ViVidかと思ったら無印でした……   作:カガヤ

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お待たせしました!
子狸達初登場!(笑)
関西弁が間違ってたらごめんなさい(汗)
いつもよりシリアス多めです。



第12話 「たまにはシリアスもね?」

スカさん家からアースラに転送されるはずだった、が。

なぜか転送されたのは地球の日本、それも俺が 【生前】 住んでいた所にそっくりの町だ。

 

<マスター、間違いないぜ。やっぱりここは日本の海鳴市中丘町って所だ>

 

再度シェルブリットに現在地を確認してもらうと、俺が住んでいた町とは名前が違う。

こんな偶然はあるのだろうか、とフラフラと自然に足がとある所に向かって行く。

 

「えっと、ここにコンビニがあって」

 

――お兄ちゃん、買い食いしようよ。中学デビュー記念!

 

――おいおい、奈々。それは何か違うと思うんだけど?

 

――いいじゃん。あ、今日は新刊発売日だった! ここで売っててラッキー♪

 

唐突に頭に浮かんだのは妹、奈々が中学に入学してすぐの頃。

よくここのコンビニに寄ったんだよな。

と言っても、学校に通えたのなんてほんの数日だけど。

あははっ、名前まで一緒だ。

 

「……」

<どうしたんだマスター? いきなり黙って?>

「いや、なんでもない」

 

頭に浮かんだ事を振りはらうようにして、俺はどんどん進んで行った。

 

「ここは公園か、目の前にバス亭があるのも一緒だ」

 

――いいなぁ。ぼくもみんなとここであそびたい!

 

――健人、大丈夫よ。きっとまた遊べるようになるから。ねっ?

 

――……うん。

 

この公園で遊んでる友達を見て、一緒に遊びたいって駄々をこねて母さんを困らせたっけ。

こっそり遊ぼうとしたら、怒られた事も何度も合ったし。

外で遊ぶ事なんて、当時の俺に出来るわけないのにな。

置いてある遊具も何もかもが一緒だ。

 

<マスター、一体どこに向かってるんだよ?>

「……もう少しで俺の家なんだ」

<俺の家って、マスター。ここは別世界、違うんだろ? 何しに行くんだよ>

 

シェルブリットの言う通りだ。

俺の家なんてここにあるわけない。ここは同じ地球で同じ日本でも町の名前が違う別世界。

でも、それでも俺は自然に走り出していた。

もう帰れない所だとしても、分かっていても。

第一、あの家は、父さんが残してくれたあの家は、死ぬ前に火事で焼け落ちた。

だからこそ、別世界のここでは、あるかもしれないと言う変な期待をしてしまった。

 

――ここはね。お父さんとお母さんが結婚してすぐに建てたの。家族いっぱい作ろうって、張りきり過ぎちゃってこんな大きい家にしちゃったのだけどね。

 

――ぼく、この家好きだよ。明るくて暖かいもん。だから1人でいても寂しくないし。

 

――わたしも好き!

 

――……そう、そうね。お父さんが遺してくれた家だものね。

――お母さん、泣いてるの?

 

父さんは奈々が生まれて少しした頃、事故で亡くなった。

俺も奈々もわけがわからず、母さんは俺たちを抱きしめて泣いてたけど、家にいると父さんがいるような気がしたっけ。

 

「ここも、この家も一緒、何もかもが一緒だ」

<マスター、大丈夫か? さっきから心拍数や呼吸がおかしいぞ!?>

 

道をどんどん進んで行くと、見た事ある家家が立ち並んでいる。

まるで自分の家に帰るような感覚だ。

懐かしさと、怖さでさっきから胸の動悸が収まらない。

 

「っ、……あそこの角だ」

 

俺の家があった場所に段々と近づいて行く。周りに建っている家も作りも、壁や屋根の家も一緒だ。

目を閉じれば、あの頃の事がどんどん浮かんでは消えていく。

 

――おや、学校帰りかい? 楽しかった?

 

――あ、おばさん! うん、久しぶりにみんなと会って楽しかったよ!

 

――そうかい。それは良かったね。

 

「はぁ、はぁ……見えて、きた」

 

角にある家が見えてきた。

少し見えてきた屋根と壁は、住んでいた家と同じ色と形。

 

「すー、はー……」

 

一度立ち止まり目を閉じて、深く息をした。

そして、ゆっくりと瞼を開け、目の前にある家を見上げる。

 

「……ぁ、あぁ」

 

そこには、全く同じ作りをした、俺の家があった。

家の中から人の気配はしない。

恐る恐る、表札を確認する。

 

「八神……はっ、ははっ、そうだよな。草薙って書かれてるわけない、よな」

 

俺は何を期待してここまで来たのだろうか。

ひょっとしたら、母さんや奈々、父さんがいるんじゃないかって期待していたのかもしれない。

父さんだけではない。2年前、俺の見舞いに来る途中に事故で亡くなった母さんと奈々にそっくりな人が住んではいないか、と。

 

「ははっ……馬鹿、だよな、俺」

 

目から涙が止まらなかった。

けど、俺はそれを拭う事もせず、ただ笑いながら、赤の他人の家を見上げてた。

「あの、大丈夫?」

「えっ?」

 

突然誰かに話しかけられ、ハッと振り向くとそこには怪訝そうな表情を浮かべる2人の女性と、車いすに乗った1人の少女が心配そうにこっちを見ていた。

 

「えっ、えっと……その、ごめんなさい!」

「あ、待って、ってはやっ!?」

 

3人の顔を見て、その時自分が泣いている事にようやく気付き、色々と頭がごっちゃになり、反射的に彼女達と反対方向へ駆け出してしまった。

泣いてる所を見られたのが恥ずかしかったのと、不審者と思われているかもしれないと言うのと、何より……彼女達は俺が知っている姿をしていた。

 

<お、おい。泣いてたと思ったらいきなり走り出してどうしたんだよ? さっきの奴ら知り合いか!?>

「いいから、とにかく逃げる!」

 

車椅子に乗っていた女の子は、八神はやてだった。

そして、はやての側にいたのは、シグナムとシャマルだ。

なんではやて達がここにいるんだ、とか、なんで車椅子に乗ってるんだ、とか色々疑問が浮かんだ。

と、ここで俺は大事な事に気付いた。

さっき俺が泣きながら見上げていた家、かかっていた表札に書かれていた文字は、八神。

あそこは八神はやてが住んでいる家だったのだ。

帰宅したら見知らぬ子供が泣きながら自分の家を見上げている。

はやて達にしてみれば不審者以外の何者でもない。

捕まれば物凄く厄介な事になる予感しかしない!

 

「待て!」

「えっ? えぇ~!? なんで追いかけてくるの!?」

 

後ろから声がして振り向くと、シグナムが走って追いかけてきた。

あれ? これ3カ月前にもなかったっけ?

あの時と違って、今回は誰にも頭突きしてないから追いかけてくるな―!

しかも、よりにもよってバトルマニアのシグナムかよー!

トーレ並に逃げ切れる自信ない!

魔法を使って飛んで逃げようかと思ったけど、それだと怪しさが倍増だ。

第一印象が不審者から不審な魔導師にランクアップしてしまう。

彼女達に合流して、管理局へ連絡してもらおうかとも一瞬考えたけど、ともかく逃げの一手だ。

 

「捕まえた!」

「うわわっ!?」

 

そういう考えているうちに、いつの間にか背後にまで接近していたシグナムに捕まってしまった。

最初から本気で走って飛べば良かったかな?

 

「落ちつけ、何もしはしない。しかし、お前は子供なのに随分と足が速いな」

 

シグナムは落ちついた声をしているが、少し睨んできてる気がする。

 

「あ、あの、何か用ですか? きれいなお姉さん?」

 

ちょっと怖かったが、精一杯年頃の子供の笑顔を浮かべた。

それを見てシグナムが少しだけ困惑したが、すぐに睨んできた。

だから怖いって!

 

「我がある……はやてが話がしたいと言ってきている。すまないが、来てくれないか?」

 

シグナムはさっきよりはすこーしだけ優しく言ってきたけど、顔は険しいままだ。

我がある、って主と言えば俺が不審がるから言い直したのかな?

 

「え、えっと、はい……いいですよ?」

 

断る理由が浮かばなかったので、素直に受け入れた。

それを見て、なぜかシグナムがまた首をかしげたように見えたが、一体何だったんだ?

 

<おい、念の為マスターの魔力や俺の存在を感知されないようにしておいたぜ>

 

シェルブリットが俺に念話で話しかけてきた。

今更ながら、念話という存在を忘れていたな。

 

『それはありがとう。ってそんな事も出来るのかよ』

<あぁ、これでマスターは普通にしていれば魔力のない一般人の子供にしか見えないはずだ。魔導師って気付かれないように気をつけろよ>

 

シェルブリット曰く、さっきからシグナムが念話で話しかけていたそうだが、シェルブリットが遮断してくれたおかげで俺が無反応だったので、俺が魔導師ではないと思ったらしい。

俺が魔導師、もしくは魔力持ちだと気付かれると面倒になりそうだからと、咄嗟にシェルブリットが気付かれないように処置してくれたようだ。

シェルブリットが使った魔力に対するステルス機能、これはクアットロが付けてくれた機能だそうだ。

ナイスな機転だシェルブリット!

それにそんな機能も付けてくれたクアットロにも感謝!

いかに原作キャラとは言え、不用意に俺が魔力持ちの魔導師モドキとバレるのはまずいよな。

よくよく思い出してみれば、確かはやて達って最初なのは達の敵だったはずだし。

うーん、今更だけど、無印やら原作アニメ全部見ておくべきだったかな。

 

 

シグナムに連れられて、八神家と戻った俺ははやてやシャマル、それに帰宅してきたヴィータとザフィーラを紹介された。

 

「初めまして、私の名前は八神はやて。あなたの名前を教えてくれへんかな?」

「俺は、草薙健人。健人でいいよ」

「健人君か。ほな私もはやてでええよ。八神やと見ての通り大勢おるんよ」

 

はやては警戒もせずに親しげに俺に話しかけてきた。

シグナム達は複雑そうな表情を浮かべている。

それからはやてに夕食を御馳走になった。

はやての料理の腕はプロ級で、アースラの食堂で食べた料理やウーノの手料理よりもうまかった。

将来いいお嫁さんになると言ったら、顔を真っ赤にして喜んでくれた。

色々世間話をしてるうちにヴィータとも大分打ち解けてきた。

シグナムとシャマルは最初からそこまで警戒心を出してなかったけど、ヴィータは露骨に警戒してたからな。

夕食を終えて、そろそろ行こうかと思っていると、はやてが真剣な表情をして俺に聞いてきた。

 

「それで、どうして健人君はうちを眺めてたんや? 何か、嫌な事でもあったん? あ、言いたくなかったら言わんでええよ?」

 

はやては表情こそ真剣そのものだったが心の底から心配そうに言ってくれた。さて、どうやって誤魔化そうか。

他のみんなをチラ見すると、シャマルははやてと同じく心配そうな表情を浮かべている。

シグナムはただじっと黙って、俺の返事を待っているだけと言う感じだ。

ただ、ヴィータはさっさと吐いて楽になれ、とでも言ってそうな顔をしている。

ザフィーラはずっと黙って狼形態だが、じっとこっちを見てきている。

あーこれ下手に誤魔化せないんだけど、どうしようか。

 

<管理局やスカリエッティ達に世話になってた事は黙っていた方がいいみたいだぜ。どうやらこいつら魔導師だけど、管理局員ってわけじゃなさそうだ>

 

シェルブリットははやて達が管理局に登録されていない魔導師だと言った。

管理局のデータにハッキングでもしかけたのか? 

と思ったが、ウーノが気付かれずに管理局のデータベースにアクセスできるようにしてくれたようだ。

ウーノもありがとう! でも、これバレたら重罪だと思うんだけど!?

まぁ、滅多に使わないようにしよう……

どうしようかと考え込んでいると、はやてがゆっくりと話し始めた。

 

「あんな、私の両親は幼い頃事故で亡くなって、それから親戚のおじさんに援助してもらいつつどうにか生活しとったんやけど、やっぱり1人は寂しかったなぁ。原因不明の病気で足も動かなくなって、この家で1人の生活は結構しんどかったんよ」

「でも、今のはやてはとても楽しそうに見えるけど、シグナムさん達のおかげ?」

「せやな。シグナム達が2カ月程前、私の誕生日にふらっと現れて、最初は何の事か分からんかったけど、私を主と呼んでくれて、それからみんなで暮らし始めて、おかげでもう寂しくなくなったんや」

「あ、主、それは!」

 

はやては自分の家庭環境だけではなく、シグナム達の事まで話し始めた。

シグナム達が急に焦り始めたのは、魔法関係の話は一般人に話すのはマズイって事だろうな。

俺、一般人じゃないけど。

 

「別にええよ。半ば無理やり健人君の秘密を聞こうとしとったんのは私らやし。それに、健人君なら話しても大丈夫やと思ったんや」

 

はやてがそう言うとシグナムはシャマル達と顔を見合わせ軽く息を吐くと、詳しくは秘密だが自分達は普通の人間ではなくはやてを主とする特別な存在と言う事を話してくれた。

当然、この事は誰にも話さないでくれとお願いされて、友達の秘密は絶対に話さないと言うと、皆笑顔になった。

さて、はやてやシグナム達がここまで話してくれたんだから、俺も話さないとダメだよな。

でも、どうやって話そうか。こなた神や管理局、スカさんの事をうまく話さないようして、尚且つ嘘を交えないようにしたいな。

うん、言うべき事は決まった。

俺ははやて達を見渡して、こう切り出した。

 

「俺は、一度死んでいるんだよ」

 

 

 

続く

 




健人の生前の話を今回と次回で触れます。

未だにメインヒロインを誰にするかと、どのルートにするか悩み中。
ハーレムルートにハーレムエンドでもいいかなー……

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