生徒会の会議   作:東條九音

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至らない点や誤字脱字が多いですが、それでも良ければどうぞ。


第24話 柑條と夜海

「みんな楽しそうだったね」

 

「そうだな」

 

現在柑條と一緒に、生徒会室のベランダに出て、夜風にあたりながら祭りのことを思い返していた。

 

「アルミ缶回収も、予定より多くの缶を回収できたから、よかったよね」

 

「そうだな」

 

「途中、トラブルもあったけど、大事ならなかったし」

 

「そうだな」

 

「…ミー君、聞いてる?」

 

「そうだな」

 

「えい!」

 

「うぉ!ちょ、柑條。膝を蹴るなよ。地味に痛いだろ」

 

「さっきから『そうだな』しか言わないからだよ」

 

「ありゃ?そうだったか。悪い考え事してた」

 

自分的にはちゃんと、話していたと思っていたのだが、どうやら心ここに在らず、の状態だったようだ。

 

「だろうね。その顔を見たらわかるよ」

 

「へぇー、因みにどんな顔してた?」

 

「んー、そうだね。人を見ている様で、見ていない。どこか別の場所を見ている様な感じ、かな?」

 

なんか分かるような、分からないような……

 

「ま、簡単に言えば、難しい顔をしてたんだよ」

 

そう言って柑條は、部屋から二つのパイプ椅子を持ってくる。

そして、イスを並べると、片方に座る。

 

…きっと、何を考えていたのか話せ、という事なのだろう。

付き合いが長いと、相手が言わんとする事が大体、分かって来ると言うものだ。

もう一方の椅子に座ると、柑條が先に口を開いた。

 

「ミー君、もしかしてまだ、生徒会に加入したこと、後悔していたりする?」

 

「……そうだな、正直言うと、いまだに思うのは、俺が生徒会に居るのは役不足で、相応しくなかったんじゃ無いかとは思う」

 

「やっぱり……でもね、私はミー君で良かったと思っているよ?実際、ミー君も良かったとは思ってるでしょ?」

 

柑條の言葉に頷く。

役不足だとも思っているし、知り合い、柑條がいた事で変に委縮する事なく、過ごせていた。

自分が言った事、柑條が言った事、どちらも本心であることは間違いない。

…けれど、これ以上柑條を通して他社と信頼を、仲を深めるわけには行かない。

 

そう考えているのも見越してだろう、柑條が踏み込んできた。

 

「ミー君は、人をあまり信じないよね。それも、自分も含めて」

 

「…だなぁ。俺は自分の考えも、信用できない。疑って、疑って、疑い抜いてようやく、自分も相手も信頼できる」

 

「うん、知ってる。……まだ、あの時の事を引きずっているんでしょ?」

 

柑條が言っている事はきっと、あの時の事だろう。

 

「自分がした選択で、あんな事になったんだ。自分を信用できなくなるには………十分すぎる。…自分が信じられなければ、他も信じられないからな」

 

親友と言い争い、自分の意見を推し通した

 

「私は気にしすぎだと思うけど?それに、前みたいにならない様にするために、距離を取る必要もないと思うよ?」

 

その時の意見の食い違いから、徐々に関係は崩れ

もう話も出来ない位に、関係をこじらせてしまった。

 

「気を抜いていて、壊してしまうのが嫌なんだよ。近ければ近すぎるほど、いつの間にか壊してる。そうなる前に自ら道化を演じて、距離を作っておくんだよ」

 

だから、心を許せる友人を得てしまったのなら

失ってしまう前に道化を演じて、関係を保つ。

そうすればきっと、ギクシャクすれど、壊れ切ってしまう事はないはずだから。

 

「その自己犠牲は、本当にみんなを救えているのかな?」

 

柑條が俺の目を見て、訊ねてくる。

 

「さぁな、所詮は自己満足。いわば逃げ……なんだろうから」

 

「なら約束。生徒会(わたしたち)からは、逃げないで。私たちは大丈夫だから。ミー君がいなくなる必要は無いから」

 

真剣に、それでいてどこか不安げに柑條は言う。

俺が生徒会からも、距離をおこうとしている事

きっと、その兆候を感じ取っているからこその表情。

 

「……そうだと良いな」

 

俺に言えるのは、コレだけ。

肯定も、否定も出来ない。

 

「信じてるから、ね?」

 

柑條が期待を込めた眼差しで言う。

 

「わーったよ。だから、この話はこれで終わりだ」

 

「うん…わかった」

 

両者ともに黙り込んだ。

その静けさに耐え切れず空を見上げると、綺麗な星空が広がっている。

柑條の顔をうかがってみると、柑條は何かを考えていた。

 

「……ねぇミー君。これはお節介かもしれないけど、将来何になるか決めていないなら、物書きかカウンセラーになったら?」

 

と思ったら、唐突に進路についての話を始めた。

一体どういった、風の吹き回しだろう?

今日の柑條は、どこかお節介が過ぎる気がするな。…いや、いつもの事か。

 

「いやね、疑り深いし、相手の事親身になって考えるけど、きちんと第三者目線の意見だからね。向いているんじゃないかと思って……」

 

まぁその言い分なら、カウンセラーってのは分かった。けど……

 

「物書きの理由は?」

 

「本が好きだから?」

 

そこは疑問形で解さないでほしかったよ。

まぁでも、柑條の意見は一理ある気がする。

けど……

 

「まぁ、参考にするよ」

 

今後の事は、後で考えよう。

今は、今を楽しむのが一番だから。

 

 


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