「!驚いた。マキナ、キミはそこまで知っていたのか」
「学園の禁書庫にあった分だけだ。その反応だと、あれは事実なのか?」
伝承にあった事が本当なのか、ブラックに尋ねる。
するとブラックは伝承の補足と、真実を話し始めた。
「殆ど真実だと思って貰っていいだろう。いい機会だ、当事者の私が話してあげよう。
まずはそうだなぁ、儀式について話そうか。あの儀式の名は《暁の宴》。この儀式が出来たのはとある国の王が暁一族の魔力性質に目を付け、一族を生贄にして作り上げたのさ。その国は今では、領地ごと空に上がっている」
「それって、空都ベルカのことか?」
「そう、そのベルカ。話を続けようか。でもその儀式を行うのには、代償が大きかった。何せ、人を生贄に捧げる事で初めて発動するんだ。だから儀式自体、秘匿され伝承も禁書扱いになった。と言っても暁一族が居ないと成立しないから再現できないはずだった」
「ちょっと良いか?つまり、暁一族=アヴローラ、って事か?同一人物って事?」
「その通り。それに、暁一族は私たち宝玉とも関係している。私たちはその時の儀式の副産物……。つまりは、生贄にされた一族は一つになり、その後六つの宝玉に分けられた存在。
「……それって宝玉たちも、元を辿れば暁一族だったという事か…」
「あぁ、そうだよ。まぁ昔の人だった時の記憶は無いけどね。私たちが宝玉から人型になれるのは、恐らく人の時の感覚が残って居たから再現できたんだろう」
「そんな秘密があったのか…」
「そろそろ本題に入ろうか。今私たちが逃げ回っているのは、黄の宝玉が捕まる前に儀式が再現されると伝えた事から、何者かが秘密にたどり着いたと考えたから」
「それって、一族の生き残りであるセレスが、狙われるだけじゃないのか?」
「儀式の制御には、最低でも四つ、宝玉が必要とされる。一番重要なのは生贄となる人柱。私たちが逃げ回っていたのは、レスティのための、時間稼ぎでもあったんだ」
何つーか、事実を聞くと深いような気もするけど要約してしまえば、過去の惨劇を繰り返さないために動き回って時間を稼いでいる、って事だよな。
「制御盤は空都のどこかの洞窟に。祭壇の暁の里は海に沈んでいる。私は隠れようと思ったのだが、やっぱりレスティが心配でね。それに如何やら、相手は四人、捕まえたようだしね」
「要件は分かった。それは好きにすればいいけど今、祭壇が海に沈んでいるって言ってなかったか?」
「言ったよ?でも制御盤に宝玉を、四つ以上はめると浮かんで来る」
「って事はもう時間は、無いって事か。そう言えば、ディアーチェは知っているのか?」
「おおよそはね。だからこそレスティの保護者に為ったんだ。だってディアーチェは、世界最高峰の魔法師なんだから」