真ゲッターロボ BETA最後の日   作:公園と針

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序章3話 「北欧の黄色い竜巻」

謎の機動兵器が現れたのは月と東独だけではなかった。

 

旧フィンランド領 都市 イヴァロ

1980年 BETAの西進は北欧にまでさしかかろうとしていた。

 

迫るBETAの北進に北欧三カ国フィンランド、スウェーデン、ノルウェーは北欧三カ国軍事同盟を設立、三カ国は迫るBETAに完全な協力体制をしいてBETAを迎え撃った。

 

しかし、1981年にフィンランドの首都「ヘルシンキ」は陥落。

 

フィンランド領ロヴァニエミに8つめのハイブが設立された。

 

フィンランド国民は他の西洋諸国へと逃れていったが、当然全ての国民が逃げ出せたわけではなく、難民化してしまった国民も多い。

 

難民の多くはフィンランドの北にあるイナリ湖の側の街「イヴァロ」に身を寄せた。

 

「イヴァロ」にはフィンランドの唯一残った都市として自治機能を持ち、戦力を持っていた。

 

その戦力は崩壊した旧フィンランド軍の生き残りや志願した市民で構成されていた。

 

既に都市というより難民キャンプ兼基地と化していた。

 

「イヴァロ」はスウェーデン、ノルウェー、他西側の国への亡命を求めていたが、その亡命はあまり進まず、その代わりに戦力を貸すことを交換条件にBETAから北欧を遮る壁として用いられていた。

 

「イヴァロ」はロヴァニエミが落ちて約1年半必死に難民と自市を守ろうと努力してきたが既に限界に差し掛かっていた。

 

「イヴァロ」が存続できていた理由の一つとしてレーザー級がロヴァニエミから現れるBETA群には含まれていないことがある。

そのため、まず航空機及び戦車による爆撃によって大半のBETAを殲滅。

 

数の減ったBETA群を戦術機が掃討するというシンプルな作戦が用いられていた。

 

1983年1月10日 

 

10日に日付がかわったころ

 

爆撃で仕留め損ない都市に迫るBETAを狩るために元フィンランド戦術機部隊サンディ大隊は出撃する。

 

大隊といっても既に16機のみ。1個中隊と1個小隊で構成されている。

 

度重なる出撃により人員機体共々補給が追い付かなくなっていた。

 

元フィンランド空軍は絨毯爆撃などする余裕などなくBETAが比較的に多いと人工衛星や目視で分かる地点にしか爆撃ができず取りこぼしが多かった。

 

「こちらサンディ1 これより降下を行う 全機続け!」

 

「「「「了解」」」」

 

F-4 ファントムが16機 薄汚い血で汚された大地に降り立つ。

 

「いいか人的被害の多い戦車級を優先的に駆除する」

 

「「「「了解」」」」

 

見渡すかぎりに広がるのは憎き人類の敵の死骸だけだった。

 

「今回は取りこぼしが少ないようですね 大隊長」

 

「わからんぞ もっとも爆撃による生存率の高い突撃級の一団が現れるかもしれん」

 

爆撃による攻撃にもっとも強いのは体の前面部に強固な防備をもつ突撃級だった。

 

「よし小隊単位で散開し、掃討を行え」

 

「「了解」」

 

4機ずつに大隊が4つに分かれる。

 

「隊長?」

 

「うん?」

 

長年彼の2番機を務める男が秘匿回線で尋ねる。

 

「いつまでこんなことを我々は続けなければならないのでしょう?」

 

「どういう意味だ?」

 

隊長は編隊を崩さずに他の僚機に悟られないように機を操る。

 

「この戦法はレーザー級が現れていないからこそ有効な戦術です」

 

「そのとおりだ」

 

「ではレーザー級が現れ、爆撃の効果が無くなるとどうなるでしょう」

 

なぜそれをフィンランド防衛線で嫌というほど知ったこの男が聞いてくるのだろうか。

 

「………………そのときは全軍でBETAを航空支援なしで迎え撃つことになるな」

 

「そうなると我が都市「イヴァロ」は完全にBETAの手に落ちることになります」

 

「……何がいいたい?」

 

彼は息を呑んで言い放つ。

 

「我が都市群は所詮寄せ集め……指揮系統もバラバラ。このままの状態で防衛線をしても本国の二の舞です。それに我々の都市の民はいつになったら他国へと逃れられるのでしょうか? 

同盟国のスウェーデン、ノルウェーは我々を時間稼ぎの壁として……」

 

「もうやめろ!! 」

 

隊長はその彼の言葉を遮った。

 

「迷いがあるなら機を下りろ 我等にできるのは目の前に迫る危険を取り除くことだけだ。

切るぞ。」

 

「了解」

 

口惜しそうな声を出してその指示に従うサンディ2。

 

「……せめて指揮をとれる人物がいれば少しは変わるだろうが」

 

隊長は指揮系統なしに個々の隊がバラバラに行動している現状をなんとかしないといけないと考えていた。

 

「こちらサンディ7 隊長!!」

 

「どうした? 07」

 

突如として分かれた別の小隊の機から交信が入る。

 

「要塞級です。要塞級が3体加えて戦車級の一団がいます。」

 

「厄介な奴らを残してくれたな 航空部隊のやつらめ」

 

全高70メートルほどもあるBETA最大種の要塞級に小隊1隊では心元ない。

 

「全小隊集結して要塞級を撃破する」

 

「「了解」」

 

「集結するまで要塞級に手を出すな」

 

ファントムの速度を上げて集結しようとしている地点まで各小隊が移動しようとする。

 

 

「隊長は皆が集まるまで手出すなって言っていたけどどうする?」

 

一番早く要塞級を見つけた部隊は秘匿回線を使い僚機に相談する。

 

「たとえここで俺等が要塞級に攻撃をしかけても、今は俺たちが所属している軍は存在していないのだから命令違反にはならないだろう」

 

「それじゃあ やりますか」

 

「おい! よせ!」

 

小隊長であるサンディ7が静止をかけようとするが……

 

「07! もう貴様は小隊長でもなんでもないんだよ!」

 

3機のファントムが隊列を乱し先行する。

 

「チッ どうなっても知らんぞ」

 

7番機もそれに続く

 

4機のファントムが要塞級の一団に迫る。

 

「大きいな……」

 

要塞級に後50メートルまで差し掛かったところで注意を促す。

 

「奴の触手に気をつけろ。あれはかなり伸びる。」

 

そう言い終えたところで一番接近していた要塞級の尾の突起が伸び小隊に迫る。

 

本来なら前線で戦っていた彼らがたった1個小隊で要塞級に挑むような愚策に陥ることはなかっただろう。

 

しかし、度重なる出撃に加え全く進まない救助が彼らの判断を鈍らせた。

 

「うわあああああああ」

 

衝角の先が小隊の1機に当たる。

 

要塞級の衝角から強烈な酸が放出され鋼鉄でできた戦術機を溶かす。

 

「ひいいいい」

 

一人を失って気づいた。自分たちが愚かな選択をしたことに。

 

だが時はすでにおそかった。

 

「ちくしょうめえええええええええ」

 

「よせ!」

 

小隊長の声に聴く耳を持たず突っ込んだ1機はその鋭利な巨大な脚に串刺しにされた。

 

「なんてことだ。おい!!離れるぞ!!」

 

残った一人に小隊長は声をかけるが…

 

「………」

 

茫然としているのか全く動きがない。

 

そこでけたたましい音と共に何かが近づいてくるのにようやく気が付いた。

 

猛スピードで奇怪な風体の黄色い物体が視界に現れた。

 

白い土台の上に赤いボディそして一番目につく長い黄色の腕がついたその機械の腕がさらに伸びる。

 

そしてなんとあの尾の触手を掴んでその要塞級の巨体を投げ飛ばした。

 

投げ飛んだ要塞級は別の要塞級と衝突し、互いの脚と重量に押しつぶされ身動きをしなくなった。

 

そこで他の大隊の ファントムが集まる。

 

「要塞級は放置しろと言っただろうが!!」

 

「なんだこいつは」

 

「新手のBETAか?」

 

他の隊も突如現れた謎の機体に気づく。

 

「サンディ7  状況を説明しろ」

 

「…………サンディ7!!!!」

 

隊長が説明を急がせる。

 

「……所属不明機が要塞級を投げ飛ばしました。」

 

「おい冗談を聞いている暇はないぞ」

 

再度、黄の機体の腕が伸び残りの要塞級をぐるぐるとまるでヘビのように覆い天高く舞い上げた。

 

そうまるで竜巻があらゆるものを巻き上げるように。

 

要塞級は丁度先に倒れた2匹の上に重なり落ちその動きを止めた。

 

目の前で起こったことが報告を本当のことだと証明していた。

 

黄色の機体は手を大きく上げて、戦意がないことを示して、ゆっくりと戦術機部隊の方に近づいてきた。

 

序章3 終わり

 


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