次回からようやく、第三世界に入って行きたいと思います。
「これはこれは、珍しいお客さんだ。と言うか、お客自体が珍しい」
「マキナ、そんな喋り方だった?」
本棚に囲まれた場所で、マキナは自分を訪ねてきた人物と話す。
「キャラブレしているのは、いつもの事だろうから、気にするな。しっかしリーン、よく図書迷宮の入口を見つけられたな。それに、俺がここに居るって事も」
「鍵になる本を押す、ありがちな仕掛け、分かりやすい。居場所は、勘」
マキナとリーンがいる本棚に囲まれた場所とは、図書迷宮と呼ばれる場所。正式名称は、無限図書館。
一般的には、図書館に入るとごく稀に遭遇するダンジョン、との事から『図書迷宮』とプレイヤー間で言われている。
しかしその実態は、マキナのアビリティ『神々の書庫』の能力の一つであった。
「そ、まぁいいや。無事イベントもおわったし。そろそろここを出ようかなぁ~って、思っていた矢先に訪ねて来るって、どんな用事よ?」
「不機嫌?」
リーンの顔が少し不安げになる。その表情を見たマキナは、リーンの不安を否定しながら本音を話す。
「違う……けど、イベントが終わったのに会いに来たって事は、面倒事関係っぽいからなぁ~」
マキナが不機嫌でないと分かると、リーンの表情は元のフラットなものに戻る。そしてようやく、用件を語り出す。
「訊ねる、どうすれば強くなれる?」
「…それはあれか?前も聞いてた、どうして核の位置が分かった、とかの延長線上の話しか?」
リーンは頷く。それを見てマキナは、さらに訪ね返す。
「お前さんこそ何で、力が欲しい?」
リーンは真っ直ぐと、マキナを見つめて答える。
「失ったものを、取り戻すため。そのためなら、強くなる。どんな事だって、する」
「…………」
「…………」
「お前さん、リーンって名前じゃないんだろ?本当の名前は?」
「……なぜ、分かる?」
一番の理由は、いま本人が口を滑らせたと思いつつも、答えるマキナ。
「この無限図書にはな、ありとあらゆる世界の本がある。あり過ぎて把握し切れてないけど……第三世界の書物にこんな事が書かれていた。『巫女護リシ 二ツノ神ノ力 巫女ガ見初メシ者ニ 授ケラレン』てな」
「それだけじゃ、決め手にならない」
「ディアーチェの《執行者》ってな、専門は隠密・暗殺なんだよ。実際に前衛で戦うのは、《疾風迅雷》だ。聞いていた話と違うなぁと思ったよ。《執行者》が前に出て戦うんだもん」
「……」
「ま、けどそりゃそうか、本物じゃないなら。…で、これ以上何か言うべき?ないなら、ちゃんとした理由を、聞かせて貰ってからかな?」
「……私の名前は、フェルト・ロッサ・アグリア。リーンは、王様がそう名乗れって。第三世界アグリア出身。神の力を護る、巫女をしていた。第三世界は、崩壊した。理由は、分からない。けど、分かる事もある。姉さまは殺された。みんな死んでしまった。生き残った私に出来る事、それは復讐。だから、強くなる必要がある」
「やめるつもりは?」
「…………」
マキナはフェルトに訊ねる。しかしフェルトは、無言で真っ直ぐとマキナを見つめるだけ。
やがてマキナは、うなだれながら呟く。
「が笑っているのが、目に浮かぶなぁおい」
「…………」
「わーったよ。ただし、俺の言う事はきちんと聞くこと。俺の側を勝手に離れて、行動するな。以上二つが守れるなら、強くなるために面倒見てやる」
マキナがそう言うとフェルトは、
「分かった、約束する」
と言って頷く。そして二人は、図書迷宮から立ち去る。
~キキのスキル紹介コーナー~
キキ:今回はマキナのアビリティについて、解説するよ!
アビリティ「神々の書庫」
神シリーズは秘密が多いから、今回出てきたモノだけ紹介するね!
『無限図書館』
これはね、ありとあらゆる世界の原本が揃っているの
その数は何と……わかんなの
実は今もなお増え続けていて、さらにその本で迷宮が形成されているんだよ!
これこそ無限図書館の所以♪
今回はこれまで、まったね~