古都アンジュに存在する魔法学院の一室で、老人が四つの宝玉を眺めていた。
「順調に集まって来ておる様じゃな。そろそろ行くかのう」
「ねーね~。クロムウェル先生―。一体何集めているの~?」
古式精霊魔法の権威クロムウェル・ベルガンテと、その護衛を引き受けているプレイヤー莉花だ。莉花は、クロムウェルの呟きにくいつき質問する。
「…莉花、お前さんは何にでも興味を持つし、首を突っ込みたがるなぁ」
「うん!だって、面白そうなんだもん。それでクロムウェル先生ぇ、何集めているの~?」
(うーむ、どうするかのう。出来れば余計な詮索はされたくないが、諦めるとも思えんからのう)
クロムウェルはしばらく考えると、諦めて少しばかり話す事にした。
「実験に使う宝玉を集めているのじゃ。お前さんとは別で人を雇って、各地から集めてきておるのじゃ」
「へぇー…あれ?何で護衛なんて雇ったの?自分で探しに行かないなら、必要ないよね?」
「ここにある宝玉が、ある程度集まったら運搬をする。その時襲われないとも限らないから、運搬が済むまでの護衛を依頼したはずじゃが……莉花、お前さん依頼内容を忘れておったのか?」
そう言うと、ニパーッと笑いながら答える。
「えっとー……あははー。ソンナコトナイヨー」
「ハァー、全く」
クロムウェルは莉花の発言から、忘れていたと言う事を察すると溜息を吐いた。
「ゴメンね。いや~てっきり、誰かが盗んだものを取り返そうとする人たちからの護衛かな~なんて思っちゃったよ」
一方莉花は一瞬、獲物を見据える者の目をクロムウェルに向けた。
「…そんなわけあるまい。それより仕事じゃ。しっかり、護衛を頼むぞ」
「ハーイ。任せておいてよ。しっかり護衛し切って見せるから!」
(もしかしたら儂、人選を間違えたかも知れん……)
若干、莉花を雇った事を後悔しつつもクロムウェルは、四つの宝玉を持って部屋を出る。
「そー言えば、どこまで行くの?」
後に続いて来た莉花が行き先を訪ねた。
「うむ、ベルカ大陸へ向かう。そこ何処かに石板が在る筈じゃ」
「あの空に浮いている大陸かー。そこで石板を探すの?」
「そうじゃ。その石板と宝玉で儀し…実験が始められる。じゃからお前さんは」
「石板が見つかるまで、護衛すればいいんだね。分かったよ~」
二人は学院を出ると、ちょうど古都付近を漂っていた空に浮かぶ大陸へと向かった。
王都の門前、王都の中には入らず外で待機し、アインズたちの居場所が分かるのを待っていた。
「先生、アインズたちと連絡が取れたわ。今酒場で情報収集しているって」
「ん、じゃあ酒場に行く……いや、セレスは残ってくれ。お前たち酒場でアインズたちと合流して、図書館へ向かえ」
全員で酒場へ向かうよう言いかけたが、途中で指示を変えたマキナ。
「分かりましたけど…先生、どうかしましたか?」
マキナの指示を不思議に思ってか、シャロが質問する。
「いや、野暮用だ」
「はぁ、そうですか」
「それじゃ先生、先に行っているからね」
そう言うと、リリスたちは王都の中へと入って行く。
その姿を見送った後、セレスがマキナの方を見て尋ねる。
「先生、何で私は残らされたんですか?」
「ん?あぁ、ちょっと待ってくれ。仲間に連絡しておくから」
そう言ってマキナは通信を始めた。
『先輩、久しぶり』
「おう、シン。早速で悪いんだが、そっちに学生とユキが行くから、しばらく俺の代わりに引率を頼む」
『分かりました。そう言えば、先輩、姉さまが居たの、気付いたんですね』
「い~や。本人に言われて、確信した。何かどっかであった事はありそうだな~とは思っていたけど、まさか雪姫さんだとは思わなかったな」
『姉様が、ゲームするの、意外?』
「そうだけど、この分だと他のメンバーも居そうだからな」
『そうですね。では先輩、お気を付けて』
「あぁ。あ、もう一つ。これは多分、キークエストだ」
『…!分かりました。メンバー全員で、事に当たります』
「悪いな。直ぐ合流できるはずだが、合流する前に動くなら、行き先を連絡してくれ」
『了解です』
そう言ってシンは通信を切った。
そしてマキナはセレスに向き直ると、ようやく質問に答えた。
「よし、それじゃあ会いに行くか」
「え?会いに行くって、一体誰にですか?」
「誰って、探し人にだよ」
今回登場した《莉花》は、紅城翼さんから提供して戴いたキャラになります。
このキャラはちょっとした秘密があります。
それは、この章後半で分かるのでお楽しみに、と言う事で。