「それじゃあ、今日は三年生を送る会と、卒業式の準備をするよ!」
「いつにも増して、張り切ってるね~、柑ちゃん」
柑條が張り切るのも無理はないだろう。
この学校では卒業式の前に、在校生たちが『三年生を送る会』と言うものを開く。
これは日頃お世話に為った先輩方へ感謝を伝えるとともに、卒業を心から祝福する会なのだ。
この会は生徒会執行部を中心に、企画・運営をしていく。
よって柑條はいつにも増して張り切っている訳だ。
「三年生を送る会とは具体的に、何をするんですか?」
そういば、ツッキーと歌風さんは初めてか…
「簡単に言うと、三年生を送る会は執行部を中心に、在校生が卒業生に感謝を伝える場だよ」
「成る程。執行部を中心に準備するから、会長は張り切っているんですね」
「そう言う事だな。それで柑條、何をするのかは決めてあるのか?」
まぁ、毎年在校生が歌を送るのは決まっているから、他に何をするかを決めるだけだけど。
「うん!ビデオレターとメッセージツリーをしたいなー、って思っているの!」
「良いんじゃないかしら。内容は如何するつもりなのかしら?」
「ビデオレターは各部から先輩たちへのメッセージで、ツリーは掲示板にメッセージを貼っていこうと思っているよ」
成る程な。
ビデオレターはサプライズとしては申し分ないし、メッセージツリーは単純明快なお祝いを示すのには丁度いいだろう。
「ここまでで反対な人はいるかな?」
今更ながら、このまま進めても良いかの確認を取ってくる。
「よく考えてあるし、良いじゃないか?」
俺は別にいいと思う。
そもそもの所で、お世話になった先輩が余り居ない。
人付き合いが得意じゃないし、居たとしても余り憶えていないだけかも知れないが。
そんな訳だから、他の人が納得できるものになれば俺はいいかな。
「面白そうだし、私は賛成だよ~」
「私も問題ないわよ。月乃は如何かしら?」
「ハイ。私も、良いと、思います」
「私も良いと思いますよ、会長」
如何やら他の人たちも賛成のようだ。
ま、気持ちを伝えるならビデオレターやメッセージにするのが、一番良いだろうしな。
「でも確か送る会まで後、三週間ぐらいしか無いですよね?メッセージは大丈夫だと思いますけど、ビデオレターは間に合うのですか?」
「そうだね~、部活の都合を考えると、撮影期間は二週間だとして、会場準備と通し練習もあるだろうから、一日以内で編集しないと厳しいかな~」
「そうなると、編集の出来はかなり低いものになりそうですね」
「そうね……確かに、私たちで撮影して編集する事を考えると、間に合わないかもしれないわね。月乃、あなた確か編集出来たわよね?」
「姉さま、私では、間に合わないかと……」
そうだよな。
よく考えると、撮影は出来ても編集となるとそれなりに編集ソフトを使いこなせないといかないだろう。
俺はそこまで機械に強い訳では無いし、困ったな……
悩んでいると、チャットに連絡が入った。
「ちょっと良いか?赤城から連絡が来たぞ」
「赤城先輩、現状を知っているんですか?」
「チータは、盗聴で会議に参加しているからね~」
「そうでした……」
そう言えばそんな事、言っていたよな。
それが許されている学校ってどうなのだろう…
「それで、莉桜は何って言っているの?」
「あぁ、『編集は僕に任せろ。一日あれば、編集程度余裕だ』ってさ」
よく考えたらそうだろうな。
管理を任されるぐらいなのだから、本当に余裕なのだろう。
「なら、解決だね。メッセージツリーのメッセージは、明日各クラスに連絡して、出来たら先生に預かって貰う事にしよ。ビデオレターも明日各部の都合を聞いて、取り始めよう!」
こうして準備した、三年生を送る会は無事成功した。
その時の出来事は、また別の機会で話そう。
リクエストの受付をしています。その際は、活動報告のリクエストへ送ってください。
今後も気長に待っていただけると助かります。