生徒会の会議   作:東條九音

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至らない点や誤字脱字が多いですが、それでも良ければどうぞ。


第28話 赤城の提案

「赤城、用事って何だ」

 

夏休みも残すこと、あと三日。

サマーフェスティバル後にも、生徒会関連や委員会関連で、学校に呼び出されていたわけで、まともに夏休みを過ごした覚えがない。

 

「呼び出しに対しても不満が見て取れるけど、後輩たちとデートしてたじゃない?それって、ある種のリヤ充イベントでしょ?」

 

……あれは地獄だ。

後輩たちの機嫌取りをしつつ、一日過ごすとか、無理。

…まぁその時の話は、また別の機会でするとして、あれを休みとは思いたくないな。

夜海の表情を見て莉桜は、苦笑いを浮かべる。

 

「あらら、贅沢だね~。……歌風もよく頑張るなぁ

 

「ん?なんだって?」

 

「なんでもな~い。さてと、それじゃあそろそろ、本題に入るかい?」

 

そう言って莉桜はパソコンを弄って、ある画面を出す。

その画面は生徒に配布されている、携帯端末が表示してあるようだ。

 

「これは?」

 

「見ての通り、生徒証明書兼学園支援端末『SPT(仮)』の仕様書」

 

「いやいや、それは見ればわかる。じゃなくて、なんで俺にこれを見せるのさ?」

 

赤城に意図が見えないと言うと、仕方ないと言わんばかりに、一から説明を始めた。

…普通、一から話すべきだろう。そもそも、SPT(仮)が何なのか、いまいちよく分かってないし。

 

「まず生徒証明書兼学園支援端末『SPT(仮)』通称、SPTは学校側の依頼で私が作ったアイテムだよ」

 

ポケットから、スマホと同サイズの端末を取り出す赤城。

その端末の側面にあるボタンを押し電源を入れると、実演しながら説明を始める。

 

「基本用途は、生徒証明書。これは電源を入れると、すぐにポップする。でもって一般用には、メモ帳、カレンダー、メッセージ・チャット機能がついているの」

 

「一般用?それは生徒用って事だろ。なら、専用の物もあるのか?」

 

「その通り。先生や私たちが持っているのがそう。教師用は一般のものに加えて、出欠席管理が出来る様になっているの。生徒会用は議事録機能」

 

「へぇー、そんな機能があったのか。でも使って無いよな?議事録機能」

 

「使ってる。生徒会室のパソコン、あれと同期してあるから。まぁとにかくこれが、SPTの大まかな機能だよ」

 

ふと疑問に思ったことを聞いてみる。

 

「SPTってどういう意味なの?」

 

「Student・Personal・Terminalの頭文字。でも、まだ仮だからね?」

 

「今後完成品を作ると…まぁいいや。依頼とはいえ、良く許可出たな?」

 

「そんなの簡単よ、『僕に学園の警備システム等任せるなら、いっそ便利なものを作り上げて見せる』って説得したら、向こうから喜んで差し出したもの」

 

「個人情報の管理がザルなうえに、俺たちは知らずに、お前お手製の監視アイテムを持っているわけか……」

 

「大丈夫。どーせ私にしか、ハードもソフトも作れないよ。それに整備やアップデート出来ないし。何なら、生産も独自のルート使ってるし」

 

……とことん規格外だよな、赤城って。

それはさておき……

 

「で結局、これの仕様書見せられた俺は、どうしろと?」

 

「えっと、そ」『お母さま、前置きが長すぎます』

 

ようやく本題に入れるかと思った途端、横やりが入る。

ただ、横やりを入れてきた相手は、赤城のパソコンだった。

 

「……どゆこと」

 

流石にこれは……どういう流れ?ってか、何?

 

「ゴメンね、ナナ。もうすぐ本題に入るから」

 

『随分長く、待っている身にもなってください』

 

こちらの戸惑いをよそに、パソコンと会話する赤城。改めてもう一度誤ってから、仕切り直すように話し始める。

 

「え~、改めてなんだけど、SPTを改良する上で、新しいAIを作ったの。それがこの子、自己学習搭載型、議事録管理AI・ナナ。今は生徒会の議事録を制作するだけのAIだけど、ゆくゆくは私の助手レベル、それかこのシステムの管理を任せようかなって、考えているんだ」

 

「………だから?」

 

「古詠にはこの子を、ナナを預かって貰いたい」

 

…やっぱり話が見えてこない。

議事録を管理するAIを作ったと。まぁここまでは良いとしよう。よくないけど。けど赤城だし。天才の考える事だし。

 

「俺が預かる訳を聞いても?」

 

赤城に訊ねると、指を三本立てた。

 

「一つ、前に話していたゲーム。覚えてる?」

 

赤城の問いに頷く。

きっと、例のVRMMO企画の事だろう。

 

「あれの開発目途が立ってね。側は作るから、古詠にはシナリオ等の設定を考えて、管理を任せたいんだ。勿論メンテとかは、私がするよ?」

 

確か夏休みの初め頃に、話したばかりなのに、もう開発目途が立ったのか……

 

「二つ、古詠のこれからに役立てると思ったから。サマーフェスティバルの時の話、聞いたよ。物書きかカウンセラーを目指すかもしれないんでしょ?」

 

「あ~、まぁ選択肢としては、アリかなってだけだけど」

 

「十分。で三つ、親である私以外の人を過ごす事で、成長を促したいから。以上三つの理由から、古詠に預けたいの」

 

明らかな面倒事。けど、悪い事ばかりではないのは分かる。

って言うか相手は、赤城の作ったAI。電脳空間相手だと、どうやっても逃げ道は、無い。

 

「はぁー、分かった。引き受けるよ」

 

「うん、それじゃあ古詠の端末を貸して。ナナのマスター認証するから」

 

言われた通り、赤城に端末を渡す。

その端末をパソコンに繋いで、何か打ち込む。

 

「はい、それじゃあ彼女の事、よろしくね」

 

『よろしくお願い致します。マスター』

 

「わーったよ。ナナ、だっけ?ま、よろしくな」

 

端末を受け取りながら応える。

赤城に対してはきっと、常識と言うものは通用しないのだろう。

 

「っにしても赤城。いくら任されている、って言ってもよ、ほぼ理事長とか校長と差が無くないか?やってること的に?」

 

「あはは、面白いこと言うね♪仮に、もしそうだと言ったら、古詠はどうする?」

 

赤城が愉快そうに笑い、訊ねてくる。

もし、理事長とかだとしたら……

 

「別に。今までとあまり変わらないだろ?面倒くさいことに、ならない限りは、な」

 

「うん、うん。古詠なら、そう言うと思った」

 

赤城は満足そうに、頷く。

その顔は、満面の笑み、と言うのが相応しそうだ。

……まさか……いや、ないな……うん、ないよね?

はぁー、取り敢えず聞かなかった事にしよう。

 

 

 

 

 

……それはそうと、柑條には悪いがやっぱり、生徒会から少し、距離を置こう。

これ以上俺が居たらきっと、あの空間、心安らぐ大切な居場所を壊してしまう。

楽しかった時間、大切な居場所を守るためには、この方法、俺が距離を取ることが一番だから。

 

 

 




最終話まで、あと3話。

次回は、11日です。

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