赤城が合流して数時間。
柑條たちと赤城話しているのを眺めているが、どうも慣れない。具体的には、赤城の今の喋り方とチャットの時の話し方。
別に気にしなかったら良いのだが、チャットでの交流が長かったうえ男だと思っていたからな~
そう考えると女子って適応力が高いな。
柑條たちはギャップには慣れたようで、今も楽しそうに話をしている。
そんな訳で眺めていると、離れた所で飲んでいた暁先生が近付いて来た。
「古詠はまざらないのか?」
「無茶言わないで下さいよ。基本的に人と話すのも苦手なのに、知り合いばかりと言っても女子の輪の中に入るなんて出来ませんよ」
「ま、お前さんならそう言うとは思っていたよ。けどお前の置かれている状況って、かなり恵まれていると、俺は思うがな」
「恵まれている、ですか?」
どう言う事か分からず聞き返すと、暁先生は楽しげに話し出した。
「そうだぜ。いわゆる、ハーレムだろ?お前の居る状況って。年頃の男子なら、かなり羨ましい状態だ」
「そう言う事ですか。まぁ、普通ならそうかも知れませんけど、自分からすればかなり肩身の狭い場ですよ」
「と言いつつ、楽しんでいるんだろ?この状況をよ」
「如何でしょうね、自分の仕事で手一杯ですから」
「そーかい。ま、一度きりしか無いこの時をしっかり楽しむ事だ」
言いたい事は言い切ったらしく、暁先生はふらりと何処かへ行ってしまった。
「しっかり楽しむ、か」
傍から見れば羨ましいかも知れないこの状態。肩身が狭いってのも、もちろん本音だが心のどこかでは、先生が言う通り状況を楽しんでいる自分が居る。
今日はどんな事があるのだろう。また突拍子の無い事を提案するんじゃないだろうか。
今まで殆どの事に関心が持てなかったが、生徒会の、柑條たちの、行動は面白く停まっていた時間が動くような、色が無かった世界が色付く様な感じがする。
…ってらしくないか。けど、今の生活が今までの、関心が全く持てなかった自分を変えつつある事は分かる。
先生の言う、ハーレムは別問題だけど。って言うか、よく考えたら先生がハーレムと言うのって問題じゃないか?
そんな事考えていると、赤城が話の輪から抜けて此方に来た。
「古詠、暁先生と何話していたの?」
「いや~、ハーレムが如何こうとかな。教師がハーレムって言うのってアウトじゃないか?」
「あ~、もしかしたら、酔っているのかも。お酒臭くなかった?」
そう言えば、手に持っていた飲み物、ビールだった気がするな。
いや、発言もアレだけど、未成年の集団の中で酒を飲むのって行かんだろ。
表情から察したようで、赤城は苦笑いしながら話す。
「あはは、やっぱりね。ゴメンね、古詠。あの人飲むと自由度が増しちゃうんだ」
「いや、赤城が誤る事じゃないだろ」
「そうだけど、一応は身内な訳だし…」
「そういやそうだったな。まぁとにかく、気にする事は無いよ」
「そう言って貰えると助かるかな」
そう言うと赤城は近くの椅子に座った。
にしても、自由度が増すって、殆ど手が付けられないだろ。
そう言えば赤城は何で、こっちに来たのだろう?先生の事を話すため、って訳じゃないだろうし……
まぁ直接聞けばいいか。
「で、赤城は何の用事だ?それが本題、って訳じゃないだろ?」
「あ、うん。送ったメッセージは見ているよね?」
「気にしたら負けってやつか?」
「そう、そう。で、その後に頼んでいたやつなんだけど……」
お土産持って来いって言ったやつか。
「ほら、一応は買って来たよ」
「おぉ~、ありがとね。えーっと、『蜜柑風味のメロンパン』と『シークワーサーの炭酸ジュース』ね。……頼んでおいてアレだけど、見事に柑橘系ばかりだね」
「指定が無かったからな。俺のおススメを買って来た。要らないんだったら。俺が持って帰るけど?」
そう言うと赤城は慌てたように、受け取ったお土産を背後に隠した。
「い、要らないとは言って無いわよ!……もっとこう、形に残る物とか……」
「?最後の方、何っていったんだ?」
「何でもない。それよりほら、古詠もまざって話をしようよ」
そう言うと赤城は俺の手引いて、柑條たちの所へ戻る。
俺は大人しく赤城に付いて行き輪に加わる。
その後時間ギリギリまで話をし、皆それぞれ家へと帰った。
やっぱり退屈する事は無さそうだよな、生徒会に居ると。
そんな事を改めて認識した、古詠であった。
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