凡才錬金術師と天才錬金術師   作:はごろもんフース

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カリオストロが……5位?
なんの冗談だ……これはっ!



十三話:ドキっ!地雷だらけのアトリエ!

突然だが、この学院には関わりたくない相手が二人ほどいる。

1人は――『キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー』

ゲルマニアの留学生で燃えるような赤毛と健康的な小麦色の褐色肌で体型も出ている所は出ているという、大変魅力的な女性。

 

ゲルマニアの学校に通っていたがトラブルを起こし退学になってトリステインへ。

噂では、政略結婚をさせられそうになり此方に逃げてきたとされている。

本人に聞いても『ゲルマニアの男に飽きたのよ』と言ってはぐらかされ真意は不明。

むしろ言った言葉が真実なのかもしれない。

 

性格はサバサバしており、姉御肌。

友人としては付き合いやすく、彼女とするなら遠慮したい人である。

 

関わりたくない理由の一つは、彼女の男癖の悪さ。

キュルケは、気に入った男性生徒を誘惑して何人もの、男性と付き合っている。

多情な女性で熱しやすいが冷めやすく、誰も長続きはしない。

 

そんな彼女の為、周りには常に男性を侍らせトラブル関係も多い。

言ってしまえば、『女性版ギーシュ』と言った所か。

 

関わりたくない理由のその2は、彼女の家系にある。

彼女の実家のツェルプストー家はルイズの実家ヴァリエール家とは領地が国境を挟んだ隣同士で、先祖が幾度も戦いを繰り広げてきた上に、ツェルプストー家がヴァリエール家の恋人を奪ったという事例がいくつもある仇敵同士の間柄。

ルイズと仲が悪く……いや、一方的にルイズが遊ばれているだけだが。

ヴァリエール家と交流を持っている自分としては仲良く出来ない相手である。

それ以上にぐいぐいと迫ってくる肉食系の女性が苦手と言うのもあった。

 

関わりたくない理由その3は、ルイズの機嫌が悪くなる為。

前に1度、お茶をしている時に話を掛けられたので一緒にお茶をした時があった。

キュルケの誘いを何度も断っている為、彼女も自分に興味があったのだろう。

ついでにルイズと仲が良い事も理由として挙げられる。

 

『ねぇ……今晩、一緒に熱い夜を過ごさない?』

『はぁ……』

 

身を乗り出し、顔を近づけるキュルケにため息が出る。

顔は息が掛かる位に近く、視線を下げれば豊満な胸の隙間がよく見える。

何処をどう見ても誘惑されてるのが判る、でもこれに引っかかる男性が多いことは泣ける。

自分自身女性に興味がないこともない、しかしキュルケだけは勘弁したい。

 

『何してるのよ』

『はぁ~い、ルイズ♪』

『何って……お茶をしてるだけだな』

 

そんな事を思っているとルイズがやってきて場が急変する。

ルイズの事だから、激怒し大声を出す物だと思っていた。

しかし、ルイズの行動は意外にも意外で冷めた表情となり淡々と言葉を紡ぎ出す。

表情も能面のように無表情となり、静かに怒るルイズにキュルケと共に身の危険を感じ引いた。

 

『そ、それじゃ……私はこれで…おほほほほ』

『ちょ!?』

『ねぇ……何してるの?』

 

キュルケは冷や汗を垂らし、早々に逃げ、自分も逃げようとするもルイズに服を捕まれ逃走が出来ず。淡々と言葉を吐き出すルイズに脅えながらも落ち着かせ、後日王都でクックベリーパイを奢りどうにかなった事がある。

それ以来、キュルケと自分の間ではルイズの前で親しくしないと暗黙の了解が出来た。

 

そんな事があったからキュルケとは関わりを持つことはないと思っていた……思っていた。

 

「あっちに行きなさいよ!!」

「いやよ、ぺたんこルイズがあっちに行けばいいじゃない」

「………ナニコレ」

「………」

 

教室から戻り、部屋に戻ると修羅場がそこにあった。

自分の目の前には、才人を挟みキュルケとルイズがにらみ合っていた。

 

キュルケは才人を抱きしめ、ルイズが才人の手を引っ張っている。

シエスタはその後ろでオロオロと慌てている。

才人は……胸を顔に当てられ嬉しそうだ、ほっといてもいいかも知れない。

 

「カリオストロ」

「なにぃー?」

 

取り合えず、何が起きているのか聞く為にソファーで寝そべっているカリオストロへと声を掛ける。カリオストロは、気だるげに本から視線を外しこちらを見た。

 

カリオストロは、袖が肩口までない白い『フレンチ・スリーブ』に紺色の『フレアスカート』を着用している。普段の飾りが多いごたごたした服ではなく、ラフな格好であるが彼女の魅力は失われていなかった。スカートと『オーバーニーソックス』の間から見える『絶対領域』が素晴らしかった。

 

「アレは何がどうなってるんだ?」

「んぁ……あぁ、()()か」

()()だ」

 

顎を少しばかりくいっとルイズ達の方へと向ける。

 

「なんでも才人に惚れたんだとよ」

「………はぁ」

 

期待通りの答えが帰って来てため息をついてしまう。どうせキュルケの事だ。

トリステインの男性に飽きた所に昨日の決闘騒ぎ……果敢に立ち向かう才人に情熱が向いたのだろう。どうせ直ぐに飽きる癖にと思うも口を出し飛び火が来るのは困る。

ここは才人に任せて研究でもしよう。

 

 

 

 

 

「………」

「………」

 

そんな事を思い暗幕を潜り研究室へと赴くと1人の少女と目が合う。

テーブルの前の椅子に座り込む青い髪をした少女。

この学院において一番関わりたくない少女――タバサは座っていた。

タバサはキュルケと親友の間柄であり、居るとは思っていた。

居て欲しくなかったが……。

 

「………読んでる」

「あぁ……そうか」

 

勝手に人の本を読んでることに対してか、タバサは本を掲げ見せてくる。

別に本を読まれるのは構わないのだけど……正直関わりたくない、すっごく関わりたくない。

 

綺麗な濃い青色の髪に140サント位の小柄な身長、目が悪いのか眼鏡をしており大きな杖を持っている。この少女の何処が嫌かって言うと……目立つ青色の髪だ。

 

ハルケギニアでは、様々な色の髪を見ることが出来る。

青、赤、水色、金色、黒、白、紫と……本当に多様多種だ。

そんなハルケギニアで青色は特別な髪の色となっている。

なにせ、濃い青色の髪の毛は『王家ガリアの特徴』なのだ。

 

青色が濃ければ濃いほど王家に近い血筋をしていると言っていい。

そして目の前の少女の髪の色は……濃い青だ。

タバサと言う犬猫につける名前を名乗っている時点で偽名と判る。

更にガリアからの留学生。どう見ても『やんごとなきお方』であった。

 

それでタバサは一体何者かと言われれば簡単に推測できる。

現状に置いて『純粋なガリア王家の者』は4()()のみ。

 

1人は『ガリアの王ジョゼフ』、そしてその娘の『イザベラ王女』。

残りの二人は、ジョゼフの弟のシャルルの夫人である『オルレアン公夫人』、そして……最後に

 

(シャルル様の忘れ形見……『シャルロット・エレーヌ・オルレアン』)

 

その人である。

 

シャルロットに辿り着くのは単純な除外で解決できた。

ジョゼフ王は男性で除外、オルレアン公夫人は病に伏せている上に年齢的に合わない。

次は、イザベラ王女なのだが……彼女はそれなりの頻度でお見かけすることもあり、何度か見ている。姿は似ているものの、その時のイザベラ王女は眼鏡を着けておらず、身長も違った。

故に考えられるのは1人のみとなる。

 

(シャルル様は、事故で亡くなったと聞くがどう見ても暗殺の類、しかも夫人は謎の病に侵され伏せている。陰謀の匂いしかしない)

 

王家のごたごたに巻き込まれるのはごめんだ。

ただでさえ、ヴァリエール家の厄介事を抱えている身、これ以上負担は避けたい。

というか間違っても男爵家の次男坊が首を突っ込む話ではない。

 

「取り合えず……本を読むのはいいけど、横に退いてくれないか?」

「んっ」

 

テーブル前から退くように進言し研究を開始する。

決して現実逃避ではない……ない。

棚から必要な素材を取り出し、何時ものように研究を開始する。

 

「………」

「………」

「なぁ……本を読むならキュルケ達の所とかどうだ?」

「………」

 

研究を開始するもタバサに後ろから見つめられ嫌な汗を掻く。

親友であるキュルケのほうへと誘うも首をふるふると横に振られる。

結局の所、タバサに見られながら研究を進めることとなり、あまり成果は得られなかった。

 

 

 

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

「離れなさいよ!!」

「いいじゃない、恋は人の自由よ?」

(まだやってやがる)

 

既に2時間もの間、才人を引っ張り合い罵り合っている。

最初こそ引き裂かれる才人に笑い煽っていたが、いい加減飽きた。

見るのも聞くのも飽きて本を読み始めたが、二人の声が喧しくうんざりとなる。

 

本を顔から引き離し胸に置き、サイト達を見る。

才人は困り顔でありながらも嬉しそうにしデレデレとしていた。

 

(シエスタは……いねーのか)

 

飲み物でも貰おうかと思い辺りを見渡すとシエスタの姿はない。

飽きたのか呆れたのか……外へと出て行ったようだ。

 

「………」

「あっちいけ!」

「い・や・よ」

 

お腹が鳴る。

既に外は暗く夕食時には丁度いいだろう。

ウイルを誘い食べに行くとしよう。

 

「ウイルー、夕食いこうぜ」

「あー……カリオストロ?……もう、そんな時間か、判った」

 

暗幕を潜り、ウイルへと声を掛ける。

自分の声に振り返ったウイルは何処か疲れた表情で憔悴しきっていた。

此方も此方で面倒な目に合っていたみたいだ。

人形のように動かない少女を見てそんな感想を抱く。

 

「……タバサも来るのか?」

「………」

 

後片付けをした後に外へと出ればタバサと呼ばれた少女も付いてくる。

その事にウイルが更に疲れたような表情で問えばタバサは軽くお腹を擦った。

お腹が空いたのだろう。それにしても本当に喋らない奴だ。

 

「……キュルケはいいのか?一緒に食事とかどうだ?」

「いい」

「そうか、そうかー……」

 

タバサの短い一言でウイルがガックリと肩を落す。

それほどにこの少女が嫌なのかと不思議に思う。

結局の所、学食手前でタバサと別れ席へと着いて食事を始める。

 

「あいつ……厄介事か?」

「特大級の地雷」

 

食事を進めながら先ほどの少女の話を切り出す。

あれほどに嫌がるのだ、何かしらあるのだろうと思うとやはりあったらしい。

 

「たぶん、ガリアの王族」

「あー……なるほど、それは厄介だな」

 

王族関係者か……確かに厄介事の匂いしかしない。

関わりたくないと思うのも仕方がないことである。

 

「あっ……次はそれお願い☆」

「……いい加減自分で食べてくれないかな」

「や・だ☆キャハ」

「はぁ……」

 

膝の上で座り、手を使わずとも口に運ばれてくる。

こんなに便利なのだ、使わない手はない。

暫しの間、ウイルと雑談を重ね食事を終えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウイル!誘ってくれてもいいじゃない!」

「お取り込み中だったしな」

「タバサも!」

「………」

 

食事を終え戻ってくるとルイズと赤髪の女性にそれぞれが文句を言われる。

見れば喧嘩は終わったのか、テーブルの上のサンドイッチを才人と3人で食べていた。

 

「あー……何か住み着いた」

「あの子、本好きだから」

 

文句を言う二人を無視しタバサは奥へと引っ込んでいく。

それをげんなりとした表情でウイルが見送り、赤髪がヤレヤレとばかりに首を振った。

 

「たぶん、全部読むまで来るわよ?」

「引き取ってくれ、ルイズと才人とカリオストロでいっぱいだ」

「やーよ、あの子本を読む邪魔すると怒るもの」

 

王族の娘に公爵家の娘、ルイズと因縁を持った娘……何と言うか賑やかで地雷だらけで踏み場もない。自分の主人に軽く同情の念を抱く。助ける気はこれっぽっちもないが。

幸いと言えばキュルケと呼ばれている少女が才人にほの字と言うことだろう。

これでウイルが惚れられていたら、どうしようもない。

 

「そういえば……お父様から手紙が届いたわよ」

「早いな」

「あー……うん、早いわね」

 

食事を終えルイズが口元を拭きながら手紙を差し出してくる。

それをウイルが受取り、中を開き目を通していった。

目を通していたウイルを眺めていると何やら眉がどんどんと眉間に集まり困惑の表情となった。

 

「なんだ、何かあったのか?」

「………」

 

手紙の内容が気になり見ようとするも身長の差でまったくもって見えない。

しょうがなく、腕をぐいっと引っ張ればウイルが下へと手を下ろした。

 

「どれどれ……」

 

『名の件は承諾した。虚無の日に王城へ来るように』

 

「………」

「………」

 

読み終わった後にもう一度上から読み直す。

何度読んでも内容は変わらない。

 

「良かったじゃねぇか……王城に入れるぜ?」

「いやだ……絶対厄介事だ。地雷だ」

 

がっくりと肩を落とし、落ち込むウイルにニヤニヤと笑いながら背中を叩く。

どうやらまだ暫く暇つぶしに事をかかないようだ。




ドキッ!右を向けば地雷!左を見ても地雷!後ろを見ても……。

カリオストロも地雷な上にティファもアンアンも地雷!
普通なのがシエスタのみって言うね。

そういえば……タバサに喧嘩を売った生徒いたけど……
『ガリアの留学生』『青い髪』『偽名バレバレの名前』
この3つを見て何故踏み入った。

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