早く出したいヒロインがたくさーん
『私、高町なのは、なのはだよ』
『……なのは』
『うん!』
モニターの向こうでなのはとフェイトが感動のお別れシーン真っ最中。
それを俺はアースラの管制室で眺めていた。
隣にはアリシアもいる。
「2人共、いかなくて良かったの?」
「あの2人の邪魔しちゃ悪いし。生まれた地球じゃないなら特に愛着もないですし」
「お別れはこっちでしたから大丈夫!」
俺もアリシアも最初は誘われたけど、邪魔しちゃ悪いと断った。
本当は立ち会いたい気持ちはあるし、なのはも少し悲しそうな顔をした。
でも、また会えるから、そう言ったら笑顔を見せてくれたからよしとしよう。
それから、俺はアースラ内で勉強&訓練の毎日を送っていた。
午前中はエイミィやリンディ艦長に教えられてミッドの言語や歴史の勉強、午後はクロノやアルフが魔法の訓練に付き合ってくれた。
先の事件の後処理とかで大変だろうに、いいのだろうか? と聞いてみたら、教えるのもいい気分転換になると言われた。
そして、夜はフェイトやアリシアの話相手になっている。
フェイトはなのはとの別れを少し引きずっているようで、始めはどこか沈んでいた。
プレシアやアリシアが生きているので、大丈夫そうには見えるけどどこか無理をしている。とは相棒であるアルフの言葉。
アリシアは……ただ退屈しているだけだった。
ずっと眠っていてまだリハビリの最中な為、身体が自由に動かせないのが不便らしい。
そんな2人の、要は暇つぶし相手としては一般人である俺が適任らしい……のだが。
「それでね、私の場合だけど電気を操る時はね……」
あれ? 世間話をしにきたのに、いつの間にか魔法講義になってる?
おかしいな。話相手になってと来たのに、なんでこうなってる?
魔力変換素質持ちとしての話になって、俺がうまく使いこなせていないと言う話になって……
まぁ、フェイトが楽しそうだからいいか。
「ふむふむ、流石は私の妹。分かりやすい教え方だね」
アリシアもなぜかこの講義に参加してる。しかも、俺より理解してる。
だけど、アリシアは魔力が全くないのであまり意味はない。
それからなんとかフェイトの言った事を理解して、もう一度魔法を使ってみようとしたが、アルフに止められた。
「よしっ、じゃあやってみるか!」
「ちょっと待ちなよ! いくらフェイトの説明が分かりやすいからと言って、フェイトの部屋でやるんじゃない!」
確かに。
クロノとエイミィも付き合ってくれる事になり、場所を移して毎度おなじみの特訓部屋。
いつもならクロノが俺の近くで見てくれているのだけど、今回はエイミィやフェイト達とガラスの向こうにいる。
その代わりに何かあった時の為にと、アルフが側にいて様子を見守ってくれている。
「残念、今日こそクロノの前髪全焼させるつもりだったのに」
『聞こえているぞ。いいからさっさと始めてくれ』
独り言のつもりが、クロノにはばっちりと聞こえていたようだ。
クロノの横で見ているフェイトやアリシアからの期待の籠った眼がちょっと眩しすぎる。
なら、その期待に答えて見せよう!
「まず俺が最初に魔力発動させた時の事を思い出すっと」
初めて魔法を使った時、俺が思い描いた事をもう一度やってみるといい。そうフェイトは言っていた。
デバイスに登録された魔法を使ったなのはと違い、俺は全部一からのスタート。
だったら、下手に固定概念に囚われず思う通りに使う方がいい。
「えっと、あの時はFateだったけど、今回は別なのにしてみようか。炎……と言えば」
右手を強く握り、意識を集中させる。
頭に浮かぶのは、ガンダム一熱い男……キング・オブ・ハート!
「俺の、この手が勝手に燃える!……以下略!」
「いや、勝手に燃えちゃダメだろう!?」
うん、アルフのツッコミに感謝だな。
そのおかげかどうかは分からないが、右手に強い魔力が集まるのを感じ、次の瞬間一気に炎が燃え盛った。
今までと違うのは、全身からではなく右手のみ炎に包まれている。
「おぉ~!」
『やった!』
俺もフェイトやアリシアが感嘆の声をあげた。
しかし、意識を集中するのに精一杯でとてもこれ以上の事は出来そうにない。
それでも今までよりはすごい進歩だな。
「やったじゃないか、健人!」
「あぁ、フェイトのアドバイスのおかげだよ」
かけよってきたアルフとハイタッチ……あっ。
「あっちぃ~~!?」
『『ア、アルフー!?』』
しまった。炎に包まれた右手で思いっきりハイタッチしちゃった。
『君らはバカなのか!?』
『そ、そんな事より早く消火消火!』
今回の実験の結果、クロノの前髪の代わりにアルフの手と尻尾が燃えてしまった。
幸い、軽傷で済んだのだけど、やはり専用デバイスが見つかるまで魔法の訓練は禁止となってしまった……
爆熱ゴッドなんとか! とかやってみたかったけど、それは後のお楽しみだな。
更に数日後、暇だ。
ミッドの言語や歴史の勉強は進んでるけど、それ以外が暇だ。
別に勉強が嫌いではないけど、それ以外何かやりたい。
「というわけで来た」
「え、えっといらっしゃい?」
今日も今日とでフェイトの部屋に遊びにきた。
なんでここかと言われても、他に行く所がないからだ。
プレシアの所はダメと言われてるし、アリシアはリハビリ中。
他の局員達のお手伝いしようかと思ったけど、見た目が子供でしかもミッド語の読み書きも満足に出来ない俺に出来る事はないわけで。
「要するに、暇?」
「簡単に言えば暇」
というかそれ以外当てはまらない。
後、少し遠慮しがちに首を傾けながら言うフェイトは可愛かった。
「にしてもさ、あんたって本当に自由だよね。リンディ艦長達の許可あるとはいえ、私達一応犯罪者なんだけど?」
「アルフ、今更そんな事言ってもな。散々ここに来てるし。他にいくとこもやる事もないんだよ」
勉強ばっかじゃ退屈するし、息抜きも必要だ。
「それに……下手に出歩くと……」
「ん? あぁ、そうだったね」
アルフが苦笑いを浮かべるけど、俺にとっては死活問題だったんだ。
何度かアースラ内を探検しようとしたが、なぜか毎回重要保管庫やらエンジンルームやらそういう所に迷い込んでしまう。
しかも、エラーでロックが解除されてたり、ロックが壊れたりとすんなり中に入っては警報がなって、怒られる始末。
「だから、俺の行き場所はここしかないんだ……」
「そんな哀愁漂わせる程深刻な事じゃないだろ!?」
「……可哀相、私もアルフも大歓迎だからいつでも遊びにきてね」
アルフはツッコミ入れるけど、流石にフェイトは優しい。
けれども、この眼はなんか思いっきり可哀相な人扱いされてるような?
いや、フェイトの事だから本気で俺を心配してくれてるんだろうけどさ。
あーこの純粋さが眩しい。
「ところで健人はこれからどうするのか、いい加減決まったのかい?」
「いんや、まだ。管理局で働く事になるのかなー……最悪事務員で」
いいデバイスが見つかればいいけど、それがダメなら魔力封印の上、事務員スタートになっちゃうかも。
とりあえず、金を稼げて住む所もしっかりするのが一番だよな。
「そっか、それじゃあ私と一緒になるかもしれないね」
「あれ? フェイトも管理局に入るのか?」
確かに、フェイトはViVidで管理局執務官やってたけど、こんな幼い頃からやってたのかな。
「うん。正確には嘱託魔導師。リンディ艦長やクロノに勧められてるの。といっても、難しい試験を通らなきゃいけないんだけど」
嘱託魔導師試験をパスすれば、異世界間の行動にも自由が効き、裁判も迅速に終わらせられるとの事。
プレシアの為が半分で、なのはの為が半分って所だな。
それにしても、いきなり執務官ではなくまずは見習いという形でか。
「フェイトならばっちりだよ。エイミィ達が色々教えてくれるって言ってるし」
「本当にリンディ提督達には色々と迷惑かけたのに、お世話になりっぱなしだね」
うーん。俺もリンディ艦長達には迷惑と世話しかかけてないよな。
ははっ、返さなきゃいけない借りが多すぎるぜ。
「そうだ! 健人も嘱託魔導師受けてみたらどう?」
「俺か? 無理だろ。俺は次元漂流者だし、魔法も満足に使えないんだぜ? 魔力高いだけで通れる試験じゃないだろ」
筆記試験も危ういけど、履歴書でまずアウトだな。
「そっか。私でも受けれるんだから、健人も大丈夫かなって思って」
「ははっ、まー俺は俺で何とかなるだろ。心配してくれてありがとな」
心配してくれるのが嬉しくて礼を言うと、さっきまで不安そうだったり悲しそうだったフェイトに笑顔が戻った。
「でもさーなんで次元漂流者のあんたに、あれだけ高い魔力あるんだろうね。なのはもそうだけど、地球出身者って恐ろしいよ」
「俺だってなんであんな魔力持ってるか分からないよ。それに俺となのはは生まれは地球でも全く別の地球だ」
駄神の仕業なんて言えないし、言っても信じてもらえないだろうな。
「でも健人と同じ管理局で働けたらいいな。だって……友達だから一緒にいたい、かな」
うっ、この笑顔は反則すぎる。
ま、俺の将来なんてどうなるか分からないけど、フェイトと仲良くなれたのは良かったな。
続く
そろそろ展開を進めたい今日この頃。