いつも以上の至らない点が多く見られるかも知れませんが、それでも良ければどうぞ。
「なぁ、輔…何でこんな事になっているんだ?」
「さあ?何でだろなぁ」
何気ない呟きと共に漏れる、両者の溜息。しかしそれは仕方がないと言えるだろ。何故なら、今いる場所が檻の中だからだ。
つい先ほどまでとある専門学校のオープンキャンパス、「秋華祭」を輔と見学していた。通常のオープンキャンパスとは違って、如何やら学園祭を兼ねているらしい。会場はとても賑わっていた。
そこまでは、まぁ良い。だがその後が問題だ。気付くと二人とも、檻の中に居た。
過程をすっ飛ばし過ぎな気がするが、実際いつの間にか此処に居た。
「俺にはサッパリ分からんし、身に覚えがないのだが…輔な何かわかるか?」
「取り敢えず、こうなる直前は呼び込みの人に声を掛けられて、この部屋に入る事になったんだよな。そんで、入ってみるとそこは檻の中で閉じ込められましたーってかんじゃね?」
「と言う事は?」
「多分、脱出ゲームだろ。だから、特に説明もなく放り込まれた、って事だろう」
言われて檻の中をよく観察してみると、確かにそう見えなくもない。が、少しリアルすぎる気もする。
「何にせよ、取り敢えずあからさまに出口感漂う、扉とその近くにあるタブレットを確認してみるか」
「だな」
意見がまとまった所で扉に近づき、開けようとするが開かなかった。
次にタブレットを確認すると、その画面には『人が三人、動物が三匹、スマホが三台』と、ゲームの名前と思われる「川渡り」と言う文字が表示されていた。
「輔。これって解かないと扉が開かないパターン?」
「じゃない?ま、「川渡り」なら、何回もしたことがあるから余裕だな」
そう言って輔は、画面を何度か操作するとゲームクリアという画面が出てきた。と同時に、扉が開いた。
「お、開いたな。よし、夜海。次に行こうぜ」
「さすが、ゲーム研究部部長、楽しんでいるな~。まぁ取り敢えずさっさと出ようか」
そうして、檻の外に出るとそこは森の中。道があるのでそれに沿って先に進む事にした。
「なぁ、輔。建物内にしては随分歩いた気がするんだが……」
「そうだな。それに今更だけど、何で森?」
「まだあるぞ。進んだ先に何で、また扉があるんだよ?」
「夜海、きっとアレだ。気にしちゃダメなやつ。って事で、行くぞー!」
「何だかんだ言ってやっぱり、楽しんでいるよな?」
輔は躊躇する事無くその扉を開いた。
開いた先にあったのは法廷のような場所。内部を観察すると情の字を刻んだ王冠を被った男と青いドレスを着た女の子が対峙し、言い合いをしているように見える。
「なにこれ?修羅場?」
「ノーコメント。夜海、見なかった事にして、先に進もう」
「あ~‼やっと来たね!よ~し、ここから反撃だよ」
輔と今見た光景について話していると、女の子が此方に気付いたらしく、声を掛けてきた。
いや、声を掛けて来たというより、一方的な感じだよな。
「何か言っているけど、如何する?」
「気付かれたのならしょうがない。さっさと終わらせよう」
覚悟を決め、女の子の方に行く。
そばまで行くと、女の子はご丁寧に説明をし始めた。
「それじゃあ彼方たち、説明するよ。私の名前はアリス。この国では情王が定めた法により、ゲームで色々な事を解決するの。扉の鍵についてもゲームだし、捕まって裁判する時もゲームが行われるの。彼方たちにして貰いたいのは、言い掛かりをつける情王に、ゲームで勝って欲しいの」
アリスの話は分かった。けど、気になる事か一つ。
「輔、情王ってなに…」
「あれだろ、情報専門だから女王と情報を掛けているんだろ」
「うん、分かっていた。分かっていたけど……安直じゃね」
「じゃあ口にするなよ。それよりも、次のゲームもクリアして仕舞おうぜ」
そう言って情王の方を見る。すると情王はようやく出番かと言う風に、喋り出した。
「待ちくたびれたぞ。では、ゲームを始めようか。ではアリス、お前の罪の確認だ。罪の内容は、『儂の廃人プレーによって鍛え上げたゲームデータが入ったスマホを盗んだ』」
「私はやってないよ~。自分でどこかに置き忘れたんでしょ」
「罪人は黙っておれ。話を続けよう」
「その前にいい?」
アリスを黙らせると、情王が再度話を続けようとした。すると今度は、夜海が割って入った。
「何だ、申してみよ」
「具体的に何のゲームをするは、まだ言っていないけど、ゲームは始まっているんだよね」
「その通りだが、それが如何した?」
夜海の質問に対して、不思議そうに聞き返す情王。アリスも輔も、夜海が何を言おうとしているのか分からず、きょとんとしている。
がお構いなしに、夜海は話を続ける。
「いや~、だったらチェックだよ、情王」
「なに?」
「無くしたスマホの在りかが、分かったって事。ゲームは始まっているって認めた事だし、悪いけどすぐに終わらせようか。情王、アンタのスマホの在りかはそこだ」
夜海は言い切ると、情王自信を指差した。
「わしのどこにあると言うのじゃ!」
「服の内ポケットの中。確認してないだろ?アンタきっと、何処かに置き忘れてそれを誰かが持って行った、って思いこんでいたんだろう。それで偶々近くに居たアリスを、犯人だと思い込んだ。ま、確かめて見なよ。それで見つかったら、チェックメイトだけど」
夜海の話を聞き終えると、情王早速内ポケットを調べ始めた。
すると夜海が言った様に内ポケットからスマホが出てきた。
「やったね!私たちの勝利だ!情王、自分の言いがかりを認めるよね?」
「見つかった以上何も言わん!」
そう言うと情王は何処かへ走り去ってしまった。その姿を見届けるとアリスは、夜海の方を向き質問した。
「なんで分かったの?」
「ん~、そうだね、自分もよくどこに何をしまったのか覚えて無いからかな?だから、思い込みをしている可能性に掛けた」
「夜海、それって運任せだろ。って言うか、せっかくのゲームをするチャンスを」
「いいじゃん。メンド……疲れたから早く終わりにしたかったんだよ」
「それ、本音が隠せてないだろ」
「あはは…さてそれじゃあ、出口に案内するよ。二人とも、目を瞑って十秒数えて目を開けてね」
言われた通り、目を瞑り十秒数える。
そして目を開けると、そこは元居た秋華祭の会場だった。
「お兄さん、ウチの駄菓子屋は如何だった?」
目を瞑っていただけなのにと、不思議に思っていると、呼び込みをしていた生徒が感想を聞いてきた。
「駄菓子屋?脱出ゲームだろ?」
「うちは駄菓子屋だよ?ほら」
そう言って背後にある扉を開ける生徒。そこにあったのは、確かに駄菓子屋だった。
「輔……どいう事、これ?」
「うーん、どういう事だろ?ま、面白かったから良いじゃん」
「……そーだな。きっと夢だったんだな。うん、それで決定」
先程の出来事は不思議体験と割り切り、秋華祭を改めて楽しむ事にした二人。
二人は知らない。実はこの祭り中他にも不思議な体験をした人たちが居た事を。
しかしそれはまた、別のお話で……
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