数少ない窓から光が射し始める。埃がそれを映し出し、一本の光の線を作り出す。無数に地面に突き刺さる光の柱が、薄暗いこの空間を明るく照らしていた。そんな幻想的な風景が織り成す図書館で、一人の少女が終わりの合図を告げる旗を挙げた。
「今日はこの辺でお開きね」
「えぇ~!お姉様、私はもっとおしゃべりしたい!」
吸血鬼姉妹による応答が、大きな室内に広がった。
「もう、我がままを言わないの。夜更かししてると、体が成長しないわよ」
「お姉様だって小さいじゃない」
その返しにパチュリーはくすりと笑みを溢した。
「もう、揚げ足を取らないの。とにかく私はもう寝るわ」
レミリアは背を向けて、扉へと向かって行く。
「じゃあねフラン、パチェ。おやすみなさい。フランも早く寝るのよ」
親友と自分の妹へ手を振り、レミリアは扉へと手をかけた。
「はーい!」
「じゃあね、レミィ」
バタンと扉が閉まる。急に森閑になり、辺りはしんと静まりかえる。物音一つしない。まるで時が止まってしまったかのように錯覚させられる。永遠に続くとさえ思えたその空間を破り、唐突に声を出したのはパチュリーだった。
「…………レミィと上手くやってるようね」
辺りが静かなせいか、普段から聞いている彼女の声よりも、少し聞き取りやすい声だった。
「うん!だってお姉様ってば優しいんだもん!」
フランは手元にあったティーカップを持ち上げて、その中身を一気に口の中へと流し込んだ。カップの三分の一までしか満たされていなかった、褐色の液体は全て彼女の口へと吸い込まれて行く。
「……それは良かったわ。でもそれは置いておいて、レミィの言う通り。早く寝なさい」
しかし、パチュリーの言葉にフランは反感を示すようにして勢いよく立ち上がった。
「えぇ~!いいじゃない!ここに来るのは久々なんだから」
そう言ってフランは手を後ろに組みながら、ゆっくりとした歩調で歩き回る。その姿は妙に様になっており、どこか慣れたような足取りだった。
「…………まぁ確かに。そうかもしれないけど、貴方はもう見慣れているでしょうに」
パチュリーは呆れたと言わんばかりに、大きく口から空気を漏らす。
「そうでもないよ。まだまだもっと見ていたい。私はそこまで図書館について詳しくないから」
「何を言ってるのよ。貴方は私の次にここを熟知しているでしょうにーーーー」
ーーーーねぇ、
その言葉にニヤリと、