凡才錬金術師と天才錬金術師   作:はごろもんフース

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短め!
そして主人公の初戦闘、これに道具を使ったようなやり方が戦い方です。



十四話:ここに旗を立てよう

「っ………!!」

『フライ』

 

1人の金髪の少年が攻撃を避けられ舌打をした。

綺麗に決まる筈だった一撃は、跳んで避けられた。

 

バク転の要領で跳んだ黒髪の少年は、空中で不自然に止まり天地が反転してる状態でくるんと横に回転する。回転すると黒髪の少年の付けていた籠手から伸びる50サントばかりの刃先がゴーレムの首を跳ね飛ばす。

 

「あぁ……まったく!型破りな!」

「こうでもしないと勝てないしな」

 

空中で止まっていた黒髪の少年が体を戻し、地面に着地する。

 

『錬金』

 

小さな声で呟き軽く手を振ると籠手から伸びていた刃先が綺麗になくなり通常の籠手へと戻る。

それを手を開きは閉じ、何度か確認してから両手を胸の前に掲げファイティングポーズを取った。

 

「そういえば……そのポーズをサイトもしていたね。流行ってるのかい?」

「すぐに拳を打ち出すには丁度いいからな。他の国で思いつく人が居ても不思議じゃないだろう」

「それもそうか……いけっワルキューレ!」

 

暫く会話を続けた後に、残りのゴーレムが黒髪の少年へと送る。

金髪の少年がバラを振りゴーレムを手先の様に操り、油断なく迫らせる。

黒髪の少年は、横から前からと様々な角度で迫ってくるゴーレムを落ち着いた様子で眺める。

近づいて来るゴーレムを眺めた後、黒髪の少年は軽くその場でタンッタンッと小さなステップを刻む。

 

そのステップを見て金髪の少年は眉を潜め、ゴーレムを数メイル手前で停止させ様子を見る。

暫くの間、両者に会話はなく、黒髪の少年が刻むステップの音だけが周りに響いた。

 

「見ていてもしょうがないか」

 

先に動いたのは、金髪の少年だ。

目をしっかりと黒髪の少年に合わせ、一つの動きも見逃さないとばかりに睨み、ゴーレムを動かす。

 

槍を持ったゴーレムが牽制とばかりに軽く突きを繰り出す。

突きは、深くなく、小突く程度のもので軽いものであった。

それでも避けない訳にも行かず黒髪の少年は、後ろへとバックステップをした。

 

「それを待っていたよ!」

「!!」

 

金髪の少年は後ろに大きく避けた黒髪の少年へとバラを向けた。

 

『クリエイト・ゴーレム!!』

 

呪文を唱え魔法を放つと黒髪の少年の後ろに新たなゴーレムが作り出された。

新たに作られたゴーレムは、両手を伸ばし黒髪の少年に掴みかかる。

 

丁度よく後ろに跳んだ所にゴーレムを作成したのだ。

バックステップで避けた黒髪の少年には距離的にも物理的にも避けれない、()()()()()()()

 

『―――』

「はぁ!?」

 

小さく呪文を唱えた黒髪の少年がゴーレムに捕まる手前でピタリと停止し、空中を前へと滑空し一瞬の内に槍を持ったゴーレムの前へと詰め寄る。

詰めた瞬間、黒髪の少年は拳をゴーレムに叩き込み、先ほど同様呪文を口にする。

その瞬間、ゴーレムがビクンと動き、胸から背中へと一本の大きな針が突き出てくる。

 

『錬金!!』

 

唖然とする金髪の少年を気にせず、黒髪の少年は呪文を唱え針を籠手に戻すと振り返り様、近くに居たゴーレムの腹を思いっきり蹴り上げる。

通常であれば全てが青銅で出来ているゴーレムが人間の蹴り位では吹き飛ばない。

 

『フル・ソル・ウィンデ……―――』

 

しかし、この場では違った。

蹴りを叩き込まれたゴーレムは、派手に吹き飛び、10メイルほど吹き跳んだところで地面に転がり無残にもバラける。

 

「ふぅ……どうする?」

「あー……」

 

足をゆっくりと戻し、金髪の少年へと問いかける。

問いかけられた少年は、呆然としながらも辺りを見渡す。

 

10メイル先には先ほど吹き飛ばされバラバラになったゴーレム。

目の前には胸に穴が空いたゴーレムが、その後ろでは首を飛ばされたゴーレムが転がり、更にその後ろには何も持って居ない無傷のゴーレム。

 

「ん~~~っ。負けだ。降参」

「そうか」

 

暫し悩むも結局は両手を挙げて金髪の少年――ギーシュは降参をした。

 

 

 

 

 

 

「それで……あのサイトみたいな速い詰め寄りは、一体何をしたんだい?」

「あぁ……あれかー……あれは『フライ』の呪文を唱えて空を飛んだだけ」

 

朝の鍛錬も終わり、お互いに汗を拭きながら先ほどの戦闘を思い返す。

最初にウイルに聞いたのは、サイトの様な速さを持つ詰め寄り方だ。

普通の人間があれほどの速度で動けるなんて思いもしなかった。

 

「『フライ』……か、考えつかなかったな」

「サイトを見て参考がてらに……結構使えるかも」

ライトネス(軽量)じゃ駄目なのかい?」

「『ライトネス』は、体を軽くするだけだからな。『フライ』のほうが速度が出る。上手くいったよ」

 

上手く行った事を喜び笑う親友に少しばかりムっとする。

この親友はいつもそうだ、落ち着いていて自分の考え付かないような魔法の使い方を平然としてくる。そこに憧れ同時に嫉妬もした。

 

「最後の蹴りのほうは?」

「あれは『レビテーション』で浮かして吹き飛ばした。蹴りは『魔法抵抗』が強いから直接魔力を流し込む為」

「なんというか……君は相変わらず、ドットクラスの魔法が好きだね」

「いや……近接戦闘を行なってる時に長い呪文なんて唱えてられないし、短いほうが便利なんだよね」

 

相変わらず良い意味で期待を裏切ってくれる。

 

「ふむ……今後の参考に使い方を教えてもらってもいいかい?」

「別にいいけど、そろそろ朝食の時間だし。歩きながらでも?」

「もちろん。それでだけど……」

「そこは――」

 

根掘り葉掘り、新しい技術を学ぶ為、一言も聞き逃さないように親友の言葉に耳を傾け、歩く。

今日も何時もの日常、新しい事を学び、胸躍る楽しい日々だ。

 

 

 

 

 

 

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「ウイル様!」

「ん、なんだい?」

 

授業も終え、お昼休みを満喫しているとメイドの1人に声を掛けられた。

声を掛けられる事自体珍しく、何事かと目を向ける。

 

「お客様がお越しになっています」

「客?」

「はい」

 

自分に客ねぇ?

一体誰だろうか……ヴァリエール公爵は会う約束をしているのでない。

なら金策として商品を売り出してもらっている武器屋か薬屋か。

それもないか。売り出してもらっている商品は、錬金の練習の片手間に作った投げナイフと簡単な傷薬。わざわざ時間を作ってまで取りにくるほど売れてはいない。

だとすると本当に誰だろうか?

 

兄貴は領地の経営で此方に来る暇もない。

思いつく限りの知人達を思い浮かべるも出てこなかった。

………知人少ないな俺。

 

「一体誰だい?」

「それが―――」

 

メイドから話を聞いて目が点となる。

え、なんでその人が来るわけ?

意味が分からない、分からないが……ルイズが気の毒になりそうだ。

 

「まさか……ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんでーーっ!!?」

「会っていきなりそれはないでしょ!おチビ!!」

「あぁ……やっぱり」

 

カリオストロを連れ急ぎ足で来て見れば、ルイズが金髪の女性に頬を引っ張られている。

ルイズの髪を金髪にして身長を伸ばし、目を吊り上げた様な容姿。

腕を組み此方を見下すような視線が実に様になっている。

入学仕立ての頃のルイズを思い出し、ついつい懐かしく笑みが漏れる。

 

「お久しぶりです。エレオノールさん」

「……相変わらずね。はぁ……」

 

なんだろうか、普通に挨拶をしただけなのに深いため息をつかれた。

自分としては結構好きな人なので会えて嬉しいのだが相手はそうでもないみたいだ。

そんな事を思いながら、ヴェリエール家長女である『エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール』を見つめた。

 

「相変わらず……ごほん。それで今回の来訪のご用件は?」

「お父様に言われて彼女達を連れて来たのよ」

 

エレオノール嬢の視線に合わせて視線を向ければ、人が立っている。

 

「彼女達は?」

「仕立て屋」

「………ヴァリエール公爵に気を使わせてしまったようで」

「まったくよ」

 

エレオノール嬢が一層不機嫌になった。

俺の家はギリギリの男爵家だ。

領地も小さく正直、公爵家と比べると天と地ほどに差がある。

そんな男爵家の次男坊にここまですることが不満なのだろう。

うん、その気持ちは()()()()()()()

ここまで公爵に気に入られるとか、何なのかと……いや、理由はよく分かっているのだ。

分かっているうえで無視している。

 

仕立て屋に関しては、下着や服を作るのに時間が掛かる為、わざわざ学院に呼び寄せたのだろう。

あぁ……胃が痛い。ここまで気を使われると王城で何を言われるか不安になってくる。

 

「なんで私が赴いてここまでしなくちゃいけないのよ」

「妹に会いに来たと思っていただければ」

「ふんっ」

「カリオストロ」

「な~に☆」

「彼女達に付いて行って採寸してもらってくれ」

 

空気を読んでいたのか静かにしていたカリオストロへと指示を出す。

カリオストロは恭しくエレオノールにお辞儀をして去っていく。

それを見届け改めてエレオノールへと向き直る。

 

「本日滞在なさるお時間を教えていただけますか?」

「すぐに帰るわ。研究もあるってのにお父様ったら!ちびルイズ、虚無の日忘れないように!」

「はひ……姉ひゃま」

「お気をつけて」

「ふんっ」

 

頬を押さえ涙目になっているルイズを一瞥し去っていく。

その背中にお辞儀をしてお見送りをするとまた鼻を鳴らされた。

 

「………ルイズ、大丈夫?」

「いひゃい、まさか姉さまがいらっしゃるなんて」

「まぁ、予想は出来ないわな」

 

未だに頬を押さえ蹲るルイズに渇いた笑いが出る。

一体どれだけ強い力で引っ張ったのだろうか。

 

「機嫌悪そうだったね」

「姉さま……婚約破棄になったって」

「えーとっ……また?」

「うん、また。昨日のお父様のお手紙に書いてあったわ」

「あー……」

 

なんというかお気の毒様。

本当に大丈夫なのだろうか、ヴァリエール家は……。

これで本当に跡継ぎがいなくなったぞ。

 

嵐のようにやってきて去っていったエレオノールを見て不安が一層増した。

本当に虚無の日が怖くなってきたぞ……これ。




次回『ヴァリエール家跡継ぎ問題』
「俺にとってエレオノール嬢は可愛い人だよ」
ウイルがヴェリエール家の問題とエレオノールが何故あんな性格なのかを語る。
次回にご期待を‼

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