「まずは、負傷者たちを安全な所へ移す。ハヤテ!」
「心得ております」
ディアーチェはハヤテに呼び掛けると、ハヤテは既に行動を起こしている所だった。
「マキナさん、雪那さんをこちらに。お嬢さまの転移術を使って、学園に跳んで治療します。莉花もセレスお嬢さまと一緒に、跳びますよ」
「は~い。それじゃあ、リーン。程々にね」
雪那をハヤテに預ける。
莉花とハヤテはディアーチェが開いた転移魔法陣に乗り、この場を離脱して行った。
そしてこの場に残ったのは、ディアーチェ、マキナ、リーンとクロムウェル。
「さて、今の間に魔力を溜めていた様だが、満足したか?クロムウェルよ」
「あぁ、十分じゃ」
今のやり取りの間ずっと、放ってお置かれていたクロムウェルは、魔力を練り込んでいた。
クロムウェルの周りには、三つの白い球体が浮かんでいる。その一つ一つに膨大な魔力が籠められており、一目で危険だと分かる代物だった。
「む、精霊を依り代にした禁術か。まぁ問題あるまい。リーンよ、前衛を任せる」
「仰せのままに、王よ」
返事をしたリーンは、ディアーチェの前方に立ち大鎌をかまえる。
「マキナよ、うぬは後ろに下がって観ておくがよい。プレイヤーではなく、我らがこやつを倒すが、安心するがよい。次の世界の門は、我の権限で開ける」
言い終えるとディアーチェは、空中に魔導書を呼び出し、それを開く。
「強欲よ、咎人より力奪いて、力と成せ」
「審判の時だ!」
ディアーチェが宣言すると同時に、リーンが動き出す。
しかしクロムウェルが詠唱のほうが、リーンが動き出すより少し早く完了した。
球体二つの色が赤銅色へ変化し、うち一つがディアーチェに向けて放たれる。
「させない」
リーンが手にしていた大鎌を、赤銅の球体に向けて投げ、ディアーチェへの攻撃を防ぐ。
「!」
大鎌と球体はぶつかると、球体が膨れ上がり大鎌を飲み込むと、クロムウェルの手元に戻って行く。
そして球体は形を変えはじめ、やがて飲み込んだ大鎌へと変化した。しかし色は元の鈍色から赤銅色へと変わっていた。
「どうだ!これが『強欲』の力だ!貴様の得物は、儂のものとなったのじゃ。この武器で貴様を殺してやろう!」
大鎌を上空へ投げる。大鎌は空中に止まり、クロムウェルがリーンに手を向けると、大鎌は回転を始め、そしてリーンへと向かって行った。
どうやら、球体時の遠隔操作も行えるらしい。
「驚いた…けど、それだけ」
得物を奪われたリーンは、一種驚きはしたものの、構う事なく突っ込んでいた。
そして大鎌が当たる瞬間、左腕を振り上げる。
その左腕にはいつの間にか、
その盾を使って大鎌を受け流し、クロムウェルに接近する。
「ッく、嫉妬よ、我に」
「無駄」
クロムウェルに接近したリーンは、そのまま盾で突進、かと思いきや
クロムウェルの詠唱は完成する事無く、ランスはギリギリでかわされ肩をかする。
すぐさま大鎌で反撃するが、両の腕とも
「どういう事じゃ…なぜ武具が、いや、そもそも何処から」
「もう終わり?」