幼女と漫才を繰り広げた後、すぐに騒ぎを聞き付けたアースラスタッフと言うか原作メンバーがかけつけてきた。
幸い誤解(?)は解けたようで、猛犬……もといアルフからは威嚇されながらも謝罪された。
で、俺の健康状態は問題ないと言われ、早速リンディ艦長自ら事情聴取となったわけだが……
「さて、これからどうしましょうか?」
リンディ艦長が困った顔をしながら言った言葉、それは俺が聞きたいです。
俺がこの世界に来て飛んでいた空間、虚数空間と言うモノは魔法が一切使えない空間らしい。
で、そんな空間からマッハで飛んできて、娘と別れをしようとしていたプレシアに激突した俺。
有り得ない場所から有り得ないタイミングでロケット頭突きしてきたのは誰だ!? と騒ぎになったが、肝心の正体がさっぱり分からない。
だから目が覚めて話を聞いてみたわけだけど、それでもさっぱり分からない。
まさか死んで駄神に転生させてもらった元18歳です! と言うわけもいかない。
なので、記憶が曖昧で気が付いたらあの空間を飛んでいて、何が起きたのか分からない9歳児としか言っていない。
生前の住所は教えたけど、そんな住所はこの世界の日本には存在しないと言われた。
早い話……
草薙健人、元18歳現9歳、身元不明住所不定無職の迷子です!
と言うわけで……これからどうしよう?
「あんな所から飛んできたのだから、ただの次元漂流者とは思えないのだが。魔力もあるわけだし君は一体何者だ?」
クロノがそう言うけれど、他に言い様がないんだよな。
ってあれ? クロノが銀さんボイスじゃない。
そう言えば、クロノは声代わりしたと言う話を聞いたような……
残念なようなほっとしたようなだ。
「まぁまぁ、クロノ。彼はどうやら記憶も曖昧みたいだし、しばらくはこちらで保護する事にしましょうか」
「ぜひお願いします!」
良かったー、ホントどうしようかと思ってたんだよね。
あの駄神、俺の戸籍とか生活資金とかそう言うの一切何も言わなかったんだよな。
「ところで俺がぶつかった人は誰だったんですか? あの女の子も何か訳ありのようでしたけど」
プレシアの顛末は知ってるけど、ここは白々しく聞いておこう。
案の定、リンディ艦長もクロノも困った顔をした。
「あ、いや、気になっただけなんで、機密とかそういうのだったら、別に知りたいとは思いませんけど」
「うーん……じゃあ、直接本人に聞いてみるのはどうかしら? 彼女もあなたと話したがっていたから」
「かあさ、艦長!?」
これは俺も驚いた。プレシアが俺と話したがってるのもだけど、仮にも犯罪者でラスボスに気軽に会わせようとするだなんて。
まぁ、別に怖くないけどね、さっきのアルフに比べたら。
「今のプレシアなら多分大丈夫よ。フェイトさんへの接し方、あなたも見たでしょクロノ? まるで別人みたいだったわ」
「確かにそうかもしれませんけど……分かりました。僕が立ち会います」
結局プレシアとの対談にクロノだけでなくリンディ艦長も立ち会う事になった。
そう言えば、原作主人公のなのはは今どうしてるんだろ?
漂流者でさっき目が覚めたばかりの俺がなのはの事知ってるはずがないから、2人に聞くわけにもいかないしな。
「あ、リンディさん、クロノ君!」
と思っていたら、プレシアに会いに行く途中でなのはと遭遇! ついでにユーノにも。
「あら、なのはさん、ユーノ君。食事はもうすんだのかしら?」
「はい! あの……」
なのはは俺の方を見て何だか困ったような顔をしている。
あれ? なんでそんな顔になる?
初対面だから、とはちょっと違う感じだ。
でも、せっかく出会えた原作主人公兼ヒロイン。
さっきのようなミスはおかさず、ちゃんとした自己紹介で警戒心を解こう!
「いつもニコニコあなたの隣に這い寄る迷子! 草薙健人です!」
「「「………」」」
――ヒュ~
あ、あれ? なんだこの空気?
なんでだ……あれか、きっと名乗りポーズがいけなかったんだな。
そりゃそうだよな。ニャル子さんポーズはいけないよな、セリフも中途半端にアレンジしたけど似合わねぇ~
と言うか、ニャル子さんネタなんて分かるわけないか。
日本人のなのはでも分からないだろうな。
「え、っと、私は高町なのは」
「ユーノ・スクライア、です」
……引かれた。見事に引かれた。
「彼女達は民間協力者だ。君は知らなかっただろうけど、彼女達は君が唐突に現れてプレシア・テスタロッサに頭突きをかましたのを見ている」
な、なるほど。だから俺をみて変な顔になったんだな。
そりゃそうだよなー。いきなり現れてラスボスを頭突きで撃破する乱入者を見たらそりゃ困惑するよなー
フレンドリーに挨拶しても、引いちゃうのも仕方ない。
「いや、彼女達が引いたのは明らかにさっきの挨拶のせいだろ」
「……ですよねー」
クロノ、えぐるようなツッコミありがとう。
ちょっぴり傷心したけど、気を取り直してラスボスとの面会になった。
俺の出身が違う世界の日本と知って、なのはが少し興味を持ってくれたのは幸いかな。
あのまま警戒心丸出しだと、これから先碌な事なさそうだし。
なのは達とは後で話す事にして、今はラスボスラスボス。
「そんなに緊張……してないわね。それはそれでいい事だけど」
原作でどういう人か知らないけど、ある意味超親馬鹿な人とは駄神からは聞いてるし。
それにあんないかにも魔王がいそうな城に住んでるラスボスって、どんな人かちょっとワクワク。
でも俺そんなラスボスにロケット頭突きしたんだよな。その事で恨み買ってたらどうしようか。
と、思っていましたが……
「そう、あなたが……ありがとう」
出会って早々お辞儀をされるとは思っていませんでした。
てっきり頭突きの件でお怒りかと思ったけど。
「あなたに頭突きされて気を失った時、昔の夢を見たのよ。アリシアとの懐かしい夢をね」
で、目が覚めてあんなヒドイ事をしたのに、心配してくれたフェイトを見てこの子も自分の娘だと再確認出来た、というわけか。
ついでにあの次元震の影響で仮死状態のアリシアも復活したのがトドメとなったらしい。
うんうん、良かった良かった。
ちなみになんで仮死状態だったのが復活したのかは、現在調査中らしい。
これも駄神様の影響だし、一生分かる事ないだろうな。
「ところで、あなたは一体何者なの? 見た所フェイトと同じくらいの魔力を感じるけど」
「えっ、マジですか!?」
あの駄神、魔力はほどほどと言ってたのに、まさかフェイトと同じくらい付けたとは……
驚愕の事実に固まったけど、それはリンディ艦長とクロノも同じようで目を丸くしている。
「そ、それは本当なのプレシア?」
「正確には分からないけど、それはあなた達が調べればわかるでしょ?」
と言うわけで、プレシアとの面会も程々にして急きょ俺の魔力検査になった。
今はトレーニング室のような広い部屋で魔法を使ってみる事にした……が。
『うーん、確かに魔力値は高いわね。リンカーコアもちゃんとあるし』
ガラスの向こうでこっちをモニターしているリンディ艦長の言う通り、俺の魔力はなんとクロノよりも高い。
しかし、肝心の俺が魔法を全く使えない。
訓練用のデバイスも貸してもらって使ってみたが、うまくいかない。
なんかこう自分の内に眠る強い力は感じるようになったけど、それを外に出すのが難しい。
「君は別世界とは言え、なのはと同じく魔法自体知らない世界出身だ。高い魔力があってもうまくいかなくてもしょうがない」
とクロノは慰めてくれるけど、せっかく魔力あるんだから魔法使いたい、空も飛びたい!
「理屈よりもイメージでやった方がいいのかもしれないな」
「イメージ? あ、そうだ!」
「ん? 何か分かったのか?」
クロノがイメージと言った事で、一つ思いついた事がある。
それは、Fateで主人公の士郎がアーチャーに言われたセリフ。
【忘れるな。イメージするものは常に最強の自分だ】
Fateとは全く違う世界観で魔法や魔術、魔術回路とリンカーコアみたく別物だけど、要領は似たようなもののはず。
もう一度、デバイスを握りしめて意識を集中……イメージ、イメージ、最強の自分をイメージ。
すると体の奥底から何かが湧きあがってくる感じがした。
「これなら、いける……おりゃぁ~!!」
「なっ!? ま、魔力変換素質!?」
気合の叫びと共に噴き上がった、炎。
と同時にデバイスが爆発した。
あれ? 俺、燃えてる?
「……か、火事だぁ~!!」
体が燃えている事に驚き、パニックになった。
自分で出した炎で燃える事はない、んだけどその時の俺はそんな事考えてる余裕なし!
「落ちつけ! 君の体が燃えているわけじゃ……ちょっ、こっちにくるな! あっつ!?」
「クロノ~消火器~119番~!」
とにかくこの火を消してもらおうとクロノに詰め寄ったら、クロノの髪が燃えてしまった。
すぐにスプリンクラーが発動して鎮火されたけど、俺はまだ燃えている。
『ちょっと、2人共何をしているの! 健人君、その火はあなたには無害よ。ひとまず落ち着いて!』
スピーカーからリンディ艦長の声がするけど、全く耳に入らねェ。
後で聞いた話では、あれは魔力変換素質・炎熱と言うもので、ViVidのリオや番長と同じものらしい。
でも、魔力変換素質を持つ人は、大抵純粋魔力の大量放出は苦手だ。
と、前髪が少しチリチリになったクロノに睨まれながら言われた。
ごめんちゃい。
続く
地球学生ルートに行こうか、それとも別ルートにしようか迷い中。
そろそろ主人公のプロフィールでも……
生前の設定は結構シリアスだったりします。