「させると思うか?莉花よ、娘を直ちに殺せ!」
クロムウェルは莉花に、抱えているセレスティーアを殺すように指示をする。
しかし莉花は、クロムウェルの指示に従わなかった。
「何をしておる!早くせぬか!」
クロムウェルは怒鳴りながら、もう一度言う。
すると莉花は、にゃははと笑い首を横に振った。
「残念だけどもう、私はあなたの護衛じゃないよ?だから、あなたの指示を聞く必要は無いの」
「な、何を言っておる」
「さっき言った通りなんだけど?もっと分かりやすく言おうか?『もう潜入は良い。セレスを連れて、戻って来るがよい』。私は王さまから、こう言われたの」
ここまで言われて、ようやく気付いたクロムウェルは、莉花に向かって魔法による火炎弾を放った。
しかし、放たれた魔法は莉花に当たる前に、虚空より現れた少女の持つ大鎌に切り裂かれた。
「…ぬるい攻撃」
「リーンちゃん!いや~助かったよ。この通り彼女を抱えていたから、どうやって防ぐか迷っていたんだよ」
リーンと呼ばれた少女は、莉花に向き直ると、柄の部分で頭を叩いた。
「いった~い。何で叩くの!」
「油断しすぎ。いいから行くよ?」
そう言うとリーンは、莉花の肩に手を置く。すると、三人の姿は徐々に虚空へと消えていく。
「今の奴は…」
急な出来事に、茫然とするクロムウェル。やがてディアーチェの周りに揺らぎが現れ、そこには莉花、セレスティーア、リーンに加え三人の人物が現れた。
「莉花ちゃんもリーンちゃんも、喧嘩せんの。セレスちゃんも無事に戻って来たんやから、それでええやん」
「空間制御系を使えるのは知ってたけど、ここまでのモノとはなぁ……」
「マスターに見せるのは初めてやったけ?でもウチより、ディアーチェの方が凄いんやで~」
緊張感の欠片もなく話しているのは、マキナとハヤテ。
先程の揺らぎはハヤテの魔法『空間湾曲』
空間を湾曲させることで、疑似的な転移や隠蔽が可能となる魔法である。空間制御系の魔法は強力ではあるが、リスクが高いため使う人物が殆ど居ない。そのリスクとは、制御を誤ると永久に、空間の狭間から出る事がかなわない。
つまり、死ぬことも出来ずゲーム続行不可。永久退場となるのだ。
このリスクが知られてからは、空間制御系を選択するプレイヤーは激減。今では数えるほどのプレイヤーしか使用していない。
「マキナ、うぬの仲間の回収は終わった様だな」
「あぁ、お前さんの言う通り、終わったからこっちに来た」
マキナの背には麻痺により、今だ動けない雪那が背負われていた。
「うむ、よし。ではハヤテよ、お前の潜入の任も解く」
ディアーチェが言うと、ハヤテは頷いて己に掛けていたスキルを解く。するとハヤテの姿はメイド服を着たディアーチェ似から、執事服を着た美男子へと変化した。
「そんな気はしていたけど、本当に二重スパイやっていたのか」
「あれ?やっぱり気づいていましたか?」
「何となくだったけどな?けどこれでハッキリした。お前がディアーチェ直属の部隊『
マキナが納得したように述べると、ディアーチェが頷いた。
「その通り。この場におる『疾風迅雷』の莉花、『
色々と言いたい事もあるが、取り敢えず一つ。
「で?どうすんのこれから?」