「おーい、ジイさん。お望み通り、連れて来たぞ!」
とある洞窟の奥で、銀髪の男が叫んでいた。
男の肩には気絶した、女の子が担がれている。
その女の子は、青みがかった銀髪で魔法学院の制服を身にまとっていた。
「思っておったより、早かったのぅ」
「セリアの情報のおかげだな。ジイさんの『魔法学院のディアーチェ、その養子』だけじゃわかる訳ねぇよ。セリアが、マキナって言う本好きを見張っていれば見つかる、って言ってくれたおかげだぜ?ジイさん、依頼するならもっと、情報を集めとけよ」
男の声を聴き出てきた、ジイさんと呼ばれた人物。その人物は、クロムウェル・ベルガンテだった。
「すまんの、なんせディアーチェが匿って居て、何一つ情報が無かったんじゃよ」
「まあ―、依頼は依頼だし、終ったから別にいいけどよ。それで?この女はどうするんだ?」
開いている手で指差しつつ、どうするのかと尋ねる男。
尋ねられたクロムウェルは、背後に控えていた女に声を掛けた。
「莉花、その子をツリーから受け取っておくれ」
「はいー!にしてもツリー君、女の子を誘拐して来たの?」
莉花はその女の子を受け取りつつ、ツリーに問いかける。問いかけている顔には若干、軽蔑するような視線が伺える。
しかしツリーは、慌てる事無く答える。
「なーに、言ってんだ。ここはゲームの中、別に禁止されている訳じゃないだろ。それに、こういう汚い仕事を平気でやっていくのが、ウチのギルドなんだよ」
「恋人が知ったら、悲しむんじゃないの?」
「残念。その恋人が、ギルマスだよ。って言うか、アンタだって片棒を担いでいるだろうが」
ツリーは指をさしながら、莉花に対して事実を突きつけた。
すると莉花は、そうだった!と言ってテッヘと笑う。どうやら誘拐云々は、からかっていただけの様だ。
ツリーとの一通りのやり取りに満足したのか、莉花はクロムウェルに本題ともいえる話を投げかけた。
「それでクロムウェル先生、この子をどうするの?」
クロムウェルはまずはと言いつつ、懐からあるものを取り出した。
「そいつの血をサンプルとして、採取しておく。その後奥の石板に宝玉をはめ込み、そいつは実験に使う事になるのぉ」
「それじゃあ取り合えず、石板の所まで運ぼうか?」
「そうじゃな」
そう言って、三人そろって石板のある場所まで移動を始める。
が、ツリーはすぐに立ち止まり、後ろを振り返った。
不審に思ったクロムウェルはどうしたのか尋ねると、ツリーは二人に先に行くように促した。
「誰か来るみたいだぜ。取り敢えず俺が残って、始末しておくから先に行け」
「分かった。しかし敵も思ったより、早く来たようじゃの……それで、何人じゃ?」
「たぶん、一人だな」
「たぶん?」
ツリーがいつもの様な自信にあふれた回答でない事に、莉花が疑問に感じ聞き返す。
「足音は一人分だ。けど、他にも何かいそうな気配がある。とにかく、先に行ってろ」
するとツリーは、その理由を述べ改めて先に行くように促した。
今回登場した《ツリー》は、とある小説の製作者さんから提供して戴いたキャラになります。
前回、セレスティーアを攫って行ったのはこの人です。
次回はツリーと保険の人が戦闘の予定です。
……まぁ、あくまで予定ですので、戦闘シーンまで行けるかは……次回のお楽しみに!
追記:活動報告の考察エリアを少し分かりやすくしてみました。
もし、追加でまとめて欲しい事があればリクエストの方へ送ってください。