ブランクワールド・オンライン   作:東條九音

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伏兵

刺されたナイフが引き抜かれるのと同時に、雪那は床へと倒れ込む。

それを見届けると、ツリーに微笑みながら、親しげに話し掛ける女。

 

「派手にやられたようにね、ツリー?」

 

「まったくだ。タイミングよく来てくれて、助かった」

 

「それはよかったわ。……致命傷だと思ったけど、死なないのね、この子」

 

「お前と同じ、神シリーズ所持者だってよ。セリア」

 

セリアは納得したようにうなずくと、ツリー今後の方針を話し始めた。

 

「さて、ツリー。現時点を持って、ハウンドはクロムウェルの指揮下を抜けるわ」

 

「依頼達成目前なのにか?」

 

「えぇ、そうよ。あなたか攫ってきた子。あの子を攫った事で、不味い人が動いちゃったから」

 

「チートアビリティがあるセリアでも?」

 

「相手出来なくもないけど……したくは無いわね。そもそも、接近できるかも分からないわ」

 

「それは……厳しいな。その相手は、一体誰なんだ?」

 

「魔法学院の理事長兼校長兼セレスティーアの保・護・者♪」

 

「ディアーチェ・アーカリア、か。確かにまずい相手だな」

 

「そう言うこと。それに、本当の依頼主は、彼じゃないもの」

 

「だな、それじゃあ次のエリア解放まで、身をひそめるか」

 

「ええ、そうしましょう。ここにはもうすぐ、両者の増援がやって来るわ。私が少し残ってお膳立てはしておくから、あなたは先に行って」

 

「お膳立ても何も、遊び足りないだけだろ?まあ、消耗し切っているから、お言葉に甘えるとするよ」

 

そう言うとツリーは、転移アイテムを使って脱出をした。

 

「待たせちゃったかしら?」

 

残ったセリアは振り向きつつ、背後にいる人物に言い放った。

 

「いや、ちょうどかな。アイツに捕まって、強制転移で放り出されたところだから。っにしても、ウチのメンバーを麻痺状態にして、随分放置してくれたみたいだなぁ」

 

懐からナイフを取り出し、何時でも攻撃が出来る様にして置く、セリア。

 

「確かに麻痺毒は使ったけれど、それは保険よ?普通は仕留めているもの。死線を捉えて刺しているのだから。死なない方が悪いのよ」

 

一方相手は、白いコートの内側から本を取り出した。

 

「とにかく、雪那は救出させてもらおうか」

 

「そう簡単に、させると思っているの?」

 

セリアは相手に向かって走り出す。

すると相手は、手にしていた本を開き、小声で「ミラージュ」と呟いた。

 

「!」

 

異変に気付いたセリアは接近することをやめ、太もも部分に備え付けている投擲用ナイフを、倒れている雪那に向かって投げつける。

投げられたナイフは、真っ直ぐと雪那へ向かう。が、ナイフは雪那を突き抜け、地面へ刺さった。

地面に刺さると同時に、雪那の姿は揺らめく様にして消えてしまう。

部屋全体を見渡すと、対峙していた相手も見当たらない。

 

「やるわね。昔あった時は確か、双剣を使っていたわよね?今は魔導書?どちらにしても、さすがマキちゃん」

 


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