凡才錬金術師と天才錬金術師   作:はごろもんフース

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すいません!
前の話で主人公の影が薄い&何か設定が納得できないと多々ありまして
投稿しなおします。お気に入り登録をしてくれた人には本当に申し訳ないです。ごめんなさい!


一章:出会い
プロローグ:召喚


 何処までも続くような緑色の草原を春風が吹き抜けていく。

そんな草原の真ん中でトリステイン魔法学院の生徒達は、今か今かと待ちわびていた。

今日は待ちに待った春の使い魔召喚の儀式、生徒達が期待するのもしょうがないだろう。

既に召喚を終えている者もおり、猫、犬、あるいは風竜などの様々な種族と戯れている。

体が生徒の何倍もある生物も多々いるが、生徒を襲う素振りすらなかった。

呼ばれた使い魔達は、主人や周りの生徒を襲わず大人しく待っており忠実の一言だ。

 

 全ての使い魔には体のどこかに『ルーン文字<契約>』の証が刻まれていた。

使い魔として『呼ばれた<サモン・サーヴァント>』生き物は、『契約<コントラクト・サーヴァント>』されることで体のどこかにルーン文字を刻まれ、主人に対して忠誠と愛情を植えつけられる。

この契約は主人が死ぬまで、もしくは使い魔が死ぬまで契約が続く一生の物だ。

一方的に思える契約内容だが、召喚される側にもメリットは存在する。

 

 使い魔は『メイジ<魔法使い>』の生涯のパートナーとなり大事に大事にされる。

メイジにとって使い魔は、自分の実力を周りに知らしめる一種の証なのだ。

『メイジの実力を見るには使い魔から』と言われているほどであり、メイジも貴族が大半である。

貴族の加護を得れ大事にされるならと召喚に応じる者は少なくない。

 

 そんな大事な儀式の最中で一組の男女が、何やら騒いでいた。

騒いでたと言っても少年は本を読み無関心で少女が一方的に喋っているだけである。

うんともすんとも言わぬ少年に構わず『少女―ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』は不安をぶつけるかのようにひたすら喋りかけた。

 

「私大丈夫よね」

「………」

「あっ!心配してるわけじゃないのよ?私の事だし最後はどうにかなる!……はずだし」

「………」

 

 ルイズの可愛らしい口からマシンガンの様に言葉が流れ出る。

その様子を他の人が見れば、緊張で喋っているのが丸判りだ。

先ほどから足をこっちへあっちへと世話しなく動かし、たまに呻り声すら上げる。

それでも緊張や不安が消えないのかため息をついて頭を軽く掻き毟った。

 

「ねぇ!聞いてるの!!ウイル!!」

「………」

 

 緊張がピークに達したのだろう。

ルイズは幾ら話しかけても一言も喋らない唯一の友人に大声を上げた。

ルイズの大声に周りに居た生徒達は、何事かと視線をルイズに向けるがルイズは気付かなかった。それほどまでに神経を張り詰めさせ、すでに一杯一杯だった。

 

「ルイズ……君のその『私は大丈夫』は昨日から100回も聞いているよ」

「数えてたの?」

 

 話しかけられていた『少年―ウイル・ツチール』は本を閉じゆっくりと視線をルイズに向ける。

その向けた視線は呆れと疲れが見え実に面倒そうであった。

それでもルイズの相手をする辺り二人の仲が好ましい事がわかる。

 

「いや、数えてないけどさ」

「あんたね!」

「数えてるほど暇じゃないし、さっきのはそれほど聞いたって言う言葉の綾さ」

「うー……」

 

 落ち着かせるように出来るだけゆっくりとゆったりと言葉を口にし軽く微笑む。

噛み付くかのように会話を続けようとしていたルイズもこれには呻り声を上げるしかない。

言い負かされたせいか、ウイルの心遣いが伝わったのかルイズはそれ以上は言わず、涙目になりウイルの横に座る。草原の広場なので下は地面なのだが、ルイズは気にしない。

ウイルとルイズの足元にはシートが敷かれており汚れる事が無い為だ。

 

「まぁー……なるようしかならないし、俺なんかミミズを召喚するかもだぜ?」

「……流石にミミズはないんじゃないかしら?『ドット』のギーシュだってジャイアントモールを召喚したのに」

「いや、判らないぞ。使い魔は実力と言うより相性で呼ばれることも多いらしい」

「そうなの?」

 

 ルイズはウイルの言葉を聞きながら視線を1人の生徒へと向けた。

その生徒はルイズと同じ背丈ぐらいの青髪の少女である。

青髪の少女は先ほどのウイル同様木の下で本を読んでいた。

だが、彼女の使い魔の風竜は彼女に構って欲しいのか何度も何度も頭で軽く少女を小突く。

次第に鬱憤が溜まってきたのだろう、少女は大きな不恰好な杖で自分の使い魔の頭をはたいた。

 

「……タバサは風竜を使い魔にしたわよ?」

 

 暫し1人と1頭を見てルイズが疑問を口にする。ルイズの疑問ももっともだろう。

メイジは『ドット』『ライン』『トライアングル』『スクウェア』に分けられる。

一般的にメイジの強さは、同系統の重複も含め各系統を幾つ足せるかで示される。

ドットなら1系統 ラインなら2系統 トライアングルなら3系統と足せるのだ。

そして風竜を召喚したタバサは同じ学年でも二人しか居ない、トライアングルだ。

ルイズには相性ではなく、実力で呼んだようにしか見えなかった。

 

「ルイズ……オールド・オスマンの使い魔を思い出してみろ」

「あっ!」

「そういうことだ」

 

 首を傾げるルイズにウイルは淡々と答える。

ウイルの答えにルイズは『オールド・オスマン<トリステイン魔法学院学院長>』の使い魔を思い出した。オールド・オスマンの使い魔は『ネズミ』である。

もしもメイジの力量で使い魔が召喚されるのであれば、オールド・オスマンはドットとなってしまう。だが実際はどうだろうか、オールド・オスマンがドットなぞ聞いたことすらない。

むしろ立派なメイジで誰もが尊敬するような人物だ。

 

 そのことを思い出しルイズは自分の無知具合に顔を真っ赤にさせ俯いてしまう。

そんなルイズを見てウイルは苦笑した。

判らない事を聞くのは恥ずかしい事ではない、むしろ好ましくも感じる。

自分で考えて調べて分からないなら他の人に聞く事はとても良いことだ。

ウイルはそう思い大丈夫だと意思を込めルイズの頭をポンポンと軽く撫でた。

 

「はぁ……ウイルは良いわね。いつも落ち着いていて」

「そんなことないけどなー……」

「あるわよ。知識量も多いし優秀よね」

「………」

 

 ルイズの言葉にウイルは自分の行動を思い返し「落ち着いてるのか?」と疑問に思う。

思い返した自分の姿は、落ち着いていると言うよりコミュニケーション不足で黙り込んでいるだけである。それを見てルイズは落ち着いていると評価していたらしい。

更には知識量や優秀とも言われ「どうしてそうなった」とばかりに頭を抱えそうになった。

知識量は『転生前』ではなかった魔法と言う未知の力に興味津々で研究しているだけ。

どうせならオリジナルの魔法作ろうぜ!とか色んな魔法を使える俺かっこいいー!等も含まれる。

 優秀かと言われれば微妙としか思えない。魔法の腕前もライン止まり、知識も魔法以外はてんで駄目だ。領地経営や相手の言葉の裏を読むなど、時間をかけないと分からない。

正直な話、ルイズの方が才能があり優秀だと思っている。

そのことを言えばルイズが「私なんか……」と落ち込むので言わないが。

 

「はぁ……」

「ため息つくと幸せが逃げるぞ」

「なにそれ、そんな言葉があるの?」

「どこかの本で読んだことがあってな」

 

 

 本当に物知りねと呟くルイズを見て本当に仲良くなったな俺達と苦笑する。

ウイル・ツチールは『転生者』である。

転生者と言ってもよくあるSSの神様転生と言うわけではない。

生前の記憶が、『地球の日本』に住んでいた頃を覚えているだけだ。

神様に会ってないのでチート特典なぞ貰っていない。

日本に暮らしていた頃も普通の職場で大した知識も持ち合わせていなかった。

主人公補正もご都合主義も無く使える知識も少ない、男爵家の次男坊として生まれたのだ。

 

 魔法学院に来るまでも特に何事もなく主要人物との交流すらなかった。

ただただ、将来に向けて魔法を鍛え研究し未来を見て行動をする日々。

魔法学院に入学しても適当に友人を作り、程よく接する程度。

ルイズやキュルケなどと交流する気も物語に足を突っ込むつもりもなかった。

だと言うのに今自分の隣にはルイズが居る。何故そうなったかと言えば簡単だ。

 

『自分はルイズを笑わなかった』ただそれだけの事だ。

ルイズが虚無を使えるという事も魔法が合わず爆発することも知っていた。

無論努力家で必死に魔法を学ぼうとするルイズの姿勢などもあり、更に笑えないのだが。

 そんな自分がルイズには異端に希望に見えたのだろう。

どれだけ努力しようが笑われる日々、その中で笑わず居る自分……。

ルイズが接触してくるのは目に見えていたが、ウイルは接触されるまで気付かなかった。

 

『ウイル・ツチール』

 

「呼ばれたわね」

「呼ばれたな」

 

 そうこうしていると恩師でもある『ジャン・コルベール』に名前を呼ばれた。

遂に召喚の順番になったらしい。ウイルは本を置きゆっくりと立ち上がり伸びをする。

暫し体をほぐすとルイズに行って来ると声をかけ静かに微笑んだ。

 

「ミミズじゃないこと祈ってるわ」

「……あははは」

 

 ルイズの真剣な表情に渇いた笑いが出た。

まじでないだろうなと思うも盛大なフラグを立たせられた気がして心配になってくる。

 

(さて……何が呼ばれることやら)

 

 一歩、また一歩とゆっくりとマイペースに時間を掛け歩く。

これがルイズと会う前なら何も考えず期待だけを胸に召喚できただろう。

しかし今は違う。ルイズと出会い何か補正でもかかったのではないかと不安になるのだ。

既にルイズに懐かれており物語に関わる事はほぼ確定と言っても良いだろう。

だからこそ……自分には力が必要だ。

どんな困難も乗り越えられるような、そんな力が。

 

 願わくば――自分の隣に立ち、目標となり、光となり、自分を支えてくれるパートナーを

それこそルイズとサイトのような信頼関係を結べる相手を――そう願わずにはいられなかった。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「………」

 

 先ほどの春風が吹く草原と違い、本や何かが書かれた紙、実験に使っているであろうフラスコが乱立した部屋。その部屋の中で1人の少女が、本を読み続ける。

 

「………」

 

 ある程度、読み終えると少女は本を閉じ静かに部屋を出た。

部屋を出るとバタンと軽い音が鳴り後ろの木で出来た扉は閉じた。

少女は扉が閉まったことを確認するとそのまま無言で石畳の通路を歩き始める。

通路は下から上まで白い石で出来ており、何処か神々しさすら漂わせていた。

 

 そんな通路を歩き続けると広い広間に出る。広間も通路同様白い石造りであった。

1つ違う所を言えば、あちらこちらが欠け、あるいは柱が折れたり等していて廃墟同然と言うところか。そんな今にも崩れそうな廃墟を少女は気にせず、歩き中央へと赴く。

 

 中央には何やら廃墟に似合わぬ大掛かりな機械が設置してあり、その機械を中心に魔方陣が描かれていた。少女はその機械と魔方陣を興味深気に何度も何度も見ては調べて見ては…を繰り返す。

 

「ふぅ………おらぁ!」

 

 暫くして満足したのか深くため息をついて肩を叩いた。

少女に似合わぬ些か年寄り臭い行動を取り、更に気合の篭った一発を機械に蹴りこんだ。

もしもこの場に他に人が居れば少女の行動に目を開き幻覚を見たかなと思っただろう。

それほどにこの少女の見た目には似つかわしくない行動であった。

 

 パッチりと開いた大きな目に透き通るような瞳。

日焼けやシミなど知らないとばかりの白い肌。手で髪をかき上げれば綺麗な金髪が光の滝のようにさらさらと流れる。小柄な体であるが、肉が付いている所はしっかりと付いており健康的でもある。残念と言えば胸が些か小さい事だけであろう。まさに絶世の美少女、10人が10人美少女と答えるであろう容姿を持った『少女―カリオストロ』は不機嫌さを隠さず、目つきを悪くして吼えた。

 

「ちっ、何か目新しい事が見つかると思ったが何もありゃしねー」

 

 忌々しげに呪詛を込めるかのように言葉を吐きその場を立ち去る。

 

(外の状勢もわかんねーし、確かめる手段もない。いい加減出来る事も少なくなってきやがった)

 

 今の自分の状態を考え暗い気持ちとなった。

普通に暮らすのであれば此処にいても問題は無い。

食料は、森などで調達すれば良いし、寝床も部屋で寝れば大丈夫だ。

問題なのは『娯楽の無さ』と『自分以外の人が存在しない』ことだろう。

 

「相変わらずな光景だね☆………虚しいな」

 

 外へと出ると見慣れた景色が目に入る。

何処までも続くような白い雲の絨毯。その隙間から見える青い青い広大な海。

そんな光景を見て景気づけに『女の子モード』をしてみるも人が居なければ虚しいだけであった。

 

 拗ねるかのようにその辺の小石を拾いポンっと『大陸』の外へと投げ捨てる。

小石は重力に引かれ雲をつき抜け下の海へと落ちていった。

ここで小石が重力に逆らい上へと行けばカリオストロは喜んでその研究に没頭したであろう。

だが、現実はそうは行かず、何も起きない、特別などありはしない。

 

(せっかく封印も解けて、この体を見せびらかす事が出来るのに無駄じゃねーか)

 

 しょうがなく、廃墟となった神殿の階段に座り込みぼーと過ごす。

考える事はどうやって退屈を紛らわせるかだ。

カリオストロが封印されていた島は、この世界においても辺鄙な所にあり、人が立ち寄るのも珍しいぐらいだ。何より、この島に上陸するには『飛空艇』がなければ入れない、なにしろ空に浮いている『浮遊大陸』なのだから。そして運がないことにこの大陸には人が存在しない。

その為、他の大陸に辿り着く手段がなく、この大陸で待ちぼうけとなった。

せっかく作りだしたこの体を見せることが出来なく、カリオストロは不満げに呻った。

 

「本当にどうしような……お前は喋らないし愛嬌ないし」

 

「………」

 

 暫く考えるも何も浮かばず、自分の傍に居た『ウロボロス』を睨む。

睨まれたウロボロス―赤い竜は、何も言わずただただ、そこに存在するのみである。

カリオストロは早々に睨むのを止め、また景色を眺め始める。

前にずっと見ていればウロボロスが反応をするのではと考え一日中見ていたことがある。

結局の所何も変わらず1日を無駄にしただけであったがその教訓もあり、今度はヘマをしない。

 

(まじで暇だ。この大陸で研究できる事も無くなっちまったし、どうすっかな)

 

 大陸を出ようにも船を作る部品が足りない。

他の大陸へと連絡手段も無ければ、ウロボロスに乗って移ることも出来ない。

幾ら天才といえどもお手上げであった。

転移魔法を作ろうも封印されてだいぶ経っており他の大陸がどうなってるか分からないのだ。

転移した瞬間空の上でしたーなんてやりたくもない。

 

(転移は無理……なら呼び出すのはありか?)

 

 腕を組み考えて考えたのは他の生物を呼び出すことだ。

鳥などを使い魔として呼び出せば他の大陸に連絡を出来るかも知れない。

そこまで考えると良い案だなと思えてきてやる気が出てくる。

 

「やってみるか」

 

 カリオストロは立ち上がりスカートに付いた砂を落すと意気揚々と部屋へと戻る。

今まで何故思いつかなかったのだろか。

長距離を飛べる生き物を配下にすれば連絡が取れるじゃないかと思い。

先ほどの憂鬱な気分と比べ明るい気持ちとなり、駆けた。

 

 

 

 

 

 

「準備はこれでいいな」

 

 部屋へと戻ったカリオストロは、部屋の中心に魔方陣を描き必要な媒体を用意する。

準備が整うと早速とばかりに媒体を中心に置き魔方陣に魔力を流し込む。

 魔方陣は魔力を通され紫色に輝きだし、フラスコに入れていた媒体が沸騰するようにぼこぼこと唸りを上げる。準備が出来た事に満足しカリオストロは呪文を唱え始める。

呪文の内容は簡単だ。自分の望む使い魔の要望を言うだけである。

長距離を飛べる存在を……そんな使い魔を呼ぶはずであった。

だが、実際に欲しかったのは本当にそういう存在だったのだろうか。呪文を唱えるカリオストロはそんな事を思ってしまった。

本当は自分でも気付いてた、本当に欲しいのは大陸を渡る手段ではなく

ただただ自分の………

 

 

「我が名は――」 「オレ様の名は――」

 

 

異なる世界、二つの異世界がほんの少しだけ繋がる

 

呪文を唱えている時にどんな人が傍に居て欲しい

 

そう聞かれた気がして

 

 

「誰よりも俺を支えてくれて目標になってくれる人を」 

「誰よりもオレ様の退屈を、寂しさを埋めてくれる奴を」

 

 

二人は、本当の欲しいものをただただ願うように呟いた

 

 

 

「なんだこれっ!!」  「おいおい、まじかよ」

 

 

呪文を唱え終わった瞬間。二つの力が異世界を超え交じり合いせめぎ合う。

次第にその力は増していき、反発しあい膨大なエネルギーへと変化される。

最後には耐え切れず、太陽に衝突したような光を発し爆発した。

 

光が治まった部屋には誰も居らず、爆発の影響か様々な物が壊れたような惨状となった。

 

 誰も居なくなった大陸を数日後に1つの騎空団が上陸する。

 

 

これは、凡才と天才が互いに切磋琢磨し支えあい、笑い合うそんな物語




本来ならカリオストロの封印はルリアによって解かれますが、このSSでは長年の封印による老朽でグラン達がやってくる1ヶ月前に自然に解かれた事にしてます。

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