息抜き短編小説集   作:コクマルガラス

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多作品クロス系オリ主アンチ一夏転生物

とりあえず趣味全開になると思われます


守護者(IS×多作品クロス、オリ主アンチ)
大いなる旅立ち


織斑一夏のこれまでの人生は最悪と言っていい物だった。

物心ついた頃には親は居らず、唯一の肉親は実の姉一人。

姉に迷惑をかけまいと、一夏は炊事洗濯等、自分が出来る事を精一杯務めた。

全ては自分を育て、守ってくれる姉に報いるために。

 

そんな生活が変わったきっかけは、たった一つの事件。

男が乗れる筈のないISに彼が乗れてしまった事。

これを機に、一夏はISパイロット及び関連技術者育成の為の学校である『IS学園』に入学する事になる。

異なる形ではあるが、漸く姉への恩返しが出来ると、今度は自分が守る番だと彼は決意した。

 

決意したのだ。

 

過去の生活の厳しさ故に、彼がそう考えるのは必然であったのだ。

だが、その願いは、決意は悉くへし折られることになった。

 

 

姉であり、ISパイロット達の憧れである『織斑千冬の弟』という評価。

千冬がISに関わり、凄まじい成績を残し始めた頃から付きまとうレッテル。

どんなに努力しようが、成績を残そうが、『織斑千冬の弟』だからで、処理される。

彼を『彼』として見てくれるものは、ほんの僅かだった。

そしてそれはIS学園でも変わらなかった。

 

それだけならまだよかったのだ。

3年間耐えればいいのだから。

 

だが……

もう一人の男性ISパイロットの登場。

それが、一夏の絶望の始まりだと誰が予想したか。

 

彼は天才で、持ち前の才能をフルに発揮して瞬く間に多くの功績を打ち立てた。

同時にクラスメイトの大半が彼を慕い、一夏を冷遇していくようになった。

 

いや、アレは慕っていると言えるのだろうか。

一夏にはクラスメイトが慕っているようには見えなかった。

理由はわからない。

だが、一夏の感覚はクラスメイトが、二人目の男性ISパイロットが危険な存在だと告げていた。

 

クラス代表を決める戦いで交戦したセシリア・オルコットは試合後、憑き物が落ちたかのような表情を浮かべていたのに次の日には目が濁り、あの男に同調していた。

 

転校してきた幼馴染の鳳鈴音とは些細なすれ違いの末、セシリア同様に目が濁ってあの男を慕った。

 

更に転校してきたドイツの転校生のラウラ・ボーデヴィッヒはあからさまに殺意を向け、あの男は彼女を支援した。

 

同じく転校してきた三人目の男性ISパイロット……実際は女性であり性別を偽っていたのもとある事情があったのだが、あの男が彼女を救って見せた。

今では本名であるシャルロット・デュノアを大っぴらに名乗る事が出来ている。

 

そして……

臨海学校で起きたある事件。

その事件に無理やり関わらされた一夏は、作戦行動中に幼馴染の篠ノ乃箒に後ろから斬られ……

彼のIS『白式』は何者か(二人目の男性ISパイロット)に破壊された。

 

 

 

一夏の心はボロボロだった。

何をやってもうまくいかない。

何度戦ってもあの男に勝てなかった。

それどころか専用機を喪失してしまった事が決定打となり、無能の烙印を押されてしまった。

挙句の果てに姉である千冬から『何もするな』といわれ、彼の心は崩壊寸前まで追い込まれてしまった。

壊れた方が彼にとっては救いだったのかもしれない。

しかし、彼の心は壊れなかった。

本来持っていた資質が心の崩壊を押し留めていたのだ。

 

一夏に味方はいなかった。

否、存在はしたがあの男が『関わる』と味方が敵に変わるのだ。

最早、一夏には誰も信じる事が出来なかった。

 

セシリア・オルコットも、鳳鈴音も、ラウラ・ボーデヴィッヒも、シャルロット・デュノアも、篠ノ乃箒も、姉である織斑千冬も、副担任である山田真耶も、ISの生みの親である篠ノ乃束も……

そして、味方から敵に変わった更識姉妹も……

 

自身に関わる全てを信じられなくなるのも当然であった。

 

 

 

絶望に苛む一夏。

そんな彼に更なる地獄が襲い掛かる。

 

『織斑マドカ』

 

自身と同じ性を持つ、しかし存在すら知らなかった少女。

テロ組織『亡国機業』に属する彼女から理不尽に恨まれ、襲撃され……

 

「俺は……ただ幸せになりたかっただけなのに……」

 

胸に突き刺さる大剣。

そして一夏は力なく海へ落ち……

 

「あばよ、道化。さっさと死ね」

 

いつの間にかマドカの隣にいた二人目の大出力レーザー攻撃を受け……

 

「俺は……こんな役の為に生かされたのかよ……地獄に落ちろ、○○っ!」

 

怨嗟の言葉を残してこの世界から完全に消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

--言った筈だぞ、『やりすぎるな』と。なのに貴様は……

 

--ルールを、理を守らぬ奴には報いを受けてもらう

 

--後悔してもらうぞ……

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……」

 

目が覚めると、そこは白い世界。

 

「何で俺……死んだんじゃ……」

「やぁ、おはよう」

「!?!?」

 

背後に現れた如何にもチャラそうな男。

 

「誰だお前?」

「僕かい。そうだね……君達の言葉でいう所の『神』といったところだね」

「神……だと……」

「そう、神だ」

 

自称『神』を名乗る男。

しかし、本当に神なのだろうか?

一夏の心には疑問が渦巻いていた。

 

「信じていないようだから、今の君の状態を軽く説明してあげるよ。何故生きているのかについてもね」

「なっ!?」

「君の考えていることは全てお見通しだよ。だって神だからね」

 

思っていることを読まれた。

疑う余地は無さそうだった。

 

「さて、説明しようか。まず、君の状態だけど、肉体は存在せず、魂だけの存在になっている」

「つまりここは……」

「広義でいう所のあの世といった所だね。まぁ、実際は違うんだけど。で、君は輪廻転生一歩手前だった所を僕の力で押し留めている」

「だったらさっさと俺を輪廻転生してくれ」

「その結論はまだ早いよ君。説明は最後まで聞かなきゃ。そう、世界の真実についてね」

「何?」

 

楽になりたかった一夏に待ったをかける神。

そして神は話す、世界の真実を。

 

 

 

「つまりアレか……あの男はお前が別の世界からこちら側に転生させたっていうのか、それも様々な力を持たせて」

「そういう事になる」

「お前が……お前のせいで……っ!」

「君の怒りは尤もだ、だから君を留めたんだ」

「どういう事だ……」

「僕にとっても彼の行動は予想外だった。僕の警告を無視して好き勝手やった結末がこれだ。見たまえ、これが君がいなくなった後の世界の末路だ」

「……っ!?」

 

目の前に映し出された情景、それは正に地獄の様相を見せていた。

海は汚れ、大地は瓦礫と炎に包まれ、有害物質入りの雨が降る、そんな悪夢。

 

「これは……一体……」

「あの男が好き勝手やった結果だよ。強すぎる力が世界に与える影響は大きい。過程は省くが、第三次世界大戦が起こり、各国が大量殺戮兵器を投入。結果、人類の95%が死に絶え、あの男を含む残りの5%もやがて死ぬ」

「…………」

「そして君の人生を僕が補填する」

「補填……だと?」

「そうだ……僕は君に新たな人生を用意する」

「新たな人生?」

 

神の言葉に首をかしげる一夏。

 

「僕が提案するのは記憶を保持した状態で別世界に転生させる事だ。あぁ、元の世界に戻りたいとか過去に戻りたいとか考えるなよ。元の世界に戻ったところで世界の滅びは避けられんし、過去に戻って別の道に進んだところで奴に殺されるのがオチだ」

「言われなくとも考えるつもりなんてない」

「ならよかった。さて、転生させる事で話を進めるが、何か希望があるかい。可能な範囲であればどんな希望も叶えてあげるが」

「希望?いや、特にないが……」

 

神の問いに無いと答える一夏。

その返答を聞いた神は……

 

「うん……予想はしてたよ。君はそーいう人だもんね……」

 

何故か頭を抱えていた。

 

「……うん、そうだ。彼に選択させるのではなく僕が1から10までお膳立てすればいいんだ。おお、僕は天才だ」

「何でそうなる」

 

一夏の指摘、しかし神は聞こえてないのか『こーしよ、あーしよ』と呟きながら自分の世界に籠ってしまった。

 

「俺、平穏無事に暮らせればそれでいいんだけどなぁ……」

 

 

 

神が復活したのは一夏の体感で3時間程経った後だった。

 

「これが君の転生プランだ」

 

渡された資料、それを見た一夏は盛大に顔を引き攣らせた。

 

(何この戦力……あり得ねぇだろ……)

 

要約すると……

 

一夏は並行世界の自分自身に転生(但し、記憶や性格を統合する)

 

並行世界の一夏は強化兵士で階級は大佐、ついでに言うとかなりのエリート

 

オマケで約5,700mもの長さの巨大戦艦(燃料・弾薬・積載兵器満載)、海兵隊及び自分自身と同じ強化兵士等1000人、後方支援要員1000人をセットでつける

 

「これ、冗談じゃないよな」

「冗談で言うと思うかい」

「デスヨネー」

 

乾いた笑いしか出ない一夏。

そんな時、資料の中から奇妙な文章を見つけた。

 

「弾、蘭ちゃん、数馬や中学時代の友人達と布仏虚、ダリル・ケイシー、フォルテ・サファイア、スコール・ミューゼル、オータム、セシリア・オルコット、更識簪を同じように強化兵士の自分自身に記憶・性格統合したうえで転生させる…………ナニコレ?」

 

何故彼等も転生させるのか、それが一夏には理解できなかった。

 

「親しい人がいれば寂しくないだろ。ちょっとしたサービスさ」

 

滅びゆく世界に残しておく必要もあるまい、神はそう言った。

だが……

 

「こいつ等は俺を敵視していた筈だ。その点はどうなんだ?」

「あぁ、それ。少なくとも君の親友達に関しては洗脳されていないし、虚は洗脳される前に学園を退学して現在は弾の所にお世話になってるし、ダリルとフォルテとスコールとオータムは条件を満たしてなかったので洗脳は通用しない。洗脳されてるのはセシリアと簪だけだが、転生時に洗脳を解くから問題ないよ」

「……洗脳?」

「アレ、言わなかったっけ。学園の人間の大半はあの男が洗脳してたんだよ」

「…………」

「驚かないね、ある程度察していたという事かな」

「心当たりが、あるからな。……そうか、洗脳されていたのか」

 

最後の言葉だけ、小さく嬉しそうに呟く一夏。

 

「懸念材料も無くなったことだし、じゃあ行こうか」

「えっ、ちょっ、待……」

「安心したまえ、僕もオブサーバーとしてそばにいる。だから次の人生を楽しみ給え」

 

神の言葉と共に一夏の視界が真っ暗になり……

 

「さぁ、君の全てを取り戻す、復讐の旅の始まりだ」

 

一夏の意識は途絶えた……


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