「イタタ、参ったな。ほかにみんなは何処にいるかな?」
遺跡『神々の武器庫』の地下で一緒に遺跡にやって来た仲間たちを心配する。
シロ・フリーセンは落とし穴の罠に掛かってしまい、真っ暗な地下空間へと落とされてしまった。
シロのギルド「バルトラ協会」は、商業系ギルドでは中堅。特徴はポーション系アイテムの種類の多さと納入が早く品質も良いこと。
小中規模のギルドの3割が利用していると言われているため、そこそこ知名度のあるギルドだ。
そんなバルトラ協会、表向きにはポーション系アイテムのみを扱っている商業ギルドだが、じつは素材アイテムやドロップアイテムなども扱っている。
その事はごく一部のプレイヤーしか知らず、扱われるアイテムは市場にはあまり出回っていない物が多い。
それもそのはず、バルトラ協会が扱うアイテムは遺跡や洞窟と言った、ダンジョンでのみ獲得できるものを専門に扱っているのだ。
つまるところバルトラ協会は、商業系でありながら盗掘を生業としているギルドである。
「しっかし、武器庫って言うわりには全然アイテムないなぁ~」
『視覚強化』で暗闇でも見えるはずなのに、地下空間は把握出来ない程真っ暗。モンスターのいる気配も無い。おまけに宝箱も無いときた。
つまらなそうに呟き、道に落ちていた石を蹴り上げるシロ。
蹴られた石は帆を描き飛んでいくと、カチッという音が部屋に響き渡る。
「うわっ、なんか変なスイッチ入っちゃったかも」
その音を皮切りに部屋に灯りがつく。
改めて部屋を観察して見ると、自分が落ちてきた穴以外道は無さそうだった。
よく観察すると部屋の変化は灯り以外にもあった。
「うわぁ……明らかに怪しげな祭壇」
落ちて来た穴の真下に、宝箱が設置された小さな祭壇が出現していた。
「ミミックの可能性を考慮して開けるとなると……あの技かな」
最近知らないうちに習得していたアビリティ『神の足』
把握している能力は、『無音歩行』『速度上昇』のみ。
『スキルの上位に存在するもの』とプレーヤー間で言われるアビリティ
その能力は呼び声の違わず、同種のスキルと比較すると破格の力を有していた。
「神偽・幻想演舞」
技名を発するとシロは、一切の音を立てることなく分身をする。
そして祭壇の周りを回り始め、目に捉えられない程の速度になったタイミングで、一斉に宝箱に斬りかかる。
「-
斬撃は渦を巻くように、自身は高速で舞うように動き、相手に動く暇を与えない、160《固定ダメージ》×速度《回数》の連撃技。現在の速度は実質∞らしい。神の足を通して効果の現れる速度上昇には、制限が無かったからだ。つまるところ、自ら攻撃をやめるか相手から足を止められない限り、永遠に攻撃し続けることが出来る。
100回を超えた辺りで宝箱が消滅して、アイテムがドロップした。やっぱりモンスターだったようだ。
アイテムドロップ『神通足』を確認し、速度を緩めていき立ち止まる。
「ふぅ、今回は反動無し……って訳には行かなかったっか~」
そう言うとシロは目を回して倒れ込む。この技の弱点はいたって単純。超高速の動きに脳が耐え切れず酔ってしまいしばらくの間全く動く事が出来なくなってしまうのだ。
それから程なくして仲間たちが、目を回して倒れているシロを発見し遺跡を後にするのだった。