ViVidかと思ったら無印でした……   作:カガヤ

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おまたせしました!運動会もこれで最後です!


第55話「じんぎなきたたかいい(棒読み)」

「どうしても、引く気はないのだなお前達……」

「いつかはこうなるとは思っていたが、まさかこんなに早く来るとはな」

「それはこっちのセリフですよ。しかし、こればっかりは引けませんなぁ」

「ふふふっ、この時の為に今、私は、ここにいる!」

 

4人の男たちが今、けん制しながら向かい合っている。

その表情は真剣そのもので、一寸の隙もない。

自分以外は全て敵、互いの表情から次の一手をうまく読み取らなければ負けるのは自分。

さぁ、拳を握れ! 勝負を決める時は今!

 

―――っ!

 

かくして、勝者と敗者は決まった。

勝者は拳を天へと掲げ、敗者は拳を地へと叩きつける。

そんな4人を見つめる、少女ヴィータはこう言い放った。

 

「いや、じゃんけん1つで何をしてんだよ」

 

 

事の始まりは、午後に行う親子競技。

これは、生徒が父親か母親と2人1組で挑む競技だ。

なのはは桃子さんと玉入れ、フェイトはプレシアと綱引きに出場する。

俺とはやては両親はいないし、アリシアはプレシアとの出場資格をフェイトに譲った。

応援に回ろうと思っていたのだが、ここで出場枠が3枠空いた。

そして、一緒に出場するのは親子でなくても応援に来てくれている誰かでもいいという事になった。

それを聞いて、クイントさんがいち早く名乗りをあげ、俺と二人三脚に出る事になった。

で、残ったのははやてとアリシアも出る事が決まった。

問題は、誰と出るかという事だ。

母親、もしくは応援に来てくれた女性と出る種目は埋まっていて、空いているのは男性と出場する競技のみ。

それを聞き、名乗り上げたのが、ゲンヤさん、ゼスト隊長、レジアス中将、そしてなぜかスカさん。

はやてもアリシアも、この4人の誰とでも組んで問題はないと言ったが、出られるのは2人だけ。

そこで誰がペアを組むかでじゃんけんをすることになった。

こうして、冒頭の無駄にシリアルなじゃんけんへとつながる。

 

ちなみに、じゃんけんの結果は、はやてはスカさんと大玉送り、アリシアはレジアス中将との綱引きとなった。

 

「よろしゅう頼みますね、ブライトさん」

「勝利の栄光を、君に」

 

スカさん、それフラグだからやめい。

 

「がんばろうね、レジアスおじさま♪」

「お、おう。儂に任せておけ!」

 

中将、娘さんが絶対零度の視線を送ってますよー?

 

「じゃ、私達も準備しようか健人♪」

「うん!」

 

クイントさんとの二人三脚は、正直言って天国のような地獄のようなでした。

クイントさんは終始俺のペースに合わせて動いてくれたけど、それでもぶっちぎりで1着になった。

まぁ、俺自身速いからそれに合わせてたらそうなるよね。

そして、途中クイントさんが何度か走る速度上げたくてウズウズしていたのを俺は見逃さなかった。

意外と走り屋気質なんだよな、クイントさん。

で、その資質は間違いなくギンガとスバルにも受け継がれていると。

 

それともう1つ、クイントさんが走るたびに胸が上下に……げふんげふん。

走ってる最中、男どもの熱狂的な視線がクイントさんの胸に集中していて、声援までとんだ。

まぁ、当の本人は気付いていなく、ゲンヤさんがティーダからデバイス奪って狙い撃ちしそうになっていたのがチラリと見えた。

でも、なんであんなに揺れたんだろ、まさかブラし忘れたって事はないよね、クイントさん? なんで目を逸らしてるのかな?

あ、メガーヌさんに連行されてどっか行った。

 

 

さて、気を取り直して次の競技、なのはと桃子さんの玉入れだ。

これは各クラスごとに籠が分かれているのではなく、クラスごとに決められた色の玉をどれだけ1つの大きな籠に入れられるかを競うタイプだ。

なんだか桃子さんのイメージ的にほんわかゆっくりと球を入れていきそうだが、そこはナカジマ家、テスタロッサ家に引けを取らないトンデモナさを誇る高町家の母。

競技開始からすぐに自分の持ち玉を拾い集め次々と籠へと投げ入れいていった。

なのはもなのはで、素早く玉を拾い上げているけど、籠へは投げ入れいていない。

なんと、なのはは他のクラスの玉を投げ落としていた。

それも、籠に入りそうな玉だけを瞬時に見つけ、正確に投げ落としている。

反則ではないし、立派な戦術なんだろうけど、運動会でそれはどうかと思う。

あ、ドゥーエがこっちみて親指立てた。

まさか、ドゥーエがなのはに吹き込んだのか。

とりあえず、お仕置きをウーノに依頼しとこ。

 

競技は進み次はフェイトとプレシアが出る綱引き……

 

「ねぇ、あれプレシアさん、よね?」

「そうとしか、見えないな」

 

シャマルとシグナムが、いや他のみんなも引いているのも無理はない。

 

「母さん、いつの間にそんな恰好を……」

「ふっ、郷に入っては郷に従え。フェイト、これはこの世界の勝負服なのよ」

 

ってな声が聞こえてきたけど、違うからそれ違うから!

あんたが着ている服は、ただの特攻服だから!!

 

テレビとかドラマでたまに見かけるレディースや暴走族が着る真っ赤な裾の長い学ランに幅の広いズボン。

頭に鉢巻、右腕に『フェイト命』左腕に『アリシア命』背中に『健人(未来の息子)命』と刺繍が……

 

「ってちょっと待てーーーーい!」

 

と俺が叫ぶと同時に、メガーヌさんに説教されてマッハで買ってきたブラを付け終えたクイントさんや桃子さん達が一瞬でプレシアに飛び掛かって連れ去った。

 

「ママの……馬鹿」

 

アリシアは顔を真っ赤にして羞恥心に打ちひしがれていた。

 

「あ、あれ? えっと、私はどうすれば?」

 

フェイトだけは、何が起きたのか分からずポカーンとしている。

 

「フェイトさん、プレシアはちょっとお腹痛いみたいだから、私と出ましょうか?」

「あ、はい。母さん、大丈夫かな」

 

リンディさんが係の人に説明(脅迫)してプレシアの代わりにフェイトと綱引きに出る事になった。

競技は俺達のクラスが勝った。

魔法は一切使用していなかったけど、リンディさんが4、5人分くらいの力を出していた気がする。

なんか腕の筋肉一瞬だけすごい事になった気もするけど、見なかったことにしよう。

 

 

今度はアリシアとレジアス中将という美幼女と野獣コンビが出る綱引きだ。

 

「こらー! そこはせめて美少女って言いなさい!」

 

ちんちくりんは競技に集中してなさい。

それにしても、さっきのリンディさんのインパクト強すぎて、綱引きでのレジアス中将の活躍がイメージ出来ない。

体格的には筋肉質で重みもあってピッタリだと思うんだけど、中将って実力的にはどうなんだろ。

どんな魔法使うのかとか全く知らない。

そもそも、魔力あるのかな。

 

「ねぇ、ゼスト隊長。レジアス中将って、力あります? 運動神経どうなんですか?」

「レジアスは……あっ」

「あっ」

 

俺がゼスト隊長に聞くと、なぜかオーリスさんと同時に固まってしまった。

 

「?どうしたの2人とも?」

「忘れていたわ。父さん、ものすごく運動音痴、なのよ……」

「えっ?」

 

――パンッ!

 

ちょうどその時、綱引き開始の合図が鳴った。

 

「うおぉぉーー!」

 

レジアス中将は唸り声をあげ、渾身の力を籠めて綱を引き……滑って転んだ。

 

「ちょっ、レジアスおじ、ヘブッ!?」

 

一緒に綱を引っ張っていたアリシアも倒れたレジアス中将に足を取られバランスを崩して転倒、更に前後の人達も巻き込まれて転倒。

更に更に綱にかかった力のバランスが一気に崩れて全員が転倒してしまった。

 

「うっ、わぁ~……」

 

見るも無残な大惨事。

額に手をあて、天と地をそれぞれ仰ぐゼスト隊長とオーリスさん。

 

「父さん、あなた達にいい格好見せたかったのよ。立場上、地上本部か本部ばかりで普段から全く絡めないからね。今回のイベント、すごく楽しみにしていたのよ……」

 

乾いた笑みを浮かべながら淡々と話すオーリスさん。

その視線の先には、背中を砂まみれにして某海賊漫画のおやびんの如く、地面に沈み込んでいくレジアス中将の姿があった。

 

『続けて、最後の競技。大玉送りになります! さぁ、本日最後の親子競技がついに始まります!』

 

そんな惨劇を忘れようと、放送席が無駄にハイテンションになってる。

はやてとスカさんが出る大玉送り。

レジアス中将の惨劇もあり、インドア派なスカさんが競技なんてうまくできるのかと思ったが、これがうまく進んでいた。

 

「私が都度進路を修正するから、君は遠慮なく大玉を転がす事に専念したまえ」

「はい、殺生丸様!」

 

あーついに言っちまったよ、はやて。

まぁ、相変わらず殺生丸な見た目の変装してるからなスカさん。

服装だけは現代人に合わせてるし、顔の模様もないけどね。

しかも、あの変装、最新技術が詰め込まれているとかで、スターライトブレイカー級の攻撃を受けない限り解除されない特殊なものらしい。

無駄に高性能。

 

「えーいっ!」

「むっ、よっ、ほっ」

 

はやてが力いっぱい大玉を転がし、スカさんが大玉の周りを素早く右往左往しながら進路を修正していく。

ただ転がすだけより、進路修正の方が力いるのを分かっていての役割分担、やるねぇ。

しかも、ちょこまかちょこま走り回って体力あるな、スカさん。

ギンガやティアたちはそんなスカさんの様子がツボにハマったらしく、笑いながら応援している。

 

「あーこの分だと1等だね、ドクターは」

「なんか不満そうだなセイン」

「不満だって程でもないけどさー」

 

不満ではないが、面白くなさげなセイン。

 

「ドクターが何か失敗しないか、それを期待しているのだろうセインは」

 

チンクがその横でため息と共にそうこぼした。

 

「あっ、チンク姉。別にそういうつもりじゃ……」

「まぁ、アクシデントが付き物だもんねドクターは」

「そんなドクターとワンセットにしないで健人君」

 

俺が同意するとドゥーエが苦笑いを浮かべた。

 

「たまには円満に物事を終わらせてほしい物だがな、ドクターだから仕方ない」

「むぅ、否定できない」

「……認めたくないわね」

「ですわねぇ」

 

トーレまでもが同意し、チンクだけではなくウーノとクアットロまでもがそろってため息をついた。

が、俺達の不安をよそにはやてとスカさんペアはぶっちぎりの1位でゴールを決めた。

 

「よっしゃー! やったで殺しょ、ブライトさん! ……ブライトさん?」

 

ん? 何やらゴールの様子がおかしい。

スカさんがゴールポストに手をついて、腰に手を当てて動かない。

慌ててはやてが駆け寄る。

 

「ブライトさん、大丈夫ですか? 歩けますか?」

「ふっ、ふふっ、すまないね、はやて君。どうやらギックリ腰と肉離れが同時発生したようなのだよ。す、すまないがウーノ達を呼んで、くれないかな?」

「「「ドクター!?」」」

 

ドクターブライト、ドクターストップにより強制送還。

 

これにて、すべての競技が終了となり、応援に来てくれたみんなの活躍もあって俺達のクラスが1位となった。

が、犠牲の大きい勝利でもあった。

 

「レジアスさん、プレシアさん、ブライトさん。私達、勝ったよ」

「みんな、無茶しやがって……」

「いや、誰も死んでないからな?」

 

アインスのツッコミを背に受けて、俺達は夕日に向けて敬礼をするのだった。

 

 

続く

 




はい、これで運動会も終わりです。
次回は年明けになりますが、原作でのあの鬱イベントをブレイカーします。
まぁ、スカさんになった時点でフラグなんてばっきばきに砕けてますけどねー

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