了解!」

 

洞窟内は結構入り組んでいたが、冷気が放たれている元へと向かい、がむしゃらに突き進む。

 

『もうすぐで到着するよ……ってちょっと速度落とさないとぶつかっちゃう!』

<マスター! スピード出し過ぎだ!>

 

洞窟の奥に何か機械らしきデカイ物体が見えてきたけど、勢いつき過ぎて止まらない!?

 

「そんな事言われても、急には止まれなぁー……ゴブッ!?」

 

――ゴンッ☆

 

ロストロギアにぶつかって意識を失う前に思った事。

あれ?このロストロギア、冷凍庫に似てるなぁ。だった。

 

 

「……知らない天井だ」

 

次に気が付いた時、俺は医務室のベッドの上だった。

 

「また懐かしいネタを。でも、良かった、健人さん目が覚めたんやね」

「はやて、おはよう」

「うん、おはようございます」

 

ベッドの横にはなぜかはやてがいた。

 

「あれからどうなった? なのはとヴィータは無事なのか?」

「目が覚めて真っ先に2人の心配なんて、健人さんらしいんやね。大丈夫、2人とも無事やで。ロストロギアも停止を確認したからあの世界の気候も元に戻るはずや」

 

なのはの不調が心配だったけど、無事なら良かった。

俺の方も激突したけど、特にケガもしていなく冷凍ビームを受けた左足も問題ないとの事だった。

俺とヴィータがぶっ飛ばしたブリーストライガーも、特にケガもなくまた夏眠に入ったそうだ。

 

「で、なんではやてがここにいるんだ?」

「そりゃ、健人さんが倒れたって聞いて飛んできたんや。それにうちのヴィータがお世話になったし。ほんま、今回はありがとね健人さん。ヴィータもなのはちゃんも言っとったで。健人さんに助けられたって。ただ……」

 

と、ここではやては盛大にため息をついた。

 

「ん? どうしたんだ?」

「うーん……なのはちゃんが、そのぉ、なぁ」

「えっ? なのはに何かあったのか!? さっき無事って言ってただろ!? まさか、身体の不調の事か?」

「その不調なんやけど……なのはちゃん、寝不足やったんやって」

「寝不足、やっぱり無理をしていたのか」

 

不眠症にでもなっていたのかな。

 

「あー健人さんが思っているのとは、まったく違うで」

 

はやてが呆れ声で息を吐いた。

一体どうしたんだろ?

 

「実はなのはちゃん、最近アリシアちゃんに勧められたゲームにハマりすぎて、それで寝不足に……」

「はあぁ~~!?」

 

あまりにもとんでもない理由に思わず大声が出てしまった。

 

「仕事の疲れやなく、私生活が乱れたせいでの寝不足。それで今回健人さんに迷惑かけてもうたからって、今ヴィータやリンディ提督、それにクイントさんにお説教されとる」

「クイントさんにまでかい……」

 

クイントさんは俺が任務で倒れたって聞いてぶっ飛んできて、俺が無事なのを知ると今度は不調だというなのはの心配をして、寝不足の理由を知って怒ったらしい。

 

「で、なのはちゃんにゲームを勧めたアリシアちゃんもプレシアさんとフェイトちゃんにお説教中や」

 

なのはと同じくアリシアもゲームに夢中で寝不足気味だったが、授業中にこっそり寝ていたから俺達も気付かなかったようだ。

 

「……心配して損した」

「あははっ、ヴィータも同じこと言うとったで。健人さんはそのせいで怪我までしたんやけど、なのはちゃんは家に戻ってこれから士郎さん達にも怒られるみたいやし、堪忍したってな」

「俺は別にもういいけど、士郎さん達にもか」

 

うーん、あの両親が怒る姿は想像できない。

 

「ところで、俺がぶつかって止まったロストロギアって結局なんだったのか分かった?」

「うん。こっちもしょーもないオチや。あれはロストロギアではなく、実はただの冷凍庫だったみたいよ」

「冷凍庫!?」

「クロノ君達が調べたんやけど、あの洞窟には誰かが住んでいた形跡があったんや、それもそれほど昔やないって。で、その住民たちが残していった家電があの場所に色々あって、冷凍庫以外にも大型の電子レンジなんかもあったんよ」

 

はやて曰く、全部機能停止していたはずだったが何かのはずみで冷凍庫のスイッチが入り、尚且つ扉が少し開いてしまった。

で、後はその冷凍庫の冷気がダダ洩れしていただけ。

でも、その冷凍庫と言うのが考えられない程超高性能で扉から漏れた冷気が周りの気候を変える程凄すぎたという、とんでもないオチ。

 

「…………」

 

と、はやての話を聞き、一つの仮説が頭に浮かんだ。

 

「ん? どうしたん、健人さん?」

「いや、なんでもない」

 

まさかと思うけど、あの洞窟ってスカさん関係ないよなぁ。

考えられない程の高性能な家電を作るのって、スカさんくらいだと思うんだよなぁ

この予感、外れてくれますように。

 

その後、なのはとアリシアには当面のゲーム禁止令が出されたというのはまた別の話。

 

続く

 




はい、原作の鬱イベントブレイカー1発目です!
今回の元凶がスカさんなのかどうかは、また今度の機会に(笑)

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