ブランクワールド・オンライン   作:東條九音

49 / 79
ジークの特訓

『ほら、動きが鈍って来てますよ!』

 

「無茶言うな!」

 

胸のポケットに仕舞ったスカーレットと、会話をしながら戦闘を行うジーク。

そのジークの顔には、少し疲労が見える。

ジークは現在、小屋があった場所、森の中心から西の地点で狼と戦闘をしている。ジークに一体何があったのか。それは、数週間前のスカーレットと出会った頃まで遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅き宝玉から話を聞いたジークは、すぐさま行動しようとしたのだがスカーレットは待ったをかけた。

 

『急ぐ気持ちは分からくないですが、まずは引き受けていただいたお礼です。あなたの装備している刀は、《レ―ヴァティン》ですね。その子を私に近づけなさい』

 

「それは良いが、一体何する気だ?」

 

『お礼と言ったでしょう。その子は天然物のインテリジェントです。如何やら寝ている様なので、目覚めさせるのですよ』

 

「こいつが?でもこいつは店で買った物なんだが?」

 

『天然物と為るには条件があるのです。まず、儀式のあった時代を耐え抜いている事。もう一つは、それから長い年月を経て意識を持つに到る事。一つ目の条件の時点で、現存するものは少ないですが、二つ目でさらに減る事に為ります。意思を持つかどうかはある種運任せな所もありますから。意思を持ったとしても主と為るもの、つまりパートナーが居ないと何も出来ませんから多くの物は眠りにつくのです』

 

「なるほど。つまりインテリジェントだったとしても、気付かずに使われる事が多いって事か」

 

『その通りです。稀に気付く者も居ますが、あなたは気付かずに使っているようでしたからね』

 

スカーレットの説明に納得したジークは、言われた通りレ―ヴァティンを近づけた。

 

するとスカーレットが紅く輝きを放ったかと思えば、それは一瞬での間で終わってしまった。

 

「…なにしたの」

 

『先程から言っている通り、この子を起こしたのです』

 

(アレだった近づける必要ないけど、きっと突っ込んだら負けなんだ……)

 

そう考えたジークは決して口に出す事無く、胸の内に仕舞った。

 

『うぅん~。はぁれ?ここはどこでしゅか?』

 

「………」

 

突然刀が喋り出し、ジークは口を開けて固まってしまった。がそんな事お構いなしとばかりに、二つのインテリジェントは話し出す。

 

『如何やら起きたようですね』

 

『ぁ、しゅか―れっとさまだ~。ここは、どこれしゅか?』

 

『此処は私の家です。如何やらあなたは眠りに付いてから誰とも契約を結ぶことなく、世界を渡り歩いていたようですね。まずは契約を結びなさい』

 

『ふぇ?ケーヤク?」

 

『ジーク、あなたもいつまで口を開けて見ているつもりですか。早くお互いに名を交換して契約を結びなさい』

 

スカーレットに声を掛けられ我に返ったジークは、スカーレットに質問をした。

 

「なぁ、お前さんより後のインテリジェントは全部こうなのか?」

 

『そんな訳ないでしょう。この子は意識を持ってから一度も契約した事が無いので、こんな感じなのでしょう。要は純潔、処女なのでしょう』

 

何か言い方があれだけど、まあいいか。

 

「それじゃあ改めて、俺はジーク・レイア。お前の名前は?」

 

『わたしのなまえはレ―ヴァティンでしゅ。ますたーさん、これからよろしくおねがいしゅます』

 

『この子はあなたの実力次第でいずれ、擬人化する事が出来るかも知れません。と言う事でこれからは、鍛錬を積みながら目的地に移動しますよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう~終った~」

 

『おつかれしゃまでしゅ。ますたーさん』

 

『疲れで鈍くなって来ていますが、中々上達してきましたね』

 

戦闘が終わるとインテリジェントたちが感想を述べた。

だんだん慣れては来たけど、やっぱり好きかって言う奴らだな。特にスカーレットは上から目線だし。レヴィは良い。何か癒されるから。あれかな?精神年齢が幼いからかな?

 

「取り敢えずこのまま、西の海岸線を目指せばいいんだよな?」

 

『その通りです。到着するまでにしっかりと、レヴィを使いこなせる様になりなさい』

 

『ますたーさん、レヴィもがんばるよ!』

 

「ああ、分かっているよ。お互い頑張ろうな、レヴィ」

 

因みにレヴィとはレ―ヴァティンの事だ。呼ぶときにレ―ヴァティンだと長すぎるから、愛称をつけてやった。

 

「さて、そろそろ落ちるか」

 

『おや、今日はもう戻られるのですか?プレイヤーたちは不便ですね、此処とは別の現実もあって』

 

「ああ、明日ちょっと早くに用事があってな。それにしても、現実の事知っているんだな」

 

『ええ、理屈は良く分かりませんがプレイヤーは私たちも使える転移門と、もう一つ別の転移法を使える。その転移法を使う事によってその世界を行き来すると、いつだったか話してくれた方が居ました』

 

改めて思ったけど、このゲームのゲームマスターは凄い奴だな。殆ど人と変わりないNPCたちを作り出している。

それに多少強引だが、プレイヤーの行いに疑問を持たせないようにしている。いずれは見つけ出して会ってみたいな。

って言ってもそれが、ゲームマスターが出したグランドクエストだけどな。

 

『あの~ますたーさん。はやくいかなくていいのでしゅか?』

 

「お、そうだった。それじゃあ、また今度な」

 

そう言って、ジークはログアウトしていくのだった。

 

 

 

 

 




とある読者から、
     『少し読んだけど主人公が誰かわからない
          視点が変わりすぎで読みずらい』   との意見を頂きました。

私としては、全プレーヤーキャラが主人公と考えていたのですが、やはり誰か一人に絞った方が良いのでしょうか……
皆さんはどう思われますか?述べる際には活動報告までお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。