「……確かに殺したと思ったのだけれど?」
セリアは殺したはずの相手、μに訊ねる。
「お二人とも、パフォーマンスお疲れさまでした!観客の皆さん!どちらが良かったか、考えて下さいね~。さてセリアさん、答えは簡単。同じ舞台にいる様で実は、別の場所にいるのです」
そのセリアの質問に答えたのはμではなく、舞台袖から出てきたルーネだった。
「もっと砕いて説明しましょう。μはステージにいます。セリアさんもステージに立っています。ですがμがいるのは、ステージ上の結界の中。つまり、同じ場所に立っていながら、別の空間に居るのです」
「つまりは、レイヤーってところかしら?なんにせよ、ダンスに託けて攻撃するって言うのは、お見通しだったわけね」
道理でμを攻撃したのに、観客からの悲鳴は無かったわけだ、とセリアは納得する。攻撃されることは、予想の範囲内だったのだから、と。しかしセリアには、納得できないことが一つあった。
(私の攻撃は確実に、線を捉えていたはず……例え結界に阻まれていたとしても、結界の脆弱な部分を通したうえで、斬った。斬り付けた感覚はあった。なのに傷一つ、ついて無いのはなぜ…?)
「何やら納得されていないようですね~。ま、それよりそろそろ、投票といきましょう!観客の皆さん、おねがいします!」
ルーネの合図で投票が始まる。やがて投票が終わり、ルーネが結果を発表する。
「結果は、7対3でμの勝利!残念だったね、挑戦者さん」
「観客がいなくなるまで待ってて」
マイクが拾わない程の小声で、セリアに声を掛けるμ。そのあと観客に、今日のライブ終了を告げる。
「それじゃあ、今日のライブはここまで!みんな~、ラストの明日もよろしくね♪」
観客がぞろぞろと会場から出て行く。いなくなるまで待った後、μはセリアに一冊の本を渡す。
「これは?」
「『魔法書:
「μ、それでは説明不足です。つまりですね、μはあなたの実力を認めたので、イベントの報酬であった、魔法書を授けると言うことです」
「いや、それは分かったのだけど……『
セリアの疑問を聞き、あぁとルーネは納得する。
「効果はμも言っていましたが、そのままです。簡単に言えば、ギャンブルに関する魔法ですね。使用者によって効果が変わるので、どう言うモノとは明言できないんですよ」
μはルーネの横で、頷いている。一通りの説明を終えると、μたちは「じゃあまた何処かでね」と言って転移して行った。
一方、放置されたセリアはと言うと……
「ユニークな魔法を渡されてもねぇ……」
途方に暮れていたのだった。