いないいないばぁ。   作:Gasshow

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※注意点
・謎を解く遊び見たいな感じで作りました。なので、これは東方の二次小説と言うよりは、東方の設定と世界観を借りた、謎解きです。
・ある程度『東方project』の知識がないと理解できないと思われます。
・と言いつつ、独自解釈や捏造設定がありますが、それは話の中で説明しているので安心してください。
・ここに隠された真実、と言うには大げさですね。裏設定を見つけて下さい。
・正直、文章力0なので、逆に見つけられた方が凄いです。見つけられなくても、それは作者の実力者不足なのであまり気にされる必要はありません。

それらを踏まえられた方はどうぞ。


いないいない……
いないいないばぁ。


「………………はぁ」

 

思わず大きく息を吐く。こいしが起きてこない。普段、家にいるのか、いないのかよく分からない子ではあるが、昨日はしっかりと帰ってきたはず。もしかすると、もう既にどこかへ出掛けているのかもしれないが、私は一応姉なのだ。確認くらいはした方がいいだろうと、無駄に長い廊下をコツコツと歩いて妹の私室へと向かう。

 

「どうにも妹には甘くなっちゃうわねぇ……」

 

ふと思った言葉をそのまま口へ吐き出した。昔からそうだ。私は妹には甘い。でもそれは仕方がないだろう。妹が『覚り妖怪』としての本質である『第三の目(サードアイ)』を閉じてしまった時から、私は妹の事が気が気ではないのだ。世界でたった一人の妹。過保護になるなと言う方が無理な話だ。

 

そんな妹に甘い自分に呆れながらも、足は止めずにただ歩き続ける。その途中で、廊下にいるペットたちが、私を見つけると一瞬、立ち止まって姿勢を低くする。他の者が見たら何をしているのか分からないだろうが、心を読める私なら分かる。これは私に挨拶をしている仕草だ。こんにちは、と言う言葉がまるで本当に聞こえるかのように頭の中に入り込んでくる。

 

「えぇ、こんにちは」

 

私もそう返す。数回、そんなやり取りをした後、私は滅多に開かない一つの扉の前へとたどり着いた。三回ノックをして声をかける。

 

「こいし。起きてる?」

 

返事は無い。

 

「こいし?」

 

それから二回ほど同じことを繰り返したが、返事は無かった。

 

「もうどこかに出掛けちゃったのかしら?」

 

いつもの事だ。こいしはいつの間にかどこかへ行って、いつの間にか帰ってくる。むしろ家にいる時間の方が短いのだ。

 

「入るわよ」

 

一つ声をかけて、遠慮がちに中へと入る。地霊殿でも大きな部類に入るこの部屋の端に、これまた大きなベッドがある。こいしが殆ど帰ってこないせいか、ここ数十年変わっていない部屋の配置だ。人形や家具でごちゃごちゃしてはいるが、そのベッドはすぐに見つかった。

私はそっとベッドに近づいて、上から覗き込む。

 

「なんだ……まだ寝てただけなのね」

 

そこにはあどけない寝顔で、すぅすぅと息を漏らしている妹がいた。こいしの寝顔を見れるなんて珍しい。しかし、こうして改めて見るとやはり可愛らしいと感じる。だがもう昼過ぎだ。いつまでもこうしている訳にはいかないだろう。

 

「こいし、起きなさい。いつまで寝ているの?」

 

体をゆさりゆさりと()する。すると突然、パチリと眼が見開き、ぼやけた焦点で私を見た。

 

「……んっ………………あっ……お姉ちゃん……」

 

「お姉ちゃん、じゃないでしょう。全く……」

 

こいしはむくりと上半身を起き上がらせて、髪をすくように頭に手を置いた。

 

「あれ?私の帽子は?」

 

「寝る前に、部屋のどこかへ置いたんじゃないの?」

 

私がそう言うと、こいしは目をきゅっと閉じ、腕を組んで唸り始めた。しばらくそうしていたが、急にそれらを止めて私の顔を見ながら笑顔で言った。

 

「う~ん、分かんない」

 

「あなた……分からないって……」

 

いや『第三の目(サードアイ)』を閉じてしまった弊害(へいがい)で、無意識に行動するこいしならば仕方がないのかもしれない。下手をすると、無意識で帽子を適当な所へ放ってしまってもおかしくはないのだ。

 

「大切な帽子じゃなかったの?」

 

「そうなんだけど、でも多分見つかるよ!」

 

根拠の無い確信と言うか何と言うか、そう言いきる妹に何故か微笑んでしまう。

 

「そうね、きっと見つかるわ。それよりこいし。もうお昼を過ぎてるわ。何か食べた方が良いんじゃない?」

 

私の言葉を聞いて確認するように、こいしは自分のお腹に手を当てた。

 

「うん!お腹すいた!」

 

「なら食堂に行きましょうか」

 

こいしは嬉しそうにこくりと首を縦に振った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長い廊下を歩く私の隣には、機嫌が良さそうに鼻唄を歌う妹が一人。そんな姿を見ていると、私も何故か気分が良くなる。しばらくそうしていたが、ふと廊下の奥に、大きな黒い羽を生やした人影が現れた。

 

「さとり様!」

 

「あらお(くう)。こんな所にいるなんて珍しいわね」

 

普段は別館にいることが多いお空と、こんな所で会うとは思わなかった。

 

「確かにそうですね!……ってあれ?私、なんでこんな所にいるんだろう?」

 

「…………相変わらずお空って馬鹿だよね」

 

これには私も同意せざるをえなかった。お空は鳥頭だ。まぁ、概括(がいかつ)に言うと馬鹿なのだ。記憶力も非常に弱い。少し話を逸らせば、ほんの十分前の事でさえ忘れていたりするのだ。

 

「それで、さとり様はお一人でどこに行かれるんですか?」

 

どうやら思い出すのを諦めたらしく、今度は自分の疑問をぶつけてきた。

 

「ええ、実は……」

 

そこで違和感に気づく。

 

「……こいし。貴方、能力を使ってる?」

 

「うん!」

 

なるほど。それで、お空は私にだけ話を振ったのか。そう言えば、始めの挨拶も私にだけに言っていたような気がする。

 

「あれ?こいし様いるんですか?」

 

「ええ、ここに」

 

私は自分の右隣にいるこいしの肩を、ポンポンと叩いた。

 

「私たちはこれから食堂に向かうの。こいしがお腹減ったらしいから」

 

「なるほど、ならお邪魔しちゃ悪かったですね」

 

お空はずれるように道を開けてくれた。

 

「ありがとう」

 

「ありがとうね、お空」

 

「はい」

 

私たちはお空にお礼を言って、先を歩こうと、一歩踏み出した。そこでふと思い出した。

 

「そう言えば、こいしの帽子を知らない?実は無くなっちゃったらしくて困ってるのよね」

 

お空はきょとんと、首を傾げる。

 

「こいし様、帽子を被ってないんですか?」

 

「そうよ。珍しいでしょ?」

 

「う~ん、見たことないですから」

 

そう言えば、私もこいしが帽子を脱いでいる姿を見るのは久々だ。姉の私でさえそうなのだから、お空が帽子を脱いだこいしを見たことが無いのは仕方がないのかもしれない。

 

「それじゃ、こいしの帽子を見かけたら、拾っておいてくれる?」

 

「はい!分かりました!……でもこいし様の帽子ってどんなやつですか?」

 

ここでも鳥頭を発揮するとは。恐らく今言った、私の頼み事さえ、次に会った時には忘れているのだろう。

 

「丸形で、つばが広めの帽子よ。リボンが結ばれていて、確か色は…………黄色だったかしら?」

 

私は確認するように、こいしへ目配せをする。

 

「うん、そうだよ!」

 

どうやら正解だったようだ。

 

「分かりました!見つけたら、さとり様の所へ持っていきますね」

 

そう言って、お空は廊下の奥へと消えていった。それを見送った後、こいしはふと呟くように言った。

 

「この様子だと、あんまり期待はできないね、お姉ちゃん」

 

「…………そうね」

 

私の返事も、長い廊下で溶けるように消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも食事を自室で食べる私にとって、食堂と言うのはあまり縁が無い場所なのだ。ここは普段、ペットたちが使っている。だから、どこに何があるのか分からない。食事もペットたちに作らせているので、簡単な物を作ろうにも、その材料の()()が分からないのだ。もう少し前の時間帯なら、食事をしているペットがいただろうに。これでは材料の場所を聞くことすらできない。

 

「お姉ちゃん。諦めてペットたちに作って貰おうよ……」

 

「嫌よ!絶対見つけてやるんだから!」

 

「何か意地になってない?」

 

なっていると言えば、なっているかもしれない。ここまで自分で探しているのだ。戻ってペットたちに聞くと言うのは少し(しゃく)だ。ましてや食事をペットたちに作せるなんて、姉の威厳的な何かが許さなかった。

 

「…………さとり様、何をやってるんですか?」

 

「お、お(りん)!」

 

聞き覚えのある声に振り向いてみれば、そこには私のペットの一人……いや、一匹である火焔猫燐(かえんびょうりん)がいた。

 

「何かガサゴソ聞こえるから、ネズミか何かだと思っちゃいましたよ」

 

「いつ食堂に入ったの?!」

 

「ついさっきですよ。と言うか、何してるんですか?確か昼食はさっきお食べになったはずですよね?」

 

私は立ち上がって、スカートをパンパンと叩く。

 

「私じゃないわよ。こいしが今さっき起きてね。お腹が減ったって言うから、私が何か作ってあげようと思って」

 

「……なるほど。それで……えっと、こいし様はどこに?」

 

これでは話が進まないと思い、私は一つの溜め息をついてこう言った。

 

「こいし、能力を解きなさい」

 

「はぁ~い」

 

元気の良い返事と共に、こいしの能力が解かれる。それでもお燐の視界には入っていない位置だったようで、彼女は首を振り、辺りを見渡していた。

 

「こっちに来なさい」

 

てってってと私の隣へと移動したこいしの肩を持つ。

 

「あぁ、そこにいらしたんですか。相変わらず、こいし様の能力は凄いですね」

 

「えへへ。そうでしょ!」

 

こいしは嬉しそうに、はにかんだ。

 

「それで、確か料理を作ろうとしてたんですよね。なら私に任せて下さい!」

 

「いいえ、駄目よ!料理は私が作る!それぐらい余裕よ!」

 

姉の威厳を見せつけるため、ここで料理くらいはしっかりとできる事を証明しなければ。

 

「お姉ちゃん。もういいよ、お燐に任せようよ」

 

「…………さとり様は、こいし様の前では格好付けたがりますよね」

 

私はその後も主張をし続けたものの、こいしとお燐の説得により、こいしの料理はお燐が作ることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

こうして広い所にいるとどうにも落ち着かない。小心者な性格だからだろう。これが食事を自分の部屋で食べる、大きな理由の一つだった。そんな私を尻目に、こいしは調理場に並べられている調理器具をもの珍しそうに眺めている。何とも自由奔放(じゆうほんぽう)な事だ。

 

「それにしても、こいしが突然現れたのに、貴方ってばよく驚かないわよね」

 

それは椅子に座り、長机に頬を預けていた私が、フライパンで肉を炒めているエプロン姿のお燐を眺めながら、ふと(つぶや)いた私の言葉だ。

 

「こう何回もあると、流石にもう慣れましたよ。それに比べて、さとり様はいつも驚いていますよね」

 

「うぅ……だって、驚くものは驚くんだもの。仕方がないでしょう」

 

お燐はハハッと笑って両手を忙しなく動かす。それからは沈黙がその場を包む。お燐が持つフライパンの上で焼かれた肉の焼ける音だけが聞こえる。そして、それを唐突に破ったのはお燐だった。

 

「…………そう言えば、こいし様はどうして心を閉ざされてしまったのですか?」

 

「…………どうしたの?急に」

 

「いえ、ふと気になりまして……」

 

私はちらっとお燐の後ろにいる、こいしを見る。こいしは今でも、調理器具を熱心に凝視している。私は一拍置いて、口を開いた。

 

「…………あれはね、私たちがまだ地底に行く前の話よ」

 

私は記憶を掘り起こす。思い出すのも苦痛な、あの時の事を。

 

「私たちは『覚り妖怪』。他人の心を見通すその存在は意味嫌われて当然。それは『覚り妖怪』としてこの世に産み落とされた瞬間から決めつけられた宿命。生まれて早々、他の妖怪に差別され、迫害され続けたわ」

 

私たちは親がいたわけではない。自分の心を(あば)かれたくないと言う、人間の恐怖によって生まれた存在なのだ。他の覚り妖怪は分からないが、少なくとも私たちはそうだった。

 

「迫害を受ける私たちは点々と場所を移動しながら暮らしてきた。正体がばれては逃げ、正体がばれては逃げと言う形で。でもある日、運が悪かったのね。私たちは捕まってしまったの」

 

普通、当時の覚り妖怪に対する扱いはそれほど過激なものではなかった。今でもそうだが、覚り妖怪は嫌われるものの、決して関わりたいと思う妖怪ではない。心を読まれない為に、遠ざけるのが一般的だ。しかし、その時の妖怪たちは違った。どうやら覚り妖怪に恨みを持つ妖怪たちだったようで、その時の私たちが受けた仕打ちは筆舌に尽くし難かった。

 

「あらゆる暴力を受けて、ボロボロにされたわ。私以上に、こいしが酷くてね。下手をしたら死んでしまっていたかもしれない」

 

恐ろしい。あの時、味わった恐怖は忘れようにも忘れられない。

 

「一生懸命、看病をしたお陰で、こいしは意識を取り戻したのだけれど、その時にはもう、こいしの第三の目(サードアイ)は、心は閉じてしまっていたの。恐らく、自分に向けられる大きな憎悪をたくさん見たからでしょうね」

 

私もこいしがいなければ、そうなっていたに違いなかった。

 

「覚り妖怪と言うのはね、事実から、本当に知りたくないことから目を背けると、()が閉じてしまうの。こいしはもう見たくなかったのね。自分に向けられる、どす黒い感情を……」

 

目をつぶる。もうあんな思いを、こいしにさせたくない。だから自分はこうして地底にいるのだ。

 

「……………………さとり様」

 

するといつの間にか、お燐が私を抱き締めていた。ふと顔を上げると、その目には涙が溢れている。

 

「…………お燐、どうしたのよ?」

 

「今は私がいますよ」

 

ぎゅっとお燐が力を入れる。吸う息が少し苦しくなる。

 

「私だけじゃありません。お空もいますし、他のペットたちもいます」

 

「……………………そうね」

 

私はただそう言った。

 

 

ーーーー暖かい。

 

 

お燐の暖かさが私に伝う。そうだ。昔がどんなに辛くとも、私には今があるのだ。お空が、お燐が、他のペットたちが、そしてこいしが。ならばもういいではないか。もうしばらく、この暖かさに身をまかせていよう。

そう思った時だった……

 

「……何か焦げ臭くない?」

 

それは唐突に聞こえたこいしの言葉だった。お燐の肩から顔を出して、こいしのいる方へと顔を向ける。何やら黒い煙が立ち上っていた。

 

「お、お燐!お肉!お肉が焦げてる!」

 

「へっ?あっ!すみません!今すぐ消します!」

 

そうして出来たこいしの昼食は、少し焦げたものとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへ。すみません」

 

「もう、お燐の馬鹿。お姉ちゃんも何か言ってやりなよ」

 

お燐は申し訳なさそうにわたしたちに謝っていた。しかし、あれだけ煙が出ていた割には、肉はそこまで焦げていた訳ではなかった。黒い部分を取り除けば、十分に食べられるものだったのだ。

 

「お姉ちゃんの変わりに昼食を作ったのに、これじゃあ意味ないよ」

 

「いや~うっかり、火を消すのを忘れてしまいました」

 

「変な所で抜けてるわね、お燐は」

 

まぁでも、私を慰める為に駆け寄ってくれたのだ。それは少し嬉しかった。

 

「今回は失敗してしまいましたが、次はちゃんと作りますよ」

 

そこでお燐は何かを思い付いたらしく、ピコンと耳を一瞬、真っ直ぐに立てた。

 

「次の機会、私がお二人に料理を振る舞いますから、お二人が共通で好きな食べ物を教えて貰えませんか?」

 

好きな食べ物か……と言ってもお燐の作る料理はどんなものでも美味しいから、私は何でもいい。

 

「こいしは何がいいの?」

 

こいしはう~んと唸った後で、バッと顔を上げてこう言った。

 

「うどんがいい!」

 

うどん?と思わず声を出す。うどんですか?と私に続いてお燐も言う。

 

「前に地上でうどん屋さんを覗いた時に、美味しそうだな~って思って!目玉焼きうどんって言うのもあったんだよ!」

 

うどんか……。地底にもうどん屋はあるが、やはり地上にある店の方が美味しいと言うのはよく聞く話だ。私はまだ地上に行ったことが無いから分からないが…………目玉焼きうどんってどんな料理なのかしら?

 

「良いんじゃないかしら?うどん、私も好きよ」

 

「うどんですか…………うん、何とかしてみます!」

 

「本当に!?やったー!」

 

流石にうどんは作った事が無かったのだろう。それでもお燐は了承してくれた。こいしも嬉しそうに万歳と跳びはねながら喜んでいる。

 

「それじゃ、私は失礼します。姉妹の間を邪魔するのは無粋(ぶすい)ですからね」

 

そうしてお燐は、手をふりふりと振って、部屋を出ようとする。しかし、そこで思い出す。

 

「お燐。こいしの帽子を知らない?」

 

ピタリとお燐は立ち止まる。

 

「こいし様の帽子ですか?………そう言えばこいし様、帽子被ってなかったですね」

 

「えぇ。昨日、どこかに無くしてしまったのようなの。どんな帽子か覚えてる?」

 

「ええっと……」

 

お燐はばつが悪そうに頬をかいた。

 

「あら、お燐まで忘れちゃったの?お空と一緒じゃない」

 

「ちょっと!さとり様!お空と一緒は流石(さすが)に酷いですよ!」

 

心外だとばかりにお燐は大声でそう言った。それに思わずくすりと、ほころんでしまう。

 

「丸形の広いつばで、黄色いリボンが付いている帽子よ。思い出した?」

 

「あぁ、思い出しました!それじゃあ、見つけたらお知らせしますね」

 

「ええ、頼んだわ」

 

そうしてお燐は扉を開けて、部屋を出ようとする。

 

「お燐!」

 

しかし、もう一つ言い忘れた事があったと、再度呼び止める。

 

「はい!」

 

ノブに手を掛けたまま、お燐は私の方へ振り返る。

 

「…………ありがとう」

 

「…………はい」

 

にっこりとお燐は優しい笑みを浮かべて、そのまま部屋を出ていった。

 

「………………さて、こいし。冷めてしまう前にご飯を食べなさい……ってあれ?」

 

私はぐるりと一帯を見渡す。こいしが消えた。さっきまでここにいたはずなのに……。

 

「……………………またなの?」

 

こうしてこいしは突然にいなくなる。無意識で行動する妹はいつもこうだ。目の前に他の興味対象が現れれば、そこに行く。ふとした思い付きに似たようなもので、その行動をする。それが私の妹『古明地(こめいじ)こいし』なのだ。

 

「…………この料理、どうしようかしら」

 

私は机に置いてある。ほかほかと湯気の立つ料理を見て呟く。

 

「…………私が食べましょうか」

 

折角、お燐が作ってくれたのだ。捨てるのは勿体無い。それに、妹の不始末は姉がつけるものと相場が決まっている。私は椅子を引いて、ゆっくりと腰を下ろす。

 

「いただきます」

 

私は手を合わせてお箸を手に持つ。そうして今日、二回目の昼食を食べようとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーお姉ちゃん、ごめんなさい。そしてありがとう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……こいし?」

 

ふと、こいしの声が聞こえた気がした。

しかし耳を済ましても、何も聞こえない。辺りを見回しても誰もいなかった。

 

「…………気のせいか」

 

私はふふっと笑ってしまった。やはり私はどこか過保護だ。しかし、それでもいいではないか。大切な家族なのだ。やっと手にした日常なのだ。それぐらい何が悪いと言うのだ。

 

「さてと、いただきますか」

 

私は一言そう言って、料理に箸を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

私は今日も生きるのだ、この世界を。

 

 

 

 

 

 




分かりましたか?(分かったらダ・ヴィンチ)分からないと言う方は、良ければこのヒントを読んだ後で、気が乗れば読み直してみて下さい。何か分かってきませんか?下に行くほど、確信に近づいて行きます。どこまでのヒントで謎が解けるでしょうか?この文章力じゃ、全部見ても分からない気がしますが……。



ヒント1 お空はかなりの馬鹿です。何でもすぐに信じてしまうほどに。





ヒント2 さとりはこの話中、全てで本当に心を読めていたのか?




ヒント3 こいしは本当に自由奔放です。さとりによると地霊殿では見かける方が稀だそうで。




ヒント3 会話の中の言葉や、やり取りにに違和感は無かったか?





ヒント4 この話における『覚り妖怪』の設定が鍵の一つです。




ヒント5 お空は気づいていなくて、お燐は何かを隠している(嘘をついている)。




ヒント6 お空やお燐の台詞を適当に流して読むと気付きづらい。一語一句をしっかり読むと分かりやすい(流石に面倒ですね)。





ヒント7 あれ?お燐、お前……ちょくちょく何か忘れてない?





ヒント8 さとりが語った過去の話は本当に全て事実だったのか?






ヒント9 お空はともかく、なぜお燐までもが帽子の特徴を全くと言っていいほど知らなかったのか?







以上です。私、やっぱり話作るの下手ですね。これで分かる人の方が天才です。
いないと思いますが、もしもしも答えが分かったと思ったなら、気分が乗れば、感想なりメッセージなりで教えて下さい。

あと一応確認はしましたが、誤字脱字、そして表現でおかしな所があればご指摘ください。と言っても、わざとそうしている部分もあります。これもヒントですかね。

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