第一話 変わり始めるもの
聖魔和合の第一歩となる天使・堕天使・悪魔の三大勢力の和平の恒久的な和平協定である駒王協定が締結されてから一週間が経ち、僕達は一学期の終業式を迎えていた。翌日から夏季休暇、つまりは夏休みに入る。だからと言って、日課である早朝鍛錬が休みになる訳でもない。むしろ父さんも母さんも事情を理解してくれたので、今後の長期休暇ではいつもより一時間長く鍛錬に時間を取る事ができる様になった。
ただ、早朝鍛錬の光景は以前とは大きく様変わりしてしまった。まず、グレモリー・シトリー両眷属で今まで早朝鍛錬に参加していなかった残りのメンバーが全員参加する事になった。その中には「ギャスパー君育成計画」を実行中であるギャスパー君も当然含まれている。次に、自己鍛錬を主な目的として駒王町に滞在し、その交換条件としてオカ研の顧問教諭に就任しているアザゼルさんも毎日参加する事になった。これはリアス部長やソーナ会長が多忙で毎日の参加ができないでいる点とアザゼルさんが堕天使総督である為にお二人以上に多忙である点を踏まえると驚異的と言える。そこから更にサーゼクス様とグレイフィアさんも早朝鍛錬に参加する様になった。ただ、こちらは冥界と人間界を往復する関係から流石に毎日とはいかなかったのだが、最終的にその問題は解決してしまった。
……早朝鍛錬の場所は既に廃教会から別の場所へと移してしまったのである。唯でさえ廃教会では少々飽和気味だった所に、一気に十人以上も鍛錬に加わった事で完全にスペースが足りなくなってしまったからだ。そして、その場所というのが、首脳会談後にレオンハルトが言及した模擬戦用の異相空間だ。広さについては
そうして迎えた夏休み初日の早朝鍛錬で、僕が悪魔の魔力と天使の光力、そしてドライグに由来するドラゴンのオーラを融合させる
「しかし、イッセー。お前も相当だな。何せ、歴代最高位の赤龍帝が全力で暴れてもビクともしない程に頑丈な模擬戦用の異相空間なんてモンを作っているんだからな。お陰でここなら俺やサーゼクスも思う存分力を振るう事ができるし、その分だけトレーニングも捗るってモンだ」
「正確には、ロシウと計都がそれぞれ持っている知識や技術の粋を凝らして作り上げた広大な異相空間に当時の僕が三十回倍加した力を一日に一回譲渡して補強するという工程を数ヶ月に渡って施した事で完成したんですけどね。それだけに、たとえ神仏クラス同士が全力で戦ってもここは耐え切れるんじゃないでしょうか?」
……さっきも言った通り、それぐらいしないとレオンハルトやベルセルク、ロシウ、計都といった最高位の赤龍帝やレオンハルトと同等クラスの剣士であるリヒトといった神仏すら墜としかねない者達は全力での模擬戦ができないのだ。そして、その様な者達を複数相手取るという圧倒的不利な状況下での模擬戦を僕が行う事も。
「俺から見ても、それくらいはいけそうな感じだな。それに仮に魔王同士が眷属を率いて対戦しても十分持ち堪えられるって意味では、レーティングゲームのバトルフィールドとしてもここは最上級だろう。そして最悪の場合には、ここにオーフィスを引き摺り込んで戦う事もできそうだ。そうすりゃ、人間界はもちろん天界や冥界、更には他の神話体系の世界にも迷惑をかけないで済むからな。……できれば俺達の鍛錬や模擬戦、レーティングゲームの大型イベント、後はお前とヴァーリの喧嘩祭り以外でここを使う事がない様にしたいところだ」
アザゼルさんが最後に零した願望は、僕にとっても望むところだった。
「さて、イッセー。早速なんだが
そう言ってアザゼルさんが指差したのは、憐耶さんが今正に制御訓練をしている
「結界鋲ですか?」
「成る程、そういう名前なのか。しかしまさか、イッセーも俺と同じ様に人工
アザゼルさんはそう言って結界鋲を評価してくれたが、一点だけ勘違いしているので訂正する。
「すみません。アレはそもそも神器じゃありません。あくまで魔導科学の産物なので、分類上は
「……マジか?」
唖然とした表情のアザゼルさんからの確認に対し、僕は頷く事で肯定した。
「はい。操作の為の術式も夜天の書に記載されている遠隔誘導型の射撃魔法を基にしていますし、ロシウがイタリア半島に密かに確保していた鉱山から採掘したミスリル銀をメインフレームに使用しているのを始め、あくまで人間界で確保できる原材料を使用して作っています。ただ端末の数を中々揃えられなくて……」
僕がここまで言葉にすると、アザゼルさんの表情が真剣な物に変わる。
「因みに、端末は現在幾つある?」
「憐耶さんに渡してからもコツコツ作っていますが、現在は渡した時から五基増えて四十五基ですね。仕上げにどうしても時間がかかるので、まとまった時間がないと中々完成しないんですよ。後、最終的な目標としては端末と五感を共有する事で索敵や斥候といった情報収集にも使える様にしたいんですが、それにはどうしても数と容量が足りなくて……」
僕が結界鋲の問題点や完成形を伝えた所で、アザゼルさんから提案があった。
「だったら、俺が作った人工神器である程度形になった物の中に打って付けのヤツがあるぜ。その結界鋲と今言ったヤツを組み合わせればお前の挙げた問題点が一気に解決するし、もしかするとこの
その提案が余りにも魅力的だったので、僕は使用する本人とその上司の承諾という条件付きで受け入れる事にする。
「ソーナ会長と憐耶さんと相談して承諾を得られたら、お願いします。それとこの際なので、アザゼルさんが作った人工神器には他にどんなものがあるのかを教えて下さい。ひょっとすると、使い方次第で大化けする物があるかもしれません」
僕から他の試作品も見せてもらえる様に頼むと、アザゼルさんは少し考えた後に承諾する旨を伝えてきた。
「カウンター系と思われていたのが実は攻撃特化の強化系だった
ここでとりあえずアザゼルさんとの結界鋲に関する話は終わり、僕達はそれぞれの鍛錬に戻っていった。それだけに、この時の僕は想像すらできなかった。まさか、これが切っ掛けで……。
それから暫くして、最近鍛錬に参加する様になった新メンバーが総勢十五名の大所帯でやってきた。レイヴェルの三番目の兄で既にレーティングゲーム本戦に参戦しているライザーとその眷属達だ。
「おい、一誠。こんな面白い事を毎朝やっているんなら、何故俺にも声を掛けなかったんだ?」
駒王協定が締結されてから二日後の早朝、ライザーはそう言いながら自分の眷属を引き連れてやってきた。どうもレイヴェルが首脳会談から駒王協定締結までの一週間の間に行った実家への定期連絡の際、早朝鍛錬では僕やリディアが召喚したイフリートを始めとする幻想種の猛者達と模擬戦を重ねている事をバラしてしまったらしい。ライザーもレイヴェルが早朝に僕やロシウから指導を受けている事こそ知っていたが、まさか歴代の赤龍帝やリヒト、更には幻想種の猛者達といった数多くの強者達と模擬戦ができる程に鍛錬の内容が充実しているとは思っていなかったらしく、早速押しかけてきたという訳である。そして、これが早朝鍛錬の場所をここへと移す決定打となった。
そうしてやってきたライザーと少し打ち合わせをした後、ライザーとライザーの眷属達はそれぞれの相手と模擬戦を開始する。
「フェニックスウィング! ……なんて威力の衝撃波だ。攻撃を逸らすのがやっとだぞ」
「へぇ。旦那の親友の一人だって聞いていたからどんなもんかと思っていたが、どうしてどうして。ミズキの奴と肩を並べそうな強さを持っているな」
「ミズキ? ……あぁ、剣の腕前だけなら一誠以上という水氷の聖剣使いか。確かにアイツとは一度模擬戦をやったが、一誠と同様に常識を投げ捨てた様な奴だったな。それだけに、その水氷の聖剣使いをして「駒王学園の関係者では一誠とアザゼル総督以外は誰も相手にできない」と言わしめた貴方の凄まじさが浮き彫りになってくる訳なんだが」
「そりゃあ、そうだ。俺は旦那から旦那達の護衛依頼を請け負った傭兵だ。そんな俺が護衛対象の坊主達より弱いなんて、笑い話にもならねぇだろう? ……尤も、今の依頼主である旦那と次の依頼主にほぼ決まっている総督さんは例外中の例外だがな」
「違いないな。それに、一誠を通じて貴方を始めとする本物の強者と鎬を削り己の糧とできるのは、本当に僥倖なのだろうな。……これだから、一誠との付き合いはやめられないんだよ!」
ライザーの模擬戦の相手は、ネフィリムの傭兵で僕達の護衛を一年契約で請け負っているトンヌラさんだ。ただ、流石のライザーも地力で勝るトンヌラさんに対しては劣勢を強いられているが、それでもライザーは楽しそうな笑みを浮かべている。本物の強者との戦いを通じて、自分がまた一つ強くなっていく事が実感できて嬉しいのだろう。
一方、ライザーの眷属達と言えば、ソーナ会長と瑞貴、元士郎を除いたシトリー眷属の皆とチーム戦方式の模擬戦を行っていた。ただ、そのままではシトリー眷属が圧倒的に不利なので、チームの上限人数は六人と設定している。
「Ω・BREAKER!」
「……って、大剣からとんでもない速さで衝撃波が飛んで来たぁっ!」
「真空斬! ……覚え立ての技では相殺し切れないか。だったら、憐耶!」
「解っているわ! 結界鋲、積層展開! ……留流子ちゃん、ボサッとしない! 相手は「フェニックス家の超新星」と呼ばれているあのライザー・フェニックス様の眷属達なのよ!」
「ハイ、すみません!」
ライザーの
「ブラフマストラ!」
「クッ。いくら
「そう言って
「しまった!」
「これで終わ……ッ! か、体が動かない! いえ、足は動くけど、攻撃しようとすると途端に動けなくなってしまう! 一体、私の体に何が起こっているの! ……クッ!」
「ストームスパーク。その場からの移動を除くあらゆる行動を封じ込める補助魔法よ。……翼紗。今はチーム戦なんだから、もう少し周りを見て」
「済まない、桃。お陰で助かった」
一方、翼紗さんが
「中々やりますね。これでも魔力の扱いに関しては、レイヴェル様とユーベルーナさんに次ぐものがあると自負しているのですが」
「よく言いますね。私が用途不明である筈の追憶の鏡を出した瞬間に放った魔力の矢を遠隔操作して鏡に当たらない様にするなんて、よほど研鑽を積んでいないとできない事ですよ。これが、レーティングゲーム本戦で活躍している眷属悪魔の力……!」
別の所では、椿姫さんと
「お褒め頂いて光栄です。……と言いたいところですけど、これで終わりですよ?」
「どういう事?」
美南風さんからの勝利宣言に椿姫さんが首を傾げていると、誰かがその背中にトンと軽くぶつかってきた。
「えっ? 副会長?」
「留流子? どうして貴方が私の後ろに?」
二人がお互いに背中からぶつかった事に驚いていると、今度は二人の脇に別の人影が現れる。
「クッ! ここまで押されてしまったか……!」
「翼紗!」
翼紗さんが雪蘭さんとミラさんの連携によって二人の側まで押されてきたのだ。そこにこれまた別の人物が吹き飛ばされてくる。
「自分から後ろに飛んだからダメージはないけど、まともに受け止めたらアウトだったわ……!」
「まさか、巴柄まで!」
シーリスさんの強烈な一撃を受けて、自分から後ろに飛ぶ形でダメージを抑えた巴柄さんだ。そして、美南風さんが頃合いと見て温存していた二人に攻撃指示を出す。
「とりあえず、四人ね。イル、ネル。今よ」
「「双龍陣!」」
僕が双子故に比較的難易度が低い魔力共鳴を利用した強力な魔力砲撃である双龍砲を教えたイルとネルだ。どうやら、自分達の手で魔力共鳴を利用した範囲攻撃を編み出したらしい。あのライザーの防御すら抜いた二人の強烈な一撃をまともに食らった椿姫さん達四人は、そこで
……実はロシウが物理的な衝撃の全てを魔力ダメージへと変換するいわば非殺傷設定の特殊な結界を展開しているので、まともに攻撃を食らった四人に怪我はない。ただ魔力ダメージによって体が完全に痺れてしまっているので、これ以上戦闘を継続するのは不可能だ。
一方、他のメンバーの援護や補助に徹していた事から双龍陣による強烈な一撃を免れた桃さんと憐耶さんは、鮮やかな連係を見せたライザー眷属の実力に感服していた。
「……あれだけ激しい戦闘をしている中で、こちらの前衛を一箇所に集めていたの?」
「どうもそうみたい。そして一箇所に集めた所で強力な範囲攻撃を仕掛けて一網打尽ってところね。あるいは結界鋲と五感も接続できれば、違う視点から戦場を見られてまた違った結果になっていたかもしれないけど、無いもの強請りでしかないわ。……私には結界鋲の遠隔攻撃があるから、まだ戦う事はできるけど」
「完全に補助に特化した私には有効な攻撃手段がない以上、こうなったらとことん粘るしかないわ。基本は結界鋲による専守防衛、私の補助魔法で隙を作ってから憐耶が攻撃で行くわよ」
「了解」
その後、圧倒的に不利な状況に陥ったにも関わらず、二人は最後まで勝利を諦めずに自分達にできる方法で粘り強く戦い続けた。その結果、ミラさんとネル、シーリスさんの三人を撃破したものの、最後は美南風さんが一本に全力を注いだ強力な魔力の矢と雪蘭さんの最大火力であるブラフマシルで結界鋲の防御結界を崩された所にイルの特攻からのチェーンソーによる一撃を食らってリタイアとなった。
……ここまでの流れを見る限り、今まで早朝鍛錬に参加していなかったメンバーはやはりトンヌラさんが言う所の「生きた経験」が不足している。それを補うには、ある程度基礎が出来上がった段階でリディアが幻界で契約した幻想種達と様々な状況下で戦ってもらうしかないだろう。それだけでもかなり違う筈だ。
シトリー眷属はこれでいいとして、グレモリー眷属の新規参加組はどうなっているかと言えば、小猫ちゃんは以前から師事している計都の指導の元で仙術や道術の基礎となる気功術の鍛錬をしている。そして、他の者についてはそれぞれが別の相手と模擬戦をしており、ギャスパー君は一つ下の薫君が相手だ。
「
「霧になって攻撃をやり過ごした! ……だったら。風よ、逆巻け!」
「クッ……! まさか自分を中心に竜巻を作り出して、霧になった僕からの攻撃を遮ってしまうなんて。しかも……」
「一気に畳みかける! 瞬雷!」
「スピードは祐斗先輩以上の上に、動きも変幻自在で僕じゃ捉え切れない!」
〈伊達にあのセタンタと張り合っていないっていう事かな? ギャスパー、解っているとは思うけど〉
「ウン。僕より一個下だけど、まだ鍛え始めたばかりの僕よりずっと強い。……でも、だからこそ」
〈あぁ。あの人を追い掛ける上で、彼はいい指標になる〉
「それに、僕だって男なんだ! そういつまでも年下に負けてばかりじゃいられない!」
二人の戦況を見る限り、まだ鍛錬を始めたばかりのギャスパー君が礼司さんからずっと鍛えられていた薫君に押されている。まぁ、順当なところだろう。ただ、薫君もいつの間にかイウサールの竜巻の力とラエドの雷霆の力の応用ができていて、しっかりと成長している。だから、二人はきっといい競争相手になるだろう。
一方、ゼノヴィアは同じパワータイプと言えるカノンちゃんと真っ向から打ち合いをしていた。
「……ゼノヴィアさん。デュランダルを使っている割に少し攻撃が軽くありませんか?」
「いや、私の攻撃が軽いんじゃない。戦車である小猫以上の怪力で5 mもの長さの得物をまるで小枝の様に振り回せる君が色々とおかしいだけだ。これまで色々な相手と戦って来たが、デュランダルを使って打ち負けたのはこれが初めてだよ。それにしても、デュランダルと真っ向からぶつかってビクともしないとは凄い槍だな」
「私自身はこの怪力を始めとする身体能力の高さだけが取り柄ですから。それに、一誠さんに作って頂いたこの煉鎗イグニスは私の一番の宝物です」
「成る程。そのイグニスという槍はイッセー特製なのか。そう言えば、イリナの切り札であるレイヴェルトもイッセーがイリナの為に作ったんだったな。……後でイッセーに頼んで、私にも剣を作ってもらうか」
カノンちゃんの方も、デュランダルを使ったゼノヴィアに打ち勝つという驚異的な成長を遂げていた。しかも聖鳥フェニックスの真儀によって蘇生した影響なのか、カノンちゃんの身体能力は明らかに人間離れしており、腕力に至ってはバカげたパワーと言われる戦車の小猫ちゃんすら凌駕していた。ただ、ゼノヴィアがカノンちゃんに打ち負けてしまった要因としては、何もカノンちゃんの怪力やイグニスの性能だけでなく、ゼノヴィアがデュランダルの力を完全に使いこなせていないという事も挙げられる。具体的には、ゼノヴィアが自ら振るうデュランダルの刃に引き出した力を全て乗せる事ができていないのだ。磨き抜いた技術を存分に振るう為にはそれ相応のパワーが必要な様に、絶大なパワーを100 %生かすにはそれ相応の技術が必要になる。現に、カノンちゃんは下半身をしっかり鍛えた上で体幹がぶれない動き方を修得しているからこそ、5 mもの長さを持つイグニスを小枝の様に振り回せている。それに僕がどちらかと言えばパワーより技術を重視しているのも、
そして朱乃さんはと言えば、我が義妹にして歩く非常識であるはやてを相手取っていた。しかし、朱乃さんは遠目で見てもハッキリ解るくらいに肩を落としている。
「……ウ、ウフフ。私、自信を失ってしまいそうですわ。まさか、私が一番得意な雷を手に魔力を集めて一振りするだけで霧散させてしまうなんて」
しかし、一方ではやては怪訝そうな表情を浮かべて首を捻っていた。
「う~ん。あんな、朱乃さん。正直な話、得意や言っている割に魔力を雷に変換する効率があまり良くないんです。そやからロシウ先生はもちろんやけど、わたしでも割と簡単に雷を元の魔力に戻してしまえるんですよ。それに……」
ここで何故かはやてが続きを言い難そうにしていたので、朱乃さんが先を促す。
「それに、何でしょう?」
「……朱乃さん、実は魔力とは別の力を
躊躇いながらも最終的にはハッキリと告げたはやての言葉に、朱乃さんは思わず息を呑んでしまった様だ。その表情には驚愕の感情がハッキリと出ていた。しかし、はやては朱乃さんに向かって自分の思う所を伝えていく。
「なんちゅうかな。雷を扱うのは確かに得意なんやけど、その基になる魔力が朱乃さんに合うてない様に感じるんです。それに朱乃さんには魔力とは別の力もあるみたいやから、朱乃さんのホントの力はそっちなんかなって思うたんです。……わたし、何かアカン事を言うてしまいましたか?」
はやてが最後にそう尋ねてしまう程に、この時の朱乃さんは意気消沈していた。
「……ロシウ老師が以前「今のままでは、近い内に必ず成長が止まる」と仰っていましたけど、それはこういう事だったのね。それをイッセー君ならともかくイッセー君の妹で私よりずっと年下のはやてちゃんにまで指摘されるなんて、正直思ってもみませんでしたわ」
そう言って項垂れていた朱乃さんだったが、そこからすぐに気を取り直すと自分自身と向き合う事を改めて誓い直す。
「でも、これで私自身が抱えているものとしっかり向き合わないと先には進めないという事を改めて実感しましたわ。その為にも、後で部長に相談しないといけませんわね」
……どうやら、今の所は早朝鍛錬の全員参加は上手くいっている様だ。
いかがだったでしょうか?
なお薫とカノンの強さについては、朱乃・ゼノヴィア≦カノン・小猫・ギャスパー≦リアス・ソーナ・レイヴェル≦イリナ・薫≦セタンタといったところです。
では、また次の話でお会いしましょう。