ViVidかと思ったら無印でした……   作:カガヤ

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大変お待たせしましたー!
そろそろGOD編も終わりが見えてきました。


第32話 「かつ丼よりも牛丼派」

「はい。まずは氏名と年齢、職業からね」

「えっと、名前はリリィ・シュトロゼック、です。年齢は、トーマと同い年、だったらいいな。職業はトーマと一緒に管理局見習い、でいいのかな? 以上、です」

「なるほど、トーマ爆発しろ、っと」

「なんでだよ!?」

「健人、真面目にやってくれないか?」

 

今俺はクロノと一緒に、アースラの一室で先ほど襲撃(?)を仕掛けてきたリリィを尋問(?)中だ。

リリィの連れであるトーマも同席している。

問題は、この世界に来てトーマとはぐれてから、リリィがどこで誰といたのか。

そして、なんで俺を連れ去ろうとしたのかだ。

気絶したリリィを連れてアースラに来た時、トーマとも対面したがやはり俺に面識はないらしい。

やっぱりジークやヴィヴィオ達と同じ世界の少し未来からきたんだな。

今思い出したけど、たぶんトーマとリリィはリリカルなのはForceのキャラだ。

ただ、Forceは一度も見たことないんだよな。vividよりも未来の話としか知らない。

で、そんな彼女達を尋問する時、リリィが言った事がある意味衝撃だった。

 

『あの、かつ丼より海鮮丼をお願いします!』

 

……どうやらどっかで日本の刑事ドラマを観すぎたようだ。

しかも、海鮮丼ってかつ丼より明らかに高いし!

とまぁ、当然そんな彼女の戯言はトーマのツッコミと共にスルーされたわけで。

 

「さてと、じゃあ君がトーマと離れてからの話を聞かせてくれないか?」

「はい、わかりました!」

 

てっきり話すのを拒否するのかと思ったけど、リリィはすんなりと話してくれた。

それによると……

 

 

リリィはトーマと違う次元世界に跳ばれたらしく、通信もできずにあてもなくさまよっていて街でフラフラっとさまよっていた。

で、自分がどこにいるのかもトーマの居場所も分からず、お腹が空いてレストランに入った。

メニューの文字が読めず適当に頼んだら最高級フルコースだった。

わけもわからず飛ばされてきた彼女にお金があるはずもなく、食い逃げしようとした時だった。

 

『はぁい。ここは私が出すから、ちょっとお話聞いてくれない?』

 

と、ピンク色の髪をした女性が親切にもお金を出してくれることになった。

その人は空になった財布を見て、泣きそうになってたそうだけど。

で、リリィを助けてくれた人の名は、キリエ・フローリアン。

キリエはリリィをとある場所へと案内した。

そこには3人の女の子がいて、キリエはとある目的の為に彼女たちに協力しているらしい。

彼女達にはもう1人仲間がいて、その子は眠っていて、その眠りを覚ますのを手伝ってほしいというのだ。

3人の女の子の名は、シュテル・ザ・デストラクター、レヴィ・ザ・スラッシャー、ロード・ディアーチェ。

眠っているもう1人の子は、ユーリ・エーベルヴァイン。

彼女達の目的は、とある男の子のお嫁さんになる事。

その男の子は、眠っていた自分達を、熱い魂の籠った一撃で起こしてくれた。

その衝撃に彼女達は激しい恋に目覚めた、一目ぼれというやつだ。

それからリリィは彼女達から、いかにその男の子の事が好きで、ユーリまでも無理して実体化してチョコを届けたりだの色々と将来設計まで教えられた。

リリィはその話に感動し、彼女達の初恋を叶える為にその男の子、俺を迎えに来たというわけだ。

 

「「「…………」」」

 

そこまで話を聞き終えて、何とも言えない空気が場を包み込んだ。

トーマはリリィが食い逃げ未遂をしたと聞いた時に、机に突っ伏してしまいブツブツ何かを言っている。

クロノは心の底から同情すると言いたげな目で俺を見てきていて、後ろで話を聞いていたなのは達もなんとも言えない表情を浮かべている。

とりあえず、ツッコミ所が多すぎだ。

だけど、どうしてマテリアルズ達が、会った事ない俺にベタ惚れだったのかは分かった。

闇の書の闇を退治した時に放った一撃、シャインナックルブレイカー。

アレが闇の書の奥底に眠っていたマテリアルズを起こしたんだ、きっとそうだ!

 

<マスター、絶対あのキスが原因だと思うぞ>

 

そんな事ない! 断じてない!!

ちなみに、リインフォースに改めてマテリアルズやユーリの事を訪ねたが、覚えていないそうだ。

闇の書の闇の呪縛から完全に解放された事が関係しているかもしれないのだとか。

 

「うーん、それで君は健人を迎えに来たわけだが、そんなにペラペラと喋って大丈夫なのか?」

「何がですか?」

「キリエ達に口止めされてはいなかったのかい?」

「はい、されてませんよ。だって、私、話を聞いてすぐに飛んできましたから」

「「へっ?」」

 

あれ? 普通口止めするんじゃないの?

さもなきゃたった1人でテスタロッサ邸によこすわけないと思う。

もしくは、彼女が1人で乗り込んできたこと自体が罠?

でも、リリィを検査したけど特に異常はなかったよな。

 

「ディアーチェちゃん達からユーリちゃんが完全に目覚めるには健人君の力が必要だと聞いて、善は急げってことでそのままやってきましたから」

「……ちなみに誰も止めなかったのか?」

「健人君の住む家の近くに転送する時に、キリエさんは何か言おうとしてましたけど、きっと、必ず健人君を連れてきてね。って言おうとしたんだと思います」

 

違う。絶対違う。

多分キリエはリリィを止めようとしたんだろう。

キリエの計画では、ユーリを目覚めさせる為の鍵である俺を連れてくる為に、リリィを味方に引き込んでこっちに襲撃をかけてくるつもりだったんだろう。

でも、リリィが話を最後まで聞かず、衝動的に飛び出した為にご破算。

しかも、なのはやフェイト達がいるって事をリリィに説明する前だったんだろうな。

だから、あの時、なのはをみてリリィが驚いて気絶したんだろう。

 

「恐らく、その予想は当たっていると思うよ。さっき、そっちにリリィってアホの子行ってませんか? って匿名の通信があったから。保護してます。って言うと、やっぱりかー! って叫びながら通信切れちゃった」

 

エイミィ曰く、どうやらリリィの話を聞いている間にキリエらしき人から、通信が入ったそうだ。

もちろん、発信源は特定できなかったそうだが。

 

「……何だかそのキリエってやつに、同情しちまうね」

「「「うん」」」

 

アルフの言葉に、俺たちは黙ってうなずいた。

けど、どうしてマリッジブルーなんて言葉を教えたんだろ、キリエは。

それよりこの世界の事、なのは達がいることを教えなきゃダメだろ。

 

「それで、これからどうするの?」

「キリエがリリィを次元漂流者と分かって接触してきたって事は、彼女がこちらの世界に来た理由を知っているはずだ。マテリアルズの確保も含めて、リリィから居場所を聞いて突入だ」

 

クロノはそう息巻くけど、そう簡単にうまくいくかなぁ。

 

「待たせてすまない。話の続きだが、キリエ達がいた場所はどこにあるか分かるか?」

「えっとですね……あれ、私、どこから来たんでしたっけ?」

 

やっぱりかー! このリリィ、言っちゃ悪いがポンコツすぎるー!

 

「リ、リリィ? 転送したなら座標情報は残っているんじゃないのかい?」

「ううん。私1人じゃ転送なんてできないよ? なぜかリングも銀十時の書もトーマの方に行っちゃってて呼び出せなかったし」

「ちょっと待ってくれ。じゃあ、君は、健人をどうやってキリエやマテリアルズ達の所へ連れて行く気だったんだ?」

 

クロノがそう聞くと、リリィは手を組んで顎に指をあててしばらく考え込み……

 

「あ、そうですね。そのこと、すっかり忘れてました、あははは♪」

 

――ドテッ!

 

あまりに能天気に笑う彼女に、俺やクロノ、トーマになのは達まで全員が見事にこけてしまった。

こ、こいつはほんとにもう……

 

「ク、クロノ、どうしようか?」

「い、致し方あるまい。しばらくは様子を見るしかない。海鳴市への転送反応は確認できたが、逆探知はできなかったんだ」

 

現状、こっちからは打つ手なしなのは変わらないか。

 

「ふっふーん、そんなことはないよ。毎回毎回逃げられたりしてたんじゃ、管理局の名が廃るよ! さっきの通信や今までの転送反応、その他もろもろ反応は追えなくても解析はばっちり進んでるんだから!」

 

そのためにプレシアはアースラに行くこと多かったもんな。

 

「あと1回、1回だけ転送でも通信でもなんだろうと、向こうからのアプローチがあれば完璧に発信源を追えるよ」

 

エイミィは自信たっぷりに言うけど、要はあと1回襲撃がなきゃダメってことかい。

 

「今まで来たのがレヴィとディアーチェ、なら次は」

「シュテルかキリエが来る可能性はあるな」

「順番に来るわけじゃないだろうけど、どちらにせよ健人を狙ってくる可能性は高いな」

 

ものすごーく複雑な気持ちだ。

マテリアルズ達は大好きだけど、今までロクな襲撃かけてこなかったからなぁ、不安しかない。

 

「大丈夫だよ、健人君。私たちが絶対に守るから!」

「でも、次に来るのがシュテルだったら、なのはちゃん、大丈夫なん?」

「うぐっ!?」

 

息巻くなのはだったが、はやてに言われると髪の毛がげんなりしてしまった。

良い機会だ、前から気になっていた事を聞くか。

 

「なぁ、前にマテリアルズが復活した時、一体何があったんだ? いい加減教えてくれないか?」

 

なのはとフェイトとはやては難しい顔をしたが、少し考えて頷きあった。

 

「えっとね、前にシュテル達と戦った時は、シュテルとかレヴィとかまだ名前がなかったの」

「うん。自分たちが何者で何をしようとしているか探っている、感じだったね」

「で、覚えている事は……王子様を見つけ出す事だったんよ」

「王子様!?」

 

当時のシュテル達は、はっきりと俺を探しているわけじゃなく、自分達を深い眠りから目覚めさせてくれた王子を探して暴れているだけだったのか。

 

「ディアーチェが言うには、その王子は紅く燃える髪をして、身長は180センチを越えていて、すらりとしていてでも筋肉が逞しい……とにかく、王子様の特徴を長々と恍惚な表情を浮かべて語ってたんや」

「うわぁ~……それはいやだな」

 

自分と似た顔をした女の子が目の前でそんなことをしてたらげんなりするか。

 

「そ、それだけじゃなくてね。レヴィたち、聞いてもいないその王子様を見つけたら……えっと、その、色々とやりたいことがあるって、それも長々と赤裸々に……」

 

顔を真っ赤にしたフェイト、それを見てなのはとはやても煙が出そうなほど、顔を赤くした。

それ以上は聞いてやるなと、肩に手を乗せたプレシアが目で語っている。

 

「うん、分かった。それで十分だよ」

 

シュテル達が何を言ったのか、なんとなくわかった。

きっと、それは大人の世界だったんだろうなぁ……なのは達には早すぎたんだ。

 

「ともかく、健人は今まで以上に気を付けて行動した方がいい。絶対に単独行動はダメだぞ」

「あぁ、分かってる」

 

彼女達に捕まると命は取られなくても、それ以上の大事なものが色々奪われそうだし。

 

「大丈夫や。私もヴィヴィもハルにゃんもフェイちゃんもおるんやし」

「そうです! 私たちがもとの世界に戻る方法を見つける為にも」

「はい、健人さんをお守りしてキリエさんとお話しします」

「うん、健人は絶対に渡さないよ……ところで、フェイフェイって私だよね?」

 

頼もしいことを言ってくれるジーク達に感動。

 

「私だって」

「当然、私らもや」

 

なのはとはやてもそれに続く

女の子に守られてるって言うのは正直どうよって思うけど、今更だよねー?

 

 

「何だか、外は盛り上がってるね、トーマ?」

「……忘れられてるってこと、ないよね?」

 

尋問室に残された2人の事は、正直忘れていた。

あれ? もう1人忘れているような気がするんだけど……はて?

 

 

続く

 




次回はいよいよ、彼女が……

お姉ちゃんの出番はあるのか!?(笑)

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